TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#213

「座標、現在も追尾中」

「天候良し。照射用意完了」

 

治安官は指揮所で確認を終えると、司令官は叫んだ。

 

「反射鏡面砲、発射ぁ!」

 

座標を入力し、発射ボタンを押した司令官はそこで今まであえてバラバラに反射していた、円形上に配置された約十万枚の鏡が一斉に中央部の塔に向けられると、眩い閃光を伴いながら集約された太陽光が鏡を反射して天高く飛翔を始める。

 

その光は宇宙空間を周回する人工衛星の鏡によって反射され、光線は天空を反射して最後に屈折をして別の地面に着弾する。

 

「何だっ?!」

 

その光線は平野を戦闘中であった陸上戦艦(パタゴニア級)の第二砲塔に命中すると、容易に天板を貫通した後に内部の弾薬に引火。爆発を起こして煙が上がった。

 

「第二砲塔爆発!」

「消火班急げ!」

 

砲塔が一瞬浮き上がるほどの爆発を引き起こし、陸上戦艦(パタゴニア級)は機関部にも影響し、速度が落ちる。

 

反射鏡面砲(ヘリオスタット)か…!!」

 

すぐにその正体に気づくと、その瞬間天空から二度目の光線が艦橋上面から貫通する。

 

「艦橋被弾!」

「CICに被害あり!」

 

二本目の光線は船体を貫通すると、必ず何処かに損害が出た。

 

「今日は調子が良いようだな」

 

ほぼ最大出力で照射される様を見て桜橋は言う。

反射鏡面砲の弱点としては天候に左右されやすいというものがあり、厚い雲が覆ってしまうと太陽光が阻害される為、威力が大幅に落ちてしまうという、もしくは発射できないと言う欠点があった。

 

しかし今日は雲一つない快晴で、遠く離れた海の大陸からの光の杖は陸上最強級兵器を串刺しにしていた。

 

ッーーー!!

 

しかし生き残っていた第一砲塔から砲撃が飛び、その砲弾は「秋津洲」の対空砲に命中した。

 

「っ!!」

 

車両全体が激しく揺れ、直ぐに確認を取らせる。

 

「被害報告!」

「第一対空砲被弾!」

「対空砲群に被害が出ています!!」

 

被害を受け、彼女はすぐさま応戦を再開する。

三台から放たれる砲弾やミサイルはすでに平野に停止した陸上戦艦(パタゴニア級)に命中していく。

 

「第三射、夾叉!」

「交互撃ち方やめ!全門斉射に切り替える!」

 

艦隊はこのまま陸上戦艦(パタゴニア級)を叩き込みに入り、炎上する陸上戦艦(パタゴニア級)を見る。

既にほとんどの火器が使用不能であり、反撃の様子もないそれを前に桜橋は言う。

 

「敵艦に発光信号は?」

「はっ!送っていますが、返答は…」

「そうか…」

 

その状況を聞き、彼女は少し考えて全艦に戦闘中止を下命する。

 

「すぐさま敵兵救護にあたれ」

「宜しいのですか?」

 

副長の問いに桜橋は帽子を深く被り直して答える。

 

「構わんさ。それに我々とて、死にかけの獣の肉を貪る獣ではなかろう?こんなことにかまけている時間すら惜しいのだ」

「…ですな」

 

艦長の意見に副長も納得しつつ、その真意を理解した。

 

 

ーーサブラニエの次はパシリコだ。

 

 

言外にその意味合いも込められているのだろう。

事実、軍警察はパシリコと共同するつもりもなく。おそらく彼等が求めていたであろう南側諸国への宣戦布告もない。

おかげで軍警察頼みであったパシリコ以外の北側諸国は南側諸国に対し、一部は和平交渉を始めていると言う始末。

 

「(我々の孤立主義も徹底したものです)」

 

どれほど軍警察と言う組織が期待されていたのかと言う話でもあるが、あくまでも我々はエーテル・ボンバを世界に放ったサブラニエが唯一の敵である。

車両に乗って出ていく救護部隊を見ながら副長のアンドロイドは心にそう綴っていた。

 

 

 

 

 

元々、サブラニエに傭兵は多く雇用されていた。

今はヴァイナハルテ誓約同盟と名を変えた小さな国家に帰属した黒鉄市。アリアドール・パシリコ・サブラニエ、周囲に囲まれた全ての国々が戦争当事国となり、傭兵ギルドと言う世界的に権威のある、戦争当事国としては利用しない訳がない組織があるからこそ生き残っているようなその国家。

故に彼の国は永世中立を宣言し、それに利用価値ありとみなした周辺国家はそれを認めた。

 

戦争開始時はパシリコ・サブラニエと大量の傭兵を募集し、中には傭兵だけで構成された部隊も存在していた。

 

傭兵ギルドは設立早々に戦争当事国から中立の為に動かざるを得ず。職員達は気が気ではない状況で業務にあたっており、その様を見ていたある被告人は新聞を読んでどうしたものかと考えていたとかなんとか。

 

しかし軍警察の本格介入を前に、その話を聞きつけた傭兵達は

 

「軍警だと!?畜生、俺たちはここで辞めさせてもらうぞ」

「馬鹿な!?まだ契約期間はあるんだぞ!?」

「馬鹿野郎!軍警相手に生きれるかよ!」

 

金は払わなくても良いからと、軍警察を前に彼等は脱走を始める。

軍警察の攻撃の高さは彼等が一番よく知るところであり、そんなものが自分達と敵対すると言うのは予想外であった。

 

これで大きく戦力を減らしたことが、敗因の一つであると考えられていた。

しかしパシリコについた傭兵も、それはそれで不人気だった。

 

「奴らはケチだ。俺たちのことを突撃させる肉壁程度にしか考えていないし、支払いが何よりもひどい」

 

争うことを忌避するパシリコでは雇った傭兵をすり潰すような使い方で前線に突撃させ、その癖支払いはごねにごねまくって延期滞納は当たり前のように行っていた。

 

『態々戦って生きることを選んだ連中だ。我々はその場所を用意してやったのにどうしてさらに金を払う必要があるんだ?』

 

とある政府高官は平然とそう言い放ったと言う記録が残されており、彼等がどれだけ傭兵と言う存在を下に見ていたかが見てとれた。

 

傭兵と言うのは端的に言えば戦って金を得る仕事。そんな彼らにとって重要なのは、自分の武器の手入れと報酬だ。

傭兵団のシステムが明確に定義され、傭兵ギルドによる傭兵支援システムも構築された今、傭兵達は別々の理由でパシリコとサブラニエの戦争に手を出すことは減っていた。

 

前金だけをもらい、契約した期間を戦おうとした彼等であったが、軍警察と言うのはそんな彼等ですら裸足で逃げ出したくなる、何者にも変え難い恐怖そのものであった。

圧倒的に質の高く揃った武器。自分達も軍警察から払い下げられた武器を多く愛用していた。大量に傭兵の武器界隈では出回るので、予備パーツも大量にある。そこそこな耐久力と火力があり、何より安い。

 

『まずは軍警の武器から、次に自分に合う武器を探せ』

 

傭兵の間にはこのような基本がある。新米の傭兵になった者は傭兵団に所属していなくともまずは軍警の武器を手に取るからそう言われている。

 

 

 

「ちっ…」

 

軽く舌打ちをして傭兵ギルド本部の巨大な掲示板を前に彼は軽く舌打ちをしていた。

新米の傭兵として一週間前にギルド証を発行してもらったばかりの彼は、割りの良いと思った仕事が見つからずに出て行こうとし、そこで多くの傭兵やサラリーマンが行き交う傭兵ギルドの一階の広間で立ち止まる。

 

「…」

 

そこにはある巨大な銅像が建立されていた。

かつて最強のオートマトン乗りの傭兵として名を馳せたその人。

その男は死する直前、自分の資産を全て投じてこの偉大な組織を作り上げたと言う。

 

「羨ましい…」

 

絶対に届かないであろうその光景。

人によって()()()()()()は妙に現実味があり、それ故に昔読んだ聖書の物語よりは実感が湧いていた。

きっとこの目の前の男は莫大な財産を有していたに違いない。でなければ、こんなデカい組織を作ろうと思わないだろう。

 

実質的に組織創設を指揮したのは、最後に彼の相棒であった男。

そしてその男は今、この銅像が建てられるほどの英雄を殺した疑いで軍警察に捕まった。

 

「…」

 

静かに見上げる彼は、少しだけその相棒の気持ちをわかったつもりでいた。

だからそのニュースを見た時、誰もが驚いていた中でどこか納得できるように大して驚きはしなかった。

 

多分、彼はどこかで羨ましかったのだろう。そして同時に分からなくなった。

どちらかと言うと、この目の前の男はオートマトンに乗ることは『ただ金になるから』乗っていただけなのだろう。

故に彼の動きは今も誰も再現できていない、天才肌のそれだ。

 

レッドサン、誰もが認める天才のオートマトン乗り。

当時の企業から引く手数多の存在であり、彼が敵にいるから戦闘を諦めた部隊もいたとか、その依頼料は依頼するごとに倍々で増えていったとか。

彼の活躍を聞いて誰しもが一度は傭兵と言う仕事に憧れる。かく言う自分も、彼の活躍に目を輝かせたことがあった。

 

まるで御伽話の英雄が現実に現れたかのような、そんな感覚だった。

 

「…」

 

故に分かる。この銅像はおそらく彼の望むものではない。

彼は基本的に表に出ることを嫌う人間だろうから。

 

彼は傭兵と言う仕事を、辞めたがっていたに違いない。

才能があって、それ以外で儲けられる方法を知らないから。だから傭兵をやっていた。

そんな雰囲気が彼の周囲にいた人たちの彼に対する印象から感じ取れた。

 

きっと、彼が死ぬことがなかったら。その儲けた莫大な遺産は残った人生のために使っていたに違いない。

普段から倹約家で、色気沙汰の話もなかった彼はいつも被ってたフルフェイスヘルメットの下で何を考えていたのだろうか。

 

「…」

 

今となっては分かるはずもないか…。

そう思った彼はそこで銅像を背にして傭兵ギルドを後にした。

 

 

 

 

 

しかし彼ですら思わないだろう。

 

この銅像はある傭兵(桜花の団長)が、かつて仕事仲間から受けた恩を返すため(嫌がらせ)だということ。

そしてそれに彼に世話になった(面倒事を押し付けられた)他の傭兵達が功績を称える(今までやられた腹いせ)ために建立した(敢えて目立たせた)のだと。

 

これほど素晴らしいことはない。彼は英雄だ。

開設式で銅像を前にそう言った張本人(サクラ・ハマダ)はとても良い笑みを浮かべていた。

 

同席していたたギルド長(ブルーナイト)曰く『あれだけは傭兵ギルドでも強く意見しなかった彼女がこれでもかと強く言っており、とても良い笑みであった』と、何か見てはいけないものを見たような遠い表情で回想していた。




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