TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#210

ーー我々は世界唯一の核兵器被爆国であり、故に我々は核兵器を保有、管理する権利を有する。

ーー我々はこの兵器を国民の私有財産を守る為、正しい運用をすると約束するものである。

 

かつて、世界最初の純粋水素爆弾の実験に成功した、とある国家の代表が核兵器保有の宣言をした際の言葉である。

子供の頃、歴史の先生からこの話を聞いて、この世の何処に核兵器の正しい使い方があるのだろう、と思ってしまった。

 

おまけにその国家はかつて、非核三原則を宣言した平和国家であったと言うではないか。

確かに周囲の国際情勢に変化があったとはいえ、国内外から称賛されてきたその言葉を放棄した…いや、当時の人々を擁護するなら放棄せざるを得なかったと言うべきなのだろう。

 

「ふぅ…」

 

後年、優れた戦争文学作家として名を残すボーリッシュ・ハウンゼンはこの『南北戦争』に従軍していた。

彼は軍警察の歩兵の一人として参加し、第六方面軍第五軍団…彼等は十慶方面に派遣されていた。

 

「おい」

「っ!はい!!」

 

当時、まだ一七の若き青年であった彼は部隊長に叩き起こされた。

立哨の任務を受け、サブラニエ臨時政府首都の十慶を監視する任務を行なっていたが、途中で居眠りをしていたらしい。

 

「すっ!すみません!」

「あぁ、後で一発ビンタだがまず隠れろ。そろそろ『定期便』だ」

「はっ!」

 

そこで彼はそれを聞いて都市を囲うように掘られた塹壕の中に入る。

 

「…」

 

そして部隊長が腕時計の時刻を確認する。

デジタルではない、昔ながらの歯車で動く機械だ。かつて、この時計ですら精密機械だったと言うのだから不思議だ。

 

ッーーー!!

 

すると針が12の文字盤を巡った時、時間通りに自分たちの頭上から閃光が走る。

赤い光、まるで煉獄の地獄の釜を開いたときのような色だった。その正体は、高高度核爆発の光だった。

 

 

『高高度核爆発』

 

 

高高度の大気圏の空域で核爆発を起こし、その際発生する電磁パルスにより戦域一体を丸ごと通信不能にさせる。

南北戦争において、軍警察は一二〇発の純粋水爆を爆発させていた。その全てが宇宙要塞から放たれていた。

 

「各部隊との通信途絶しました」

「よしっ、これで無線は使えん。光ファイバーを出せ」

「はっ!」

 

そこで埋没した光ファイバーを使った野戦電話を繋げる。

 

「こちら、二一五歩兵小隊。司令部、聞こえているか?」

『こちら司令部、二一五歩兵小隊。十慶への攻撃はしばらく待機せよ』

「了解」

 

なるほど、()()()使()()()…ね。

 

 

 

現在、西側から十慶に展開している軍警察部隊。

山間の大河沿いに建造された港湾都市、十慶。

全てが迷宮のように入り組んだ建物(モノレールの駅がビルに突っ込むように建てられ、アパートの一階に降りたはずがいつの間にか商業ビルの屋上テラスにいるような構造)ばかりで、ここにはかつて二〇〇〇万人ほどの住民が暮らしていたと言うのだから恐ろしい。

 

サブラニエ臨時政府はパシリコ共和国との戦争継続を訴え、軍警察からの和平案を受諾することは無かった。

 

「どうして奴らは降伏しないのだ…!!」

 

サブラニエ臨時政府の返答を受け取った第六方面軍の司令長官は絶句し、机を叩いた。

 

「おそらく、まだサブラニエはエーテル・ボンバを有しているからなのでは?」

 

そこで彼の横に立っていたある男が少し思考した後に司令長官に言う。

 

「…それほどの威力があるか」

「えぇ…ところでクリンプトン上級大将。これが私のご友人からあなた方宛の郵便です」

 

そこでライル・ハウスルトン大佐は方面軍司令長官にある資料を手渡す。

 

「…ふんっ、お前さんは良い友人が居たのか?」

「どうか御贔屓に。我々は上級将校の身辺警護と防諜を行う部隊ですので」

「…」

 

報告は情報部六課からの報告書であった。

個人的な交流(士官学校の同期)の中に情報部六課に配属された者がおり、その良きライバル(ロト・フランツェ)から齎された手紙(報告書)は敢えてアナログなデータを使わない方法で行われた。

 

「記録はお切り下さると良いかと。何せ個人的な私信ですので」

「…」

 

つまりそれほどの隠匿必須の劇物(機密資料)と言うことになる。治安官に関しては前線に出る将校にも故意に電源を落とすことのできないカメラが支給されている。

しかしそのカメラはカメラをつけた防弾チョッキを外せば切れる。

そこでクリンプトン大将は部屋に戻って着ていた防弾チョッキを脱いでから郵便に偽装された報告書を読む。

 

「…」

 

そしてしばらく報告を読んだ後に軽くため息を吐いた。

 

「そんな事くらい分かっているとも」

 

いや、この場合は注意喚起をしに来た。と言うべきだろうか。

 

「ハウスルトン大佐」

「はっ!」

 

そこで彼はライルに報告書を返しながら答える。

 

「君の友人に言伝をしておいてくれ。今度もよろしく(パシリコの接触に警戒する)とな」

「了解いたしました」

 

表向き基地警護を担当するが、それが真っ黒な偽物である事は彼も十分理解していた。

 

「政教分離は民主主義の基本だ。そうは思わんかね?」

「えぇ、全く同感であります」

 

彼等はパシリコ共和国と共同戦線を張った事はただの一度もなかった。

 

 

ーーパシリコは敵の敵であって味方ではない。

 

 

彼等の考え方は宗教じみたものがあり、政教分離が当たり前と考える軍警察にとって、彼等は忌避すべき存在へと変わりつつあった。

 

「戦争で色々と変わったな…」

「えぇ、故に我々も三〇〇〇万の治安官の明日の飯を食わせる必要があると言うもの」

「…我々も国を持つべきかね?」

 

その時にライルは貼り付けた笑みをニコリと向けた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

軍隊というものは消費する生き物である。

たとえアンドロイドであってもパーツの交換や潤滑油などで消費される物資は多い。

 

今次戦争において軍警察は後方要員を含めて約三〇〇万の将兵を投入した。

これほどの兵力を投入していたとしても、世界的な秩序は保てているの言うのが、かの組織の異常性を示している。

 

『発艦用意〜!』

 

警報と共に空中空母(彩雲級)の二段式甲板が忙しなく動く。

巨大な船体の下半分はヘリウムが充填、ハリネズミのように防護兵装が取り付けられ、上半分は飛行甲板兼格納庫となっている。

二段ある甲板では、上が着艦・発艦が可能なアングルドデッキであり、下は発艦専用となっている。

開放式の格納庫から戦闘機(Ya-41)が発艦のために移動を行う。

 

『カタパルト接続。ブラスト・シールド展開』

 

この空中空母の利点として、常に空中に浮遊している事で戦闘直後の戦域において、迅速に臨時の移動可能な航空基地を設置する事が可能であり、また強力な防空火器はそのまま対地攻撃に利用可能であった。

 

『各翼・計器問題なし』

『了解、発艦を許可する』

 

航空管制塔の許可を受けると、その電磁カタパルトはわずか二秒で何十トンもある巨躯を時速二〇〇キロまで加速させ、飛翔して行った。

周囲を飛行駆逐艦(浜風級)に護衛されながら発艦と着陸を行うこの空中艦隊はノーチラス海の警戒任務と船団護衛に当たっていた。

 

『今回は第二七四船団の護衛だ。現在該当船団はノーチラス海第二警戒海域を時速十二節で航行中。周囲は第三護衛艦隊と飛行艇が展開している』

 

軍警察による本格介入に合わせ、空軍は海域警戒任務を海軍から一部引き受けており、洋上に展開していた。

空の艦隊は速度こそ航空機に敵わないが、軍艦ともさほど変わらない武装量で、航空機による広域索敵は不審船の発見を容易にしていた。

 

『着艦用意〜!』

 

第一甲板で哨戒機部隊が発艦したのと同じ時、第二甲板では任務を終えて帰投する四機編隊が着艦を行おうとしていた。

アングルドデッキに張られたワイヤーに着艦した航空機がフックを引っ掛けて急停止すると、すぐさま着艦した複座戦闘機(Ya-41-2)がどかされると、下の格納庫につながるエレベーターに牽引車によって引っ張られるとパイロットはそこでキャノピーを開ける。

 

「お疲れ」

「あぁ、お前もな」

 

そこで乗っていた馬科の獣人はアンドロイドと交代し、アンドロイドは機体と接続して情報の確認を行う。

今回はパイロットのみが交代する事となっていた。

 

「点検は?」

「軽くやってからもう一回飛ばすってよ」

「はっ、やってくれる」

 

そこで横にまた戦闘機が牽引されると、交代したパイロットはそこで離れてエレベーターが降下する。その間、整備兵たちが着陸したばかりの機体の点検を大人数をかけて行い、使えるかどうかの判断を下す。

 

「…よし、問題ない」

「飛ばせます!」

 

エンジンの予熱を気にかける様子もなく、彼等は点検を終えてエレベーターが格納庫に到着するとすぐに別の機体の点検に走り、下の格納庫に降りた機体は、前方にトレーに乗った各種兵装を確認した後に牽引車によって再び引っ張られると、その兵装の乗ったトレーは機体にピッタリとハマるとハードポイントにミサイルや爆弾が懸架された。

 

「こちらバングボーン1、武装懸架を確認した。発艦の許可を求める」

『同じくバングボーン2。武装懸架完了』

 

キャノピーを閉じ、ヘルメットをしながらアンドロイドは言う。

ここまで僅か十五分。着艦から発艦までのローテーションが組み上げられており、故に上部飛行甲板の発艦機能は緊急時に限られていた。

 

『司令部より緊急電』

 

すると「紫雲」のCICに連絡が入る。

 

『第二四七船団に攻撃の報あり。至急急行せよ』

「紫雲CIC了解した。すぐに届ける」

 

電話一本で被害のあった船団の海域に航空機を投入する。

特に最近、サブラニエ海軍の有する潜水艦よる通商破壊作戦は苛烈さを増しており、軍警察は大量の対潜哨戒機、空中艦隊の対潜装備増強により対策を講じていた。

 

「対潜魚雷発射用意」

「投下!」

 

対潜哨戒機(P-1)よりソノブイによる索敵で発見した潜水艦に向けて対潜魚雷が投下される。

 

「対潜ミサイル発射用意!」

「発射っ!」

 

そして襲撃を受けた船団からは護衛の駆逐艦から対潜ミサイルが発射される。

その背後では燃え盛る傾いたコンテナ船が三隻あり、乗組員が救命ボートを展開していた。

 

攻撃したサブラニエの潜水艦(865型)は魚雷発射時に哨戒機に発見され、対潜ミサイルや対潜魚雷の着水音を探知していた。

 

そして着水したそれら兵装は正確に捉え、より深みへと逃げる潜水艦の巨大な船体に命中した。

 

ッーーー!!

 

そして命中した事で、元々商船と比べても脆い船体の潜水艦は浸水し、船内の空気とエーテルが漏れ出しながら圧壊を始めて沈降していった。




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