白魚上陸作戦に際し、この作戦に参加した軍警察の兵力は約四四万六〇〇〇名。
対するサブラニエ地上軍防衛部隊は約三八万名。
数の上では軍警察が上であり、上陸作戦時には欺瞞工作を多数行っていた。
軍警察が国境を接しているアリアドール合州国から国境を超えてくる可能性をサブラニエ地上軍は十分考慮した上で、軍警察が別の場所から上陸を行なって挟み撃ちをしにくる可能性と言うものも考えていた。
なにしろ軍警察は世界最大の武装組織である。元々は都市を守る巨大な警備会社であり、その武装力は野盗に奪われた都市一つを奪還することさえ可能である。
その軍事力が向けられることは確実であったので、彼らは上陸可能なポイントに要塞を築いていた。
しかしそのポイントの数はあまりにも多すぎた。
「なんてことだ…!!」
要塞建築を選定する士官は悲鳴をあげた。
大陸の南に巨大な連邦国家を築き上げたサブラニエであったが、逆に彼らはその広大な大地に締め上げられていたのだ。
今の国力で軍警察が介入する前に要塞を作り上げるためにある程度の妥協を行い、上陸が比較的難しいと判断したポイントは海岸線に障碍物や特火点、防壁を設置することで完了させていた。
白魚海岸はその内の一つであり、理由は揚陸艦がビーチングできないほど長く広い、目の前の浅瀬の海があったからであった。
珊瑚礁が自然の擁壁となって上陸を阻むだろうと彼らは思っていた。
『発艦用意!!』
洋上に展開した一〇隻の神州丸型強襲揚陸艦から発艦していく
「いいか!」
そこで第五二二海兵旅団の部隊長は叫ぶ。
「我ら五二二海兵旅団は一番槍に選ばれた!」
興奮気味に機内に乗り込んだ彼は同乗する歩兵達を鼓舞する。
第五二二海兵旅団は先のクーデターに参画した部隊であった。彼等のような部隊はクーデターの汚名を晴らしてこいと言わんばかりに最前線に配置転換されていた。
「発艦許可求む」
『了解、発艦を許可する』
管制塔の許可を受け、甲板に展開していたティルトローター機は次々と離陸を行うと、砲撃の続く白魚海岸に飛んでいく。
「奴らを轢き潰してやるぞ!」
「「「「「了解!!」」」」」
彼等は復讐に燃えていた。
「…」
同じ時、海上では第五一五機動師団が最新の4式オートマトンに搭乗して汎用揚陸艇から砲撃の様を見ていた。
機動師団はオートマトンを主軸に編成される装甲機械科師団である。
「ちっ、もっと速度出せないのか!」
『馬鹿言うな!これ以上上げたらエーテル機関が吹っ飛ぶぞ!!』
彼等は大隈級ドック型揚陸艦のウェルドックから進発したばかりであり、砲撃が始まってからは自分たちより先に第一二二歩兵師団が揚陸艇に乗って出発していた。
ッーーー!!
すると上空に戦闘爆撃機が四機編隊で海岸線に向かうとサーモバリック爆弾を投下した。
「馬鹿野郎!!」
その様を前にあるオートマトン兵は怒鳴った。
「俺たちの分奪うんじゃねぇぞ!!」
直後真上をエーテル・カノンが飛んでいき、後方に居た駆逐艦のヘリコプター格納庫に命中する。
「くそっ!」
「エーテル・カノンかよ!」
すると無線で全員に言う。
『もうそろそろだ!これ以上は無理だ!お前らは先に降りろ!!』
「あぁそうかい!」
いよいよだとそのオートマトン兵は笑みを見せる。
彼はエーテル・ボンバの攻撃で自身も右腕を失う損害を被っていた。
横では進発する歩兵師団や海兵旅団の揚陸艇や水陸両用車が砲撃の水柱で吹き飛んだり転覆する。
『ハッチ解放!』
そして海岸近く上陸し、上陸用舟艇の前方ハッチが展開すると、
『うおっ!?』
『ぎゃあっ!!』
海岸線から飛んでくるサブラニエ側のオートマトンの射撃を受けた。
「固まるな!」
「出ろ出ろ!スラスター吹かせ!!」
隣の上陸用舟艇は至近で沿岸砲の着弾を受けて船体が歪んだ。
またある舟艇では船体に直撃弾が命中したことで竜骨が真っ二つに折れてすぐに沈んだ部隊もあった。
「撃て!!」
オートマトン部隊は反撃するように持っていた30mm自動小銃で射撃を行うと、敵のオートマトンに命中して腕部が吹き飛んだのを確認する。
「上陸部隊を支援しろ!!」
上陸した歩兵部隊と同時に揚陸したオートマトン部隊は歩兵の直掩として前進を始める。
ドコーンッ!!
海岸線に張り巡らされた障碍物には対戦車地雷が括り付けられ、接岸した上陸用舟艇がうっかり触れたことで爆発が起こる。
その衝撃で歩兵部隊が乗っていた舟艇は前半分が丸ごと吹き飛んだ。
「撃ぇっ!!」
砲兵仕様で両肩に105mm無反動砲を装備した4式オートマトンが砲撃を加えると、飛び出してきたオートマトンは一発が命中して真っ二つに折れて爆発する。
「ぎゃあっ!!」
その直後に別の区画にいたA-1オートマトンの射撃を受けてコックピットを貫通する。
「降下用意!!」
白魚海岸別所では、第二二八空挺師団が
「降下!降下!降下!」
赤ランプが緑ランプに切り替わると空軍の機体から陸軍落下傘部隊が降下を開始する。
フックが引っかかって展開されるパラシュート、無数の兵士が地面に五点着地で降り立つ。
「投下っ!!」
空挺部隊は同時に
その中にはオートマトンの姿もあり、
対空戦車の攻撃で空に曳航弾の軌跡が走り、輸送機に数発が被弾する。
『ゴング1、被弾した。対空戦車の対処求む』
『ペイサー4了解。敵対空戦車を確認』
対空射撃を行い、対空ミサイルを放った車両を視認した
「くそっ!通信はどうなっている!?」
「駄目です、強力な電波妨害が出ていて…」
海岸では
また海岸に取り付いた電子戦兵の攻撃により部隊間通信も僅かな影響が出ていた。
「くそっ!軍警め…」
エーテル・カノンは最優先で攻撃され、掩蔽壕に艦砲射撃が着弾する。
「うおっ!?」
そして艦隊から発射された対地ミサイルの攻撃が後方の市街地に着弾する。
「畜生、なりふり構わずかよ…!!」
艦隊はレーダー上で捕捉したものであるが、市街地のミサイル部隊から地対艦ミサイルが発射される。
「戦車が来たぞぉっ!!」
すると海岸に戦車揚陸艇が接岸を行い、中から積載されていた
「っ…!!」
搭載された155mm滑空砲の威力は言わずもがなで、自分たちの戦車よりも圧倒的な貫通力を有していた。
「撃てっ!!」
直後、オートマトンでは破壊できない強固な掩蔽壕破壊の為に155mmの対戦車榴弾が発射される。
ッ!ッ!ッ!ッ!
海岸では次々と装甲戦闘車両が揚陸を完了させ、30mm機関砲を発射して効力射を行う。
「撤退しろ!」
海岸に掘られた塹壕からサブラニエ兵は撤退・降伏を余儀なくされる。
「次から次へと湧いてきやがって…!!」
掩蔽壕に隠れて14.5mm機関銃を放つその兵士は揚陸を行う部隊を前に恐慌状態に陥っていた。
「くそっ!くそっ!!」
重量級サイボーグが持つものと同じ機関銃を放ち、接近してくる歩兵を薙ぎ払うが、
「うあっーー」
直後に
同刻、ユリシーズ海洋上では
『艦載機発艦用意!』
二隻の航空母艦「蒼龍」「龍驤」が着艦した
本来この機体は陸上用の機体ではあるが、最低限の艦載機用として運用可能な脚部を有しており、故にカタパルトからの発進が可能であった。
今回の作戦参加機体は全て上部のローターが外され、純粋な航空機として運用されていた。
「急げ急げ!」
「分かってるよ」
甲板では爆装中のある機体の近くで、整備体達が慌てた様子で翼下に爆弾を懸架していた。
彼等は周囲から見えないように囲んでおり、少し焦っているように見えた。
「…よしっ!終わった!!」
その爆弾の懸架を終えて整備兵はパイロットのアンドロイドにすぐに出るように言うと、彼等は事情を知っていたので大いに頷いてキャノピーを閉じる。
「すぐ出してくれ」
『あぁ、ちょっと待っとけ』
カタパルト要員は間近で『それ』を見てすぐに事情を察してカタパルトの電力を確認する。
「カタパルト電力良し、ブラスト・シールド展開」
二隻の空母は地上支援を目的に展開しており、本来の警戒区域を空軍の空中艦隊に託して展開していた。
「射出、問題無し。発射!」
ッーーー!!
電磁カタパルトから二機の
「ごるらぁっ!!」
甲板に怒り浸透な様子で殴り込んでくる士官の姿があった。
海軍中尉の階級章を下げる虎の獣人の彼はそこで怒鳴り散らす。
「浴槽つけて飛ばした馬鹿野郎はどこだ!出てこい!!」
整備兵やパイロットが悪巧みをして、艦内の壊れた浴槽を付けて飛ばした事にブチギレていた。
元々この機体はこの兵装搭載量から積めないものはない言われており、『これで運べないのはキッチンだけだろ』と誰かが言ったところ、ある兵士が台所に炸薬と信管を入れて投下し、『じゃあこれで積んで無いのは便器だけだな』と言った時に便器がハードポイントに取り付けられて投下された。
もはやお約束のようなものであり、密かな伝統として受け継がれたこの文化。
そして便器を落とした事から、『もう積めないものはバスタブだけだろ』と誰かが言った事で整備兵やパイロットは虎視眈々とその機会を狙っていた。
無論、備品の無断使用であるので上官にバレれば叱責ものである。そのため秘密裏に処理をする必要があった。
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