TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#250

「ひーふーみー…」

 

使った銃弾の弾数を数えながらスフェーンは使い終わった薬莢を確認する。

今回使った弾薬は、小銃弾が五発。拳銃弾八発。これにより、持っていた手持ちの銃弾は全て使ってしまった。

ロックを外して弾倉(シリンダー)を横にスライドすると、蹴子棒(エジェクターロッド)を押して張り付いた薬莢を押し出す。

 

カランカラン

 

押し出された八つの空薬莢が薬莢入れに入れられると、そこで静寂に包まれた海底区画を見下ろす。

 

「バカですかあなた?」

「いや…それは…」

 

そして降りてきたカンシャク顔のユウナ様に説教を受けています。終わって早々に笑って、だがとてもよく感じる恐ろしい圧を感じた後に『正座』と一言言われたので従わざるを得なかった。

 

「こんな海底区画に一発でも穴開けてみてください?」

「海水がダバーですね」

「だから聞きます」

 

そこで一度深呼吸。

 

「…こんな場所で銃を撃って何を考えてるんです!??」

 

そして怒声。耳を絞りたくなる怒声が面と向かって放たれた。

戦闘が終わった後に階段を登ってエレベーターに戻った時に『まだ誰か残っているか?』と聞かれたので『死体だけです』と答えたところ、軽く頷いてから調査を再開することとなったのだが、ユウナ達が四人の死体を見た後に慌てて応援を呼ぶこととなってそのあとは面倒すぎて禿げそうだったことを記憶している。

あっ、無論四つの御遺体は回収された後に本人確認の記憶読み取りをした後にここで見つかった数多の死体とともに焼き場行きです。

記憶は…多分大丈夫だ。異能者の研究所に異能者が居てもおかしくないし。なんなら副所長のジョンも異能者だし。

 

「はい…申し訳ありませんでした」

 

正座からの綺麗な土下座。いっそ美しいとさえ思うほどの動き。

そんなユウナの説教を、誰も率先して助けようとはしない。おい、ジョン、ネクィラム、同室の研究者なら助けろや。

 

「うぅ…やられた…」

 

ビリビリと足が痺れるがために腰を痛めた爺さんのように脚を振るわせ、説教を終えたスフェーンは恨み目でジョン達を見る。

 

「私はわざわざ火中の栗を拾う勇気はない」

「ふざけんな!なんで命助けたのに叱られにゃならんのだ!!」

 

スフェーンは極めて不服な表情で文句を言う。

 

「スフェノス君。研究所で最も強い人は誰か、それをよく考えてくれ」

 

調査を行うネクィラムは言うと、そこでスフェーンは恐れている様子というか、触れざるもの的な様子で頭から湯気が立っているユウナを見る。

 

「少なくとも私たちはユウナが怒ったら手をつけたくない」

「おいっ」

 

つまり研究所で二人は何度か彼女をブチギレさせたのだろう。ユウナの逆鱗に触れさせ、いつものストレスで色々とタガの外れた彼女はさぞ恐ろしいに違いない。少なくともこの変態達が本気で怒らせないようにしようと努めるあたり、そういうことだろう。

 

「はぁ…全く、なんでこんな事になったのやら…」

 

時折、自分が言うのもアレだけどユウナが人なのかどうかわからなくなる。

 

「彼女に見つかった時点で運の尽きだな」

「冗談じゃないよ全く…」

 

横でケラケラと笑いやがる大馬鹿野郎(ネクィラム)はそこで海底区画の観測機器を手に取る。

 

「何をするの?」

「なに、なぜこの空間含めた地下空間が綺麗だったのかを調べるだけだ」

 

それが元々の調査理由だし、と言って彼はジョンとともに最下層から採取したエーテルを見る。

青い林檎や臨界エーテルなどの件で色々とお忙しい方々であるが、彼らは彼らでやりたいようにやって生きているのだろう。

 

「全く、仕事が多くて敵わないです」

 

ジョンのそう言う割には口元は笑っており、楽しんでいるようにも見えた。

スフェーンはこの海底区画の調査を行っている間、異変が起こらないかの監視を行っており、海底区画を出入りする日々が始まった。

 

 

 

軌道エレベータの復旧工事とスラム街の解体。そして換気による空気浄化の作業は進められていく。

 

「ふぅ…」

 

軌道エレベーターの足元では国軍の野外炊具を牽引した炊事自動車(九七式炊事自動車)が停車して治安官や兵士たちに食事を振る舞う。

スフェーンはその列に並んで兵士達と共に食事を受け取る。

周りがプロテクターや装備品で囲まれた中で、一丁の小銃を背負って白衣を纏っている彼女は明らかに異質であったが、同時に学者さんだからと言う理由で彼らは深入りする事はない。

 

「どうだい学者さん、下の方は?」

「まあボチボチってとこですかね〜」

 

近くの国軍兵士に聞かれてスフェーンはやや適当に返す。

あの後、海底区画に湧出していたエーテルを前に研究者と土木関係者達は大慌てでエーテルの湧出ポイントの捜索を開始した。

そして調査の後、幸いにもエーテルの湧出ポイントはすぐに判明し、問題なしと判断されたことで作業は再開することとなった。

 

「今日の飯は?」

「合成唐揚げ丼」

「うい〜」

 

そこで四人分の弁当を受け取ってスフェーンは施設に戻っていく。

スフェーンの格好はどう見ても科学者のそれとは乖離しており、実際海底区画にいたスフェーンと初見だったある科学者は少し疑問に思っていたが、ネクィラム達と話しているのを見て『ああ、あの研究室の人間なのか』と納得された後にバケモノを見るような目を向けられてしまった。解せぬ。

 

「お〜い、飯だよ〜」

 

まだ匂いの残るスラム街を抜け、綺麗な空気のある海底区画に入ったスフェーンは、そこで地下空間に数多の機材を持ち込んだ研究チームの一区画に入った。

 

「はーい」

 

そこでユウナの返事があると、そこで頭にでかいタンコブを作って首を引っ張られて出てくるジョンとネクィラム。

大方、飯を食いたくないと駄々を捏ねてゲンコツだったのだろう。ユウナさん、二人に対する扱い方雑すぎやしません?一応、エーテル学会では権威ある人なのよ?その二人。

 

「今日のお昼は何ですか?」

「合成唐揚げ丼だって」

 

そう言って机に昼飯を置くスフェーン。

 

「ほぉ、今日は唐揚げですか」

 

軽く感心しながらユウナはおっきな赤ん坊二人(ジョン・ネクィラム)を席に座らせると、

 

「レモンかけるよ〜」

「待て」

 

そこでスフェーンがついてきたレモンを勝手にかけようとした時、ジョンが真顔で聞いた。

 

「唐揚げにレモンだと?貴様死にたいか?!」

「はぁ?!唐揚げにレモンは定番でしょうが!」

 

ジョンの言葉にスフェーンは驚いた声をあげて軽く口喧嘩となる。

 

「五月蝿いです」

「「うごっ!?」」

 

そして大喧嘩になる直前に二人にユウナの脳天チョップを喰らって机に顎を当てる。

二人はその時の痛みに軽く悶絶しながら四人は昼の唐揚げ丼を食べた。

 

 

 

後の調査で、活性化エーテルには『有機物を吸収・分解する作用がある』と言う旨の報告書が挙げられた。エーテル病はこれに由来するものが原因であると言う事実も発覚する。

いつも自分達が使うただのエーテルにその様な作用はなく。また同時に臨界エーテルに関する論文も同研究室からは提出されていた。

 

ーー臨界エーテルを御する事は不可能である。

 

と言う結論と共に。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「車内でスモークを焚くとか、頭沸いてるんですか?」

「やぁ…その…」

 

そこでジェロームは治安官に説教をされる。

基本的に発煙弾というのは、酸素を消費して煙を出す。なので車内などの密閉空間で使うと、酸素濃度低下の原因となる。

また発煙弾の出す物質によって呼吸困難や炎症反応を引き起こすこともあり、まず発煙弾を車内の天井まで真っ黒になるまで濛々と炊き上げるのは御法度であった。

 

「すみません」

 

自身も発煙弾で黒くなったジェロームは頭を下げると、呆れたようにその治安官はため息を吐いた。

 

「全く…今回は死者が出なかったから良いですけど」

 

そう言って駆けつけた治安官達は輸送機(フライ・クレーン)に乗せられていく列車強盗達を見る。

今回の事件で、強盗達の死者は一人もいない。乗客達も大きな怪我をした者はおらず。運転手やトレインマーシャルも障がいが残る程度の怪我で終わった。

 

駆けつけた軍警察は、すぐさま強盗にあった列車の機関車を制圧。その後食堂車にて優雅に煙草を吸って休憩していたジェロームを保護。同時にその側で倒れている強盗団の姿を確認。

 

『この先にある強盗は全員倒したはずだよ』

 

彼はそう言い、治安官達は半信半疑であったが、行く先々で縄に縛られたり気絶した強盗の姿があり、それが本当であったと唖然となって理解した。

 

「すげぇ…」

 

思わずそれを見ていた治安官が言ってしまうほどには徹底して行われていた。

 

「流石、昔は名の通った傭兵ですね」

 

対応した女性治安官がジェロームを見た後に言うと、彼は軽く笑った。

 

「それほどのことはしていないさ」

「…」

 

その治安官は、ジェロームの事をニュースで見ていた。

正直、彼に対する世間的な評価というのは微妙な一言だった。

 

方や傭兵ギルドを創設した偉大な偉人として、方や相棒を謀殺したと裁判にかけられた被告人。

後者に関しては業務上過失致死となって処理がされ、その判決が却って怪しさを増すと言った意見もあった。

 

「ご協力。感謝します」

 

だが、目の前の一人は確かに強盗団を一人でほぼ制圧した強者であり、事件解決に命を賭して戦ってくれた勇敢な市民であった。

 

「どうも」

 

ジェロームは短く治安官に返す。彼がなぜこの列車に乗っていたのかは定かではないが、そんな時に列車強盗に出会すとはなんと言う不運か。

後で感謝状と共に勲章を贈られるはずだが、

 

「では同時の状況を記録するために、ご同行をお願いいたします」

「わかりました」

 

彼に下手な容疑をかけられないように、ジェロームに任意同行を願った。

一応彼は執行猶予中であるのでこれを拒否すれば『怪しい』とみなされ面倒なことになるのは確実。だから彼も断る理由はなかった。

そして軍警察のヘリコプターに乗り込んだ彼はそのまま離陸していき、その途中でふと思った。

 

 

ーーレッドなら、殺してしまったかもしれない。

 

 

ああ見えて命のやり取りには無頓着で、無頓着であるが故に強く、同時に容赦がなかった彼を思い出してしまった。




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