「復讐なんてそんなもんでしょう」
煙草を片手にスフェーンは言うと、遠くからジェットエンジンの甲高い音が響き始め。その音の方向を見上げると、そこでは四機の
「あぁ〜、今日も来たんですか」
「懲りないものだよ」
そう言うと、爆弾倉から大量の紙が投下された。正体は
「よっと」
そこでスフェーンは軽く飛んで落ちてきた伝単を手に取ると、そこには参加した下士官兵に対し、帰順を要求する文書が書かれていた。
「元帥の名前が連名で出てますよ。しかも三軍の」
「はははっ、これで帰るのは俺以外いないんじゃないか?」
マクシムも同様に落ちてきた伝単を手に取りながら言うと、スフェーンはしれっと言ったマクシムの顔を見た。
「脱走…するんですか?」
「…正直、俺は分からないんだ」
マクシムはそこでスフェーンに心労を漏らす。
「俺は今でも治安官である事に誇りを持っている。かと言って、戦争に介入しない今の状況には不満も持っている」
大きくため息をつき、二本目の吸い殻を灰皿に入れるマクシム。
「でもこれだけの被害を受けてて軍警が動かないわけがないでしょう」
スフェーンはそう言い、今までに軍警が受けた被害を前にマクシムに言う。
「だが二年間も動かなかったら誰だって我慢の限界だろう?」
「それは…」
気持ちは分からなくもなかった。かつて傭兵だった頃、自分はその名声から多くの組織から勧誘され、同時に命も狙われた。
最期だって相棒だった男から銃口を突きつけられてた。
無論、復讐をしたいと思う反面。どこかでもう疲れたと思う自分がいた。
どうせに姿を完全に変えて過ごすのだから、死んでいた方が世のためにも良いだろう。少なくともそう思っていた。
「ただまぁ、俺なりの直感だが…軍警察は何か企んでいるようにしか思えねぇんだ」
彼は伝単を片手に言うと、
「その直感は大事にした方が良いのでは?」
スフェーンは今までの経験からマクシムに少し助言をする。
「海兵だって馬鹿だから強いじゃないですか」
「ふはははっ!そりゃそうだ。あいつらは本能のままに生きているからな」
マクシムは吹き出しながら言うと、そこで立ち上がる。
「じゃあ、俺もそろそろ行くかな…」
「どっちに戻るんです?」
スフェーンは聞くと、マクシムは街の外につながる道路を見た。
それを見てスフェーンは軽く目を伏せると、
「一人でやれると思うのですか?」
「さぁ?」
マクシムはそこで
「だが、俺の直感を信じるさ」
すると彼はスフェーンを見た。
「だからこんな状況であれだが、手伝ってくれないか?」
「…」
スフェーンはそこで一瞬キョトン顔になったが、
「…ふっ」
軽く笑った。
「良いんですか?」
「俺の直感はそう言っているのさ。君は運があるとな」
マクシムは言うと、スフェーンは
「まぁ面白そうだからやっても良いですが…」
承諾の意を示すと、マクシムに聞いた。
「どうやって脱出するんです?向こうは戦車もオートマトンもヘリコプターも、兵器は何でもござれですよ」
反乱部隊は各種兵科から出て来ており、そのジャンルには事欠かなかった。
「何、これをやる時に岩前の地下道も全て把握しているさ」
「…なるほど」
スフェーンはその一言で納得すると、二人は足元にあるマンホールを見る。
「二時間だ。運輸ギルドの裏手で集合しよう」
「その後は?」
「君は運び屋なんだろう?列車に乗せてもらう」
「…大分ガバガバな作戦ね」
あまりにも大雑把な作戦にスフェーンは苦笑すると、
「一人なんだ。ある程度大まかでも何とかなる」
彼はそう言うとマンホールの蓋を開けた。
「じゃあ、また向こうで」
「はいはい、分かりましたよ」
スフェーンは頷いて彼を見送るとマンホールを持ったが、
「重っ」
仕方ないので体から結晶を生やしてドーピングをした。
岩前の地下道は上下水道に分かれており、ほとんど人が出入りすることはなかった。
「確かこっちに…」
暗視装置を起動し、暗い地下通路を歩くマクシム。
クーデターを起こした首謀者に近しい人間であった彼だが、先ほどスーパーで出会した少女の助言をきっかけに帰順を決めた。
「(不思議な少女だな…)」
そこでふとマクシムは思う。
初めはスーパーの駐車場で座り込んで煙草を吸っていた悪ガキと思っていたが、与太話から入っていつの間にか本音を漏らしてしまう。
どこか温かみのある雰囲気を持ち、懐かしく思わせる何かが彼女にあった。
「(昔の寮母さんを思い出すな…)」
男は孤児で、スラム街から企業の社会福祉によって戸籍を与えられ、慈善団体によって拾われて孤児院に入所した経歴を持つ。
「はぁ…」
少し懐かしいあの頃を思い出してしまうと、彼は視線の先で視界が白くなるのを見た。
「…」
その様子を前に彼は警戒をして持っていたシートを展開する。
カツン…カツン…
ライトを片手に地下道からの襲撃を警戒している反乱兵は地下道を歩くと、街中に張り巡らされた網目のような地下帝国を監視する。
「…」
ライトを使って円形のコンクリートの通路を見た後、その反乱兵は奥に消えて行った。
「…」
そして足音がだんだんと遠くなったのを確認すると、マクシムは被っていた赤外線対策の施されたシートを出る。
「ふぅ…」
そして安堵の息をつきながら地下道をライトもつけずに歩く。
既に地図は頭の中にあったので、今の現在位置はどこなのかはっきりと言える自信がある。
「(見回りの交代時間がそろそろだな…)」
腕時計を確認し、マクシムは地下のケーブル網を見る。
一歩一歩、足音をなるべく立てないように地下道を歩くと、
「(岩前操車場第三坑道…当たりだな)」
ライトを担当して場所を確認した彼はそこで口にライトを咥えて梯子を登る。
「…」
そして最後に閉じているマンホールを押し上げた時、
「よぅ」
「っ…!」
そこでは三人の反乱兵が銃口を突き付けていた。
「何してんだ?マクシム軍曹」
「…有馬兵長か」
彼は同じ反乱部隊の顔見知りであり、マクシムも知る兵士だった。
銃口を突き付けられたままマンホールを上がると、そこで彼はため息を漏らす。
「さっき街中にいる奴から連絡があったんだ。軍曹が消えたって…」
「そうか…悪かったな」
済ました顔でマクシムは答えるが、有馬たちの目には不信の二文字があった。
「…残念です。軍曹」
有馬達は残念そうな表情を浮かべながらマクシムを見ると、
「うごっ!?」
すると突如、一人の歩兵が何かに殴打された様子で地面に倒れた。
「!?」
「なっ…!!」
その動きに有馬は拳銃を取ろうとしたが、
「がっ!!」
直後に背後に何かがある気配を感じた直後、後頭部をヘルメットの上から何かで殴られて、直後に首元のコードにチップを打ち込まれね気絶をしてしまう。
「何…が…」
起こったのか分からず、困惑したまま彼は地面に倒れた。
そして目の前にいた一人を小銃を奪って、顔を掴んで地面に倒したマクシムは何も無い場所に聞いた。
「…いつからいたんだい?」
「ここに三人の反乱兵がいたくらいから」
すると景色が歪みながら有馬の真後ろから一人の小さな影がその手に散弾銃を持って現れた。
銃口を握っているので銃床をフルスイングしたのだろう。
「…完全サイボーグか」
「お好きに捉えてもらって」
そこで現れたスフェーンは地面に倒れた三人の反乱兵を猿轡と縄で縛る。
「車に積んでもらえます?」
「あっ、ああ…」
ここは貨物ターミナルのレンタカー屋、必ず定期的に人が来る場所なので誰かが見つけるだろう。それをこの少女は考えているのだろう。
「では行きましょう、街中では貴方を探し回っています」
「あぁ」
そこでマクシムも頷くと、スフェーンと共に走って留置線を走る。
「君の列車は?」
「もう発着線に止まってますよ」
用意周到なスフェーンはマクシムにそう答えると、そこで見えて来た数本の貨物列車を見る。
「こっちです」
スフェーンは手招きをして一部コンテナを積載した自分の列車に誘導すると、
「乗って」
そこで車内に入った後、列車に鍵を閉めると運転台を制御運転で操作する。
「ここに隠れててください」
そこでスフェーンは車内にマクシムを押し込む。
「街を出たらすぐに降りてください。列車は遅めに動きますので」
「すまん」
そこで彼女は扉を閉めると、マクシムは小銃を抱えて暗闇の中を見ていた。
パッと考えた中で一番安全な場所にマクシムを入れたスフェーンはルシエルに聞く。
「行ける?」
『発進許可出ました』
「じゃあ行こ行こ」
そして発着線からライトを点灯して発進しようとした時、
『全員止まれぇっ!』
そこで同様に発進しようとしていた他の列車も含めて纏めて静止させて簡易駅舎に反乱兵部隊が走って来た。
「うわっ、もう来よった」
『スフェーン、変わりましょう』
「おん」
スフェーンはすぐに体をルシエルに預けると、スフェーンは叩かれた列車のドアを開けた。
「な、何ですか…一体」
やや治安官を前に怯えた様子で答えると、
「貴様、治安官を見ていないか?」
「え?い、いえ…」
困惑顔を浮かべるルシエルを見てその反乱兵は言った。
「今から緊急で検査を行う。ご協力を」
「は、はい…」
緊張気味に答えると、反乱兵二名は列車に入る。
「ちょっ!」
そこで土足厳禁の扉を開け、中に入ろうとした時に思わず叫んだ。
「そこは土足厳禁ですっ!!」
しかし反乱兵達はお構いなく部屋にサーモグラフィーを当てながら探索を行った。
「あぁ〜…」
マットを張り替える必要が出て来たのを前に軽くルシエルは落胆した。
「居たか?」
「…恐らく居ませんね」
そしてガレージも確認した二人はそこで軽く毒吐いた。
「くそっ、どこに行きやがったんだ…」
すると二人は運転台の方に戻ると、
「これから列車の生体検査を行わせてもらう」
「え?まぁ…どうぞ」
ルシエルはそこでスフェーンに聞いた。
「(どうしますか!?)」
『いや、多分あそこなら大丈夫だと思う…』
一抹の不安を抱きながらも、スフェーンは言うと治安官達は検査機器を使って列車を照射する。
「…」
その声はマクシムも聞いており、息を殺して時を待った。
「…」
検査を終え、駅舎に立った治安官は聞いた。
「ここは?」
「あっ、武装区画です」
「…」
そこで列車前後の武装区画を見上げた治安官達は再度ルシエルを見た。
「よしっ、もう行っていいぞ」
「は、はいっ!!」
そこでルシエルは慌てた様子で列車を走らせると、駅を後にした。
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