ステーキを食べ終えた後も鉄板焼きを堪能したスフェーンとサラ。
あの後に出てきたニンニクと細切れ肉の焼飯は美味かった。
細切りされた大葉が良いアクセントとなってシメとして最高の出来上がりとなった。
油を使い、米を薄くコーティングしており、一つ一つがパラパラとスプーンから溢れる。
細切れにされた肉もまた下味としてつけられた塩胡椒が焼飯と合わさる。
デザートは季節のフルーツを使ったシャーベット。
今の時期は桃のシャーベットだった。
桃の果汁を混ぜ込んだシャーベットは甘く、冷たかった。
今まで食べてきた料理で温まった口の中をひんやりと冷ましていき、口の中であっという間に溶けていった。
「美味ぁ〜」
「お腹もいっぱいですわ」
お嬢様口調で話すサラに違和感を感じつつも、それが仕事人のそれなのだと直ぐに理解すると直後のほうじ茶を飲む。
「ふぅ〜…」
「大変良い食事でしたわ」
「ありがとうございます。お客様」
そこでサラはコックと軽く話しており、彼女は数回話した後に財布を取り出す。
「お会計をお願いしても?」
「畏まりました」
酒も提供された料理も全て完食し、満足げな表情でサラが会計を済ませる。
「この後はよろしくね?運転手さん」
「ゴチになりま〜す」
スフェーンもこんな食事を奢ってもらった手前、当たり前のように頷いて答えるとサラは当然のようにブラックカードを取り出して会計を行う。
「おぉ、さすがお嬢様」
「当たり前よ。ここはカード使えるんですもの」
二人はそこで支払いを済ませた後に店を後にしてエレベーターに向かう。
時刻は午後一〇時を回った頃、二人はビルの下に降りるエレベーターに乗り込んで下に降りる。
「ふぅ…」
「美味かった〜」
満足げに言う彼女は頭の後ろを簪で結っており、その簪はあの花火大会でも指した花火を模った簪だった。
「しかし意外と装飾品を持っているわね」
「えぇ、そりゃあ最近は誰かさんに言われて色々と揃えていましたからね」
そこで彼女はサラを見た後にスフェーンの嵌め込まれたイヤリングを見た。
「ふふふっ、あなたの名前の由来だから?」
「えぇ、目の色とも合いますからね」
「なるほど…」
スフェーンの石言葉は「永久不変」今の自分の状態にはぴったりとも言えた。
そしてエレベーターを降り、サラリーマンやレストランの客が行き交うビルの一階を移動すると、外に出てスフェーンの乗ってきたサイドカーに乗り込む直前にシガーカッターと葉巻、ライターを取り出す。
「えっ?吸ってたの?」
「あら、これを吸うのは私の楽しみの一つでもあるのよ?」
そう言って彼女は吸いかけの葉巻を先端を切り落として持っていた葉巻用ライターの火をつける。
「わぁ、さっすがお嬢様」
「金持ちになると、持ち物すら気に知る必要があるのよ」
サラはスフェーンにそう返すと、高級ライターで葉巻の先を炙る。
正直、スフェーンの使っているものとまた違う高級ライターだが、値段が一桁変わりそうな見た目をしていた。
「なんか…」
そして葉巻に火をつけ終え、葉巻に火をつけた彼女は優雅に煙を吐き出す。
その様を見てスフェーンは、
「昔いた、トミーガンを持って笑みを浮かべるブルドック顔の首相みたいだ」
そう呟くと、賢いサラは直ぐにその人が誰なのか理解した。
「あら、その人と同じ銘柄の葉巻を吸っているわよ?」
「Oh…」
彼女はそこでシガーリングの銘柄を見せた後に、軽く苦笑してしまった。
「あーあー、ロメオYジュリエッタだ〜」
「私の好きな銘柄。カバンの中に予備も含めて箱が入っているわ」
「ほぇ〜」
そこでスフェーンもバイクに跨ったまま持っていた煙草を取り出して火をつける。
「あなたが吸っているのはラキストか…」
「あれ?前に見たことありませんでした?」
「どうだったかしらねぇ…」
サイドカーに座り、食事を終えた二人はそこで優雅に煙草休憩をする。
「取り敢えず、目的地に到着した後の目的地は?」
「ふふ〜ん、そこは任せなさい!」
「…」
自信満々に行き先を言わないサラを前にスフェーンは嫌な予感を感じた。
「まさかまたお化け屋敷とか勘弁ですよ?」
あの後に自分達がシメられたことも含めて軽くトラウマもののあの事件の再来にならないよな?という意味を含めながらサラにジト目を向けると、彼女は言う。
「大丈夫大丈夫、幽霊屋敷じゃないから」
「はぁ…あなたが言うと不安でしかないですよ」
サラの調子を前にスフェーンは嫌な予感しか感じず、いざとなったらメアリーさんに通報して逃げるかと考えながら、吸い終えた煙草を地面に放り投げる。
「んじゃ、吸ったまま移動しますか?」
「えぇそうね。葉巻って消えるのにも時間がかかるし」
「タバコと比べ物にならんくらい葉巻って香り強いですね」
そこでスフェーンは葉巻を吸っているサラに言うと、バイクのエンジンをかける。
「えぇ、部屋に戻ったら吸ってみる?」
「今は遠慮しておきます」
葉巻は煙草と吸い方が違うので、煙草の要領で吸うと確実にむせてしまう。なのでスフェーンはそこで丁重に断るとヘルメットを被ってサイドカーを走らせる。
「風が気持ちい〜!」
「走ってんのに葉巻吸えるのえぐいって!」
サイドカーは信号の前で停車するとそこで歩道を多くの人々が行き交う。
戦争が終わったことで世間的には歓喜の声で湧いており、国の統治下に置かれた企業の会社員達はこれからの戦後復興による政府からの発注を前に準備を始める。
「エーテル・ボンバで破壊された大規模都市は、一番最初に復興作業が始まっているそうね」
「逆に徹底的に破壊された都市が一番後回しにされるのがね…」
戦争が終わり、本格的にエーテル・ボンバによる被災都市の復旧作業が開始される。
「トリアージと同じよ。あれも重傷患者から運ばれるでしょう?」
「なるほど分かりやすい」
元々、軍警察は以前から調査の為に都市に部隊を派遣しており、軍警察が投入した異能兵の存在を知った各国でも異能兵の確保の為に被災都市に積極的に国軍部隊を派遣していた。
「あっ、ちなみに仕事を受けながら目的地に向かいますので。そこのところ宜しくです」
「えぇ、分かったわ」
そこでスフェーンはサラからの了承を得ると、信号が青になったのを確認してサイドカーを走らせた。
その後、スフェーンは運輸ギルドにて仕事を受注し、注文の
「やれやれ…」
「最近はこう言った仕事が多いの?」
「えぇ…軍警からの払い下げ品とかを国軍が購入しているらしいですよ?」
クレーンに吊り下げられ、汚れ防止と武器の詳細の判明防止の為に幌で覆われており、積載されていく様をスフェーンとサラは二人して吸いながらその様を見ていた。
「なるほど…これの行き先は?」
「アンセトル連邦共和国です。国境付近の街で荷下ろしします」
そして荷物の積載を終え、十一両全てとレンタルした貨車編成に依頼物がずらりと並ぶ様を見る。
「うわ〜、壮観ね」
「えぇ、そりゃあね…さっ、時間ないんで出発しますよ」
「オッケ〜」
そこでスフェーンに続いて部屋に入る。
「しかし良い部屋になったわねぇ」
「あそっか、サラさんは前の部屋を知っているのか」
そこでスフェーンはあの大改造以前の部屋を知っているサラをはと思い出す。前にあった時も中に乗せていなかったかと思った。
「そうよ〜、あの豚小屋みたいな部屋〜」
「おい豚小屋言うなや」
旅客キャビンの中、二人はそんな掛け合いをするとそのままスフェーンは運転台に向かう。
「出発線移動。信号良し」
そこで信号の点灯が切り替わるのを確認し、閉塞と分岐点の確認を終えると列車はブレーキを解除してゆっくりと構内を移動する。
「閉塞良し。分岐点通過」
遠くで管制塔のように高い場所にある司令所が通過していく列車の確認を機械と目視の両方で行う。
『司令所より列車、分岐点通過を確認。出発線に移動を許可します』
「了解、出発線に移動します」
スフェーンはそこでマスコンとブレーキを操作して列車を出発線まで移動させる。
『出発の許可を確認。スフェーン、三分後に出発してください』
「了解」
そこで司令部から本縁に進入する貨物線からの進発時間を受け取ると、そこで同じように出発を待つ他の列車を確認する。
「貨物列車って乗り心地悪いわねぇ」
「当たり前ですよ。旅客便と違って乗り心地なんて考えていませんからね」
運転室に出てきたサラにそう返すと、列車は出発の許可が降りたので加速を始める。
「出発進行〜」
深夜、前照灯をハイビームで照らしながら列車は出発線から進発を始めた。
戦争のどさくさに紛れてデノミネーションを行い、かつての共通電子通貨からウィール通貨へと交換を行った鉄道管理局。
軍警察から委任という名の移管を受けた造幣局から発行されてくる通貨。
「ひーふーみー…」
深夜、金庫を開けてスフェーンはその新たに発行されたウィール紙幣の札束を重ねていた。
ポリマー紙幣に印刷された数字は一〇ウィール、輪に直すと一万である。
「あら、意外とお金持ち」
そんな金庫に入っていた金塊と札束にサラがベッドの上で座ってそんな事を言う。
「…あなたに言われてもなんか腹が立つ」
「あらなんてこと言うの?」
さらっと悪口を言われたサラは少し不満顔で返すと、スフェーンは逆に聞いた。
「…じゃあ今の保有資産は?」
「え?えーっとねぇ…」
そこで彼女の口から呆れる金額と金塊保有量を聞き、スフェーンはため息を漏らす。
「一応これでも自転車操業に近いんです。弾代も馬鹿になりませんし…」
スフェーンはそう言いながら持っていたパソコンのキーボードに数字を打ち込んでいく。
「まるで会社のワンマン経営ね」
「実際少し前の運び屋なんて個人営業ばっかりでしょうに」
そう答えるスフェーンにサラは聞く。
「あら、貴方まだ『携運』じゃ無いの?」
その問いにスフェーンはパソコンを見ながらサラに名刺を渡す。
携運とは事務所を持たない運送業者の事であり、言ってしまうと元運び屋が戦争で私掠部隊の襲撃で洒落にならない被害を受けたことから自然とできた共通コミュニティーの様なものである。
事務所を持たないので運輸ギルドの規定では運び屋扱いになるものだった。
「ん?何これ?」
そして名刺を受け取ったサラは首を傾げた。
「名前しかない名刺なんて初めてよ?」
しかも名前違うしと言い、彼女は名前以外つるんとした白い名刺を見ていた。
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