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白魚海岸の上陸作戦が始まった頃、サブラニエ北西部においても戦線に変化があった。
「砲撃、始めぇっ!!」
作戦指揮官の号令と共に新鋭陸上戦艦である、瑞穂級陸上戦艦が砲声を轟かせた。
搭載された三基の主砲は全て最新型の356mm砲であり、実弾とエーテル・カノンの両方を使用する事が可能となっていた。
陸上戦艦の名の通り圧倒的な火力と移動式駐屯地としての役割を持っている。
場所はアリアドール合州国とサブラニエとの国境。
予め宣戦布告を行う際の連名にアリアドール合州国大統領の署名も入っており、彼等も戦争に巻き込まれる覚悟はできていた。
「突撃ぃっ!前ぇぇえっ!!」
最前線に集い、構築していた戦線を突破する為に放たれた砲弾は塹壕に籠る敵部隊を纏めて薙ぎ払い、機動師団や機甲師団が共に前進を始める。
オートマトンは戦車ほど長い時間迅速な行動ができないので、一部は陸上戦艦の上に立っていた。
アリアドール合州国はパシリコとも国境を接しており、前までは両国の厳正な中立国としての立場を表明していた。
無論この軍警察の行動をパシリコ側も把握しており、独自路線を貫く軍警察の攻撃による漁夫の利に乗ろうとしていた。
アリアドール合州国の空軍基地では数多の爆装した
最大で九〇〇〇キロの爆弾を抱えて離陸していく機体を帽子を振って治安官たちが見送る。
上空に上がった機体は部隊毎に四機一個編隊を組んでコンバット・ボックスを展開する。
『事前に敵の対空設備は攻撃と地上部隊が掃討している。着く頃には敵の抵抗は少ないと思っとけ』
遠くでは夜の闇の中に光が灯り、それが爆炎であることはすぐに把握できた。
「撃ぇっ!!」
とある荒野では高機動車から無誘導の122mmロケット砲が発射され、近場にいた治安官が飛翔して行ったロケット弾が多数着弾したのを見る。
広範囲にわたって着弾したロケット弾の後、荒野から戦車やオートマトン、装甲車が飛び出して攻撃を加える。
「このまま十慶まで突撃しろ!!」
その直上をローターを取り払った
ッーーー!!
機体下部の30mmガトリング砲が敵対空戦車を上からズタズタに貫通すると、ペアを組んでいたもう一機に対空ミサイルの攻撃が尾部に命中した。
『大丈夫か?』
「あぁ、軽く吹っ飛んだだけだ。まだやれる」
『…次の攻撃で一旦戻るぞ』
「了解」
旋回し、頑丈な機体ゆえに再度攻撃を行った後に編隊は一度基地に帰投する。
その背部では至る所から黒煙と炎、対空・対地ミサイルの轟音や砲声が轟いていた。
白魚海岸に上陸した部隊は圧倒的物量で海岸線を制圧し、戦線を市街地まで押し込んでいた。
「撃ぇっ!!」
コンテナ搭載型のと同じ砲身を積んだ自走砲は空中で炸裂してビルを屋根から破壊する。
「装填完了!」
「発射!」
揚陸した戦車・自走砲・オートマトンの攻撃で残された特火点に攻撃が集中する。
上陸用舟艇から発射された多数のロケット弾は容赦無く塹壕や蛸壺に降り注いでいた。
広い珊瑚礁で上陸には適していないと言われていた海岸では、オートマトンや多脚戦車が得意の姿勢制御で、足場の不安定な場所でも満足な砲撃が可能であった。
「どうなっている…現状は…?」
一部が攻撃によって崩落したある特火点の中、サブラニエの隊長が聞いた。
「…はっ」
彼女は頭から血を流し、胸部に砲弾の破片が突き刺さっていた。
「誰も、答えられんか…」
沈黙を貫いた血まみれの特火点を前に軽く吐息していた。
白魚上陸作戦は以前苛烈さを増しており、海岸線を制圧した後も市街地からの砲撃は続いていた。
「うおっ!?」
目の前を通りを焼き尽くす光線が飛び、そこにいた部隊諸共海に浮かぶ強襲揚陸艦の横腹を貫通する。
「第二、第五区画貫通!」
「消火急げ!」
「ダメです!弾薬庫がーー」
直後、エーテル・カノンの攻撃で過貫通した弾薬庫と燃料庫に引火した強襲揚陸艦が爆発。その炎は近くにいた艦隊でも確認していた。
この損害は軍警察が上陸作戦を行った上で最も大きな損害となった。
「きゅ…救助だ!」
「内火艇降ろせ!!」
爆沈する強襲揚陸艦から運良く海に脱出した治安官達を回収しながら艦隊は砲撃を続行する。
「撃ち続けろ!弾薬庫が空になるまで奴らに叩き込んでやれ!!」
指揮官のアンドロイドは怒鳴ると、各艦隊からエーテル・カノンの発射地点を観測した場所を地図のブロック毎破壊していた。
「うわぁっ!!」
無論、市街地から自爆ドローンが多数飛来しており、一部が艦隊に命中して爆発する。
「第二対空指揮所被弾!」
「衛生兵!!」
戦艦の巨大な船体には千何百人の乗組員が乗り込み、今も血を流している。
地に空に、復讐と憎悪に駆られた鋼の津波が襲いかかる。
あれほど純白を放っていたビーチは赤く染まり、サイボーグの循環液が浮かぶ。
空からは鉄の鳥が爆弾を投下し、ビルと言うビルを破壊する。
住んでいた住民は慌てて安全な場所に逃げようと躍起になっており、そこに敵か味方か分からない砲弾やエーテル・カノンの砲撃が降り注ぐ。
その爆撃機も、オートマトンの対空射撃でエンジンが吹き飛ぶと炎を巻いて地面に着地していく。
そして落とされた爆弾で街の通りに出ていた部隊が吹き飛んでいく。
後方からレーダーサイトを破壊しながら挺進した空挺部隊は白魚海岸近辺の平原に着陸をして攻撃を行なっていた。
用意周到な作戦と事前準備を行い、空軍によるレーダーサイトの破壊。
電波探知後に行われたステルス攻撃はあらゆる防空網をすり抜けて行われた。
ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!
海岸では揚陸した六六輌の戦車、八二輌の
所々で防衛戦を抜かれた守備隊は、背後に回った第二二四海兵旅団と第五一二歩兵師団の攻撃で次々と特火点を落とされる。
キンッ
安全ピンを抜き、仲間に支えられながら特火点の銃座の開口部から投げ入れる。
「っ!?手榴ーー」
直後密室空間で手榴弾が起爆。中に居た機関銃手を殺傷する。
そして小さな機関銃陣地を制圧し、部隊は次の特火点攻略に戦場を走った。
この頃、上陸部隊からの通信を受けて海岸まで九〇〇mと言う、座礁寸前の場所まで駆逐艦と
駆逐艦には二門、フリゲートには一門が搭載されたこの砲はより正確な射撃を前線部隊に提供した。
あまりにも距離が近かったので、水平射による直接照準で砲撃が行われ、担当した砲手が『飛んでいるカモメすら撃ち落としてやる!』と言うほど興奮していた。
作戦開始から三時間、白魚上陸作戦は複数のビーチから行われており、最も被害が大きかったのはシラス・ビーチであった。
艦砲射撃が行われたが、崖をくり抜いて作られた掩蔽壕のお陰で沿岸砲の大部分が生き残って上陸用舟艇に襲いかかった。
この攻撃で海辺は赤く染まり、上陸部隊全体で三〇〇〇名以上の死者を出した。
死傷した兵士の千切れた肉が浮かび、赤く染まった純白の浜辺を見て『ブラッディ・シラス』と呼ばれていた。
白魚海岸近くには完成したばかりのエーテル・カノンが合計八門配置されていた事が、損害をより大きくした要因であった。
「グリットG55!四角のど真ん中にエーテル・カノンだ!」
無線でサイボーグ兵が怒鳴り、その横で電子戦兵が周辺に強力な電波妨害を展開していた。
「ぎゃあっ!!」
直後、エーテル・カノンが仰角を付けて対空射撃を行う。すると空を飛んでいた編隊が巻き込まれて蒸発し、一部は余波熱で離れていてもエンジンから火を吹いた。
「くそっ!」
「報告では他にエーテル・カノンは見当たらないそうです!」
「…そうか」
通りの角で隠れて砲撃を見ていたのは第一二二歩兵師団、隊長はカラン・マクスウェル少佐である。
先のクーデターに参画した部隊であり、武装解除の後、部隊の配置転換を命令され。今回の作戦の激戦地と予想されたマス・ビーチに派遣されていた。
「やるか?」
「我々はどこまでもお供します」
あまりにも大きい事から、大通りの交差点に設置されているその兵器を前にカランは聞くと、部下の歩兵は不敵な笑みを見せた。
「他に行きたい奴はいるか?!」
周囲で砲声が聞こえる中聞かれた問いに角にいたほぼ全員、約五〇名の小隊全員が頷く。
自分たちの部隊は他の部隊の中では一番突出して進撃を行なっており、最もエーテル・カノンに近かった。
「よしっ、俺が先頭で行くぞ!」
そこで彼は銃剣を取り出して装着すると、他の小銃を持っていた一般兵達も銃剣を取り付ける。全員が準備を完了した所でカランは叫んだ。
「突撃ぃぃぃいっ!!」
「「「「「うぉぉぉぉおおおおっ!!」」」」
そして一斉に飛び出すと、
彼らは対空射撃の為に最大まで仰角を上げており、接近してきた歩兵部隊を薙ぎ払うには余りにも距離が近すぎた。
「くそっ!」
爆発を起こし、襲撃に驚愕したサブラニエ兵。
爆発の影響で防楯の旋回装置が破壊されてしまい、中に居た操作員が死傷する。
すると守備隊の重量級サイボーグが持っていたガトリング砲の射撃を行う。
7.62mmの四本銃身のガトリング砲の攻撃を前に、カランは先頭を走って持っていた擲弾発射機を発射する。
「うおっ!」
直後、彼はガトリング砲の攻撃で腕を丸々吹き飛ばしてしまう。幸いサイボーグ化を受けていた部位であったので、地面に倒れて戦闘不能になるのみであった。
倒れる直前に発射した40mmの擲弾は吸い込まれるように展開していたエーテル・カノンの駐退復座機に命中した。
「なっ…!!」
「隊長!」
驚く守備隊、救援に来た重量級サイボーグは持っていた12.7mm自動小銃で同じサイボーグ兵やエーテル・カノン守備隊を撃破する。
「ははは…大漁だ!大漁だぞ!!」
部下に抱えられたカランは駐退復座機を破壊された事で、項垂れるように沈黙したエーテル・カノンを前に声を荒げた。
この都市に配備されていた最後のエーテル・カノンの破壊を皮切りに多方面でも上陸部隊が次々と上陸。
上陸より三日後、白魚地区は軍警察によって完全に制圧下に置かれ、次々と橋頭堡が築かれる。
四日後、サブラニエ地上軍は白魚地区からの全面撤退を開始。
作戦は成功し、後にこの地には総勢約一五〇万の兵士。一万輌以上の軍用車。一〇〇万トンの補給用物資が揚陸される事になった。
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