軍警察が戦争への本格介入と同時に行われた首都・副都攻撃。
この攻撃が人道に反するかどうかと言う国際社会の回答は
『サブラニエのエーテル・ボンバを忘れるな!』
強烈な反応であった。
ーーあの虹色の光を忘れるな!
ーーサブラニエを倒せ!
ーー奴らの殺戮を忘れるな!
中立を早々に表明していた都市への攻撃。
軍警察直轄都市への無差別攻撃。
現在復興が進んでいるそれら被災都市への攻撃は国際慣習法から見ても違法である。それは紛れもない事実であった。
そして軍警察が本格介入をしたと同時に軍警察が発行した戦時債券は鰻登りとも言える上昇をしていた。
その後も宣戦布告の直後行われた首都・副都攻撃、後にプルート作戦と呼ばれたその作戦の成果が出回ると、債券の販売は売れに売れまくる。
これにより国際市場で販売されていたサブラニエ戦時国債は九〇〇輪から七二〇輪までの暴落をしていた。
パシリコ戦時国債は八〇〇輪から一時は八九〇輪まで値上げが起こったが、軍警察のサブラニエのみとの開戦を知った後に八四〇輪まで下落した。
しかし、下落したと言えど当初の価格より下がらないと言う時点で、いかに世界は軍警察の介入をどう見ているかが把握できる。
最終的に軍警察が発行した戦時債券は五万二〇〇〇株。
三次募集まで行われたこの債券販売は巨額の資金を軍警察にもたらしていた。
「よしっ!よしっ!よしっ!!」
この事態を前に軍警察会計委員は心底興奮していたと言う。
今戦争に介入する際の戦費は推定二億ウィールと推定され、それを上回る資金が軍警察に送られた。
「これで『②急計画』を超える集金だ!!」
『②急計画』は戦争序盤の『始まりの火』による損害を受けて、軍警察が世界に保有していた工廠に急遽発注した戦時増産計画である。
支払いは後払いで行われ、その支払のために今回の戦時債券が発行されていた。
サブラニエとパシリコの戦争…後に『南北戦争』と評されるその戦争は開戦後二年が経過し、軍警察の本格介入により、新たな戦局へと移り変わりつつあった。
現在のサブラニエ人民共和国連邦の前進組織である企業連合。かつての都市間連合だったその集団は国家へと変貌を遂げることで繋がりを意識するようになった。
「…」
ここはサブラニエ南西、白魚海岸。
大陸南方に存在する赤道近辺の場所であり、目の前のユリシーズ海を越えると南半球最小の大陸である星大陸に到着する。
名前の由来は、海岸が一面純白に包まれており。まるで白魚のように透明だからだ。
「はぁ…」
この地域は赤道間近ではあるが、ユリシーズ海を周回する寒流の影響で海霧が発生しやすい場所であった。
現在サブラニエ地上軍は、この美しい海岸線に
初めこそパシリコ共和国の上陸を警戒して建築されたものだが、今では軍警察という警戒対象が増えていた。
「いかんな…」
「どうした?」
ヘスコ防壁で構築された機関銃陣地を前にあるサブラニエ兵は双眼鏡を下ろす。
「今日は霧が濃い。レーダーだけが頼りになっちまうな」
「そうか…」
この海岸を前に彼らは吐息する。
「首都も副都もやられたんだろう?どうして降伏しねぇんだよ…」
それは例え情報統制されたとしても、インターネットという防ぎきれない情報の網目を潜り抜けて前線将兵の間ではもっぱらの噂であった。
この攻撃によって政府首脳は一掃され、今は臨時首都となった十慶に残存した政府閣僚と軍上層部の将校が集まって政治を取り仕切っていた。
「さぁな、俺に聞くなよ…」
煙草を咥えて、いつ来るかも分からない敵を前に警戒をしていた。
「軍警察が相手とか…本当に勝てると思うか?」
「勝てるさ」
特火点の中、14.5mm機関銃と152mmカノン砲を配置している彼らはお互いに励ますように言う。
「これだけの陣地だ。軍警もここを迂回するに決まっている」
彼はそこで塹壕や多数の砲陣地、塹壕を前に自身ありげに言う。
二年間の間に構築されたそれらは、嘗ての観光名所を潰して作られていた。
事実、今の軍警察は戦争に介入したとは言えパシリコ共和国と共同戦線を張ると言った声明はなく、あくまでも独立した軍事作戦を展開しているようであった。
「軍警だけでこの陣地を突破できると思うか?」
「…」
独自の軍事行動をとると言う事は、歩調を合わせる事がしづらいと言う事ともなり、二正面作戦を展開しようにも失敗するだろうと言うのが今の臨時政権を担っている上層部の判断であった。
「だといいが…」
彼はそこで再び暗視装置付き双眼鏡を下ろして海を見た。
「…ん?」
一瞬、遠くに見慣れない影が見えた気がし、咄嗟に熱線暗視に切り替えた。
「っ…!!」
すると、そこで見えたのは数多の熱源の影。
この温度はエーテル機関から発せされる熱を海水を吸い込む事で冷やす、一般的な船舶用エーテル機関を搭載した物の奴だ。
「おいっ!」
すると一人の通信兵が飛び込んできた。
「レーダーが使えない!通信もだ!」
「何だとっ!?」
突然の通信途絶に誰もが驚愕すると、すぐに野戦電話の敷かれていた各特火点に連絡が入る。
『敵襲っ!』
直後、海上の方から飛翔音が聞こえた途端に海岸線や背部の都市に数多の砲弾が着弾する。
そして砲撃に合わせるようにヘリコプターやティルトローター、戦闘機や爆撃機など数多の航空機の攻撃が飛んできた。
「くそっ!」
「砲撃だ!敵が来たぞ!!」
砲弾の爆発で特火点全体に巨大な振動が襲い掛かり、サブラニエ兵達は驚愕しながらカノン砲に砲弾を装填する。
「砲弾装填!」
「砲弾よし!装薬よし!射撃用意よし!」
「撃てぇ!!」
液体装薬式の砲弾を装填し、拉縄を引っ張って射撃を行う海岸線防衛部隊は最初の着弾の一分後には反撃を開始していた。
後に軍警察最初の大攻勢と呼ばれる白魚上陸作戦が始まった。
洋上に集結した軍警察海軍艦艇は三ヶ月前に就役したばかりの最新鋭戦艦である陸奥型戦艦の「陸奥」「壱岐」「伊勢」「肥前」と、この日までに就役していた四隻全てが参加していた。
高雄型巡洋艦からは「利根」「天城」「夕張」「龍田」「名取」「那珂」そして「酒匂」である。
酒匂といえば、戦争開始前にアイリーン社によるエーテル・ボンバの実験のために消失した巡洋艦であある。
この船は二代目の高雄型巡洋艦の後期生産型であり、武装の変容から一部からは酒匂型巡洋艦とも言われていた。
その他参加艦艇は主に空母二隻、駆逐艦一〇四隻、フリーゲート艦一四四隻、強襲揚陸艦四〇隻、揚陸艦一二〇隻、上陸用舟艇二三二〇艇である。
軍警察発足後、記録上最大の艦艇数となったその艦隊は怒涛の攻撃を開始した。
「撃てぇっ!」
今回の作戦旗艦である陸奥の艦橋では砲術長の声に合わせて主砲の
全長約四〇〇mの船体から発射される九発の砲弾は海岸線に着弾を起こすと大爆発を起こす。
「発射っ!」
そして酒匂からも砲撃が飛び、先代の恨みを晴らすが如く激しい砲撃を行う。
「ミサイル確認!」
「対空射撃!!」
酒匂ではCICで飛来するミサイルを確認すると、後期生産型の特徴である
開戦直後に勃発したパシリコとサブラニエの海戦であるセーファー岬沖海戦により、ドローン攻撃の応酬を見ていた軍警察は現在よりも対空能力を強化した装備品を備えることを『②急計画』で建造される艦艇に施す事を行なっていた。
今まで装備していた203mm単装砲は全て新しい高角砲に変更され、陸奥型戦艦にも装備されていた。
高角砲に続いて複合CIWSによる射撃が行われ、大陸の後方から発射された巡航ミサイルを迎撃する。
「ミサイル撃墜!」
CICで撃墜の報を受けると、艦長は軽く安堵した。
「今こっちは対地ミサイルしか積んでいないからな…」
今回の作戦に際し、艦隊の防空は周辺に囲んでいる駆逐艦に全て任せており、巡洋艦や戦艦は上陸支援に専念することとなっていた。
「上陸部隊より入電!『B33に砲撃を要する』です!」
「エーテル・カノンをぶちこんでやれ!」
「はっ!」
そしてこの高雄型巡洋艦の画期的な点は
四つ全ての砲塔が動き、今まで仰角を付けて砲撃をしていた砲身が水平に下がると、直後に砲撃の続く海岸線に三本の光線が海岸に飛んで行った。
「っ!?エーテル・カノンかっ!!」
砲撃を受け、特火点が一つ吹き飛ぶとそれを見ていたサブラニエ兵が叫ぶ。
「くそっ、あの高雄型は全部エーテル・カノンを装備しているのか…!!」
彼はそこで展開中の酒匂が直前まで実弾砲撃を行っていたのにもかかわらず、エーテル・カノンを発射した事実に驚愕しつつもそこで叫ぶ。
「砲撃!沈めてやれ!!」
直後、海岸線の近くの崖に掘られた掩蔽壕から長砲身の砲身が洋上の艦艇に照準を合わせた。
「発射!」
直後、崖から光線が発射され、洋上に展開していた
「ホレイショウ・ネルソン被弾!」
「エーテル・カノンだっ!」
即座にその攻撃を見ていた指揮官が毒吐いた。
「くそっ!こんな前線にもいるのかよ!」
誰かが毒吐くと、海岸線からエーテル・カノンが発射される。
「構わん!撃て撃て!」
「軍艦がそう簡単に沈むか!」
前々より言われ続け、事前の諜報活動により得た情報で『サブラニエは自国でエーテル・カノンの製造を行っている』というものがあった。故に今回の作戦においてエーテル・カノンは要警戒されており、比較的配備数が少ないと言われた場所を上陸地点に選定していた。
「航空支援はどうなっている?!」
「空母「蒼龍」「龍驤」より航空隊接近中です!」
直後、海岸線に上陸用舟艇の支援を行う目的で洋上から揚陸艦に積載された高機動車から四〇連装122mmロケット砲が一斉に発射される。
そのロケット砲の攻撃を縫うように後方に展開中の二隻の空母から発艦した
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