TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#258

はるか昔から、名物料理のミックスというのは行われてきていた。俗にいうフュージョン料理とか言われているアレである。

有名なところで言えばカレーうどんやカレー煎餅、カレーポップコーンとかがそれに当てはまる。…というか日本人、カレーを改造しすぎだろう。

あとカリフォルニアロールか。あれは何というか…宗教的理由なのは仕方ないのかも知れないが、元々の巻き寿司の生まれを考えると本末転倒にしか見えない。

 

「茶飯と胡椒飯を混ぜるのか…」

「あとは列車から持ってきた浅漬けと梅酒ですかね〜」

「梅酒?」

 

リヤカーにそんなものまで積んでいたか?と軽く首を傾げながら思い返し、そこでスフェーンの持ってきた荷物の中にあった比較的小さめの果実酒瓶を思い出した。

 

「ええ、列車のガレージに放置した五年もの。いかがです?」

「ふむ、それは美味そうだ」

 

自家製であるだろう梅酒を前にセントレジャーも少し楽しみになる。

 

「ええ、ちょっと自信作なんで是非」

 

デザート感覚でと言い、メイド服を着ている彼女はルンルン気分で料理を作っていた。

ぬるま湯で淹れた茶をそのまま洗米した米と共に炊飯器に投入。そして炊飯ボタンをタップして米を炊く。

出汁を作っている間、スフェーンは夕食の主菜を作り始める。

 

「今日は和食ですから…簡単に焼き魚といきましょうか」

「ほう…まあ好きにしてくれ。私は必要最低限の家事しかできないからな」

 

セントレジャーはなぜが自信満々にそう言い放つと、

 

「なんか…焼いたにんじん渡しても喜びそうですよね」

「そうか?俺は肉もっともってこいと思う人間だぞ?」

 

彼はそう言うと、そこで陶器の容器に具材を敷き詰める。

 

「オーブンでは何を焼くんだ?」

 

そこで火をつけてた薪ストーブを見て聞くと、スフェーンは答える。

 

「まあデザート…?」

「なぜそこで疑問形がつく…」

 

セントレジャーがややジト目になりながらスフェーンを見ると、彼は台所を後にした。

 

「やれやれ…」

 

軽くため息をついてセントレジャーは映画の準備でもしようと思った。

 

「さて、やりましょうか」

 

そしてやんわりとセントレジャーを台所から追い出した(と思っている)スフェーンは台所に戻ると、そこで袋詰めの塩やハーブ、ニンニクや卵を見た。

 

 

 

その後、8ミリフィルム映写機の準備をしていた所、スフェーンが現れて『お食事のご用意ができました』とむず痒くなる言い方をされ、その後に軽く彼女の尻を尻尾で叩いた後にダイニングルームに向かうと、そこで一つの盆に用意された食事を見た。

 

「ほぉ〜、美味そうだ」

 

胡椒飯と出汁、浅漬け、それと…

 

「これは?」

 

セントレジャーは目の前にある軽く焦げた白い塊を前に見覚えがあるのだが、のどにつかっかえて料理名が出てこなかった。

 

「牛の塩釜焼きでーす」

「おぉ、塩釜料理か」

 

そこで料理名を思い出すと、そこで彼女は木槌を取り出す。

 

「割りますか?」

「いや、やってくれ」

 

そこでスフェーンは木槌で焼き上がった塩釜を叩く。

傍にはしっかりと焼き上げられたニンニクとじゃがいもが添えられている。ネギや茄子といった食べられないものを避けており、にんにくも事前に食べれるかどうか聞かされていた。

卵白を混ぜて固められた大量の塩を叩き割ると、中からハーブと塩胡椒で味つけられた肩ロースのブロックが現れた。

 

「うん、いい色合い」

 

塩が焦げるまでしっかりと焼き上げた塩釜料理、中から現れた牛の肩ロースのブロック。たっぷりとハーブが使われており、ナイフでハーブと余計な塩を取り払うとそこでミートフォークとステーキナイフを使ってブロック肉を薄く切り分ける。

 

薪オーブンでじっくりと焼き上げた塩釜料理は最後に付け合わせを盛られてセントレジャーに出される。

 

「節制をしない料理は久しいな」

「チートデイってことで、どうですか?」

 

スフェーンはそう言い牛肉肩ロースの塩釜焼きを完成させる。

 

「どうぞ」

「うむ、いただこう」

 

そこで彼は手を軽く合わせると、メインディッシュを最初に噛む。

塩釜焼きの特有の表面のしょっぱさを舌に感じながら、その直後に肉に詰め込まれた旨みがそのまま凝縮して残っており、フォークが進む。

 

「美味い…これはビールがよく合う味だ」

「それは良かったです。一本開けましたよ?」

 

そこでスフェーンは栓を取ったエールビールの瓶を一本渡した。

おかわりもあると言い、しっかりと塩を除けた後はスフェーンも切り分けると席に座った。

 

相変わらず濃い色のサングラスをつけており、それで見えるのかと疑問に思うところがあった。

彼女曰く、オッドアイで片方の目の色が虹色とか言う異質な色で、義眼であると言う。

 

「塩釜焼きって、見た目の割に作るのは比較的簡単なので祝い料理とかにはいいですよね」

「確かにな。クリスマスにも合いそうな料理だ」

 

そこでスフェーンは胡椒飯の入った茶碗を手に取ると、先ほど出した出汁を注ぎ入れる。

この胡椒飯というのは江戸時代からあったという話がある。

欧州では黒いダイヤとまで評された胡椒だが、日本においては産地が近いことも相まって一般市民が買えるほどの量が流通していたと言う。

まあウニと同じで、胡椒が昔高かったのって移動の手間賃だし。産地が近ければそりゃあ輸送費とか安いよねという話なのだが…。

 

「ふぅ…お茶漬けと違う美味さですね〜」

「マキシマムを米にかけるのとほぼ同じだろう?不味い訳がなかろう」

 

胡椒特有のピリッとした辛さと、黄金色の出汁の甘味が程よく調和している。

 

「梅酒はないのだな」

「ああ、あれは甘いのでデザートに用意しています」

「なるほど…」

 

スフェーンの特製梅酒を前にセントレジャーは少し楽しみにしながら食事を摂る。

 

 

 

夕食後、食事を終えて片付けをするスフェーン。

 

「〜♪」

 

軽く鼻歌混じりに片付けを黙々としている間、ふと彼女は思う。

 

「ねえルシエル」

『どうしましたか?』

 

そこで長い事この体を共有する姉に聞いた。

 

「今さ、ふと思っちゃったんだよね〜」

『何をですか?』

「臨界エーテルの取り扱い」

 

そこでスフェーンは列車の金庫の中にある劇物を思い返す。少なくともポリ袋に入れられるべきではないような劇物であるが、臨界エーテルというのは戦争が生んだ産物であった。

 

『臨界エーテルは危険ですよ?』

「まあそうだけどね〜?」

 

スフェーンはそこで今まで集めたり送ってもらったエーテルを前に呟く。

 

『それに旅の目的をお忘れですか?』

「新しい体を作る、でしょ?」

『ええ、そのために臨界エーテルを集めたわけじゃありませんか』

 

ルシエルは今の旅の目的をスフェーンに伝えると、そこで彼女は言う。

 

「いやぁね、ちょっとルシエルと体分離した時のデメリットを考えちゃってね…」

『どうしてそれをこんな状況で考えたんですか…』

 

やや呆れながらルシエルはスフェーンを見ると、彼女は体をルシエルに預ける。

 

「え?今ですか?」

『だーって、ちょっと調べたいことあるし』

 

彼女はそう言い自己演算を始めてしまう。そこで彼女はルシエルがこの体から分離した際のデメリットを計算していた。

 

「はぁ、相変わらずの自由人ですね」

 

ルシエルは左右が反転した目で軽くため息をして皿洗いを行う。

 

「しかし、もう十年以上が経ってしまうのですか…」

 

そしてそこで時の流れを実感すると、少し懐かしくなった。

 

「懐かしいものです。あの洞窟から出る選択をとった貴女は…」

 

そこで皿洗いを終えると、ルシエルはメイド服のまま階段を登って割り当てられた部屋に戻る。

 

「はぁ…」

 

そしてベッドに座り込んで部屋に広げられた鞄を見る。

帰ってきた直後に鞄を広げてメイド服に着替えてしまったので、部屋では着ていたナッパ服や防弾チョッキが脱ぎ捨てられていた。

 

「全く…」

 

雑なスフェーンにため息をつきながらルシエルは脱ぎ捨てられたナッパ服を丁寧に畳んでいた。

ベッドには散弾銃や予備弾、拳銃が置かれ、少なくともセントレジャーが見たらびっくりするであろう景色が並んでいた。

 

「…」

 

自分が言うのもなんだが、メイド服を着ると言うのはなかなか手間だと言うのによくやると、ルシエルは思った。

 

「初めて着たのは…確かあの画家さんの時でしたかね」

 

あの時はまだ、少女以外の姿を持ち合わせていなかった時だったかと思いながらナッパ服を畳む。

 

「しかし、体を分けた時のデメリットですか…」

 

そして畳んだナッパ服を鞄の中に入れる時、ふとルシエルはスフェーンの懸念を振り返る。

臨界エーテルは、今この体を成しているエーテルを制御する上で必要な物質である。そしてこの体を作っているのは変質させた活性化エーテルも含まれていた。

 

「ふむ、これは考える必要がありそうですね…」

 

思っても見なかった事だったが、一考する余地はあるかもしれないと思っていると、

 

『おーい!準備終わったぞ〜』

 

下からセントレジャーが声をかけてきた。

 

「わかりました〜」

 

ルシエルは返事をすると、演算中のスフェーンを起こしにかかったが、

 

『ごめん、演算が終わるまで時間かかりそうだから』

「映画はどうされるのですか?」

『ルシエルが見なよ。私、昨日見たし』

「…」

 

スフェーンはルシエルにそう言うと、ルシエルは軽くため息をつきながら階段を降りる。

 

『ああ、夜食と梅酒忘れないでね』

「ええ、わかっていますよ」

 

ルシエルは頷くと、そのまま台所で梅酒を使ってオーブンで焼き上げたアップルパイ、果実酒瓶を持ってリビングに向かう。

 

「今日は…あれ?」

 

そこで用意されていたのが違う映写機だとすぐに気づくと、セントレジャーは説明する。

 

「これは昨日のと違って8ミリフィルムの映写機だ。昨日と違って電動で動く」

「へぇ…フィルム映画にも色々と種類があるのですね」

「ああ、8mmと35mm以外にも16mm、70mmなどもあるな」

 

フィルムをセットし、そこで電源を入れると昨日と違って全て自動で巻き取りを始める映画。

 

「これは?」

「『キングコング』だ。昔のパニック映画だな」

 

軽く説明を受けると、そこでルシエルはセントレジャーに果実酒瓶とアップルパイをテーブルに置く。

 

「ほぉ、アップルパイか」

「ええ、ついでにこちらの梅酒をどうぞ」

 

そこでルシエルは瓶を渡すと、セントレジャーは氷を入れたグラスにその梅酒を注ぐと席に座った。




しょっぱいと塩辛い、どっちが正しいのか迷いますね。


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