TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#170

その日、ある駅舎のホームは物々しい雰囲気であった。

 

「すげぇな…」

 

カメラを片手に持つアンドロイドの記者がそう溢すほどにはホームには治安官や数本の列車が停車していた。

 

「おいっ!来たぞ!!」

 

そこで誰かが言うと、治安官に囲まれて一人の手錠をかけられた人が階段を登って来た。

すると一人の女性アナウンサーが言う。

 

「ただいま、殺人未遂の容疑で起訴されたジェローム・サックス氏が現れました!」

 

そこでカメラに映し出されたのはパンダの被り物を被ったスーツ姿の人。

彼らは皆、殺人未遂の容疑で起訴されたブルーナイトの姿を収めようとカメラを構えていた。

 

「これから司法局に移送されていきます!」

 

そう言い、彼は停車していた94式装甲列車に乗り込もうとした時。

 

「ブルーナイトォオッ!」

 

そこで群衆から飛び出して片手に短機関銃を持った一人の獣人が叫ぶ。

 

「天誅ーーっ!!」

 

そして引き金が引かれる直前、

 

「うごっ!!」

 

囲んでいた治安官の持っていた6.5mm小銃の引き金が引かれる。

 

「撃てっ!」

 

直後に治安官達からの無警告発砲がホームに響く。

 

「がっ…」

 

撃たれた襲撃者は多数の小銃弾が貫通して血を流し、中で裂けた鉛が内臓をさらに深く切り裂く。

 

「キャァァアッ!!」

「撃ちやがったぞ!」

「無警告だと!?」

「くそっ!退避っ!!」

 

事前に言ってあるとはいえ、そんなことお構いなしにホームに陣取っていた記者達は巻き添えを喰らって数名が負傷する。

襲撃して来た獣人は蜂の巣となってその場で死亡が確認される。

 

「急げ!」

「くそっ、もう暗殺かよっ!」

 

毒吐きながらパンダ頭を列車に押し込むと、扉が閉まって列車は汽笛を上げて走り出した。

 

94式装甲列車は前方から警戒車、砲車、砲車、防空車、指揮車、電子戦車、コンテナ車、機関車、電源車の順に構成され、それが前後に二ユニット前後反対に連結されることで一編成の列車となる。

 

コンテナ車には任務に応じてコンテナ搭載型ミサイルが積載され、今回は護送任務の為、ユニットの間に二両の客車が挟まれていた。

 

武装は155mm複合電磁加速砲、対地・対空レーザー砲、12.7mm機関銃、各種ミサイルと多様な武装を装備し、其れ等武装は全て前方方向に指向可能で、線路上の怪物と呼ばれていた。

 

ホームには三本の同編成の装甲列車が待機しており、それぞれに同じパンダ頭の被り物をした人物が乗り込んでいた。

 

「…」

 

そして列車は時間を空けてそれぞれ走り出していく。

パンダの被り物をした同じ格好をした人物が複数いるので囮であることは確実であった。

 

記者側も本物が誰かを暴くことは会社を潰される可能性がある事は過去の歴史からも承知しており、故に軍警察という軍事力を背景に報道機関に圧力をかけることのできる組織をよく思っていなかった。

 

しかしブルーナイトは傭兵ギルド創設の中心人物である事は記憶に新しく、そのような人物が殺人未遂の容疑で逮捕されたとなれば誰もが騒ぎ立てていた。

 

「行きましたか…」

 

出発していく装甲列車を携帯で見ながらロトは呟くと、横に座る一人の髭面の男に話しかける。

 

「これで時間はたっぷりあります。ジェロムートさん」

「そうか…」

 

そして反対で座っていた男、ブルーナイト本人は愛吸するハイライトを取り出す。

 

「ふぅ…」

 

そして煙草にロトがライターを持って来て火をつけると、そこで紫煙を昇らせる。

 

二人が乗っているのは新幹線の車内、100系新幹線の二人用個室である。

目的は司法局までの容疑者の移送であり、表向きは二人の商社マンが商談を行っていた。

 

今映像に映っている三本の装甲列車は全て囮であり、ブルーナイトは前日に出発して既に司法局のある都市の目前まで移動していた。

 

「しかし、軍警察も変わったものだな…」

 

彼はそう言いロトを見る。

 

「馬鹿正直に装甲列車に攻撃を仕掛けてくる…なんて事はほぼないでしょうが、念の為。…本来ならこう言った事態の場合はネフィリムを使用するのですが、」

 

ロトはそこで煙草を吸うブルーナイトを見る。

 

「情報漏洩を危惧した緊急事態ですので…」

「…私を殺しに掛かると?」

「その可能性は否めません」

 

ブルーナイトは、かつてアイリーン…今のサブラニエ上層部と深い関わりがあった人間である。

彼から聞き出したアイリーンの情報はそれほど戦略的に確度の高いものではなかったが、戦術的な面からすれば重宝される情報を多く持っていた。

 

「情報提供には感謝していますよ」

 

ロトは言うと、ブルーナイトは鼻で笑った。

 

「情報提供?脅迫紛いの司法取引の間違いだろう」

 

そう言った時、ロトにライルから仕事用の通信が入った。

 

『ロト、用意した列車全ての発車を確認した』

『了解、重要参考人の護送には注意しろよ』

『あぁ、お前さんもな』

 

そこで通信が切れると、待っていたブルーナイトは万が一の脱走防止のために通路側の席に座るロトを見る。

 

「連絡は終わったか?」

「えぇ、商談の続きをしましょうか?」

 

そこでロトは今回の事件で集められた捜査資料と、ブルーナイトが逮捕時に持っていた手紙を見る。

 

「どう考えても話が合わない気がするんですよね」

 

それは素直に自分は殺人を行ったと供述したブルーナイトと、彼が持っていたレッドさん本人からの手紙。

無論彼が持っていたコピーではなく、本物の手紙を捜査協力を行ってくれたとある傭兵から実物に使用されていた手紙のインクの酸化度を調べ、尚且つ筆跡鑑定も行った上でそれが本物であり、尚且つ三年以内に書かれたものであると既に把握していた。

 

「ジェロムートさんの話が本当であれば、これらのビッグレッドさんの手紙をどう説明するべきか…」

 

軍警察の管轄下にある司法局は徹底した無罪推定の原則・証拠裁判主義を掲げており、事情聴取で得られた情報はあくまでも参考程度に使われる程度であり、基本的に現場で見つかった証拠をもとに判決が行われる。

 

「嘘を言ったつもりはないぞ」

 

ブルーナイトは自分の立場というのを理解しており、ロトに合わせて直接的な表現を避けて話す。

 

なので今回の裁判はあくまでも殺人未遂の容疑で起訴されている。理由はこの手紙だ。

手紙や各方面から把握された情報を参考に、ブルーナイトが犯行に及んだとされる七年前のタルタロス鉱山崩落事故から五年ほど経った後にこの手紙は残されていた。

 

「…」

 

筆跡鑑定の結果は間違いなく本人であると判断され、タルタロス鉱山に残されていたオートマトンの戦闘痕からアイリーンと共謀してレッドサンの殺人を画策した可能性がありと見積もられていた。

 

「時系列が見えませんね…」

 

事件発生は七年前、手紙が届いたのがおおよそ二年前。間に五年近くの空白期間が存在しており、その間までレッドサンは生きていた可能性があるが、肝心の本人は見つかっていない。

 

「…」

 

そしてその手紙を手に入れた日時の監視カメラの捜査も行ったが、痕跡は見つからず。広範囲に渡って監視カメラに映像はなかった。

 

「(見つかったのはこれだけか…)」

 

ロトはそこで一枚の写真を見る。

それはコンビニの中の監視カメラであり、レジ防犯用のカメラだったが、画角の端に映った一台の赤色のバイクを見つめる。

推定ではあるが、この人物がレッドサンの手紙を届けた重要参考人として上がっていたが、この人物の特定はできないまま裁判は行われる事となった。

 

そんな彼を見つめているブルーナイトは煙草を一本吸い終える。

この煙草はロトが車内で購入した煙草であり、安全を確認した上での使用である。ライターも自殺防止のためにロトが保管しており、必要な時だけ火をくれる仕様だ。

 

「(弁護士が頭を抱えていたな…)」

 

そこで雇った弁護士が事情聴取と証拠を前に目の前で首を傾げていた様を思い返す。

 

通常ではありえないほど長い期間拘留されていた訳を察しながらブルーナイトは机に置いていた煙草を仕舞う。

 

「(こんな戦時下でこんな事件の裁判をするとはな…)」

 

そう呟き、彼はカーテンの隙間から見えた一面の荒野を前に呟いた。

 

 

 

 

 

その頃、時間を分けて発車した94式装甲列車では。

 

「敵機確認!」

「ドローン撃墜されました!」

 

装甲列車に襲撃があった。

 

「電子戦開始!妨害電波、最大照射!」

 

直後、計四両の砲車から背負式八門の155mm連装砲が旋回する。

陸上巡洋艦に装備されているエーテル・カノンは流石に装備しておらず、列車に搭載可能な大きさのエーテル・カノンは開発されていなかった。

 

「各砲発射!撃ぇっ!!」

 

そして連装砲の射撃が始まり、列車が走る戦域一帯が強力な電波妨害を受け、対地・対空レーザー砲の赤い光線が荒野を貫く。

直後、コンテナ車からミサイルが発射される。積載しているのは小型で大量に装填されている対空ミサイルで、オートマトンや装甲車相手ではこれほどのミサイルであれば対処可能であった。

 

「スキャン完了。敵はオートマトンと戦車の混成部隊です」

「了解した」

 

指揮車の中、列車の司令官は頷くと砲撃の衝撃が僅かに車内に感じる。

30mmガトリング砲の対空射撃も開始しており、自爆ドローンの攻撃を退ける。

 

「近場の部隊はどうした!!」

「既に緊急信号を発信!近くには第五陸上艦隊が駐屯しています!!」

 

エーテル・カノンを二基装備した陸上戦艦を呼び出す暗号を打った装甲列車は、レーザー砲で一台のオートマトンのコックピットを撃ち抜く。

 

「敵の通信解析はできるか?」

「しばしお待ちを…」

 

直後、装甲兵員輸送車から発射された誘導ミサイルを、電子戦車に積載された量子コンピューターがすぐさま解析を完了し、制御を奪って発射した母機に返却する。

 

『なっ、なんでこっちに…!?』

 

オートマトンは帰って来た300mmの大口径誘導ミサイルに対応できずに自爆する。そしてその爆発で近くにいた戦車が爆風で転輪と履帯が外れる。

 

『うおっ!?』

 

横にスライドして停車した戦車は砲塔を旋回した時、

 

ドドドンッ!!

 

照準を合わせていた155mm砲の砲撃に巻き込まれてトップアタック攻撃を受けて戦車に155mmの徹甲榴弾が貫通した。




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