TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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同じ境遇の友人と出会ったスフェーンはこれまでに無いほど喜びを感じていた。

 

「いやぁ、本当。変人の相手って大変ですよね」

「分かります〜、基本的に振り回されるんですけど、理屈は通っているから拒否しずらいんですよね〜」

 

学園の帰り際、ユウナとスフェーンはそれは楽しげに話す。

 

「こう言う人って基本的に自由人だし…」

「いきなり言い出すし…」

 

すっかり意気投合した二人はそのままサイドカーを停めた駐車場まで見送る。

 

「あーあ、まだスフェノスさんとお話しできればなぁ…」

「私も仕事探さないとなぁ〜」

 

スフェーンが呟くと、ユウナは若干驚いた。

 

「え?スフェノスさん、研究所からお金とかは…?」

「その人、ケチくさくて小遣い程度しか無いんです」

 

スフェーンはそう言って事情を説明する。

 

「うち、一ヶ月くらい仕事できないんで、仕事探さないといけないんです」

 

スフェーンはそう言うと、ユウナはそんな彼女に提案する。

 

「あっ、今ウチで掃除員のバイト探しているんです。良かったら応募してくれませんか?」

「え?でも数週間だけよ?」

 

スフェーンは言うとユウナは

 

「大丈夫ですよ。一週間ごとの契約ですし」

 

そう言って彼女はスフェーンにアルバイトを斡旋する。

 

「しかし悪いですよ」

「良いですよ、どうせ誰も清掃員が変わったところで気にしませんし」

 

そう言いユウナはスフェーンを離さまいと言う感情を受け取ると、スフェーンは少し不安を覚えながらもユウナからそのバイトの連絡先を受け取った後に別れた。

 

『清掃員のバイトですか…』

「気に入られちゃったよ…」

『同郷の誼でしょうか?』

「それは違くない?どちらかというと似た者同士でしょ」

 

そんな事を言いながら彼女はネクィラムに音声メッセージを送る。

 

「イレーネ・サイエンス・スクールに今から入る」

 

それだけで頭のいい彼なら分かるだろうと思いながらそれを送ると、スフェーンはサイドカーに跨って街に戻って行く。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「いやぁ、人手が足りなくなってたから助かったよ」

 

そう言いやや小太りのおっちゃんが嬉しげにサングラスをつけるスフェーンを見た。

 

「古い人達が辞めちゃってね〜」

「二週間ほどですが、よろしくお願いします」

 

スフェーンはそう言って頭を軽く下げると、彼は

 

「分からない方があったら言ってくれ。掃除場所はこの通りね」

 

そう言って壁に貼られた地図を指差すと、彼はそのまま従業員室を出て行った。

元々ユウナの方から話が行っていたのだろうか、大まかな説明を受けただけであっさりと申請も通ってしまった。

 

「随分と雑ね…」

『どちらかと言うと人手不足で忙しい方では?』

 

そう言いながらスフェーンは水灰色の作業着に着替えて用意されていたモップとバケツを持つ。

 

『ただし、あの男がスフェーンに色目を使えば容赦しません』

「せめて手を出したらにしましょ?」

 

だんだんと思想が過激になるルシエルを軽く宥めながらスフェーンは仕事場に向かう。

 

 

 

アルバイトで応募した掃除の仕事、場所は学園の教育棟である。

 

「…」

 

モップがけで軽く床を水で濡らす。もちろん、滑りやすいの黄色い看板を置いてあるので横切る生徒たちは全員が一瞥していく。

 

「お疲れ様です」

「お疲れです」

 

そしてアンドロイドの教師が軽く挨拶をして横を過ぎていく。

基本的に学校で教鞭を取るのはアンドロイドだ。理由は歴史を蓄え続けているからだ。

大災害より以前からアンドロイドの記憶媒体には人々が残してきた足跡が残されており、彼らの記憶として代々受け継がれてきていた。

 

『彼らの行う歴史の授業は極めて公平性に長けているそうですね』

「私、アンドロイドの授業なんて受けた事無いわ」

 

アンドロイドに人権が認められて早数百年、大災害以前の話であるので今や当たり前のようにアンドロイドは人と混ざって生活を営んでいる。

 

『まぁ貴方の場合は膨大な知識は持っておりますので』

「知識があっても経験してなきゃ無駄って知ってる?」

『それはまぁ…』

 

ルシエルは何とも言えない表情を浮かべながらモップで掃除をするスフェーンを見ていた。

 

「次の授業なんだっけ?」

「確か〜、化学よ」

「うへ〜、化学かぁ〜」

 

そんな事を言いながら制服でもある白衣に袖を通す学生達。

学園都市だから当たり前なのだが、学園には必ず生徒と教師がいる。各生徒が生徒や日常の悪態をついたりして楽しむ様を眺めてスフェーンは一人呟く。

 

「青春だなぁ〜」

 

眼福とはこの事を言うのかとスフェーンは一つ学んでいた。

 

『スフェーンに学生時代はありませんでしたからね』

「一言余計じゃい」

 

事実だけどさ…これでも遥か昔は教育は受けていた身だぞ?

 

『意外なのは、貴方は幼い頃に教育を両親より施されていた事です』

「まぁブルーナイトの方がそう言うイメージあるわな」

 

そう言いスフェーンはマップをバケツに入れると、自動清掃機がゆっくりとブラシを回転させて近づいて来る。

 

「字が汚かったのはその時の影響だよ」

『それは関係ないですよ』

 

ルシエルのマジレスをされ、スフェーンは軽く肩を落とした。

 

「まぁ私に取っちゃあ親は三人いるわけだが…」

 

そしてバケツを持って用具入れに片付けると、ルシエルは少し暗い顔をする。

 

『すみません…』

「いやぁ、もう昔の話さ」

 

そう言いスフェーンは用具入れを閉じると、

 

「あっ、スフェノスさん」

「ん?」

 

聞き覚えのある声がしたと思い横を見ると、そこではユウナが近づいて来ていた。

 

「やぁ」

「採用されたんですね」

「短いバイトだよ〜」

 

少々緩い雰囲気でスフェーンはユウナを見ていると、後ろで数人の女生徒が近づいていた。

 

「ユウナ?」

「誰その人」

 

どうやら彼女達はユウナの学友らしい。同じ制服に袖を通しており、作業着姿のスフェーンを興味深そうに見ていた。

 

「私の友人」

「どうも、スフェノスと言います」

 

帽子を取って軽く頭を下げると、ユウナは紹介する。

 

「普段運び屋をしているそうよ」

「「へぇ〜」」

 

ユウナ達とほぼ変わらない年代で運び屋をしていると言う事に彼女達はやや驚いた。

 

「凄〜い」

「逞しいんですね」

 

そう言われ、内心スフェーンは

 

「(こんななりですまんが、少なくとも君たちよりは人生経験豊富だからな)」

 

するとふと、スフェーンは疑問に思った。

 

「(何で性転換したのにそれ特有の違和感がないんだろう)」

 

自分は性転換手術が必要な難病を抱えているわけでも無いのに不思議だと思ったが、

 

「(まぁどうせ再構築された時になんかされたんだろう)」

 

そもそもこの身体になった時に違和感を若干覚えていたが、すぐに順応した時点で確実にナニカされた訳だし…今更と言う話もある。

そう感じて考える事を放棄すると、ルシエルが言った。

 

『すみません、そこまでは私にも分かりません…』

「(いいさいいさ。どうせこの体自体、良く分かんない事だらけなんだから)」

 

そう言い自分の体の中心とも言える臨界エーテルで構成さた素体核を意識した。

 

「スフェノスさん?」

「ん?」

 

そしてスフェーンはユウナの声に反応して意識を戻すと、

 

「あぁ、じゃあ私はこれで」

「あっ、お仕事お疲れ様です」

「はははっ、学者さん達も授業頑張ってくださいな」

 

そう言いながら去って行くと、残った彼女達はスフェーンを見て

 

「運び屋だって」

「女の子で?」

 

少々貶す目をしていた。

彼女達は教育を施された頭の良いお嬢様育ちであり、運び屋をしているスフェーンをやや小馬鹿にしていた。

 

「凄いだろうけど…」

「まぁだから?って話よね〜」

 

そう言ってユウナと共に次の教室に移動する彼女達。

 

「…」

 

しかしユウナだけはスフェーンの消えて行った方を見て少し考えていた。

 

「ユウナ〜?」

「あっ、今行く〜」

 

後で会えるかと少し考えながらユウナは廊下を後にした。

 

 

 

 

 

「ふぃ〜」

 

一通りの掃除を終え、作業着を着たまま椅子に座ったスフェーンは休憩所で煙草を取り出して火をつける。

ここは禁煙エリアではないのでスフェーンは心置き無く吸っていると、

 

「おっ、お疲れ〜」

「お疲れ様でーす」

 

警備員のアンドロイドが入ってきて軽く挨拶をして行く。

ここは学園の警備員も出入りするのでこういう光景は当たり前だが、

 

「見ない顔ですね」

「あぁ、バイトで二週間ほどお世話になります」

「君が新しい子ね、宜しく」

 

そう言い警備員は片手からメタノールの入った瓶を取り出す。

 

「昼間っから酒ですか?」

「いやぁ、ちょっとだけだよ」

 

そう言ってそのアンドロイドはメタノールを一杯煽る。

 

「あぁ〜…」

 

そして瓶を置くと、アンドロイドは実に良い溜息を吐いた。

 

「美味いっ!やはり隠れて飲む酒は最高だ」

「あとで上に言いましょうか?」

「これで勘弁してくれよ〜」

 

そう言ってアンドロイドはスフェーンに飴玉を渡す。

 

「…まぁ良いでしょう」

 

スフェーンは安い賄賂を受け取ると煙草を咥えながら席を立つ。

 

「何処に?」

「次の仕事場です」

 

掃除員のアルバイトはかなりの頻度で変わっているのだろう、警備員も特段彼女の行動に警戒することなくメタノール片手に見送る。

 

「気をつけてね〜」

 

それだけ言うとスフェーンは用務員室から出て行った。

そしてそのまま人気のないベンチまで移動すると、そこで煙草を片手に天を見上げる。

 

「(おい変態)」

『話せるか?』

「(今なら)」

 

そしてその状態でスフェーンはネクィラムに連絡を繋ぐ。

 

『どうやってイレーネに入ったのだ?』

「(掃除夫のバイトさ)」

『そんな方法で入ったのか』

 

ネクィラムはスフェーンに軽く驚くも、彼女は言う。

 

「(この学校、何かヤバいことしているわよ)」

『やはりか…』

 

元々エーテルの不穏な兆候を頼りにたどり着いた先だ。今はネクィラムの目と手足となって動いているが…。

 

「(そっちの通信は大丈夫?)」

『無論だ、それより君の方は?』

 

ルシエルに確認を取ると、彼女は頷いて返した。

 

「(大丈夫、うまく偽造している)」

 

通信に使う電波を傍受されていない事を確認すると、スフェーンは言う。

 

「(でも何をやっているかは分からない)」

『だろうな…』

 

ネクィラムは先技研の休憩所で椅子に座って休憩をしながら杖を握ってスフェーンと会話をする。

 

「(こちらも君の与えた問題の解法を探しているのに苦労しているよ)」

『そりゃどうも』

 

ネクィラムに与えられた実験室は彼のために敢えて外気をそのまま濾過せずに取り入れており、故に彼の目にははっきりとエーテルによる光景が作り上げられていた。

 

「(まぁそれは良い。誰が実験をしているか目星はついたか?)」

『まぁね、どうも開校以来の天才さんが持ってる研究室でやってるみたいよ』

「(イレーネの…なるほど)」

 

ネクィラムはそこで軽く頷くと、スフェーンに言う。

 

「(スフェーン、依頼料は出す。そこで何をやっているか調べられんか?)」




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  • 雪の田舎町
  • 抵抗する者達
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