ステンバルクの戦いで大敗北をしたパシリコ軍を前に軍警察は
『馬鹿め、欲張って戦果を独り占めしようとするからだ』
皮肉をたっぷりと交えながらお悔やみを申し上げ。宣戦布告を行った軍警察は嘆願書の送られてきた師団や艦隊を中心に此度の作戦に投入する部隊の編成を行なっていく。
特に空軍の圧が凄まじく、彼等は全てのサブラニエの都市を空爆する勢いで軍警察の最高会議で訴えていた。
『我々は千機の爆撃機で、千トンの爆弾を、千日投下したいものだ』
空軍元帥リチャード・ルメイの放ったその一言で、彼等がどれだけサブラニエに対して情熱を持っているかが言えるだろう。
そして『始まりの火』から一ヶ月後には、軍警察はサブラニエと対峙する方針を固めていたが、
「問題は、エーテル・ボンバをサブラニエがまだ保有している可能性がある事だ」
かの国がもたらした圧倒的な破壊力。もし前進中の部隊の頭上にそれが降り掛かれば…再びあの悪夢を見ることになるのかと、軍警察上層部は尻込みをしてしまう。事実、かの兵器の威力は自分たちが一番分かっていた。
「エーテル・ボンバの貯蔵施設を発見次第、宣戦布告を行う」
無論、この方針に空軍は文句を言った。『戦争に介入して捕虜から情報を得る方が早い』と。しかし艦隊を失った海軍と陸軍は戦力の回復を待ってからその方向で考えたいと言ったことで軍警察は静観の構えを示した。
開戦直前、緑化連合と企業連合の戦争は避けられまいと判断した軍警察は、各工廠に新たな増産を要求していた。
戦艦・陸上戦艦・飛行戦艦、今まで設計のみで終わっていたそれらの建造を指示していた。
そして彼等は静観し続け、その裏でエーテル・ボンバの所在地の捜索。戦力回復を行いながら虎視眈々と反抗作戦の準備を行なっていた。
ーー暴虐には暴虐を、我々は屈する事はない。我々は世界唯一の完全たる武装組織。
ーー民意を代表するのは我等なり。
そして二年の月日が経ち、それら戦時増産の戦力が回復した頃、彼等は断念した。
「仕方ない。開戦に踏み切ろう」
これ以上静観はできないと判断した彼等はサブラニエに対し、宣戦布告を行った。
そしてその直後、エーテル・ボンバ貯蔵所を全て破壊する為に用意した
「戦況は、まあまあだな…」
サブラニエ国内、滝之原平野に進軍する最新鋭の
「はい、現在第一四七二機兵師団がヤヌスラバード市外縁に展開。まもなく、射程距離に入ります」
「了解した」
そこで報告を聞いた彼女は軽く頷いた後に座っていた司令長官の椅子を立つ。
そして眺めているホログラムを前に無線を繋げる。
「旗艦秋津洲より各艦に通達」
彼女らは二台の
巨大な履帯で大地に轟音と振動、走行跡を刻みながら目的地に向かって前進を行なっていた。
「これより第五陸上艦隊は状況を開始する。各艦所定の砲撃目標に照準を行え」
そしてCICで治安官達は所定の作業を始める。
「砲戦用意!」
「各FCSの再確認完了」
「全砲揚弾。射撃用意!!」
CICでは治安官達が動き回って準備を行う。
ここはほぼ軍艦と変わらない構造なので、やろうと思えば海軍治安官もここに転属ができた。
「目標、ヤヌスラバード!」
「距離四万二〇〇〇、弾種榴弾」
長距離誘導兵器が使えない現状、比較的近距離から支援を行える陸上戦艦は陸軍侵攻の要であった。
「撃てぇっ!」
ッーーー!!
直後、先頭を進んでいた巡洋艦から砲撃が開始されると艦隊は一斉に砲撃を開始する。
今回のために
事前に軍警察はインターネット上にいずれの都市に爆撃するかを乗せており、今回の砲撃も事前に市に通達を行った上で砲撃を行っており、国際戦時法に違反していなかった。
「全車全速前進!」
「突撃せよ!」
砲撃の最中、都市外縁から侵攻を始める軍警察師団。
無論市街地から応戦があり、ミサイルが発射されるがオートマトンが25mm機関銃の対空射撃や多脚戦車のキャニスター弾によって撃墜される。一部は命中して大地に爆炎が巻き起こるが、直後に市街地に356mmの砲弾が叩き込まれる。陸上艦隊の支援砲撃である。
「だんちゃーく、今!」
トーチカですら何かしら損傷し、市街地のビルを薙ぎ倒し、着弾した場所では必ず小隊が消滅、中隊は壊滅、大隊は行動不能となる。
三割が現代戦において市街地に遥か昔は戦艦の搭載していたという大きさの砲弾が着弾すると、それはそれは酷い損耗率となった。
『第二中隊、通信不能!』
『第八小隊との連絡が途絶しました!』
阿鼻叫喚の地獄のような無線が司令部に届き、司令官達は軍警察の圧倒的な兵力に顔が土気色となる。
「…司令部からの指示は?」
「はっ!…第二八機甲師団は可能な限り前線を維持せよ。撤退は認められない」
「…そうか」
返答に肩を落とした司令官だったが、伝令兵には続きがあった。
「まもなく救援部隊が到着する。部隊は救援と共に反転攻勢にでよ。です」
「救援部隊だと?」
そこで首を傾げたが、そこで救援部隊の詳細を知ったとき。
「何と言うことだ…!!」
彼の顔は驚愕と喜びの顔に包まれていた。
ヒューーー
その時、自分たちも耳にするような風を切る笛のような音が聞こえてくる。
「っ…!!」
戦場に長くいると、その砲弾が何処に落ちるのか大幅な予想ができる。
「退避ぃっ!!」
後方で戦術的火力支援を行っていた自走砲部隊は、音を聞いて蜘蛛の子を散らすように逃げ出すとその直後に
ッーーー!!
巨大な爆発と土煙が自走砲部隊に着弾する。
「馬鹿野郎!何処見て撃ってやがる!」
無線機で隣にいたロケット砲部隊の司令官が怒鳴ると、背部の陸上艦隊は返答をする。
『こちらはただいま砲身冷却中。砲撃を行っていない』
「何?!じゃあ今のは…」
その直後、微かに遠く。自分たちの前方から巨大な砲声を耳にした。
「第二射、夾叉ぁ!」
「第三射、射撃開始!射撃開始!」
ゴォンと重い金属の動く音。砲身に仰角がつけられると交互射撃で短い砲身の、射撃を行わなかった方の装填済みの砲塔から砲撃が行われた。
前方に集中配置した背負い式の二基の533mm連装砲、艦橋周りに備え付けられた対空砲。
ッーーー!ッーーー!
液体装薬の爆発と電磁加速による砲身内加速補助。
軍警察のそれと違い、数に劣るので質に追求したサブラニエの有する陸上戦艦。
その砲弾は軍警察のものよりも圧倒的に大きく重たいもので、無誘導で尚且つ砲弾の硬い外郭により、対空火器による迎撃も困難であった。
「ゴング1より本部」
その砲撃を視認したある攻撃機パイロットが辛うじて繋がる無線に向かって叫ぶ。
「敵陸上戦艦を視認。方位二四〇。距離、二万三〇〇〇。うおっ?!」
直後、サブラニエの
咄嗟に回避したが、エーテル・カノンの熱波によりエンジンから出火。黒煙を吐いて、地面に緊急着陸をした。
「くそっ」
「敵パタゴニア級。砲撃を再度確認!」
展開中のドローンの熱源探知で確認した敵陸上戦艦を前に桜橋は軽く毒吐いた。
「サブラニエの陸上戦艦か…」
「敵、パタゴニア級。前進を開始」
市街地を進行中の味方部隊の頭上に降り注ぐ大口径榴弾。
「我々も前進する」
「はっ!」
そこで周辺に展開した戦車師団には市街地に集中するように通達し、砲身冷却を終えたばかりの砲塔が動き出す。
彼女は敵艦が求めている行動に乗るように、それでいて事前の策を打った。
「一応、ヘリオスタットの射撃を要請しろ!」
「はっ!」
そこで桜橋はある場所に展開中の通信隊を経由して連絡を取った。
その場所は、遠く海を超えた海野大陸。
高高度核爆発による通信障害の影響すら届かないその場所で、軍警察の治安官が射撃要請を受けていた。
「こちら、射撃指揮所。第五陸上艦隊、こちらはいつでも射撃可能、どうぞ」
『了解、攻撃座標はーーーー』
桜橋はそこで敵艦のいる滝ノ原平野の細かい座標を送る。
「座標コマンド入力」
「各衛星、移動開始」
そのはるか上空、衛星軌道では鏡の付いた多数の人工衛星が角度を変更する。
「射撃用意良し」
「射撃用意良し」
復唱して司令官は受話器を片手に言うと、「秋津洲」砲術長は言う。
『了解、こちらの指示で発射してください』
「了解した。発射ボタンは君に託す」
そこで司令官は近くにいた兵士たちに確認をすると、目の前の広大な広野に広がる無数の鏡の確認をしていた。
「ヘリオスタットの準備が完了しました」
「了解」
そこで砲術長が桜橋に言うと、彼女は軽く頷いてホログラムで地図を確認する。
「敵艦レーダーに視認!」
「射撃用意!エーテル・カノン発射用意!」
「了解」
三基の砲塔が旋回し、砲身が水平に仰角を下ろす。
「加圧エーテル装填!」
「エーテル薬包装填」
新型の砲塔に装備した新兵器は準備を終えるとすぐさま指示が飛ぶ。
「撃ぇっ!」
ッッッーーー!
艦隊から放たれた光線は
「初弾夾叉」
「流石だ」
すると返答と言わんばかりに小口径のエーテル・カノンの光線が飛んできて
「構うな!反撃に出ろ!」
そして発射されるエーテル・カノンが
「なっ…?!」
しかしエーテル・カノンの攻撃を
戦後、この正体は水であるとわかり。彼らはエーテル・カノンは水タンクを設置することで完全に防げると言うのを発見しており、戦後調査を行なった軍警察を驚愕させていた。
「どう言うことだ!?」
「くそっ!」
まだそのことを知らない桜橋は実弾射撃に切り替えると同時に砲術長に言った。
「仕方ない…
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