エーテル・ボンバの落着で放棄された都市、フルシバリョーク。河を挟んだ二つの市街地双方が破壊され、爆発の衝撃波は都市のビルを薙ぎ倒し。瓦礫とさせた。
数ヶ月間火事は収まる事を知らず、街中の至る所から上がっていた煙は燃やす燃料を失った事でようやく収まった。
エーテルによる汚染は人々を寄せ付けず。滝の様に活性化したエーテルが降っていた。
「…」
ドミノ倒しの要領で倒れていたビルの屋上から飛び降りたスフェーン。スカイダイビングの容量で降りた彼女は、空色の瞳の輝きが増すと直後に風が吹いて落下速度が大幅に下がった。
「おっと…」
そしてその後両足で建物に沿うように落下すると、そのまま空中を歩く。
足元には微かに一歩一歩踏む毎に靴底ではエーテルの光と共に足が宙に踏みつけられていた。
「…」
スフェーンはその上を手慣れた様子で歩いており、そのまま眼下に広がる一面の廃墟を見下ろす。
瓦礫の山となった廃墟には水が流れ、小さな川となって街を二分する大河に流れている。
一部は薄く植物の蔦が張り、剪定されていた街路樹は枯れて久しい。
道路のアスファルトはあらゆる場所が割れ、めくり上がってまともに歩くのでさえ苦労するほどだ。
廃墟の商店もかつての繁栄はなく、時が止まったように埃だけが被っていた。
「…」
スーッと足元にエーテルを纏わせたスフェーンは地面に降り立つと、そこで一歩商店の中に足を踏み入れる。
ザリッと鳴る足元の砂と、割れたガラスの破片。古びた喫茶店であったのだろうその場所の一つのソファ席に座る。
背中が埃まみれになる事も気にせず、彼女はそこで埃を被った造花の植物を見つめる。
席を仕切る目的で備えられたその造花は、今は灰色と緑に染まっていて見る影もない。
「…」
テーブルの上に残されていたメニュー表を開いて中を見ると、そこではこの店のメニューが金額とともに記されていた。
この都市が放棄されて間も無く一年と半年、戦争の終わりは見える事はない。
絶えず星のどこかで戦争が起こり、都市国家の分裂・統合を繰り返す修羅の時代。
戦闘によって失われた都市は数知れず。逃げ惑う人々は難民となって中立国家に流れこむ。
『放棄された都市というのは、静かで寂しいですね』
「…まぁ、仕方ないさ」
世界中に煌めいたエーテルの光と共に始まった戦争は、今や世界大戦と名を変えて報道では叫ばれている。
確かに、世界中で群発的に発生している国家間戦争の火種は北極大陸や水上都市にすらも飛び火していた。
「しかし被災都市を初めて訪れられたのが、開戦経ってしばらくというのがね…」
『千里の道も一歩からと言う諺があります。旅を続けながら集めていきましょう』
「これをあと一〇七回か…」
呟いて改めてその数に苦笑してしまうスフェーン。開いていたメニュー表を閉じると、再び銃を持ってより都市の奥へ。より汚染濃度の高い場所…爆心地へと足を運んでいた。
その時、その場所では絶えず砲声が轟いていた。
ッーーー!!ッーーー!!
トレーラーに乗せられたコンテナ格納式の155mm電磁加速砲の砲撃が散発的に行われ、展開されていたアウトリガーと駐退複座機が衝撃を吸収する。
コンテナの側ではマイクロ波給電設備と剥き出しの自動装填装置に砲弾を装填するアンドロイド兵の姿。
嘗て砲兵は戦場の女神と呼ばれたことがあり、今次大戦に置いてもその力は十分に発揮していた。
目の前で発射された榴弾砲に砲弾を装填しており、視界の先には一面の荒野が広がっていた。
「…ふぅ」
そんな最前線の塹壕で、銃を肩に傾けて息をする一人の歩兵。
空を見上げれば、そこでは忌々しいエーテルのオーロラが今日も平等に自分達を見下ろしていた。
あの日からこの空模様も少し変わったように見えるのは気のせいだろうか?
「…」
そして頭を上を飛んでいくドローン。それは光ケーブルを垂らして接続し、横にいる電子戦兵が操縦していた。
電子戦兵は戦場において自分達の命綱なとなってくれる重要な兵士である。電子戦兵は背中にアンテナの伸びる巨大なジャミング装置を背負い、一個分隊に一人配属されていた。
「…本部から命令だ」
すると部隊長がやって来て言うと、塹壕に身を潜めていた兵士たちは徐に立ち上がるとその手に銃を持つ。
「待ちに待った突撃だ」
部隊長の顔は笑みを浮かべており、命令を聞いた兵士達は息を呑んだ。
地面に掘られた塹壕は角度をつけて丁寧に掘られており、そこには無数の兵士達が息を潜めて隠れていた。
木材が橋渡しとして掛けられ、ドローンの音に怯える毎日は今日で終わりという事実に兵士達は目を輝かせていた。
その頃、最前線に程近い場所では大量のコンテナが並べられていた。
コンテナは鉄道管理局が運営する鉄道路線の登録駅でトラックに載せ替えられていた。中にはコンテナ発射型ミサイル発射器や、補給物資が積載されていた。
戦時鉄道条約で鉄道管理局が運営する貨物ターミナル施設も攻撃不可侵領域となっており、歪な体制下で行われている国家間戦争は終わりを知らなかった。
「元々砂と岩の荒野がさらに地獄見てぇな状態だな」
そう言うのは補給を担当する中連森林同盟のとある獣人兵士だった。尖った猫耳を持つ彼は片手にタブレットを持って呟くと、側に同僚のアンドロイドが近づいて話しかけた。
「戦線が近いんだ。それにやる事は野盗から軍に変わっただけだよ」
「…あぁ、今じゃあそれが忌々しいよ」
そう言い彼はそこで濃紺の戦闘服を見に纏い、コンテナヤードに攻撃対策で移動砲台と対空戦車を配備して警護している組織を眺める。
「どうせならあのエーテル・カノンの一発でも敵陣に打ち込んでくれりゃあ良いのによぉ〜」
「そりゃ無理だろ」
そんな警護を担当している軍警を前にアンドロイド兵は言う。
「あいつらはサブラニエと戦争していねぇんだからよ」
そう言い少々嫌味混じりに二人は言うと、そのまま去って行った。
「なんであいつら宣戦布告しねぇんだ?」
「さぁな、あいつらの上層部が警戒してんだろ?」
今の軍警察はどちらに対しても不干渉の立場を維持し続けていた。
既に陸・海・空に於いて四個艦隊の損失を出し、その他陸上部隊の損失を含めずとも創設以降最大の死者数を出す事となった軍警察であるが、開戦から一年半が経過しようとする段階になっても動く気配は無い。
最近では『未回収の軍警察』などと揶揄されており、世界最大の軍事組織は今も沈黙を貫いたままであった。
戦場の上空を支配するのはドローン兵器とミサイル、それから砲弾である。
無数の戦闘車両が影に隠れて準備しており、カモネットを上から被せてドローン兵器の攻撃やスキャニングを防止していた。
ヘリコプターやティルトローター機は、制空権が拮抗している今はドローン兵器などの巨大な的であり、今の戦況下では運用に難があった。
「さぁ行くぞ。前線野郎共」
意気込む部隊長は梯子の前で虎視眈々とその時を待っていると、
ヒューーーッ!
無数の白煙を引いて飛んでいく無数のロケット弾を確認する。
後方から227mm無誘導ロケット弾の射撃が行われ、途中で対空レーザーの攻撃を受けつつも最前線に着弾した。その爆炎と衝撃波がここまで感じ取れると、
『『『『っーーーー!!』』』』
その直後、複数の笛の音と共に一斉に隠れていた塹壕から兵士たちが飛び出すと共に、隠れていた戦車や装甲戦闘車両等がカモフラージュを展開したまま飛び出す。
「うらぁぁああっ!!」
散兵戦術で、マーチング・ファイアを行いながら突撃していく歩兵達。6.8mmケースレス弾を使用する歩兵達は、すべてパリシコ側の陣営の歩兵たちであった。
ッ!ッ!
その後方、直接的支援を行う砲兵陣地ではこの攻勢に合わせて群射を行う。
「次弾調整、射角修正右〇.五」
砲兵隊長の指示で僅かに砲身が動くと、そこで砲声が轟く。
このコンテナ格納型榴弾砲は後ろ向きに配置されており、トレーラー牽引のため迅速な移動が可能となっていた。
軍警察の使用する203mm榴弾砲よりも小型な155mm榴弾砲ではあるが、その分多数の砲弾を運搬可能であった。
ッ!ッ!ッ!ッ!
塹壕では81mm迫撃砲が連続して発射され、一人の馬の獣人兵が耳を絞って迫撃砲を担当していた。
「うわぁっ!!」
「ぎゃあっ!」
そして突撃した歩兵は、敵の機関銃陣地や砲撃を受けて緩衝地帯を走り抜けるのを阻止される。
「敵襲!」
「撃て撃て!!」
その戦域ではパシリコとサブラニエ陣営の戦力は拮抗しており、戦線は停滞したままの状態が続いていた。
「走り抜けろ!」
時速六〇キロは出るサイボーグの足で緩衝地帯を駆け抜けた突撃兵が最初に塹壕に飛び込む。そして持っていた
「うぁぁっ!」
「ぎゃぁあっ!!」
直後に近くではオートマトンの持っていた30mmガトリング砲がコンクリートで固められていた機関銃陣地に攻撃を加えて爆発が起こる。
その直後にそのオートマトンは塹壕から発射された120mm無反動砲の攻撃で足が吹き飛ばされた。
「続けぇえっ!!」
有刺鉄線に引っかかった死体や負傷した味方兵を置き去りに突撃をする兵士達。その上をM6戦車やM1オートマトンが通過していく。
ドゴォン
『ちっ!二号機がやられた!』
『応戦!目標はーーー!!』
そして丘陵の奥から現れるT-8戦車とA-1オートマトン、そして115mmリボルバーカノンの連射は進撃したM1オートマトンに複数命中させて撃破する。
『こちら司令部!撤退しろ!』
『はぁ!?んなことできるか!』
無線では部隊長と前線司令部の喧嘩をする声が聞こえ、
「こちら!第一二守備隊!もう保ちません!至急増援を!!」
守備隊の隊長は叫び、その横で塹壕を乗り越えてこようとするM3多脚戦車にRPG-29を至近距離で発射していた。
『こちら司令部、あと三分で増援が到着する』
「それまで保たない!撤退許可を!」
『撤退許可は許されnーー』ジジッ
途中で無線が途絶え、そこでアンドロイド兵は叫んだ。
「司令部?司令部?!」
その直後、アンドロイドや横にいた兵士たちは塹壕の上から銃を持った歩兵達が現れた。
「降伏しろ!」
その怒鳴り声に彼等は震えながら両手をあげていた。
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