TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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「ふーん…暗殺騒ぎねぇ…」

 

ホテルのレストランでバイキング形式の朝食を摂っていたスフェーンは視界に映るネットニュースを見る。

 

『複数の報道機関は島内から強制送還されたそうですね』

「そりゃフリーの記者が暗殺に関わっていたらねぇ…」

 

今島内に残っている報道機関はいずれも大手と呼ばれる会社のみだ。

軍警も今回の暗殺未遂事件で相当ピリついたのだろう。かなり大胆な行動に出ていた。

 

「あっ」

 

そんな中、スフェーンは記事に映る一枚の写真を見ていう。

 

「ロトが映ってんじゃん」

『あぁ本当ですね』

 

ルシエルもその記事でアンドロイドの治安官にいう様子が映るロトを見て前にあった時の事を思い出す。

 

「ブルーナイトの警護担当にでもなったなこりゃ」

『どちらかと言うとならせた…と言うのが正しいのではないでしょうか?』

「ははっ、そうかもしれないね」

 

そういいながら准佐の階級章を見て少し微笑む。

 

『嬉しいですか?』

「そりゃあね、手塩にかけて育てたのよ?」

『一時は養子を考えていたくらいですからね…』

「ははっ、懐かしいねぇ」

 

スフェーンはそう言いながら青しそドレッシングをかけたサラダを食べる。

今日の昼に出港予定のはっこうだ丸に乗船する為、スフェーンは朝早めに朝食を摂っていた。

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

そこで一人のアンドロイドが挨拶をする。

彼は船でも見知った乗客で、スフェーンと同じ行き先まで行くと言う事で交流をしていた。

 

「よっと…」

 

そして椅子に座ると、背中の給電装置から電気が給電される。

 

「マイクロ波給電じゃないんですね」

「あぁ、この方が充足した感覚なんだよ」

 

そう答えると、電源が供給されていくと顔が満足げになっていく。

機械の大きな目で喜怒哀楽を示すアンドロイドは実に分かりやすかった。

 

「ご馳走さん…君も船に乗り遅れるなよ」

 

そして給電を終えるとそそくさとホテルを後にしてしまった。

元々船と契約を結んでいたホテルなので、レストランには見知った客も多くいた。

 

『アクアブルーから乗船する客もいるようですね』

「列車はまともに運用できないから、多分ただの一般客ばかりだろうけどね〜」

 

アクアブルーは階層ごとに港湾地区、工業地区などと分かれており、一番上は商業地区である。

各階層にモノレールや市電が走っており、本線級鉄道が走っているのは一番下の港湾地区と上の商業地区のみである。

 

『食事を終えたら、荷物を纏めて市電に乗りましょう』

「んっ、おけまる」

 

スフェーンは頷くと朝食のパンケーキを切り分ける。

溶かしたバターにメープルシロップをふんだんに吸わせた一品はパンチがあるものだ。

 

「はむっ」

 

そして六等分した後に一つを口に入れると、噛む旅に溢れ出てくるバターとシロップの絡みあった甘味とバター特有の塩っけを楽しむ。

 

「んふ〜」

 

デザートを食べ、スフェーンは口福になるとそのままあっという間に平げてホテルの部屋に戻る。

ビジネスホテルなので大した面白みもなく、スフェーンは五日間過ごした部屋の片付けを始める。

 

「全く…やる事が多いったらありゃしないわね」

 

そう言いながら出していた化粧水や乳液などを片付ける。

 

『全てスフェーンが用意したものですよ?』

「いやぁね、面倒すぎるってのよ…本当」

 

そう言いながら丁寧に畳んで私服を鞄に片付けると、部屋に忘れ物が無いかを確認して回る。

 

「シャワーよし、机よし、テレビよし…」

 

粗方の確認を終えると、スフェーンはそのまま部屋のキーを持ったままホテルをチェックアウトする。

 

「次に来る市電は?」

 

時計を見ながらスフェーンは聞くと、

 

『二十分後ですね…』

「おっと?」

『この時間は少なかったかもしれません…』

 

少々申し訳無さそうにするルシエルにスフェーンは軽く笑う。

 

「まぁ良いよ。ちょっと歩けば港湾地区に移動する列車に乗れるでしょ」

『はい、アクアブルー中央駅から港湾地区行きの環状線が出ています』

「んじゃ、それ乗りましょうや」

 

スフェーンは言うと、彼女は片手にヘルメットを持ったまま街を歩く。

 

『自転車に乗らないのですか?』

「ん?いやぁ、何となく駅まで歩いてみようかなって」

 

そう返すと、彼女は一通りのある歩道を自分の足で歩く。

 

『健康的ですね』

「まぁ常日頃から健康には意識してますし?」

 

そんな事を言いながらスフェーンは銃がないことに多少の不安を覚えながら駅に向かう。

 

 

 

 

 

アクアブルー中央駅は白い建材やガラスを使用した近未来的な設計の駅舎だ。街の景観に合わせて設計されており、かつての水晶宮を思わせるような内装である。

スフェーンは自動改札を通り、そのまま環状線の発着するホームに降りる。

 

『間も無く、四番線にアクアブルー港湾管理局経由。環状線右回り線が到着いたします』

 

自動放送と共にパタパタと音を立てて案内表示板に無数の列車が表示されると、水色一色に塗装された201系電車がホームに進入してくる。

 

アクアブルー環状線は多段構造のこの水上都市を坂を上り下りしながら走る通勤列車である。

 

明るい警告音と共にロープ式ホームドアが昇降すると、ドアが開いて乗客が大勢乗り降りする。

 

『間も無く列車が発車します。お近くのドアからご乗車下さい』

 

車掌がアナウンスをすると列車のドアが閉まり、そのまま列車は走り出していく。

この時間帯は通勤時間ということも相まって多くの人が車内で鮨詰めされていた。

 

「(せまい…)」

『これは…バッチリ通勤時間ですね…』

 

ほぼドアに押し付けられているような状態に軽く愚痴りながら車内に自動放送が入るのを聞いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

昨日は暗殺未遂事件が勃発した。

実行犯はとある招待した傭兵の一人、インスタントカメラに偽造した散弾銃を使って犯行は行われた。

 

銃声の後、すぐさま部屋に押し込まれた自分はその後の顛末を知らなかった。

ただ死者と負傷者が出たと言うのは耳にしていた。

 

一旦会議は中断され、四時間後に再開した時は自分は別室でリモートで会議に参加することになってしまった。

 

「暗殺があった以上、貴方には投票が完了するまでこの部屋で会議に参加していただきます」

 

ロトから言われるとブルーナイトも少し苦笑気味に頷く。

 

「警戒しすぎなほどだな…」

「貴方には生きて貰わなければなりませんので」

「…」

 

部屋に窓は無く、狙撃も不可能。そんな場所で会議に参加する事に異論はないが、

 

「投票が終わるまでか…」

「はい」

 

もうとっくに参加している傭兵達の中では既成事実と化している傭兵支援組織の創設。既に傭兵ギルドと言われ始めているその組織は創設の可否には参加した傭兵からの投票という形をとっていた。

 

サクラが言い回したのか、規則は自分が提案した資料に少しの手直しを加えるだけで終わりそうな今の状況。

レッドサンが提供したあの金塊の使い所である事や、今回の組織の創設はレッドサンの遺言であると言う事が変に広まったのか、レッドサンは組織創設の立役者的立ち位置になっていた。

 

「怒るだろうな…」

 

そんな事を呟くと、代表者会議の始まる時間となった。

VRゴーグルの先では会議室の真ん中にいるような映像が広がり、実際会議室ではブルーナイトのホログラムが投影されていた。

 

「このような形となり残念ではありますが、此度は私の召集に答えていただき感謝いたします」

 

その言葉を始めとして最初の代表者会議が始まった。

 

『今回の会議の内容は事前にお渡しした資料にある通り、傭兵支援組織の設立を提案するものであり…』

 

会議室の円卓にはブルーナイトが直接資料を事前に私に向かったドラゴニカや桜花と言った傭兵団団長は資料を置いて煙管や葉巻に火を付けていた。

 

『なお、現在行われている傭兵支援組織設立の為の投票の後、傭兵支援組織の設立が可決された場合はその後に各個で署名を行って貰います』

 

言うが、少なくともここにいるような傭兵達は全員が傭兵支援組織の創設を否決するような奴はいないだろうと思っていた。

何せ提案したのが誰であれ、今の複雑怪奇な傭兵稼業を円滑に纏め直せる組織は喉から手が出るほど欲しかった。

 

『今回の会談内容は…』

 

言い掛けたところで彼の言葉が止まると、傍から結果が出たのだろう。淡々と彼は言った。

 

『えぇ、ただいま開票作業が終了しました。賛成九二五、反対二三…よって傭兵支援組織の創設は可決されました』

 

当たり前だと思うような話だが、それでも傭兵支援組織の創設を前に会議場にいた傭兵達は拍手をする。

 

『では傭兵支援組織創設にあたり、呼称並びに規則選定をこれより開始致します』

 

傭兵支援組織の創設に必要な規則や施設、誰がどの割合で資産を出すかなどの話し合いが始まる。

 

「呼称は簡単に傭兵ギルドでよかろう」

「うむ」

「賛成ですな」

 

支援組織の名前は簡単に決まると、次に規則選定を話し合う。

 

「運輸ギルドを参考に、所属している人間のみ傭兵として認める方針としましょう」

「だが企業が参画すると思うか?」

「既に多くの注目が集まっています。既に投票結果は外に出ている事でしょう。結果はすぐにでも分かるはずです」

 

規則選定はブルーナイトや他傭兵団が提案した案を吟味しながら行われており、数時間の会議を行なったが、纏まることはあっても固まることはなかった。

 

「おめでとうございます」

 

会議を終え、ブルーナイトは待っていたロトに言われる。

 

「君なら予測できた未来だろうに…」

 

少し苦笑しながら彼は言うと、ロトに聞く。

 

「外の状況は?」

「お祭り騒ぎです。傭兵ギルドに名称が決まった事も流していますよ」

「すまんな…」

 

この様に報道機関をやたらとかき入れたのはブルーナイト本人の要望だった。その結果、昨日のような事案が発生したのだが…。

 

「既にいくつかの企業から貴方宛に資金提供の申し出と傭兵ギルドへの参画を申し出る嘆願書が届いています」

「全部回してくれ、休憩後の会議で話を持ち込む」

「了解しました」

 

そう言い投票を終えてホテルの広間を歩くブルーナイト達。

ホテルへは昨日の暗殺未遂事件で報道機関は島内の空港から出る事を禁止され、ホテルとは完全に隔離されていた。連絡も軍警からの報告のみで行われており、勝手な外出は拘束対象となっていた。

注意喚起も行われ、不審な人物との接触は通報するよう呼びかけていた。

 

嫌なほど静かなこの場所で彼は溢す。

 

「君達には苦労をかけるね」

「いえ、それが我々の仕事ですので」

 

ロトはブルーナイトに和かに返した。




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