TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#186

岩前操車場から発進したスフェーンの列車。

 

「…もう良いでしょうか?」

 

速度は時速二〇キロという低速で運行中の列車の中でルシエルは言うと、

 

『せやな、他に反乱部隊の動きもなさそう』

 

そこでルシエルは安堵の息を吐くと、列車を移動して扉を開ける。

 

「よっと…」

 

運行中の列車だが、低速運転中なので命の危険は低かった。

そして第二武装区画のハッチを開けると、

 

「だいぶ安全になりましたよ。マクシム軍曹」

 

そこで隠れていたマクシムに声をかけた。

 

「…そうか」

 

自分を押し込んだ扉から現れた見知った顔にマクシムは抱えていた小銃を下ろして入ってくる冷たい風を感じる。

 

「取り敢えず窮地は脱したか…」

「はい、今は郊外につながる貨物線を移動中です」

 

そこで本線に繋がる高架線を運行中の列車は、そこで空の荷台にマクシムは出ると外の景色を見る。

 

「灯は完全にまだ戻らないか…」

 

そこで荒野の見える薄暗い場所と反対に広がる言わ前の煌びやかな景色。航空等の赤色灯が点滅しており、クーデター前よりも暗くなった商業ビルを見た。

 

 

 

その後、本線に進入する直前の待避線に移動したスフェーンの列車はそこで一時停止をした。

 

「悪いな」

「いえいえ、寧ろあなたが射殺されないことを祈ります」

 

その手に白布をスリングに通して結ばれた小銃を持つマクシムを前に言うと、彼女は運転台に繋がる梯子を登る。

 

「じゃあ、良い旅を」

 

そこで線路から少し離れてマクシムは走り出していく列車を見送る。

ゆっくりとジョイント音を奏でながら列車は速度を等加速で上げていくと、あっという間に十両の列車は暗闇の荒野の中に消えて行った。

 

「…ありがとう。運び屋のお嬢さん」

 

マクシムは列車が見えなくなった後、銃を持って荒野に灯る灯りを頼りに歩き出した。

 

 

 

 

 

岩前の周囲に展開している鎮圧用の部隊の一つ、空軍第二七三強襲旅団はサーチライトを横で照射して警戒をしていた。

 

「…ん?」

 

深夜の時間、サーモグラフィーを起動しながら警戒をして来た一人のアンドロイド兵は冷えた荒野の中に明るい光を見つけた。

 

「?」

 

その影を見たそのアンドロイド兵はその姿を再度確認した。

 

「っ!反乱兵だ!」

「総員配置に付け!!」

 

その声と共にその陣地では慌ててテントから兵士が小銃を片手に飛び出した。

 

「止まれっ!!」

 

サーチライトも直ぐにその人影に向かって照射される。

 

「撃つなよ…」

 

すると部隊指揮官が忠告をすると、その歩兵は白旗代わりの布を小銃に付けていた。

 

『銃を下ろして、両手を上げて膝をつけ!』

 

アナウンスで呼びかけると、その兵士はその通りに動き、通報を受けて近くの陸軍部隊も駆けつけてくる。

 

「…行くぞ」

「はっ!お供します!」

 

陣地から抜けた部隊はそのまま銃を持って投降して来た兵士を見る。

 

「貴様、名前は?」

「マクシム・彰人軍曹であります」

 

名前を直ぐにアンドロイド兵は照会すると、間違いないと判断され、直ぐに拘束をされる。

 

「隊長、彼はワイラー少尉の部下です」

 

紹介を行ったアンドロイド兵が耳元で囁くと、部隊長はやや驚いた表情で見た。

 

「よく決断をしたな」

「…いえ、私は直感に従ったまでです。全てお話しいたします」

 

すると駆けつけた陸軍部隊によって、彼はそのまま前線指揮所まで移送される事となる。

 

「入ります」

 

武装解除をされ、手には手錠をつけたままのマクシムはとある下士官に連れられて前線指揮所に入る。

 

「来たか…」

 

そのテントの中では上宮ユエ陸軍上級大将、ジャック・バルゼー空軍中将、アラン・サモナー海軍中将の三人が座っていた。

 

「っ…」

 

例えるなら、勇者が旅の最初に四天王含めた魔王軍に出会したようなものだ。

マクシムは武装解除をされているとはいえ、いきなり包囲網を敷いている指揮官達と面会をするとは思ってもいかなった。

 

「悪いな、マクシム軍曹」

「い、いえ…私は反乱兵の一人でありますので…」

 

恐れ多くなってしまい、今にも倒れられたらと思いたくなりながらマクシムは用意された席に座らされる。

 

「君の情報は聞いた。一人で街を脱するとは大した度胸じゃあないか」

「…」

 

本当は運び屋の少女に手伝ってもらったものであるが、自分の直感が彼女の事を言うなと言っていた。まあ運び屋が生業の彼女の事を話しても本気にされるとも思えなかった。

 

「軍曹、早速で悪いが我々の交渉係に一時的に協力者として配属してもらう」

「は…?」

 

バルゼーから言われた事実に思わずマクシムはキョトン顔になった。

 

「私の方からも、君から反乱兵に関する情報提供をしてほしい」

 

アランからの要求は理解できたが、バルゼーからの要求は意味不明であった。

 

「無論、君達の行動理由は我々も十分理解しているつもりだ。だが、君たちは少々早とちりをしてしまったな」

「…?」

 

ユエはそう言いながらマクシムを見ると、彼はただ将官たちの言葉に首を傾げることしかできなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「そうか…マクシムは脱走したか…」

「申し訳ありません」

 

基地の司令官室でワイラーは部下からの報告を聞いていた。

クーデターより三日目の夜、マクシムは前日の夜に脱走して包囲している部隊に保護されたと言う情報は部下より先に把握していた。

 

 

 

『少尉、このような体裁で大変申し訳ありません』

 

交渉用の野戦電話から要求され、直接耳にした部下の声にワイラーは直ぐに理解した。

 

「何かね?軍曹」

『少尉、やはり我々はあと一ヶ月待つべきでした…』

「…」

 

マクシムは決起部隊の中でも唯一、作戦日時の変更を申し出た人物だった。

数少ない第一〇四砲兵師団の生き残りであり、あの日も砲撃訓練に参加していた。

 

「どう言う事だ?」

『申し訳ありません。私もその時が来るまで口外無用と将軍から言われましたので…』

「…」

 

話から察するに、敵に降伏したマクシムは将官からの交渉役として命令されたのだろう。

 

「脱走をしてよくもぬけぬけと…!!」

 

当然、話を聞いていた他の兵士は怒りのあまり線を抜きそうになりながらマクシムの要求を聞いた。

 

『ですが少尉、これだけは信じてください。やはり軍警は…軍警察は我々の居場所であったと…。将軍達も少尉等の行動を咎めない準備が整っています。どうか…直ぐにでも武装解除を出して下さい』

「…」

 

少し震えた声で地面に頭を垂れながら頼み込む様が容易に思い浮かぶその様子に、ワイラーは不信感を感じた。

 

「(なぜそこまで必死なのだ…まさか本当に…)」

 

よく知る部下ゆえに、その話し声に首を傾げていた。

 

「…悪いが軍曹、俺はまだ粘るぞ」

 

それだけ言うと彼は電話を切った。

 

 

 

「(本当に動く気配があると言うのか?それなら…)」

 

司令官室のソファで考えていると、彼に通信が入った。

 

「何だ?」

 

通信は二人の大将の監視任務を受けたある部下からだった。

 

『少尉、各大将がそれぞれ司令官室のテレビを見せろと言っております。如何なさいましょう?』

「…」

 

クーデター以降、駄々を捏ねるように二人は何度も二人の大将はテレビが見たいと言っていたことに対し、ワイラーは少し考えた。

 

「…よかろう。御二方を陸軍司令官室に通せ」

『はっ!』

 

ちょうどマクシムが保護されたと言うことは、向こうはこちらの対象の隔離場所を知っている。新たな隔離場所を選定する間、彼は一箇所に集まる事を選択していた。

 

すると直ぐに大将達は満足げな表情で司令室に続く階段を登る。

 

「いやはや、すまないね君たち」

「はははっ!皆も是非、特等席で見ようではないか!」

 

司令官室に入った二人にワイラー達は困惑をしたまま二人の要求通りにテレビを付けた。

 

「は…?」

「っ!?これは…」

 

そしてテレビをつけた瞬間、彼らは目を疑った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その時、遥か空の上。宇宙と呼ばれる空間にて、

 

『各種燃料積載完了』

『各ロケット偏向ノズル調整完了』

 

トラオムを囲う二つの宇宙要塞の一つ、ニアー・ソーレ。

そこでは軍警察の職員が多く飛び、残存している宇宙強襲揚陸艦や宇宙戦艦が周囲では停泊してその時を待っていた。

 

『各種準備完了』

『惑星間弾道ミサイル、並びに水素爆弾。発射準備完了』

 

その巨大な宇宙要塞の一角、巨大なコブのように宇宙空間に係留された砲弾型の超巨大なミサイルは今、すべての工程を終えて発射準備を完了した。

 

『各要員は退避開始せよ』

『核ミサイル発射。カウントダウン開始』

 

司令官の言葉と共に三〇分のタイマーが起動し、展開している各艦隊に治安官や技術者は一斉に宇宙船に退避を始め、宇宙艦隊からミサイルが発射された。

 

 

 

 

 

その頃、地上のウエルズ大陸の一角。

 

俗にサブラニエ人民共和国連邦の首都と呼ばれるマシクヴェでは、軍事パレードが行われていた。

二年続くパシリコ共和国達北側諸国との戦争に対し、自分達の戦略的優位性を世界に発信するために行われるこの軍事パレード。国際的に威厳を発揮する為に軍事パレードは用意周到に行われていた。

 

「書記長閣下」

「ん?何かね?」

 

初代サブラニエ人民共和国連邦総書記、パッチランド・リヒトフォーフェンは外務大臣からの話を聞いた。

 

「軍警察から…通達が…」

「何だ、はっきり言いたまえ」

 

顔を土気色にさせて話してきた外務大臣は、一度息を飲んだ後に伝えた。

 

「その…たった今、軍警察がSMATO統合評議会に対し…宣戦布告を行いました」

「…」

 

直後、外務大臣はそのまま気絶して倒れてしまった。

その様子を前に何事かと集まっていた他の政府役人は駆け寄ると、

 

「至急、代表者会議を行う。ただしパレードは続行する」

「は…はっ!!」

 

そこで閣僚達は緊急で会議を行う為にマシクヴェ人民宮殿に移動する。

 

「先ほど、軍警察から宣戦布告を受けた」

 

そしてその会議場でパッチランドは言うと、閣僚達は動揺した。

 

「どう言う事だ…!?」

「軍警が動いたと言うのか!?」

「くそっ、奴らめ…中立違反だぞ」

「これからどうするのです…!!」

 

閣僚達は口々に今度の戦略の転換を強いられる事態に恐怖をしていたが、

 

「まぁ待ちたまえ」

 

そこでパッチランドは閣僚達を制した。

 

「確かに我々は一気に苦境に立たされた。だが…」

 

その時、一人の軍人が飛び込んできた。

 

「閣下っ!!」

「何事だ?」

 

飛び込んできた士官に閣僚達が視線を向けた時、

 

「んっ?!」

 

突如外の景色が昼だと言うのに一瞬明るくなった。

 

「何だ今のは」

 

その光景を前に閣僚達は首を傾げた。

 

 

 

 

 

「おい!どうした!」

「返事がないぞ!?」

 

直後、副都サンブラーキの陸軍部隊やパリシコ共和国等々、ウエルズ大陸と近隣の諸島など全域にわたってEMPによる通信障害が発生する。

 

『水素爆弾の起爆完了』

『広域に渡るEMP拡散を確認』

 

原因は宇宙空間にて起爆された軍警察の放った純粋水爆の爆発であった。

 

『作戦第二段階完了』

『了解、作戦最終段階に移行する』

 

トラオムを周回している二つの宇宙要塞。偽物の太陽と月からは最初に人工の太陽が落とされ、星の半分を通信不能に陥らせた。

 

『最終カウントダウン開始。惑星間弾道ミサイル発射十秒前!九…八…七…六…五…』

 

そしてコードを接続していた宇宙艦艇達はその様を目に焼き付けていた。

 

『四…三…二…一…点火!』

 

直後、巨大な弾頭のロケットが赤く燃え始めると、宇宙要塞から一発ずつ。計二発の惑星間弾道ミサイルがゆっくりと加速を開始する。

 

『加速開始、各システム異常なし』

 

それは遥か昔、惑星間戦争が盛んな頃に開発された過去の遺物。宇宙と隔絶されたとはいえ、宇宙に行く術を有していた軍警察は、サブラニエでは到底防げるはずの無い神の火(惑星間弾道ミサイル)を放った。

 

『落下軌道投入。問題なし』

『各艦は射線上に注意しろ!』

 

そしてどんどんトラオムに近づくその影はまっすぐウエルズ大陸に向かって加速を続ける。

 

 

 

 

「各方面との通信途絶!」

「急いで代わりの通信機を用意せい!!」

 

マシクヴェでは国家親衛隊が走り回っていた。

 

「ダメです!極めて広範囲にEMP攻撃が行われています!!」

 

あらゆる周波数帯で通信ができない状況に士官達は声をあげていると、

 

「おい…何だよあれ…!!」

 

一人の兵士が空を見上げながら震えた声を出すと、他の兵士たちも同様に空を見上げた後に唖然となったり、首を傾げていた。

 

「何事だ!?」

 

司令所を飛び出した指揮官は怒鳴り散らしながら他の兵と共に空を見上げると、

 

「っ…!?」

 

空に浮かぶ巨大な影を視認し、それを前に言葉を失った。

 

「あっ…」

 

そして足がすくんで地面にへたり込んだ直後、彼らは皆。一斉に閃光に包まれた。

 

 

 

 

 

ーー現地時刻九時三〇分、軍警察よりサブラニエ人民共和国連邦に宣戦布告。

 

ーー現地時刻十時二二分。サブラニエ人民共和国連邦首都マシクヴェに一度目の惑星間弾道ミサイル落着。

 

ーー現地時刻十時二五分、サブラニエ人民共和国連邦副都サンブラーキに二度目の惑星間弾道ミサイル落着。

 

 

 

 

 

二つの宇宙要塞から放たれた二つの超巨大な弾道ミサイルはサブラニエ人民共和国連邦の首都・副都に直径約一キロの巨大なクレーターを形成するほどの大爆発を引き起こす。

 

同日、軍警察はサブラニエ人民共和国連邦に対し、宣戦布告。

政府機能破壊を目的に投下された弾道ミサイルを前に両都市は壊滅。都市機能を完全に破壊した。

パッチランド総書記以下、サブラニエ人民共和国連邦政府閣僚は安否不明。

 

ーー同日、軍警察はサブラニエ人民共和国連邦政府に対し降伏勧告を要求。なお返答には事前のEMP攻撃により遅れている模様。




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