TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#173

放棄都市フルシバリョークの一角、エーテル・ボンバからの生存者達がいた事実を前にやや驚愕していたスフェーンは、全身に光学迷彩を展開してビルの屋上から少女達が出て行った先を見る。

 

『崩壊した都市の中にあるシャンティ・タウン…ですか』

「驚きよ。まさか爆心地の中に生きていた人がいて、尚且つ街を作っているなんて」

 

そう言いながらスフェーンはビルの屋上から出て行く少女と少年を見て行く。

 

『少女の名前はジュリア、少年の名はヤーンと言っていましたね』

「えぇ、この先に多分街があるんでしょうね…」

 

そこで廃墟のビルからモード・アザゼルを使用して廃墟の上から地面に音を立てずに飛び降りる。

エーテルが無いこの空間ではスフェーン自身から取り出したエーテルを使う他なく、体内に備蓄したエーテルを使用する必要があった。

 

『体内の活性化エーテルの沈静化を完了しました』

「んっ、お疲れ〜」

 

そこで光学迷彩を展開しながら二人の後を遠目からつけていると、

 

「おぉ…」

 

視線の先にバラックが連なる場所があり、そこでは多くの人が出入りしており、一部煙突からは煙が登っていた。

 

「ちゃんと街だ」

 

瓦礫を使って建てられた街は通りや区画ごとに分けられており、そこでは確かに人々の営みがあった。

 

『これなら、他にも同様のシャンティ・タウンが存在していた可能性がありますね』

「げぇ…ちゃんと探索しとけばよかったなぁ…」

 

そこでスフェーンは若干の後悔をしていると、ルシエルはやや驚きながら聞いた。

 

『また全ての爆心地を探索しますか?』

「えぇ、その方がお互い気分が良いでしょう?」

 

スフェーンはそう言うと、そこで彼女は都市の壊れ掛けの廃墟の片隅でそのシャンティ・タウンを眺める。

 

『…そうですね』

 

ルシエルもそこでスフェーンの意向に賛成すると、そこで一旦シャンティ・タウン郊外にある瓦礫の山の裾で腰を下ろす。

 

「ふぅ…」

 

光学迷彩を展開しながら瓦礫の山を見るスフェーン。

 

「よくあれだけの衝撃波でこれだけ残っていたわね」

『爆発の威力から計算をしても、エーテルのカーテンが降りている空間の中で鉄筋コンクリート製の建築物はほぼ消失するでしょう』

 

計算上は純粋水爆と同等の威力を持った爆弾。エーテルのカーテンが降りている範囲では本来なら跡形も残っていないはずだ。

 

「じゃあ何でこんなに山になるくらい瓦礫があるん?」

『さぁ…それは…?』

 

金属や破壊されたアンドロイドの残骸が多く残っている瓦礫の山を見上げて二人は首を傾げていた。

 

 

 

「ママーッ!」

 

私は今暮らしているバラックの扉を開けて言うと、そこでは一人の女性が立っていた。

 

「あら、お帰りなさい」

 

そこではタンクからコードを介して流れ出るエーテルに直接着火する古い方式のエーテルの使用方法で、近くの畑から収穫されたばかりの野菜を炒めていた。

 

「今日不思議な人に会ったの!でもヤーンったらね!」

「あらあら、どうしたの?」

 

興奮気味に話すジュリアを前に母は軽く笑みを見せながら話を聞く。

 

「今日、壁の近くのビルに入ったの!」

「あら、またあそこに行ったの?」

 

それを聞き、母は少し目元を細めてジュリアを見る。

彼女は時折、活性化エーテルの壁…自分達は死のカーテンと呼んでいる場所の近くに行く事が多々あり、頭を痛めていた。

かと言って自分は忙しいので常に見ている事はできず、誰かに頼んで注意してもらう必要があった。

 

「そうだけど…でもね!」

 

それを悪いと思っている自覚はあったので、少々申し訳なく思いながらも言う。

 

「そこでおねーさんに会ってこれ貰っちゃった!」

 

そう言い明けたばかりの包装紙を取り出すと、母は台所を見ながら返した。

 

「それは良かったわね〜」

「二個あったからお母さんの分も置いておくね!」

「えぇ、ありがとう…」

 

するとそこで母は帰って来た娘に言いたい事があった。

 

「そうそう、後で学校に行きなさいよ。先生が呼んでいたわ」

「はーい」

 

ジュリアは頷くとそのまま家の中に消えて行き、その後に鞄を持って出て行く。

「行ってきまーす!」

「はーい、気を付けて」

 

そこで母は見送ると、すぐに戻ってくる娘のために今日の夕飯を作っていた。

 

 

一年半前、あの巨大な爆発から生き残った理由は定かではない。

ただ一つわかるのは、自分達は世界と隔絶されてしまったと言う事実のみ。

今の外の状況は、空から降りる摩訶不思議な活性化エーテルのカーテンから見える景色のみ。

その壁の中では外に通信もできず、あの日までは気にも留めなかったこの青々とした空が今は恨めしかった。

 

「…」

 

卓上に置かれたそれを、ジュリアの母はひとしきり料理を作り終えた後に手に取る。

人様からもらったものを安易に受け取ってしまうジュリアの危機感の無さには一言言いたいものだが、幸いにもその町に住んでいる住人は全員が顔見知りである。

 

「飴…」

 

ジュリアが持ってきた飴は小さなサイコロ状の飴で、ジュリアからの土産物という事で自分もそれを口の中に入れて包装紙を置いておく。

 

「…」

 

久しぶりに甘いものを食べたと思った。

あの日以来、色々と忙しくてゆっくりする事すらままならなかった。

この人工的な飴の甘さと人工的なフルーツの味はそんな現実の懐かしさを思い起こさせていた。

 

「ふぅ…」

 

足跡のテーブルに座り、そこで白湯を飲む彼女はふと首を傾げた。

 

「…ん?どうしてジュリアは包装紙の飴なんか持っていたの?」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

開戦より一年と半年、世界は主に三つの勢力図に色分けされた。

 

一つは緑色のパシリコ共和国の提案によって結成された北方条約連合(Northern Treaty Coalition)、通称NTCと呼ばれるいわゆる『北側諸国』の地域。

 

一つは赤色のサブラニエ人民共和国連邦を主軸に結成された南部相互援助条約機構(Southern Mutual Assistance Treaty Organization)、通称SMATOと呼ばれるいわゆる『南側諸国』の地域。

 

一つはそのどちらにも属さない、白色に塗られた『第三諸国』と呼ばれる地域である。

 

前者二つは開戦前より軍警察の一方的な都市防衛の契約打ち切りによる撤収作業を完了させており、それぞれの勢力に世界最強の武装組織の保護の傘は存在していない。

 

それ故に戦争中であるこの二大勢力の都市は多くの野盗が狙いを定めており、そして戦時鉄道条約によって路線や鉄道車両への戦争行為での攻撃が禁止された為。双方ほぼ同時期に野盗団を非公式私掠組織として秘密裏に交渉、双方に送られる物資を襲撃させていた。

 

 

 

 

 

某日 リーデンブロック海洋上

 

ウエルズ大陸とヒューゴー大陸に挟まれたこの海の上では、とあるNTC加盟国のトンブリ級海防艦が洋上監視を行っていた。

 

「レーダー、聴音、熱源探知。いずれも反応ありません」

「了解」

「ヘリコプターによる偵察も確認されていません」

「そっちもか…」

 

小柄の船体に203mm二連装電磁加速砲二基やVLS、37mmガトリング砲などの必要最低限の対空兵装を装備した小型艦艇は、この海域の海上封鎖任務に就いていた。

 

海防艦は沿岸防衛用に設計された小型の軍艦であり、主な任務は沿岸警備・船団護衛・対潜哨戒などと言ったものがある。

航続距離と船速を犠牲に装甲と武装を重視しており、沿岸部の海域封鎖などに使用されていた。

 

『こちらピューマ』

 

そして海域を飛行していた哨戒ヘリコプター(NFH9)のパイロットが言う。

 

『現在、海域に反応無し。送れ』

 

現在行っている洋上封鎖任務は、敵であるSMATO陣営に運送される貨物船の拿捕にあった。

直接陸上の敵補給線を叩けなくなった現状、戦争当事国はどうにかして敵国に送られる物資を抑える必要に迫られ、そのために洋上封鎖任務もこの時期になれば苛烈さを増していた。

 

それは第三諸国船籍の輸送船であっても単艦で海域を渡れば拿捕され、積荷を没収されるほどであり。それ故に第三諸国は軍警察海軍艦隊による船団護送を依頼して航行するほどであった。

 

『っ?!いやっ、レーダーに感あり!』

 

すると哨戒ヘリコプターは一つの艦影を見つけた直後にレーダーが真っ白になった。

 

「ECMだっ!」

「くそっ!攻撃来るぞ!」

 

直後、ヘリコプターに向かって自爆ドローンが飛んで来る。

 

ッ---!!

 

直後、ドアガンから6.8mmガトリング砲の射撃が加わると、突撃してくるドローンを数機撃墜する。

 

「敵ドローン排除!!」

「撤退するぞ!」

「了解!」

 

そこで機体を翻して艦艇のある方に移動すると、そこではすでに砲塔旋回を終えたトンブリ級がジャミングで白くなったレーダーを見ながら最後に観測された海域に向けて砲撃を行っていた。

 

「敵船舶、IFF反応なし!」

「どうせ敵だ!撃て撃て!」

 

するとジャミングを行ったSMATO加盟国船籍の貨物船は、積載されていた対艦ミサイル四発を発射する。

 

「最大船速だ!発射しろ!!CIWSもだ!!」

 

船長が叫ぶと、本来であれは海賊対策用の30mmガトリング砲も発射していた。

 

「くそっ!救援通信はどうなっている!?」

「ダメです!長距離通信は敵船のジャミングで妨害されています!」

「ちぃ…!!」

 

ミサイルコンテナを多数装備した武装商船は、この時期は多数が運用されており。海域の封鎖突破を行うためにジャミング装置やドローン兵器なども装備されていた。

 

「ミサイル発射を確認!」

「CIWS発射!絶対に逃すな!」

 

搭載されていた複数のCIWSが轟音を立てて銃身が回転すると、発射された四発の対艦ミサイルは銃弾が命中して空中で爆発四散する。

 

「ドローン撃墜!」

「ミサイル、激撃されました!」

 

艦橋で乗組員が叫ぶと、そこで砲撃で船体全体が揺れる。

 

「くそっ!もう追いつかれるか…!!」

 

そして視線の先で弾着観測用のヘリコプターと一隻の海防艦が視認できた。

 

「敵船舶より通信!『これより臨検を行う。直ちに停船せよ…』」

「さもなくば撃沈する…か?」

「…」

 

直後、先ほどよりもより高精度にスクリューを狙う海防艦。

これ以上の逃亡は不可能と判断した船長はエーテル機関の停止を命令した。

 

 

こう言った海域封鎖を突破した貨物船は封鎖突破船と呼ばれ、積んだ補給物資を戦線に送り続けていた。




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