TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#207

『サブラニエ人民共和国連邦』

 

後に全体主義の失敗例国家として槍玉に挙げられる事となるその国家。

『始まりの火』で世界各地に放ったエーテル・ボンバは、落着した大地に多大な損失を出した。

爆発からしばらくした頃、世界各地で確認された現象がある。

 

「…」

 

ここはサブラニエのとある中規模都市。

無数のハイパービルディングが立ち並び、高架道路が街の道路を走り抜ける。

 

「…」

 

その窓ガラスの割れ、壁が一部崩壊したそのビルでは複数の兵士が銃やロケットランチャーを片手に息を殺していた。

 

「来たぞ」

 

その視界の先には都市迷彩の施された多脚戦車とオートマトン、そして最後尾にいる自走砲である。

完全機械化された戦闘部隊はこの街を含めこの戦域を次々と制圧しており、

 

パチッ!

 

兵士たちの間に少しピリピリとした静電気を感じ、着慣れた戦闘服が僅かに毛羽立ち始めた。

 

「雷か?」

「おい、今日の天気は晴れだぞ?」

 

何を言っているんだと言いかけた時、

 

ピシャァアアアッ!!

 

激しい音、閃光が隠れていた部隊に走る。

 

「「「「「っーーーー!?!?!?」」」」」

 

隠れていた部隊は全員が密室の中を迸った電流の攻撃で声すら漏れずに黒焦げにされる。

 

 

 

ビルの窓から出る黒煙を前に高架道路を進軍中だった軍警察部隊は感嘆の声を漏らす。

 

「すげぇ…」

 

上空をジャイロダインが飛行し、懸下した対戦車ミサイルを発射する。

 

「本当にサーモバリック要らずだぜ」

 

そこで擲弾発射機を持った治安官が高機動車に乗って後ろで立っていた一人の治安官を見た。

 

「ふぅ…」

「お疲れ」

「いえ…大丈夫です」

 

その治安官は軽く皮脂をかいて疲れた様子でぐったりと席に座り込んだ。

 

 

『異能兵』

 

 

この時、軍警察が投入したばかりの最も新しい兵種である。兵科としては歩兵科に配属され、索敵・擲弾兵としての役割を持つ兵士としてこの時期より最前線に投入されていた。

 

エーテル・ボンバの爆発で、世界中に発生したあの高濃度の活性化エーテルの壁。そしてその奥で生存していた人々。

あれほどの爆発で生きていた理由には、エーテル病患者が無意識の内に持っていたそれが理由だった。

 

尋常ではない被害を前にサブラニエも気づき、急いで編成と訓練を行ったが、最終的に戦争末期になって少数が配備されるに留まっていた。

 

「くそっ!」

 

持っている自動小銃の引き金を引いて路地に飛び出した治安官に向けてサブラニエ兵が攻撃をするが、

 

「なんだアイツはっ!?」

「攻撃が弾かれているぞ!」

 

その先では放たれた銃弾が装甲板に弾かれるように防いでいる一人の治安官の姿があった。

 

「どけっ!」

 

すると直後、重量級サイボーグのサブラニエ兵が片手に14.5mm自動小銃を持ってくると、その引き金を引いた時。

 

「っ!うあっ?!」

 

展開していた防壁を数発は防いだが、直後に障壁の限界が訪れてその治安官は吹き飛んだ。

 

「撃てっ!!」

 

しかし直後、また別の治安官が持っていたロケットランチャーを発射。爆発して榴弾の爆発と破片が兵士達を殺傷する。

 

「くそっ!」

 

次々と侵攻を受けている状況に、サブラニエ地上軍第二五師団の師団長は机をドンッと歯噛みをしながら拳を叩きつけた。

 

「どうしてゲリラ戦が成功していないのだ!!」

 

味方部隊や一部敵部隊がホログラムで映し出され、リアルタイムで更新される戦場地図を前に彼は怒鳴った。

 

 

『ゲリラ戦』

 

 

それはかつて世界の警察と呼ばれた超大国ですら苦しめ、最終的に敗北させた戦術であり、歴史ある由緒正しい戦闘方法である。

市街地やジャングルといった視界が遮られる場所で最も効果を発揮するはずのその戦い方は、何故かこの時代の各都市で失敗の兆候が見られた。

 

「前線部隊からの報告によりますと、どうやら敵部隊はこちらが攻撃態勢前に場所を発見し、電撃による攻撃を仕掛けて来ると言う…」

「何故だ!?あれほど隠匿したはずのエーテル・カノンが何故最初の砲撃と空爆でピンポイントで破壊されるんだ?!」

 

司令官はそこで最初の列車砲と空軍の空爆による、エーテル・カノンの全砲撃陣地の露見と破壊を前に狼狽えの兆候を示していた。

 

「軍警の新兵器だとでも言うのか?!」

 

ビルに隠れて見えないはずの地点からも攻撃され、特に狙撃手達の被害が尋常じゃ無いほど出ていた。

 

「また市街地で戦闘をしていた者の証言ですと、とある治安官が我々の7.62mm小銃弾の攻撃を全く受け付けなかったとの報告があります」

「またその防壁は14.5mm小銃弾で破壊するのがやっとのことという話も…」

「馬鹿な…」

 

部下からの報告を受け、アンドロイドは目を見開いて驚愕した。

 

まだこの司令官は話を聞いて理解してくれた部類であり、酷いと先に敵を発見される理由を理解も聞くこともなく兵士たちを前進させて壊滅状態に陥った場合もあった。

 

 

 

ともかく、この時期に投入された異能と呼ばれる力を用いる歩兵は市街地戦において抜群の有効性を示していた。

 

「凄いな…」

 

前線での快進撃を前に第七機甲軍団軍団長のエーリッヒ・ロンメルは思わず溢す。

 

「これも異能兵の賜物でしょう」

「そうだな…これほどに市街地戦と相性がいいのは予想外だ」

 

異能兵はその体から障壁・電撃・火炎など様々な未知の力を放出でき、その効果は見た通り市街地において絶大な力を発揮していた。

 

「唯一の欠点は、数が少ない事だな」

「何せ我が軍団に配備されたのはわずか小隊規模ですからな」

「…今後の作戦を考えると、異能兵の運用方針をまとめたレポートを提出せねばならんな」

「ですな。彼等の扱いは、我々の予想以上に難しいと言えるでしょう」

 

幕僚達とその様な会話を済ませると、そこでロンネルは活躍中の治安官達を前に戦車隊に前進命令を出す。

 

「戦車前進!」

「自走砲、撃ぇっ!!」

 

直後、自走砲大隊からの一斉射撃が開始。砲弾を前進する戦車大隊の頭上を飛んでいく。

 

「都市部からの迎撃を確認!」

「対戦車ミサイル発射を確認!」

「新たな熱源、数三!」

「迎撃!対空戦車はどうした!?」

 

喧騒が司令部を包み、指揮車を護衛していた対空戦車とオートマトンから対空ミサイルと機関砲が発射される。

 

ッ!ッ!

 

砲戦仕様のオートマトンが無反動砲を発射し、放たれたキャニスター弾が司令部に接近したドローンを破壊する。

元々火力強化目的で開発された車両だったが、思いの外使い勝手が良かったという理由で採用されていた。なお見た目からついたあだ名がガン○ャノンである。

 

 

 

「くそっ!」

「機関銃だ!」

 

市街地ではアパートの一室から銃弾が降り注ぎ、襲撃を受けた軍警部隊は瓦礫の影に隠れた。

 

「撃たれた!」

「痛ぇよぉ…!!」

 

襲撃を受け、地面に倒れた治安官達に一人配備されていた異能兵が言う。

 

「下がって!」

 

その直後、障壁を展開して銃弾が飛び交う中を走る。

 

「おい馬鹿っ!」

 

その行動に隊長は言うが、飛び出した彼女は平然と展開した障壁によって銃弾が弾かれて地面に落ちる。

 

「「っ!?」」

 

これにはサブラニエ兵も驚愕して一瞬攻撃が止まってしまった。

 

「っ!撃て!」

 

その隙に隊長は横にいたロケットランチャー兵に言うと、そのまま発射された榴弾がアパートのバルコニーごと吹き飛ばしていた。

 

「大丈夫ですか?」

「ああ…すまん」

「助かった」

 

救急医療キットの止血パッドを用いて患部の仕方を行う異能兵に引き摺られて救助された二人は安堵していた。

 

「異能って便利だな」

「すげぇぞ。小銃弾すら弾きやがった」

 

初めこそ見慣れない技に疑問視し、訝しんでいた彼等だったが、市街地戦で敵の襲撃から身を守られたり、敵の潜伏地域に先制攻撃ができたり、今のように障壁で守られながら安全な場所に移動できたりと、その活躍を前に異能兵を訝しむ声はだんだんと消えていった。

 

「ったく、勝手に飛び出しやがって」

「すっ、すみません…」

 

そこで医療兵に配属されたその異能兵に隊長が話しかけると、彼女は少々申し訳なさそうにしていた。

 

「…だがおかげでこいつらは生きてる。その礼はしておく」

 

その小動物のような顔を前に隊長はふと自分の家族を思い出した。

大半の異能兵は、エーテル・ボンバの攻撃から生存していた被災者ばかり。それゆえに数もまだ少ない異能兵は訓練を少しばかり行なった程度で前線に送られていた。

 

「はっ、はい…!!」

 

医療兵として配属された彼女は、強面で有名だった隊長に褒められた事で少し嬉しそうに笑みを見せていた。

 

 

 

 

 

軍警察の研究所にエーテルに非常に詳しい研究者達が居たおかげで異能に関するデータは余す事なく収集される。

 

「凄まじい効果だな…だが、」

 

その資料を送られたネクィラムであったが。彼は思いの外、異能兵という存在に否定的であった。

 

「これほどの効果だ。何かしら犠牲になっているに違いない」

 

無からな何も生まれないと彼は言い、同じ研究室にいたジョンもまた彼の意見に賛同していた。

 

「一部では火炎放射兵として使われているそうですが、この炎は一体どこから出ているのでしょうか…」

 

その後、彼等の研究室からそういった懸念をまとめ、異能の使用を控える様に記したレポートが提出されたが、ほぼ無視される形となった。

それどころか前線で大活躍し、一部治安官からは守護神の様に崇められている異能兵を相手に、軍事行動に支障をきたす様なレポートは書くなと上層部から叱責を受ける事となった。

 

 

だが異能兵が寿命を贄に異能を展開すると理解するまでそう時間は掛からなかった。

 

 

ある戦域において『豪炎』の異名を持つ事となったカーク・メイデン少尉は僅か二八という若さで戦闘中に死亡する事となった。死因は急性エーテル肺炎による老衰死。

彼はエーテル肺炎に罹っている以外至って健康体であり、このエーテル肺炎の症状は同様に戦闘時以外で死亡した異能兵にも確認され、異能兵は今次戦争だけで多数が死亡する事となる。

彼等異能兵が戦闘時以外で死亡した場合の平均寿命が二五歳と言うのが戦後、倫理的観点から大問題となった。

 

一回の攻撃で街一区画を蒸発させることさえできたその力は若き異能兵の寿命を削って世界に異能兵の代償を内外に知らしめる事となったのだ。




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