TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#269

「すげぇ滑らかに動いてる」

「あれで旧式かよ」

 

見ていた治安官達が思わずそう言うほどに上手い操縦。艀に取り付けた櫂を左右に振ってスクラップヤードにやって来るのは、先ほど狙撃を敢行したジェロームの操縦するオートマトンだった。

 

「おい、もやい持ってこいよ」

 

艀をオートマトンで動かすと言う滑稽だが、技術力がものを言う作業にそれを知っている治安官は舌を巻いていた。

 

そして艀はスクラップヤードに止めると、そこでロトが半ば呆れた様子でハッチの開くオートマトンを見ていた。

 

「お疲れ様です」

「なに、二発撃っただけだ。大したことはしていない」

 

乗っていた旧式のオートマトンと旧式の武器、足元に転がっている二つのプラスチック製薬莢。

 

「…」

 

間近で砲弾の着弾を見ていたヨークはジャケットを脱いで、ベストを羽織って降りてきたジェロームを呆然と見ていた。

直前で使ったカンプピストルの空薬莢を取り出し、拳銃を仕舞ったロトはそんなジェロームに呆れた表情をする。

 

「いや、五キロ圏内をレーザー測距なしで当たるのはどうかと…」

「そうか?」

 

ジェロームは慣れた手つきで艀を縄で接続すると、スクラップヤードに上がる。

 

そう、ブルーナイトの真に恐ろしいところはレーザー測距や後付けスコープなどを一切行わずにキロ単位狙撃を行える点だった。

これにより、敵はレーダー照射警報も、スコープの反射光も確認する事なく撃破されてしまう。ついでに対赤外線装備も纏うのでサーマルですら姿を確認できなくなる。

 

彼の持っていた40ミリ電磁加速砲はその能力をさらに助長させる事となり、戦場では気付いたら撃破され、また気付いても一方的に撃破されるので、不可視の弾丸と畏怖されていた。

 

レッドサンの方の名声があまりに強すぎるので掻き消されている感もあるが、それでも存在感を放っており、なんならブルーナイトの場合はレッドサンとは違って比較可能なのでどれだけ桁違いの能力なのか分かりやすかった。

なおこれに関しては本人が基準なので割とこの狙撃能力に関しては無自覚である。

 

「狙って撃つ。搭載カメラの望遠を使って訓練を積んだら誰だって真似できるさ」

 

軽く言うジェロームにロトは聞いた。

 

「今度うちにきて指導教官でもされてはいかがです?」

「この旅行が終わったら考えよう」

 

ジェロームは前向きに検討をすると軽く流すように答えると、そこでハイライトを取り出した。

 

「どうぞ」

「ああ、悪いな」

 

そこですかさずロトは持っていた軍警察の治安官全員にサバイバル用に配布されるオイルライター(ZIPPO)を取り出すと火を付けた。

 

「それで、状況は?」

「数名を拘束しました。それに所持していた通信媒体から追跡中です」

 

煙草を片手に話すジェロームとロト。

時刻は深夜二時、スクラップヤードには軍警察の部隊が駆けつけており、覆面パトカーや仮装救急車などに拘束した面々を連行していく。

案の定インプラントチップで検索を行うと、彼らはPMCの兵士だった。

 

「バーナード本人拘束と共に並行して作業を進めます」

「そうか…頼んだ」

 

ジェロームは煙草をそこで一本吸い終えると、そこでヨークを見て軽く頭を撫でた。

 

「よく頑張ったな」

「あっ…」

 

そこで呆然と立っていたヨークはハッと意識が戻ってジェロームを見上げた。

必要な人数の逮捕が終わったとは言え、ヨークの目的である連れ去られた子供達の行方はいずれも不明。彼らが見つかるまでジェロームの仕事は終わっていなかった。

 

 

 

「くそっ!」

 

その時、高級リムジンの車内でバーナードは悪態を吐いていた。

 

「使えない奴らめ!」

 

連絡が途絶え、その上でスクラップヤードの方が騒がしくなっていた。

軍警察とやり合ったのだと容易に推察できた。

 

「仕方ないか…」

 

バーナードはそこで新たなガラス基盤を取り出すと、そこで彼は呟く。

そのチップには他の企業の裏帳簿が記されており、これで司法取引をするかと考えていた。

 

「これで取引を…」

 

するとその時、車の窓がノックされた。

一瞬ギョッとなって横を見ると、そこでは警ら隊の制服を纏う女性治安官が居た。

 

「何事か?」

 

ガラス基盤をしまい、窓を開けて対応をする運転手に平静を装って話しかけた。

 

「はっ、ここは封鎖区画のようで、民間人の退去を促していると」

「そうか…」

 

警ら隊の制服を前に今一度、自分は指名手配になっていないかどうかを確認した後に運転手に話しかける。

 

「すぐに出せ」

「分かりました」

 

幸いなことに指名手配になっていると言う情報はなく、バーナードはそれでも警戒を崩すことなく車が走るのを見る。

アクセルを踏み、エンジンが回転数を上げて走り出すと、後ろにバイクを側に記している警ら隊の治安官。

バーナードはその動きの一つ一つが不審に思えてならない。

 

スクラップヤードをすぐに離れる必要があり、車は速度を上げて砂利道を土煙を立てて走る。

この埋立地は焼却場で発生した灰を流す事で作られており、用地はフェンスで区切られている。

角を曲がり、ヘッドライトが暗闇を照らした時、

 

「っ!バーナード様!」

「何っ!?」

 

横一列に並び、壁になるように止まっていた数台の車から複数の銃口が向けられる。

 

「バックだ!」

「はっ、はいっ!!」

 

慌ててクラッチを操作して運転手はバックしようとしたが、そこをすかさず白バイが封鎖し、乗っていた治安官はその手に散弾銃を構えていた。

一人は先ほどノックをしていた治安官だった。

 

『車のドアを開けて!外に出てこい!』

 

拡声器で治安官が叫ぶと、バーナードと運転手は車の扉を開けて外に出る。

 

「そのまま両手をあげて、後ろに振り向け!」

 

治安官が指示をし、バーナード達は誘導に従うと、近づいてきた治安官がタブレットを持って言う。

 

「バーナード・ジェイン。貴方を誘拐罪で逮捕します」

 

逮捕状に記された罪状に面食らった。

 

「児童誘拐?何のことだ?!」

 

てっきり賄賂の罪で逮捕されると思っていた彼は驚愕しながら手首に手錠をかけられる。

 

「離せ!どう言うことだ!?」

「連行しろ」

「はっ!」

 

喚くバーナードを他所に治安官はパトカーに押し込めると、スクラップヤードを離れるように走り出していった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、バーナードが指示を出して実行を行ったPMCにも強制捜査が行われるほどの大事件となった。

企業弁護士であるバーナードの自宅からは他にも大小様々な余罪が見つかり、それによると組織的に賄賂による裁判官や弁護士の買収が行われており、司法局の裁判官も数名が弾劾裁判によって裁かれると言う事態まで発展していた。

 

無論、彼の事務所と契約をしていた企業や個人もその巻き添えを喰らい、その事で追訴される事態も多く発生していた。

 

またバーナード本人に関しては、未成年誘拐罪で起訴される事が記事では語られていた。

 

「やれやれ、事件後の反響の方がデカすぎるな…」

 

軍警察の駐屯地近くのカフェで紅茶を嗜むジェロームは呟く。

基本的に彼は自分でコーヒーを淹れる事が当たり前なので、外でコーヒーを飲むことはない。

 

何せ、昔あるコーヒーショップでコーヒーを注文した際に、風味が死んでいるその味に絶句した彼がコーヒーを淹れた本人を呼びつけ、三時間以上の説教じみた講義をみっちりと叩き込み、それを見ていたレッドサンに絶句と呆れられてしまった過去があるからだ。

 

ただ一つ言わせてもらうと、それが紅茶や日本茶だった場合はレッドサンが逆に店員にあれこれ聞いた後、店を出てから『二度とあの店には行かん!』と一言大声で文句を言うのだ。大して変わらない気がするのは気のせいではないはずだ。

 

タブレットで記事となっているその時間を読んでいると、視界に電話のアイコンが入ってきたのですぐに応答する。

 

『どうした?』

『どうしたって…もうそろそろ時間ですよ。今どこにいるんです?』

 

ロトはジェロームに聞くと、彼は近くのカフェで休んでいると返した。

 

『ならすぐに来てください。貴方にも事情聴取しなきゃならないんですから』

『そうか、それは悪いな』

 

ジェロームは呼ばれた理由に納得すると、そのまま席を立って会計を済ませる。

そして駐屯地にすぐに戻ると、そこで待っていたロトから言われる。

 

「誘拐された子供達の行方は把握しました。既に保護も終えています」

「そりゃあ良かった」

 

めでたい話だとジェロームは安堵する。

あの時誘拐された三人の子供達は、抗命と減刑を求めたバーナードがベラベラと色々と話した事でどこに行ったのかすぐに把握できた。

幸いにも人質となった三人はとある医療機関にいる事がわかり、あと数時間遅ければ内臓を摘出される所だったと言う。

そして同時にバーナード本人の意図が容易に窺え、自分含めたロト達治安官が憤慨していた。

 

「子供達の健康状態は?」

「強いて言えば軽い脱水と軽度の栄養失調だそうです。今日、健康診断も終えて退院予定です」

 

事情聴取と言ってもほぼほぼ事前に話を聞いていたのでロトからジェロームにその後の顛末を話すだけで終わっていた。

 

「やれやれ、この四日で色々とあったもんですね」

「ああ、全くだよ」

 

事情聴取をしていた駐屯地の食堂をでながら二人は言う。

 

「ヨークは?」

「病棟の入り口に齧り付いているそうですよ」

 

少々苦笑交じりに彼は言うと、二人は駐屯地内の病院の入り口のベンチに座るヨークを見た。

 

「っ!オッサン!」

 

そしてジェロームを見つけると、嬉しげに駆け寄ってきた。

近くではロトの部下の女性治安官がヨークをみて微笑んでおり、世話を代わりにしてくれていた。

 

「ありがとう!」

 

そして満面の笑顔を浮かべて言うと、ジェロームは小さく笑みを浮かべると、ヨークの頭を撫でた。

 

「なら、今度は依頼料を払ってもらわないとな」

「…っ!!」

 

そこでヨークの顔が若干強張った。

そう、今回の依頼でヨークは子供達を助ける代わりに言うことを聞くと言う約束を交わしていた。それで契約としていたのをジェロームはしっかりと覚えており、また同時に何をされるのかと色々と覚悟を決めていた。

昔捨てられていた漫画のようなエッチな方向なのかとか色々と考えていると、

 

「私の孤児院に来なさい」

「…へ?」

 

ジェロームの要求にヨークは目を丸くしてしまった。




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