TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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見切り発車感があったのですが、読んでくださって幸いです。


#2

 

エーテル

 

今のこの世界における生活基盤だ。

数世紀も昔にこの星で発見された新物質であり、核融合と言ったすべてのエネルギーを過去の時代の物とした革命的な物質だ。

 

瞬く間にエーテルは宇宙に拡散し、我々の生活に豊かな発展と富をもたらすと同時に大きな戦争の引き金ともなった。

その最後にして最大の戦争、最終的にエーテルの異常活性化に伴う地表への噴出により星に展開していたすべての陣営が呑み込まれた。通称『大災害』と呼ばれる戦争を最後にエーテルをめぐる戦争は落ち着きを見せた。

 

残されたのは大量の難民と、エーテルを扱う技術や惑星開発時の都市。そして戦争の原因となったエーテルだ。そして空に上がったエーテルは今も地表に降り注いでいた。

 

エーテルの異常活性に伴う地表噴出の残骸で、未だに空には昼夜問わずエーテルの残骸がオーロラとなって漂っている。

 

これの影響で空高く飛ぶ航空機は火薬庫の中に爆弾を投げこんているような物であり、同時に戦争時に使われた兵器の影響で上空は磁気嵐が吹き荒れ。一部例外はあるが、空は閉鎖されたも同然だった。飛べるのは低空を飛ぶヘリコプターやティルトローター機などだけだ。

 

人工衛星は通信が途絶え、ゆっくりと落下軌道に入ってその多くが消失。時々流れ星になって良い夜空を演出する。

 

空を封鎖されたこの星で、空路の代わりに惑星開拓時代に多くが建造されていた鉄路や航路、道路を用いた物資輸送が盛んになるのは当然のことだった。

大災害の後、エーテル技術を用いた路線建設や船舶建造はこの星の復興の象徴となった。

道路建設は頻繁に吹き荒れる砂嵐や磁気嵐の影響で断念され。自動車を用いた運送は都市部に限られていた。

 

 

 

そしてそんな鉄道輸送が増えるにつれ、ある問題も発生した。そう、列車強盗である。

縦横無尽に張り巡らされた鉄路で運ぶ物資は彼らにとっては餌も同義。そこで物資輸送を担当する企業などは車両を武装化し、傭兵を雇って自分の積み荷を守らせていた。

 

そんな中、ある傭兵団がいた。その名を赤砂傭兵団と言う。

腕利から新入りまで、ありとあらゆるゴロツキが集う傭兵集団であり。当時は企業に属さなくとも名を馳せた唯一の傭兵集団であった。

 

そんな傭兵集団を取り仕切っていた男の名はレッドサン。この星にて最強と謳われた伝説の傭兵だ。

 

そんな彼は今、行方不明と言う形で半年が過ぎていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

広大な大地に引かれた鉄路の上を一本の列車が行く。その先頭車のコンテナの中で一人の少女、スフェーンはコンテナに格納された自分の乗機の点検をする。

 

「全く、こんな旧世代機の整備とはね」

 

そう零して見上げるは角ばったウォーク・オートマトン。人形の作業用機械の総称だ、これもエーテルが生み出した技術の一つだ。

すると彼女にルシエルが話しかける。

 

『スフェーン、今回の仕事を終えれば新型のオートマトンの購入が可能となります』

「そうかい」

 

スフェーンは軽く溜め息をつきながら自分の色々なところの塗装が剥げたウォーク・オートマトンを見る。

かく言うこのウォーク・オートマトン、今の時代じゃあ化石も良いところの第一世代機と呼ばれる機体だ。

 

今の主力が第四世代と言われている中で第一世代機と言うのは戦闘にはまともに使えないボロだ。

いくら見つけた時は新品同然だったとはいえ、周囲の環境がガラッと変わっている以上。本格的な戦闘には不向きだった。そもそも作業用のウォーク・オートマトンだし……。

 

『新たに購入する機体は軍用ですか?それとも作業用ですか?』

 

ルシエルが話しかけると、スフェーンは少し考えた。

オートマトンには用途毎に二種類の機種がある。

 

まずは軍用、言わずもがな戦闘用に開発されたオートマトンだ。傭兵や軍警察御用達の機体だ。一般的にミリタリー・オートマトンと呼ばれる。

次に作業用、これは土木や修繕などの生産業で主に活躍するオートマトンだ。これはウォーク・オートマトンと呼ぶ事が多い。

 

実を言うとこの二つの間に汎用型オートマトンが存在するが、これは二兎追えばなんとやらと言った産物で余り使われていないので真っ先に選択肢から除外していた。

 

「欲しいのは軍用だな」

『値は張りますが、列車の安全と貴方の経験を考えた場合。妥当だと思います』

 

ルシエルも納得の様子を浮かべると、スフェーンは自分の住居兼オートマタ格納庫のコンテナの中で椅子に座り込む。

カーゴスプリンターは動力分散式の貨車である。その為、コンテナを挟み込むように運転台や制御室が設けられており。この列車は他の機関車と同様にエーテル機関を用いて運行されている。

 

自分の運転するこの列車は四両編成だが、真ん中で分割が可能で。やろうと思えば間にコンテナ貨車を繋げることができる。

 

「現在位置は?」

『目的地のシフォーフェンまで残り二十分ほどです』

「そうか……」

 

今回は特に襲撃も無く街に入れそうだと思っていた。

 

 

 

 

 

今回の目的地であるシフォーフェン。そこに停車したスフェーンはいつも通り運輸ギルドの証明書と共に荷物の輸送を終えると、ターミナル上からガントリークレーンがダブルスタックされた先頭車以外のコンテナを回収する。

 

基本的にここら辺はトンネルがないのでコンテナを二段積みしても大きな問題にはならない……と言うか、複々線専用貨物列車なんかコンテナを進行方向横向きに置いてコンテナを船並みに大量に運んでいる。そう言った貨物列車は幹線専用であり、運行の際は鉄道管理局から連絡が入る。

 

「依頼主は……」

「ユウ・ホサカです」

「……本物だな」

 

ここでは運輸ギルドの職員が赴いてくるタイプの都市なようで、訝しむ目を向けながらフードを被る少女の運んできた荷物を確認する。

 

「よし、依頼人からの報酬だ」

「ありがとうございます」

 

基本的に運輸ギルドというのは企業が連盟で出資して作られた鉄道輸送のための労働組合だ。

多くは企業の保有する専用の路線で巨大な貨物列車が走り抜けていくが、そのような列車を必要としないレベルの小取引の荷物を運ばせるための運び屋に仕事を与える為の場所だ。

 

普通は運輸ギルドに所属すれば会社との契約で車両を借りて仕事に就く。

なおこの際、借りた列車も元を辿ると契約した企業のものであり、大体は仕事の収入に比べて傭兵の雇用金額とレンタル料で差し引きトントンで死なない程度には生きていけるのが普通だった。

 

「しかし、こんな子供が運び屋とはね……」

「いけないか?」

 

見た目は明らかに幼女、しかし彼女の持つ空気と言うのはかなりの場数を踏んだそれであると職員は感じ取っていた。

 

「いや、そういう訳ではない。腕が立つならなんでも使うものさ」

 

そしてギルド職員が去ると、スフェーンは茶色いローブを羽織ったまま自分の預金を確認する。

 

「昔はこうやってコソコソする必要はなかったんだがな……」

『あなたの銀行口座が凍結されてしまった以上、出来ることは限られます』

「そうだな…奴らに見つかるわけにも行かないしな……」

 

それに、昔の自分は捨てた身だ。一からのやり直しも悪いものではなかった。

ターミナルに自分の車両を預けて街に繰り出す。ここは前回のアイデンと違い、昔にも来たことがあった。

 

「前に来たのは確か……」

『六年前のザイーネ・プロダクトと大鵬社の連合による、野盗同盟討伐作戦です』

「はいはい、相変わらずだな」

 

自分の過去の記憶を見て知っているが故の所業だが、まだ慣れない部分があった。

 

『当時の記憶を参考に現在の都市の相違点を算出しますか?』

「結構だ」

 

自分で見て回ると言ってスフェーンはフードを被ったまま街を歩く。

 

「相変わらずだな。この街は」

 

基本的に都市と名がつく場所には必ず何かしらの企業のオフィスビルがある。企業が支配しない土地はないと言っていいほど、この星は金とエーテルで支配されている。

一応評議会なんて言う都市の統治を行う組織の名前があるが、実際は会社の役員同士が集まる異業種交流会だ。

 

そしてここ、シフォーフェンにはオートマトン製造工場が存在する。今回は運送ついでに自分の列車護衛の為の軍用オートマトンの購入の為に訪れていた。

 

『初めまして、スフェーン様。今回はどのような商品をお探しでしょうか?』

 

オートマトンのディーラーに到着すると、スフェーンは運輸ギルドの証明書を提示して購入権限を示すと、機械の店員は彼女の持つ資産を計算に入れた最適な商品を提示した。

 

「新しい、軍用オートマトンを探している」

 

こういう時、人が相手だと色々と勘ぐられる可能性があったので機械で助かったと思っていた。

 

『スフェーン様のお支払い能力、経済規模から算出いたしました結果。ナンブ社製DB-99を推奨します』

「ナンブ製か……」

 

二脚の第三世代人型軍用オートマトンだ。無難な設計で、尚且つ安価な機体だ。改造も後付け式の良い機体だ。

ただ、軍用ではなく汎用型寄りの機体なのだが……。

 

「分かった、それで頼む」

『ご購入、ありがとうございます。配達先はいかがいたしましょう?』

「32番ホームに停車中の列車番号POFT300407にコンテナ内蔵型のフルキットで」

『畏まりました。荷物のご到着は本日十九時三〇分を予定しております』

 

電子マネーで支払いを済ませると、スフェーンはルシエルが聞いてきた。

 

『あの機体を下取りに出さなくて良かったのですか?』

 

それは今の列車に積み込まれているあの第一世代のウォーク・オートマトンの事だ。するとスフェーンはそんな疑問に答える。

 

「あんな第一世代、下取りに出したところで屑鉄としてでしか買い取ってくれないだろうよ。まだ使えるなら、修繕用として残しておく」

『なるほど。そう言う意見であれば、私も異存はありません』

 

彼女の意見にルシエルも納得と賛同の意を示すとスフェーンは少し当たりを見回した後に裏通りに入って行った。

 

『近道ですか?』

「ああ、この先に美味い店がある」

 

スフェーンは前に来た時に見つけたハンバーガー屋を思い出しながら歩くとルシエルが注意してくる。

 

『お気をつけを。この道は、』

 

その注意の最中、スフェーンの前に三人の男……いかにも悪ですを体現したような髪型をしたサイボーグの男三人衆が立ちはだった。

 

『チンピラの巣窟ですから……』

 

しかし時すでに遅く、三人はスフェーンを見ながらこう言い放った。

 

「嬢ちゃん、ここを通るなら金払いな」

 

なんともテンプレで安い挑発だなと思ってしまった。




機体解説
ナンブ社製DBー99
安くて頑丈として好評なナンブ社製の第三世代軍用オートマトン。コンテナセットもある事からコンパクトに格納が可能。堅実な設計と確かな機関出力からレールガンやレーザー兵器まで多様な武装を使用可能。
長所も短所もないオートマトンで、傭兵やPMCでも未だに見られる人気機種だ。
またユニバーサル規格なので大半の企業の装備を搭載可能。

基本武装
左腕部同軸12.7mm重機関銃
超音波ナイフ

裏ネタ
スフェーンの列車番号はイエスの死んだ日からとりました。



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