TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#224

廃遊園地で予想だにしないエンカウントとバトルを終え、スフェーンは涼しい顔でサラの元に戻ってくる。

 

「大丈夫?」

「えぇ…」

 

そこで重そうに彼女が気絶させたバック・バローを運んでおり、彼は大きく損傷していた。

 

「ほらっ、運んであげますよ」

「あ、ありがとう…」

 

そこで簡単にバック・バローを俵持ちをして肩に担いだスフェーンはそのまま他の四人のいる場所まで移動する。

 

「…ねぇ」

「ん?」

 

その途中、サラは自分が耳にしたあの爆発のことを問いただす。

 

「あれ何?」

 

爆発音を聞いており、おまけに室内に隠れておいた方がいいと言われたサラは、その通りにしてバック・バローを担いで下すのにヒーコラしていた。

 

「ただのロケット弾」

「絶対違うでしょ…」

「さぁ?」

 

サラのジト目に対しやや適当に返すと、スフェーンは他四人の回収に向かう。

 

「で、この後どうする?」

「軍警に突き出す」

「じゃなくて、どうやって帰るの?」

 

スフェーンのサイドカーは破壊されており、この人里離れた場所の廃遊園地から歩いて降りるのはまぁまぁ骨の折れる距離を歩く必要があった。

 

体の仕様でほぼ無限のエネルギーを有するスフェーンであれば強行して降りていただろうが、普通の血と筋肉で動くサラにとってこの行軍は大変な疲労を伴うものであった。

 

「え?そりゃあ軍警に…」

「ここ、いまだにジャミングが働いてて通報無理でーす」

「え?」

 

サラの言葉にスフェーンは心底首を傾げた。

 

「なぁーんで?」

「さぁ?私もどこからジャミングが出ているのかまでは分かりまへん」

 

オートマトンは機能を停止し、五人の指名手配犯達も捕らえたはずなのに機能しているジャミング装置。

 

「…もしかして」

 

少し考え、ピンと来た様子のスフェーンはルシエルに聞いた。

 

「(ねぇルシエル)」

『はい、何でしょう?』

「(ジャミング装置の発信源って分かる?)」

『逆探知であれば』

 

すぐにルシエルは返答すると、スフェーンはそこでジャミング装置の正体を思考する。

 

「(じゃあその方向を出せる?)」

『お任せを』

 

するとスフェーンの視界に矢印が現れ、その方法に途中で気絶した指名手配犯を回収しながら移動する。

その途中、サラと談笑と合わせながら。

 

「右目から照射してるの面白すぎるンゴ」

「ネット民発言やめーや。お嬢様でしょうに」

 

そう言いながら右目の義眼といった虹色のあの目から暗闇を照らしているスフェーンに、じわじわと笑いのツボを押されるサラを呆れた目で見る。

 

「ちょっと!ライトつけたままこっち見んな!うははははっw!」

「しょうがないでしょう?!」

 

先ほどはこの目があったから窮地を脱したというのにこの言種である。

 

「全く、酷いもんだよ」

 

そこでスフェーンはため息混じりに建物をすり抜けて出た時、

 

「おおぅ…」

 

そこでその姿を見たサラは思わずそう漏らす。何か見たくないものを見るような目で綺麗な亀甲縛りに猿轡をされ、後ろ手に縛られたブランチ・バローを見た。

彼女は明かりのない街灯に縛り付けられており、フガフガと何かを言いながら彷徨っていた。その顔色は軽く赤らめ、少し興奮しているようにも見えた。

 

「何これ…そう言うプレイ?」

「さぁ?」

 

縛った本人も訳が分からないと言っており、一人困惑一人唖然となりながら縛っていた縄を持って誘導する。

 

「主犯格二人は?」

「生きてると思う…多分」

「多分?」

 

残った指名手配犯は三人。一人は足を吹っ飛ばした後に拳銃弾を叩き込んだので、場所を覚えていた。

 

「ほら、ウレタンフォームぶっ放したからさ」

「あぁー…」

 

そこでサラは納得する。前回もそうだったが、ウレタンフォームに包まれた事で軍警察が救助に一苦労する羽目になっていた。そしてその後、ウレタンフォームを剥がして疲れた治安官から軽く嫌味を言われてしまったのだ。

 

厚さが十センチもあれば拳銃弾を受け止めてしまうほどの硬さを有するオートマトン拘束用のウレタンフォーム。剥がすのですら一苦労であるので、対人で使うと思わぬ事故を起こす可能性がある。なので軍警察の使用規範には『対人目的で使うな』と明記されていた。

 

「また怒られるわよ?」

「怒られた訳じゃないですー。前回は嫌味を言われただけですー」

「…貴女のその図太い精神力は流石ですこと」

 

右で俵担ぎ、左で変態の手綱を握っているカオスな状態のスフェーン。

一箇所に指名手配犯を集めるために遊園地を歩いていると、

 

「みっけた」

 

そこで地面に倒れて生命維持装置起動の証の電波を探知しながらウィリアム・ジョーンの姿を確認する。

足元の循環液の停止を確認し、生命に問題がないと判断した後に彼もまたスフェーンによって担がれた。

その時、両手を塞がれるからとブランチを繋いでいた紐をサラに渡そうとしたが、

 

「頼んだ」

「え?嫌よ、こんな変態を引っ張るの」

 

彼女は拒否の反応をしたがために軽い一悶着が起こったが、この時はサラが言葉で負けることとなって嫌々ブランチを引っ張った。

 

「ボニータとクライドは?」

「ん、あそこ」

 

三人を運び、最後に二人の居場所を確認するサラ。

所々焦げ臭い香りが漂い、視線の先には膨らんだウレタンフォームの山があった。

 

「あの中」

「わぁ…こりゃあ大変だ」

 

二人は一旦見なかったことにし、ジャミング装置の妨害電波の出ている方に向かう。

 

「あら?これって…」

 

そしてその先でジャミングを発していた正体を前にサラは軽く驚いた。

 

「まだ生きていたみたいで」

 

廃遊園地の入り口、そこでスフェーンは二人を地面に下ろした後にそれに近づいた。

 

「えーっと?」

 

入り口近くのモノレールの駅で擱座したオートマトン。元々はウィリアム・ジョーンの乗っていたオートマトンに乗り込んだ彼女はそこでジャミング装置を探すと、それは簡単に見つかった。

 

『システムにハッキングをかけました』

「了解」

 

そこでシステムの介入を行うと、ジャミングを行なっていたコマンドと電波発信装置を停止させる。

 

「あれだけ叩き込んだのによく生きてたね」

『システムはまだ健在です。何なら動かせますよ?』

「マジか」

 

するとルシエルはオートマトンのOSを書き換えると、ハッチが開いたままオートマトンが動き出した。

 

「わっ!?どうしたの?」

 

突然動いたオートマトンにサラが軽く驚いていると、

 

「いやぁ、なんかまだ動くらしいからね。ちょっと遊ぼうかなって」

 

スフェーンはそう言うとオートマトンを動かす。その滑らかな動きを見てサラも思わず声を漏らす。

 

「へぇ〜、操縦得意?」

「まぁ昔はよく乗っていましたからね」

 

と言うより、こいつが居なければ商売にならない仕事をしていた訳だし…。

今はもう遠い昔話になってしまったが、この名前を受け継ぐ前の事もよく覚えていた。

 

「乗ってみます?」

「え?何処に?」

 

既に軍警察に通報をして、スフェーンに気を遣ってお嬢様権限で表には出さないようなやり方をした彼女は首を傾げた。

 

「ほい」

 

ハッチを開けたまま、スフェーンはオートマトンの手を差し出した。

 

「乗ってみ?」

「…」

 

狭いオートマトンの手、しかしスフェーンの卓越した操縦技術を前にサラは手の上に立つと、オートマトンを動かしてサラは肩に立った。

 

「おぉ〜」

 

そしてオートマトンの肩から少し高い視線で廃遊園地を見下ろす。

 

「これ良いわね」

「なかなか味わえない景色ですよねー」

 

スフェーンもサラの思っている事が想像できて頷く。昔、自分も同じことを思ったものだ。

 

「これ歩ける?」

「良いですよ」

 

本来なら危険なのでやったら怒られるが、今は誰もいないのでオートマトンの景色を楽しんでいた。

 

「おおっと!」

 

オートマトンの歩行時特有の揺れを感じながらサラは普段感じない感触を面白がる。

軍警察が到着するまで二人は敵のオートマトン、つまり証拠品を使って遊んでいた。

 

 

 

 

 

「おおぅ…」

 

到着した軍警の治安官が開口一番に漏らした言葉である。

彼らの視線はブランチを向いており、内心そりゃそうだよと思いながらサラは治安官達に事情説明をする。

その後ろでスフェーンは燃え滓となったサイドカーを前に肩を落としており、駆けつけた治安官も少し憐れみの目線を向けていた。

 

「すげぇ…」

「ここまで綺麗なのは中々ないっすよ」

「レベル高けぇ…」

 

思わずそう言われながら縄を解いて手錠を掛ける治安官。ある人なんて思わず写真を撮ってしまって上官から引っ叩かれていた。

 

「サラお嬢様」

 

すると彼女に話しかける一人の治安官、彼女の知り合いの様子で敬意を持ってサラに声を掛けていた。

 

「あら、ハマー少佐。態々お越しになられていたのですね」

 

サラはそこで駆けつけた治安官を見ると、そのアンドロイドは装甲車に乗せられていくブランチを一瞥した。

 

「えぇ、何せ私に当てられた事件ですからね。彼らを逮捕するとなれば駆けつけぬ訳がありません」

 

通称、バロー・ギャングと呼ばれた五人は既に十三名を殺害。二〇件以上の強盗を行ってきた犯罪者であり、治安官も犠牲者に入っていた。

軍警察の仇でもある彼等は、軍警察の捜査網を潜り抜けてエーテル濃度の高い荒野を車やオートマトンで走り抜ける荒技で逃亡を続けていたために逮捕できなかった。

 

「我々も驚きです。サラ様から一報があった際は耳を疑ったものです」

 

ハマーはそこで運ばれていくボニータ達を乗せた装甲車を見送ると、そこでサラに確認を取る。

 

「我々が捕縛した、と言うことでよろしいのですか?」

「えぇ、捕縛金さえ貰えるならね。まぁ余り大事に出来ないでしょう?」

「ですな…」

 

彼等を逮捕したのが廃墟で遊んでいた有名人だと分かれば、色々と情報機関が探りを入れてくる事だろう。

おまけにサラの遊び癖が世間にバレると、またそれはそれで面倒なので彼女は知り合いの治安官に頼んでいた。彼等としてもあの悪名高きバロー・ギャングを逮捕したと言う実績が得られるのでこれを了承した。

 

「分かりました。バロー・ギャングの逮捕の詳細は、我々の方にお任せください」

 

ハマーはそう言うとサラに略礼をし、数々の証拠品や応酬品を回収して、サラ達は軍警察の車両に乗せてもらって遊園地を後にした。




皆さんの目を汚しますが…。
疲労スフェ

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虚無スフェ

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