廃遊園地、そこで五人の犯罪者グループと出会したスフェーンは走っている最中に銃を逆さまに向けてスピードローダーを装填口に差し込んで装填をする。
「あそこだっ!」
ッ!ッ!ッ!
スフェーンは声が聞こえた方向に向けて銃口を向け、そこで三発引き金を引く。放たれた散弾は見事に空中に散乱し、そのスチール製の小球はボニータ達に降り注ぐ。
「うおっ!?」
「くそっ!」
散弾の一部が命中し、サイボーグ化された胴体に穴が空いて、そこから循環液が垂れた。
「やったな!」
傷を負ったクライドを見て、ボニータは怒りが頂点に達しており、顔まで赤くタコのように染まっているように見えた。
「大丈夫か?」
そんな彼女を怪我をしたはずのクライドが心配そうに話しかけるが、
「五月蝿い!私よりあの女を捕まえて!」
彼女はそう叫んで前を走るスフェーンを視界にとらえた。
「絶対に許すものか!!」
そこで彼女は引き金を引いたが、弾がなかったので苛立って散弾を装填していた。
「(くそっ、これの何処が簡単な誘拐だよ!)」
そして追いかける内心、彼女達の横でジョーンはそう毒吐いた。
この遊園地を根城に活動していた彼らがサラ達と出会したのは、本当に偶然であった。そろそろ拠点を移動しようかと考えていた時に、偶々二人が来た事で最後のひと稼ぎぐらいの感覚でサラの誘拐を画策した。
しかし今は…
「早いっ!」
「チッ…」
サイボーグ化と強化された足で時速八〇キロまで出せるクライドだったが、それでもスフェーンの速度に追いつかなかった。
二人を捕まえるのに手こずり、オートマトンを失う大損害を被っていた。
「どんな出力の足を積んでんだ!?」
少なくともこの速度を出せるということは、サイボーグ単体の出力の戦いでは敵わない。彼女はレーザー兵器も何処かに有しているらしく、それでさっきはオートマトンの頭を吹き飛ばされた。
そしてオートマトンの上に飛び降りた後、至近距離で頭部根本から散弾を叩き込んだ事でオートマトンは電源が落ちた。
「囲い込んで袋叩きよ!」
そこでボニータは持っていた散弾銃の引き金を引き、連続して射撃をする。
そしてほぼ速度を殺さずに曲がり角を曲がったスフェーンは、目の前でギギギと音を立てて動く大きな影を見た。
「っ!ナイス…!!」
「マジか…」
その正体は先ほどウレタンフォームを撃ち込んで止めたはずの複座式オートマトンだった。
ただ、ギシギシと音を立てているのでウレタンフォームを無理やり剥がして動かしたのだろう。所々ウレタンフォームの塊がこびり付いていた。
「無茶だろそれは…」
ッ!ッ!
スフェーンは半分呆れながら持っていた散弾を発射するが、流石にオートマトン相手に散弾では威力が乏しかった。微かにボディを凹ませたり穴を開けるだけで貫通はしなかった。
「足を止めろ!」
『了、解!』
すると後ろからボニータが叫び、これに呼応するようにオートマオンは大きく振りかぶった。
「おっと!」
そして腕部が地面を叩くと、アスファルトが捲れ上がりながら破壊されて、改造されて腕が頑丈に作られたそのオートマトンは続いて肩の無反動砲を発射。発射されたキャニスター弾で後ろの建物が穴だらけになった。
「あぶねっ」
そこで彼女は地面に屈んで前方に転がると、半転して仰向けになって、その瞬間に後ろに向かって散弾銃の引き金を引いた。
ッ!
そしてその銃弾は拳銃を持っていたジョーンの足を粉砕した。
「うあっ!?」
サイボーグ化された足で急速に近づいていたが故に、ほぼ至近距離で散弾の餌食となって両膝から下の脚が吹き飛んで地面に滑るように転倒した。
「っ!」
その瞬間、スフェーンは拳銃を取り出すとすぐさま転倒したジョーンに向けて引き金を引いた。
ッ!ッ!ッ!ッ!
放たれたホローポイント弾は中でキノコ状に裂けて変形すると、ジョーンのサイボーグに衝撃を与えて生命維持装置を作動させた。
「くそっ…」
この状態になると、サイボーグ化された部分が全く動かなくなる為、ジョーンは声だけを悔しげに漏らしていた。
「あーばよー、うおっと!」
そこでオートマトンの振り下ろし攻撃を軽々と避けた彼女はそのまま廃遊園地の奥に消えていき、それをボニータが追いかけた。
「そこで待っとけ。すぐに医者に運んでやるぞ」
クライドはそれだけ言ってボニータの跡を追いかけていった。
その頃、ある建物に拳銃を持って慎重にドアを開ける人影が一つあった。
「…」
男の名はバック・バロー、先ほどスフェーンの放ったウレタンフォームで身動きが取れなかったオートマトンの副操縦席に座っていた。
今はウレタンフォームが発泡した瞬間に隠れたサラを追って、ウレタンフォームを剥がすついでに機体を降りていた。
目的はこのビルに隠れたのを見たサラを追いかけて捕えるためであった。
「(何処だ…?)」
彼の目は暗視装置付きの義眼に換装しており、両腕もサイボーグ手術を受けていた。
今は、昔は事務所だった廃ビルに入って中をライトで照らしていた。腐った水の香りで鼻がやられるので嗅覚機能をカットして熱源探知を行っていた。
「何処に隠れた…?」
ライトを照らして廃ビルを徘徊していると、
「っ!」
「っ!?」
彼の背後からパイプ椅子を掲げて隠れていたサラが思い切りパイプ椅子を振り下ろした。
「ふんっ!!」
「ちっ!!」
振り下ろされたパイプ椅子はバックの腕で防御されると、パイプ椅子は貫通して粉々に砕け散った。
「っ!」
相手が怯んだ瞬間をすかさずサラは持っていた拳銃を至近距離で放ったが、
「うぐっ!」
「うっそ!?」
彼の腕で拳銃弾が止められてしまった。
彼の腕は、防弾仕様の特殊セラミック複合装甲を有した頑丈なものだった。
「この距離の45口径を止めるの!?」
「ブハハハハッ!勘が甘ぇよ!!」
すると直後、バックは拳を握ってサラに殴りかかった。
「ふおっ!」
咄嗟にサラは両手でその拳をギリギリで押さえ込んだ。
「っ!マジかよ…」
「くっ…!!」
華奢な腕部で自分のパンチを止められたことにバックは驚きながら直後のサラの足蹴りを交わす為に後ろに下がった。
「危ねえ危ねえ…足までサイボーグだったら死んでたぜ…」
「…」
バックはすぐさまサラの腕がサイボーグ手術を受けていることを感知した。
「金持ちはサイボーグ手術をしないんじゃ無いのか?」
「ご生憎様、こっちは仕事柄必要なものでして…ねっ!!」
直後、サラは事務所の机の端を持ってバックに投げつける。
「ふんっ!!」
事務所のソファーも片手で掴んで思い切り投げ飛ばすと、バックは投げられた机とソファをそれぞれ片手で掴むと、
「なっ!?」
直後に投げられた掃除用入れを目の前に目を見開いて、直後に防御姿勢をとった。
「くそっ!」
その隙にサラは部屋から飛び出して行き、バックも家具をどかして部屋を飛び出す。
「どっちだ?」
耳を澄まして足音を確認するバック。するとそこで上の方向で足音を確認した。
「ふっ…馬鹿め…」
勝ちを確信した彼はそのまま階段を駆け上がって上に向かう。
そして階段の一番上、屋上に繋がる階段の扉を勢いよく開けた。
ガンッ!「っ!」
その手には自動小銃が握られ、これは軍警察の押収品保管庫から奪った代物だった。故に彼ら五人は軍警察から指名手配犯にされ、名前と顔がホームページに載っていた。
「出てこい!逃げ場はないぞ!」
風の吹く屋上、そこでバックは慎重に警戒しながら左右に銃口を向けて引き金に指を掛けて一歩踏み出した時、
「っ!?」
「はぁっ!」
「あばっ?!」
外開きのドアの内側に隠れていたサラが思い切りドアを蹴飛ばしてバックの顔面にドアを叩きつける。
バックは顔面にドアを叩きつけられ、その勢いで階段の踊り場に叩き込まれ、ついでに鼻を痛めた。
「くそっ」ッ!!「うぼっ!?」
咄嗟に自動小銃の引き金を引こうとした時、ドア越しに大穴が空いて外からサラは23mmのバックショット弾を叩き込む。
「っ!」
ッ!! ガシャッ ッ!! ガシャッ ッ!! ガシャッ
フォアグリップを前後にスライドして装填と発砲、排莢のサイクルを四回繰り返す。
キィー…
すっかり大穴の空いたドアは静かに音を立てて逆パカすると、その奥から硝煙を登らせながら空になった散弾銃を両手に仁王立ちするサラがいた。
「…」
23mmの機関砲の銃身を流用した大口径散弾銃の威力をほぼ至近距離で受けたバックはよろめいて階段の下に転げ落ちており、弾の半分は建物の壁を穴だらけにしていた。
「うっ、がっ…」
所々で煙と火花を散らす彼はサラを見ると残ったエネルギーで体勢を立て直した。
「まだだ!まだ、ヤレる!!」
「…はぁ、無茶しちゃって…」
そんな彼に呆れた様子でサラは階段から飛び蹴りをお見舞いすると、その蹴りをバックは簡単に片手で押さえつけ、サラはそこを中心に振り子のように腕を前に突き出して落下した。
「っ!しまっ」
その瞬間、バックは彼女の意思に気づいて手を離そうとしたが、
「金をかけた義体を舐めないことね」
間に合わず彼女の拳がバックの腹部に叩き込まれると、ゴリラですらワンパンで気絶させられる威力でバックは建物の壁に打ち付けられた。
サラの装備しているサイボーグの腕は、見た目こそほぼ自然体の物と変わらないが、最高級レベルの義体であり、自衛用に頑丈に作られ、掴んだ相手に電気ショックを与えることもできる万能なフルオーダーメイドの腕であった。
「がはっ…」
そして頑丈な腕のその威力で生命維持装置が起動、彼の意識はそこでシャットダウンした。
「…ふぅ」
気絶し、力を失ったバックを前にサラは地に足をつけると、そこで腕に触れてバックの画像検索をかけた。
「…へぇ」
そしてそこで目の前の人間は軍警察の指名手配犯に指定されており、報奨金が出る人間となっていた事を知った。
「ラッキー」
サラは満足げにそう呟いた時、
ドコーンッ!!「…へ?」
爆発音が何処かから聞こえ、何事かと思いながら屋上に飛び出すと、
「えぇ…(困惑」
そこでは何故か戦場のように爆発と濛々と煙の上がる遊園地の姿があり、その姿を前にサラは困惑していた。
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