TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#133

レッドサンはいつでも傭兵を引退する準備を整えていた。

コンビを組んでいた十年以前の話は知らないが、彼は常に傭兵を直ぐにでも引退できるように持ち回り品の数はとても少なかった。

 

「実際どうなんだ…レッド」

 

彼は一人、部屋のボトルを開けながら空に問いかける。

 

「俺の願いは、お前のおかげで果たされた…」

 

二つのグラスにウイスキーを入れる。片方のグラスには彼の好きなロックアイスを入れてテーブルに置く。

 

「お前は復讐をしないタチなのは知っているつもりだ」

 

彼はそう言い部屋の椅子に座る。

 

「だが何故接触をしてきた?」

 

彼はもう一通の手紙の入っていた封筒を卓上に置いて語りかける。

 

「すでに死んでいたとて、お前の姿を追う連中は居るぞ」

 

彼の首に手をかけた事実は変わらない上に、あれほどの崩落事故で何故生きているのかも分からない。

 

「本当にお前はレッドサンなのか?」

 

ブルーナイトは一人、疑心に駆られ封筒を見ていた。

結局、あの後調査を独自で依頼したが、この手紙と金塊を置いていった人物の正体は自分達だけではわからなかった。

もし本格的に調査をすると言うのであれば軍警の力を借りるのが一番正しい選択だろうが、それをやる以前に自分がこれからとてつもなく忙しくなる。

 

「…」

 

とてもじゃないが、レッドサンの生存を追えるほど時間に余裕がなくなってしまう。

赤砂の解体が正しいかどうかなど知らない。

 

ただ一つ、今の自分は少し気分が良かった。

 

 

 

カレル島で行われている傭兵ギルド創設の会議の為に集結した世界各地の傭兵達。

お互いの顔合わせパーティーともなったこのホテルで、何十時間もの会議の末。ホテルの敷地で最も広い宴会場では、招待客の全員が集められていた。

完全座席指定制の会場には参加したほぼ全ての傭兵達が座っていた。

 

自分達傭兵の正装とも言える戦闘服を全員が身に纏い、視線の先では代表者会議に参加した傭兵達のために用意された席とテーブルが用意されており、そこでは既に代表者会議に参加した面々が一般的な正装を纏って渡された革張りのバインダーにサインをして行く。

 

「…」

 

今までの喧騒が嘘のように厳かな空気の中、黙々とサインが進む。

暗殺騒ぎがあった事で会場に入っている報道機関の数は非常に少なく、一番後端の狭い空間で軍警の報道官とともにカメラを回していた。

 

「会場内の様子はどうなっている?」

 

出入り口の保安検査場でロトは聞く。

 

『今の所、異常はありません』

『配管、電気設備、銃火器。何もスキャニングで確認できません』

 

答えたのはロトがライルから借りた暗殺に特化した部隊であった。

毒には毒を持って制すと言う言葉があるように、暗殺に慣れた部隊を会場内に配置する事でブルーナイトや、傭兵ギルドの役員となる人間の暗殺阻止を行なっていた。

 

既に数名を秘密裏に捕縛し、処理を行っていた。

 

「了解した。会場内の客はそのまま終了後に空港まで用意したバスに乗る」

『要人を乗せる航空機の用意は既に完了しています』

 

今回は特例ではあるが、傭兵ギルドの役員や職員は傭兵を辞してから四年の期間を必要とする旨などの規則が書かれた書類に目を通しながらロトは呟く。

 

「ますます喧嘩を売りますね…ブルーさん」

 

これじゃあ企業が顔面ブルーになるか、レッドになるなと思いながら彼はこの後のスケジュールを思い返す。

 

「私は、レッドサンの死の真相を追い続けますよ」

 

そう呟くと、彼は宴会場内で拍手喝采となり、半年後に本格的に始動する傭兵ギルドの会長に就任する一人の男を見ていた。

 

 

 

その後、順序に沿って会場から傭兵達が出る。

一ヶ月に及ぶ会議は多少の時間はあれど無事に終了し、大半の傭兵は用意されたバスに乗り込んで帰路に着く。

島内空港では多くのチャーター便が離発着を始めており、行き先毎にバスから降りた傭兵達も束の間の無料娯楽の時間を終える。

 

報道機関はそんな傭兵達からスキャンダラスな話を聞こうと突撃を行い、空港内は騒然とした空気に包まれていた。

何せフリーの記者や小規模の報道機関は暗殺未遂事件以降島から追い出され、船で上陸しようものなら軍警の高速ミサイル艇で追いかけ回される羽目になる。

 

会議中の映像は無く、何が話し合われているかは人伝で聞くしか無かった。かと言って傭兵は空港までわざわざ緊急で帰る以外でホテルから降りてこないのでほぼ軍警からの情報だけで動くしかなかった。

 

一応、会議終了後に議事録の抜粋が軍警を通じて渡されるが、本物を欲しがる彼等はありとあらゆる方法でネタを得ようとしていた。

 

そして大半の傭兵は自分たちのことを悪く言っていたこう言う報道機関を基本的に毛嫌いしているので口を合わせたような回答しか返ってこなかった。

 

そんな時、空港で待ちぼうけを食らっていた報道陣にある一報が入った。

 

「おいっ!赤砂の団長がホテルで桜花と五獣ともに会見をするらしいぞっ!?」

 

その話を聞いてから情報に飢えていた彼等の行動は早かった。

事前に用意していたバンに人や機材を載せてホテルへと飛ぶように走り出し、ホテルに到着するとそこでは軍警の装甲車が道路に並んでバリケードを作って待っており、報道機関関係者達はそこで軍警による徹底した保安検査を行なっていた。

 

何せ十徳ナイフや銃弾が一発あるだけで会場には入れなく、何なら重量級サイボーグによって軍警の装甲車にドナドナされていく。列から外れても同様で、全員が大人しく列に並んでいた。

 

コンクリート製の柵を越えた反対では傭兵達を乗せたバスがホテルから出て行き、報道陣はついでにその映像をカメラに納めていた。

 

 

 

「えー、今回の会見では質疑応答はございません」

 

そして静かになったホテルの一室。小さな会議室でブルーナイトはそう語ると、永遠とフラッシュが焚かれる中で彼は宣言する。

 

「先程の傭兵ギルド創設に伴い、赤砂傭兵団は統合再編され、人員は桜花武士団と五獣傭兵団、並びに施設や事務員などは全て傭兵ギルドへと所属を移管する運びとなりました」

『『『『ーーーっ!?』』』』

 

直後、報道機関達は驚く。

ブルーナイト達はそのまま会議室の奥に立って帰ると、記者が慌てて質問をしようとした。

だが前述した通り、質疑応答の無いただの発表会であったのでそれらに答える素振りすらなく彼等は会議室を出た。

 

「おっかながるなぁ。ブルーナイト」

「えぇ、元々約束を守らない彼等です。質疑応答はネットに任せるのが一番ですよ」

 

サクラとブルーナイトは言うと、彼はチェンを見る。

 

「これで人員の半分は君のものだ。頑張れよ」

「は、はい…」

 

半分ブルーナイトからの押しつけで、最初は赤砂の人員全てを請け負う事になっていたので、今になってサクラが出てきてくれた事に頭が上がらなかった。

 

「これから半年は忙しくなるな」

「えぇ、望むところですよ」

 

ブルーナイトはそう返すと、サクラとチェンは自分たちの部下に連れられて先に部屋を後にする。

 

 

 

この日、突如として発表された赤砂傭兵団の解散。

正確には統合再編になのだが、解散の方が響きが良いと判断した報道機関によって半ば捏造に近い報道で、招待されなかった人員…特に赤砂に所属していた傭兵に少なからずの驚きがあった。

 

ただより地に足をつけた所属となった事務員や施設管理者は安堵しており、傭兵達は五獣や桜花に入るかどうかは社内アナウンスで自由であると述べられた。

 

なのでこれを機に独立するものや、傭兵を引退するものなどもいた。

野盗に身を落とすものはほぼおらず、人員はしっかり五獣と桜花が吸収していた。

 

ただ、自分たちの上司が手塩にかけて大きくしたであろう傭兵団をあっさりと捨てた事実に誰もが驚いていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

途中の寄港地であったアクアブルーを離れたはっこうだ丸はノーチラス海を横断する。

 

「おほ〜」

 

最上階の甲板、プールや売店があるようなその場所で私服姿のスフェーンはやや興奮気味に見えてきた都市を見る。

 

『ハンベルク、ヴェルヌ大陸第三位の貨物取引量を誇る港湾都市です』

「ついに来たぞ〜!!新天地!」

『運び屋ででは、ですけどね』

「一言余計じゃい」

 

スフェーンは突っ込むと、船はタグボートによって反転させられると、そのまま後進でハンベルクの桟橋と接続される。

 

縄で船を岸壁に固定し、安全が確認されるとスフェーンはタラップを伝って地面に降り立つ。

 

「到着〜」

 

スフェーンは銃と荷物片手に陽気に港湾施設に向かうと、そこで各種手続きを行う。

 

「えーっと、まずは所属管区変更届の受理の確認と、運輸ギルドの荷物の確認…」

『指名依頼の確認もお忘れ無く』

 

ルシエルは言うと、スフェーンは列車が下ろされるまで港の施設で新大陸で活動可能にするための運び屋の手続きを行う。

 

そして桟橋では迎えに来たHD300形機関車が船倉に格納された列車を次々と取り出す。

三週間の航海の後、一週間かけて船内の点検と新たな積荷の積載を行なって再び海を渡る。

 

「わーい!」

 

そして隣接する操車場の列車受け取り場でスフェーンは三週間ぶりに自分の列車と再開する。

 

「いやぁ、やっぱ運び屋は列車が一番だよ〜」

 

機関車の連結が外され、スフェーンは運転台に上がると、そこで列車の電源を入れる。

 

「うほ〜、この音この音〜」

『興奮しすぎで事故らないように』

「分かってる分かってる」

 

彼女は言うとマスコンを操作してゆっくりと前進を始める。

新しい場所の操車場ではあるが、やる事は前と変わらない。このまま運輸ギルドまで移動して仕事を探して目的地まで運ぶ。

 

「ねぇ、ルシエル」

『何でしょうか?』

 

ゆっくりと分岐点をいくつも通過する中、彼女は提案する。

 

「これからさ、身体を探す旅ってどう?」

『身体を?』

 

前に話した旅の目的を決める話、あの時は適当にローン返済と言っていたが、そこで彼女はふと思いついたのだ。

 

「この身体と同じ素体の材料を探すの。どうかな?」

『それは…』

 

理論的に不可能では無い、とルシエルは分かっていた。

膨大な知識を持って、この肉体と同じものを作る事は不可能では無いと結論付けられる。が、

 

『膨大な時間が掛かりますよ?』

「良いの良いの、どうせ時間はいくらでもあるし」

 

そんなルシエルにスフェーンはそう返すと、彼女は軽く息を吐いた。

 

『分かりました、当面の目標はそれにしましょう』

「必要なのは臨界エーテルだね?」

『えぇ、素体核を作るのにはある程度の量が必要でしょう』

「何とかなるでしょ、塵も積もれば山になるってね」

 

そんな事を言いながら操車場で列車を止めると、スフェーンは新しい仕事を探しに運輸ギルドに足を運んだ。




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