TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#270

予想外の要求にヨークは周りを思わず見てしまうと、ロトを筆頭になるほどと言った具合で全員が頷いていた。

 

「君、もしかしてエロ漫画みいたこと考えてた?」

「ちっ、ちげえし!」

 

ロトが軽く揶揄うと、ヨークは顔を真っ赤にして反論をした。

その反論にロトは少し笑った後にヨークに言う。

 

「この人、今は孤児院の院長をやっている人間なのさ」

「え?」

 

ヨークはやや驚いた顔でジェロームを見たが、そこで彼はロトが孤児である事を思い出した。

 

「この人がロリコンだったら、きっと寮母さんが薙刀持って追っかけまわされるだろうよw」

「散々孤児院抜け出して尻叩かれてたのはどこのどいつだ?」

 

呆れた様子でジェロームは聞き返すと、そこで彼はヨークに言う。

 

「まあそこは尻の青かった悪ガキって事で許してくださいよ」

「エロ漫画ばら撒いた本人が何言っているんだか…」

 

ため息交じりにジェロームは溜息を溢す。

 

「まあ、この際その分の清算だ。この子をイルカまで連れてけ」

「え?俺に引率させるの?」

 

ロトは豆鉄砲を喰らった顔をすると、ジェロームは爆弾を落とす。

 

「だっておまえ、孤児院のパソコンウイルスまみれにしただろ?」

「ぶふっ!?」

 

何年も昔の、子供の頃のカップケーキ事件と同じ位ヤバめの事件を掘り返されて吹き出す。

なまじそれでパソコンがお釈迦になったので、孤児院の中でも歴史に残る未解決事件だった。

 

「ま、まって!?なんでそれ知ってんすか?!」

「翔太が前に酔った時にボロってたぞ。なんでも他の連中とエロサイトを開いてやらかしたらしいな?」

「お、おのれ翔太…」

 

過去の黒歴史を掘り返され、ロトは顔を青くする。

 

「まあこれを黙っておくんだ。割りがいいとは思わんか?」

「あの、俺この後報告書書かないとなんですけど?」

 

バーナードの余罪が確定し、その他諸々の書類仕事が待ち受けている彼は激務確定のサービス残業になんとか撤回を試みた。

 

「なぁに、子供を送り届けるだけだ。簡単だろう?」

「畜生釈明もなしかよ!!」

 

簡単な司法取引を前にロトは自爆で項垂れていると、

 

「あっ、あの…オッサン!」

「?」

 

ジェロームの足元に立っていたヨークが少し言いにくそうに声を上げた。

 

「その…ヤク達も、連れてってくれねぇか?」

「…」

「頼む。俺の家族なんだ」

 

そこでヨークは顔を下げて頼み込んだ。するとジェロームは気前よく頷く。

 

「良かろう」

「っ!!すまねえ」

 

ヨークはほっと安堵すると、ジェロームはある約束をさせる。

 

「ならこれからはオッサンではなく院長と呼びなさい。良いね?」

「あっ、ああ…!!」

 

コクコクと頷くと、そこでジェロームはロトに言う。

 

「ロト、と言うわけで四人に増えるぞ」

「はぁ…分かりましたよ」

 

諦めのため息をついたロトは軽く後頭部をかく仕草をする。

なにせいきなり劇薬レベルの黒歴史を握られてしまったのではい・YES・喜んで!、しか返事が残されていなかった。

 

「よーし、孤児院の先輩として色々と教え込んでやるぞー」

「エロサイトの入り方か?」

「いや、孤児院の上下関係を教え込もうと…」

「阿呆か」

「いでっ」

 

余計な事を言いそうだったのでとりあえず脳天に一発食らわすと、ジェロームはウィール紙幣を一枚渡して言った。

 

「取り敢えず良さげな服をこれで買ってこい」

「はいはい、分かりましたよ」

 

紙幣を受け取ると、ちょうど病院から看護師に連れられて三人の子供が出てくると、ヨークはその顔を見て顔を晴れやかにして彼らに駆け寄った。

 

「…ふぅ、これで仕事は完了だな」

 

そして和気藹々とも言える嬉しげな空気がこっちまで伝わってくる。眼福である。

 

「で、ロト。そこで一つ頼まれてくれ」

「ん?なんです?」

 

そこでジェロームから話を聞いたロトは少し驚きつつも、昔のような悪戯小僧の精神が再び舞い降りてくると、うししと言った具合で承諾をすると、

 

「ならとびきりいいやつ着せてやりますよ」

 

ロトはクソガキが似合いそうな笑みを浮かべてヨークを見た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

数日後、アイロニー中央駅。

 

事件がまだひと段落する前、ジェローム達は駅の改札前でベンチに座って待っていた。

 

「遅いね〜」

「ね?」

 

彼の横では三人の子供達が座って来ていないあと一人を待っていた。

ジェロームの孤児院で引き取る事となった四人は、前にいた孤児院の事をよく思っていない様子で、ロトが気づいて気になって軽く調べたところ、孤児院が不正受給をしていた事が発覚。これにより、その孤児院には行政指導が入る事となった。

仕事が増えたと文句を溢しつつも、自分が孤児院育ちで、尚且つ孤児であるという事で必要な資料作成を半日で終わらせていた。

 

「あんまりフラフラするなよ」

「「「はーい」」」

 

ロトの注意に三人は頷いて返す。

ありがたいことに、三人はヨークを慕っていたおかげでヨークがいいと言ったならと言う具合で素直について来てくれた。

そしてこの面々はまだここにいないヨークを待っていた。

 

「兄ちゃん遅いね?」

「時間がかかってんだろ?」

 

ロトはこれから起こる事を前に少し肩を震わせる。クソガキ根性はどんな歳になってもあるんだなと、ジェロームはロトを見てつくづく感じていた。

 

「任せて大丈夫なのか?」

「ええ、優秀な俺の副官ですよ」

 

ロトが楽しみにしていると、遠くから私服姿の眼鏡をかけているロトの副官が現れる。その顔はジェロームも夕食を持って来てもらった時に覚えていた。

 

「あれ?兄ちゃんは?」

 

しかし見えないヨークの姿に首を傾げていると、

 

「ここにいますよ。ほら」

 

彼女はそう言って後ろに隠れていたヨークに手を回した。

 

「おぉ〜」

 

そしてジェロームは笑いそうになる顔を努めて押さえ込みながらヨークを見る。

 

「うっ、うぅ…//」

 

今の彼女は顔を真っ赤にして淡い桃色を基調としたフリフリのドレスを着ていたのだ。それを見た三人は驚愕する。

 

「え?!兄ちゃん女の子だったの!?」

「っーーー!!」

 

初手から致命打を喰らって悶絶して座り込むヨーク。

彼女の本名はディラニア・ドロテア=ヨーク。孤児院のあのカードで知ったが、ヨークは少女だったのだ。男っぽく接していたのは、恐らく弱く見られたくなかったが為だろう。

 

「おお、整えたら映えるじゃねえかよ」

 

ケラケラと笑ってロトは着替えた女の子らしくなったヨークを見ると、

 

「お、おのれ…!!」

 

ポカポカと彼の膝を殴っていた。

ヨークの衣装を整えたロトの副官、瑞浪はるなはクスクスと笑う。

 

「よくお似合いですよ?」

「畜生、どうしてだよ…」

 

項垂れるヨークにジェローム達は似合ってるというと盛大に逆ギレされて二人の脛を新品の革靴で蹴っ飛ばされた。足癖悪くってよ?

 

「さて、行くぞチビ達〜」

「チビ言うなし」

 

ホームに向かおうとロトが言うと、ヨークがカッとつい反論してしまう。

 

「じゃあ俺より身長高いか?」

「…」

 

その一言で解らされ、黙りこくるヨーク。

 

「って訳だ。行くぞ、お嬢様」

「その言い方やめろ〜!!」

 

ひたすらに揶揄うロトにいつか絶対復讐をしてやると心に誓ったヨークだった。

そして駅のホームの、大量に人が行き交う中でロトはジェロームに言う。

 

「ジェロさんとはここでお別れですね」

「ああ、世話になったな」

 

半地下のホームに降りて、二人の会話を聞いていたヨークがジェロームに言う。

 

「あの、オッ…院長!」

「?」

 

オッサンと言いかけたところを無理やり言い直してから頭を下げた。

 

「本当にすまねえ」

「…ふっ」

 

頭を下げるヨークにジェロームは軽く笑うと、彼女の櫛で整えられた髪を軽く撫でるように叩く。

素でよくできた子だと軽く感心する。

 

「なら、淑女らしく口調を整えてきなさい。今の君なら、その方が良く似合うだろう?」

 

彼はそう言うと、そのまま軽く手を振って歩き出す。

 

「孤児院にいる子とも仲良くしてやってくれよ」

「あっ、ああ…!」

 

ジェロームはそれだけ言い残すと、そのまま到着した特急列車に乗って行ってしまった。

 

「随分とあっさりしたお方ですね」

「あの人は昔からあんな感じさ」

 

ロトは言うと、横に立ってイルカまで付き添ってくれる瑞浪に言う。

 

「悪いな。今日休みだっただろう?」

 

ロトの副官を務める彼女は、実家が所謂良家と呼ばれる家柄の三女であった。赤毛の犬科の獣人で、ワシャッと耳を触られるとめっちゃ怒る。

 

「いえいえ、このくらいじゃないとチャンスがありませんし」

「そうか…ん?チャンス?」

 

どう言うことだと首を傾げると、彼女は言う。

 

「結構職場では人気なんですよ?フランツェ少佐?」

「へぇ、そうなのか。で、何がチャンスなの?」

 

瑞浪は驚くロトに言うと、彼女は続けて言う。

 

「と言うことで、私もそろそろ子供欲しいんで結婚してください」

「え?何その☆ダイナミック☆告白。ヤラセかなんかか?」

 

唐突な求婚にロトはヤラセかと思っていた。だが瑞浪の表情は本気だった。

 

「…え?マジで言ってる?」

「マジです。私もそろそろ寿退社したいですし、その年で佐官な時点でライル中佐と同じで出世株ですよ?」

「えぇ、うっそぉ〜…」

 

あまりにも唐突で淡白な告白が行われ、ロトは唖然とし、聞いていたヨーク達も自分たちの頭上で行われたやりとりにやや困惑していた。

 

 

 

その後、とある24系客車のB寝台に乗り込んだヨーク達。

 

「わぁー、フカフカだぁ〜」

「柔らか〜い」

 

イルカに程近い都市まで一気に乗せてってくれる寝台列車があったことに感謝しながら三段寝台のベットで柔らかいのかとヨーク達の生活に少し悲しくも思った。

 

「あんまり騒ぐなよ。個室じゃないんだから」

 

五人分のベッドを予約し、残り一人も今の所やって来ないのでロトは軽く溜息を吐きながら梯子を登って一番上のベッドに入る。

 

「結婚かあ…」

 

寿退社をしたいと言った自分の副官からの求婚にまあやぶさかでもなかったために頷いてしまったが、今はちょっと後悔していた。

 

「何悩んでんだ?」

 

すると梯子を登ってヨークが話しかけて来ていた。コラ口調、あとパンツ見えるぞ。

 

「いや、男の特有の問題さ」

「ふーん?」

 

よく分かっていない顔で傾げるヨーク。いずれ君にもわかるだろうよ。大人の悩みってやつさ。

興味なさげだったヨークは、そこでロトに聞いた。

 

「院長、どこに行くんだ?」

「さあね、俺にも解らんよ」

 

ヨークの持ち出した話題に、ロトは返す。まあ悩みを一旦放置できるから良いか。

 

「ただ、」

 

そしてほんの一瞬だけ、ロトの表情が固くなった。

 

「あの人にとって、とても大事な旅なんだろうな」

「…」

 

その一瞬を見ていたヨークは、そこでジェロームとロトの関係は複雑なものなのかと少し察する事ができた。




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