TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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ス「世界には、自国よりも性能の良い戦艦を輸出用に作っちゃう国があるんだって」
ル「へぇ、どのような戦艦なのです?」
ス「英国で作られた金剛って言う戦艦なんだけどさ〜」

普通おかしいでしょ。いくら制約がないからってこんなことする?


#214

後年、ある歴史学者はこの南北戦争をこう述懐した。

 

『あの戦争は間違いなく、この世界を新しい時代に突き動かした。

確かに多くの人が死に、今もあの戦争で撒かれた火種は燃えている』

 

『しかし争うことはそれ以前からも行われており、ましてやその後の世界の事を考えると相対的に世間の治安は上がったと言えるだろう』

 

『はっきり言わせてもらうと、この世界に『良い戦争』『正義の戦争』なんてものは存在しない。どの戦争も偽善と謀略によって生まれたものだ』

 

『遥か中世の時代、貴族の嗜みの一つであった戦争が、産業革命による繁栄により市井に貴族の文化が流入したことで、戦争は英雄譚で語られるような輝かしく再編されたものでは無いと多くの人が知る事となった』

 

『故に戦争はそれ以降、暗い悲劇の出来事として扱われる様になった』

 

そう述懐する学者はそこである一冊の本を手に取った。

 

『故にこの本は一介の私小説ではなく、一つの歴史書としても捉えることができる。これには当時を生きた人々の生活が細かく記されているからね』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

軍警察が戦争に本格介入を行い、彼等は連戦連勝の勝ち星を上げ続けていた。

サブラニエを西側から攻め落とし、臨時首都に毎日爆撃機が飛来しては爆弾を落としていた。

 

ッ!ッ!ッ!

 

市を二分する河からは、河口からここまで遡上してきたミサイル艇(はやぶさ級)三隻が76.2mm速射砲の砲撃と搭載した後部の対地ミサイルで攻撃を行っている。

 

「砲撃要請!グリットーー」

「発射!」

 

直後、艦砲射撃を行われて船体後部からコンテナに格納された対地ミサイルが発射される。

 

 

 

空に地に、鉄の津波が襲いかかる。

 

 

ーー軍警察と言う名の、鉄の津波を。

 

 

サブラニエ人民共和国連邦臨時首都、十慶。

首都と副都を破壊されたサブラニエが作った最後の抵抗拠点。

街そのものが要塞と化し、建物全てが軍事施設として使えるこの街。

 

ヒューーーーッ!!

 

今日も爆弾を満載した爆撃機(P-1)が大編隊を組んで爆撃を行う。

都市全体に無差別に爆撃を行い、地上では多数の爆発音と建物が崩れる音がする。

 

「状況はどうなっている!?」

 

同戦域ではサングラスをかけた指揮官が怒鳴る。

 

「はっ、あの杉林から迫撃砲による攻撃を受けており…」

 

迫撃砲の音が響き、河を挟んだ反対から潜伏しているサブラニエ兵からの攻撃が飛んでくる。

 

「F○king Shit!!航空支援だ!無線を貸せ」

「はいっ!」

 

そこで指揮官は強力な無線機を有する電子戦兵に近づくと奪う勢いで無線に手を取って怒鳴る。

 

「ダブ4!あそこの杉林にナパームをぶち込め!」

『こちらダブ4、了解』

「石器時代にしてやれ!」

 

着陸地点を示す発煙筒が濛々と上がり、ティルトローター機が着陸を行う。

空では偵察機(一〇〇式司偵)が無線機を使って近くを飛行していた部隊に通報する。

 

『ホーク1、2。杉林にナパームをぶち込め』

『任せろ。やっつけてやる』

 

そこで都市近郊を旋回飛行していたある飛行隊がそのまま高度を下げる。

 

『杉林の迫撃砲を叩き潰す』

 

そして翼下に懸下したナパーム弾を再度確認してパイロットは言う。

 

『行くぞ、投下して脱出する。編隊を崩すな』

 

四機の編隊はそのまま低空で進入する。

 

『今から爆撃に向かう。目標到着まで三〇秒、下がってろ。派手に行くぞ』

 

そして味方部隊の顔がはっきりと見えるくらいまで高度と速度を落としてナパームを植林された杉林の真上に落とす。

 

ッーーーーー!!

 

そして広がる黒煙、爆炎。衝撃波までもが対岸の杉林に命中した。

 

「ヒュ〜」

 

思わず口笛で感嘆をもらした治安官が言う。

 

「いい気味だぜ」

「これで花粉症ともおさらばだ!」

「そりゃあ良い」

 

燃え盛る杉林を前に彼らは思った事を口にすると、遠くからは砲撃音が聞こえる。自分たちの自走砲の砲撃音だ。

 

「…」

 

ここは陸上艦が入れない影響で航空攻撃が主な攻撃方法である。

 

「来たぜ」

 

そして遠くから見えた機影を前に治安官達は先ほど掘ったばかりの蛸壺に入り始める。

 

「衝撃に気を付けぃ!!」

 

隊長が忠告を促すと、十慶上空に進入した輸送機(C-130J)は後ろのハッチを開いた状態で都市上空を通過するとはパシュートが展開し、パレットと共に投下された爆弾(BLU-82)はそのまま長い延長信管が地面と接触したことで中に大量の爆薬に点火。キノコ雲を起こし、凄まじい破壊力で近くにあった建物全てを破壊した。

その爆発を前にサブラニエでは軍警察が戦術核を使ったのではないかと間違った報告が上がるほどだった。

 

「うおっ」

 

その衝撃波は自分達の陣地にも伝わり、頭上を圧縮した空気が通過していた。

瓦礫も飛んできており、一部は彼らの蛸壺に侵入した。

 

「危ねぇな。おい」

「プッ、口に砂入った」

 

爆撃を終え、蛸壺から外に出た治安官達は銃を持って破壊された街を進む。

 

「…」

 

至る所で火災が起こり、ある場所では燃えるものすらなく火が消え、あらゆる建物が瓦礫になっていた。

 

「いつになったら…戦争は終わるんだ?」

「は?」

 

深夜、暗視装置を使って周囲の警戒を行う治安官部隊の一人が聞いた。

 

「だってよ、首都も副都もやったのに奴らは戦争を続けているんだ。よっぽど戦争好きなのか?奴らは」

「さぁな、俺に聞かれても困るぜ」

 

彼らは白魚上陸作戦では第三陣に選ばれ、橋頭堡を確保した状態で上陸を行っていた。

 

「無駄口を叩くな。俺たちは…」

 

ッーーー!!

 

すると直後、空に向かって赤色のレーザー光線が発射されると、空を飛んでいた輸送機の翼が斬り落とされて墜落する。

 

「くそっ!」

「行くぞ!」

 

彼らの目的は十慶を一日でも早く攻め落とし、サブラニエとの講和を始めること。

それが単独なのか全面なのかは相手に委ねれれる事だが、少なくとも彼らは第一陣と第二陣に大きな被害が出たことで、この戦場の最前線を任される部隊となっていた。

 

白魚上陸作戦は、事前の爆撃と欺瞞工作により三日で落とすことができた。その際上陸部隊第一陣は四割が死傷する事となり、第二陣では二割が損耗した。

 

「敵発見!」

「撃てっ!」

 

燃える瓦礫の中、サブラニエ兵の持つ携帯式対空レーザー兵器を前に治安官達は持っていた銃の引き金を引く。

火薬で初速をつけ、銃身で電磁加速された弾丸は容易にサイボーグを貫通する。

持っていた自動小銃で敵の小部隊を倒すと、そこで迎撃に当たった治安官は毒吐いた。

 

「くそっ、まだどっかに『巣穴』があったのかよ」

「本部へ、こちら九班。敵部隊をG43で発見。付近の捜索を要請する」

 

そこで死体となったサブラニエ兵を前に確認をする治安官。

 

『巣穴』

 

それは十慶に投入した治安官が、どこからともなく現れるサブラニエ兵相手につけたあだ名である。

先ほど制圧したはずの部屋や通りにいつの間にかロケットランチャーを持った兵士が飛び出して後ろから攻撃を仕掛けてくるのだ。

建物を瓦礫に変えたはずなのに、その瓦礫の下からサブラニエ兵士が出てきて奇襲をする。

衛星写真からもなぜそのようなことができるのか、すぐにはわからなかった。

 

このような現象は他の制壓したサブラニエの中規模以上の都市でも確認される事象であった。

しかし幸いな事に、なぜこのようなことが可能なのか、すぐに理由はわかった。

 

「嘘だろ…」

 

それは全くの偶然であった。

いつも通り爆撃と榴弾砲の砲撃を終えた後に、突入したある部隊が見つけたのだ。

 

「これって…」

「あぁ…線路だ」

 

砲撃で地面に穴が空いていて、そこにうっかりハマった治安官がいなければもっと時間がかかった事だろう。

 

「なんてこった…」

「奴ら、地下鉄を掘っていやがった!!」

 

彼らは地下を掘削し、そこに線路を引くことで極秘裏に軍用の地下鉄を建造していた。一部は大災害以前に建造された地下鉄トンネルを利用しており、そこを使って彼らは市内に兵を派遣していた。

当然、衛星写真から地下鉄の事は知られていない。しかし地下鉄の情報は戦前の軍警の情報にも確認されていなかった。

 

おそらく、企業連合は以前より軍警や緑化連合との対立を考えていたのだろう。

よりゲリラ戦がしやすいように徹底的に隠匿されたそれは、各地につながる地下トンネルを網の目のように作っていた。

その総延長は約一五六〇キロ、末端まで行くとその倍はあると言われていた。

 

「ここはまるでアリの巣だぜ…」

 

これに対し軍警察やパシリコは、発見した地下道に爆薬を仕掛けて坑道を落とす方法で対応していた。

地下はいつエーテルが噴出してくる分からず、危険であるため大災害以降地下鉄が作られる事はほぼなかった。

そんな危険を犯しても、サブラニエは抵抗基盤を戦前から作り上げていた。

 

「…はぁ」

 

ため息を吐いて彼らは見上げて十慶の破壊されたハイパービルディングを見上げる。

至る所の窓ガラスが割れ、一部ロケット弾の命中した後で穴が空いており、壁がごっそりと落ちていた。

 

「いつ見てもひどいな」

「あぁ、勿体無いぜ」

 

かつて企業連合が作ったのだろう超高層ビル。

企業連合は元々企業の集まり。つまり金はあるわけだ。

 

「奴ら、質は高いですからね」

 

そこで治安官は地面に倒れて死体の回収を始めている様を見る。

彼らは一人一人の装備はとても高く、一部は生命維持装置が機能していた。

 

「羨ましいぜ。まだ俺、生命維持装置なんて取り付けていねぇぞ」

「一般兵まで生命維持装置一部つけているぞ」

「羨ましい…」

 

ここで生命維持装置をつけた相手を殺すのは国際慣習法違反であり、軍警察の軍規にも違反する行為であるので彼らは生命維持装置が機能したサブラニエ兵を駆けつけたティーグルに載せていた。

 

「自由経済を尊重する全体主義とはね…」

「それ矛盾していませんか?」

「さぁな、俺に聞くな」

 

戦中、夜警国家として国防費以外に税金を徴収していなかったサブラニエ。

手厚い社会保障制度を導入したパシリコと違って、あくまでも自由経済による繁栄と国家が生産量を管理する全体主義を採用していたこの国。

 

「明後日には政府官邸に攻勢をかけるんだ。下手こいて怪我すんなよ」

「えぇ、生き残って勲章を掻っ攫ってやりますよ」

 

回収を終え、再びパトロールを再開する治安官に隊長は軽く鼻で笑う。

 

「はっ、やれるもんならやってみるんだな」

 

そして部隊はそのまま何事もなかったように歩き出していった。




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