TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#280

港の倉庫を練り歩く旧式の軍用オートマトン。

そしてその側を飛ぶように走る少女。

 

「…」

 

一度撃ち切ったことで拳銃の弾倉をスライドさせ、八発の銃弾の薬莢を押し出してポケットの中に入れた。

使う銃弾は低殺傷弾の超硬ワックス弾。おかげで今の所誰も殺してはいない。

 

「ふぅ…」

 

そして一度大きめに息を吐いて深呼吸を行うと、その後背中に背負った散弾銃を両手に握る。

 

「さて、まだまだ敵は残っていますよ」

 

虹色の左目を持つルシエルが話しかける。

 

『ん、そうね。まだ人感センサーは反応しているよ』

 

スフェーンもオートマトンを操縦しながら頷くと、倉庫中の捜索を行う。

初手で踏んだ重量級サイボーグも生命維持装置が起動した程度で終わらせていた。

 

『よ〜し、オネーサンまだまだやっちゃうぞ〜』

 

そこで意気揚々にオートマトンを操って彼女は、そのそばで砲台の如く浮いている自動小銃三つと共に倉庫を歩く。

 

「っ!!」

 

すると健気にも倉庫を練り歩いていたオートマトンに、隠れていたチンピラの一人が持っていたカービンで銃撃を行う。

放たれた小銃弾は、旧式の軍用オートマトンのコックピットに命中するが、後の複合装甲に阻まれる。

 

「くそっ!くそっ!」

 

もはや自棄になって銃を撃ち続ける彼にスフェーンは憐んでいると、直後に

 

ッ!

 

ルシエルが散弾銃の引き金を引いて、放たれたゴム弾が銃を放った男の側頭部から右半身にかけて命中。そのまま悶絶して倒れる。

 

『ルシエル、その男倒れてない』

「分かりました」

 

スフェーンの報告ですぐにルシエルはかけつけると、悶絶する男に向かって懐からペン型スタンガンを取り出して首元に突き刺すと、身体中に大男すら気絶させられる電流が流れて倒した。

 

今のルシエルの姿は、ナッパ服の上に防弾チョッキを身につけ、頭にはガスマスク。背中にロケット弾と発射機、ポケットにマグナム弾、腰から散弾用スピードローダーを降ろしていた。

 

そしてまた一人倒したスフェーンは、オートマトンを操作して倉庫をゆっくり進む。

元々はみくりの倉庫で復活させた旧型のオートマトン。いくら古いとはいえ、複合小銃を撃つことくらいはできるので遠慮なく使わせてもらっていた。

 

『しかし不味いわね…』

 

だが、オートマトンを操縦していたスフェーンは今の状態を前に少し渋い表情を浮かべる。

 

『この機体、30mmの連続発射に耐えられないみたい』

 

この機体は古い第一世代型。当時使われていた武器よりも反動の大きい30mmと言う弾薬は、連続発射の反動で腕や腰部のパーツに負荷をかけていた。

当時の武器の一部では57mmと言う大きさの武器もあったそうだが、だいぶそれは玄人向けだと聞いただけで想像できる。

 

「そうですか…」

 

話を聞き、ルシエルは少し考えた後にスフェーンに言う。

 

「なら、倉庫から逃げ出した人員は一旦放置しましょう」

 

ルシエルはそこで、上空に展開した偵察ドローンから得た情報もまとめた作戦を伝える。

襲撃直後、この倉庫から逃げ出したチンピラも数名確認していた。しかし、彼らを追う余力はないと判断した。

 

「彼らは放置をしていても、治安官が監視をしているはずです」

『んん〜、チンピラってのは大変な事だね〜』

 

他人事のように彼女は言うと、オートマトンを操作して倉庫の掃討を行う。

旧式のオートマトンで、視界のカメラすら使い物にならない。なので視界はルシエルの目や、エーテルを含ませて代用した頭部カメラが代わりだった。

 

『囮になるから、迎撃よろしく』

「ええ、了解しました」

 

スフェーンが言うと、ルシエルは頷いて倉庫を警戒する。

倉庫のチンピラ達は、倉庫を蹂躙するオートマトンと少女に恐怖していた。

ほぼスクラップ同然に古い第一世代型オートマトンであるが、それでも拳銃や短機関銃しか武器を持たない彼らには効果覿面であった。

 

「うあっ…」

 

そのチンピラの中の一人。この組織のリーダー格の男は、匍匐でゆっくりと前に進んでいた。

深夜に強襲してきたオートマトンと少女。その時に放たれたロケット弾の攻撃と拳銃の攻撃で足が動かなくなっていた。

 

「くそっ…」

 

近くではオートマトンの足音が聞こえ、思わず男は息を潜める。

先ほど見たあの少女の眼差しは、男を怯えさせるのには十分だった。

 

「(いったい誰を相手にしたってんだよ…!)」

 

戦慄する男は内心毒吐く。すると、

 

カチャ

 

男の後頭部に固くて冷たい感触が触れる。

 

「っ!!」

 

そのよく知っている感触を前に、男は目を見開いて固まる。そして同時にどっと冷や汗が溢れる。

 

「よぅ、お前さん達だよな?昨日事故っていちゃもん付けてきたんは?」

「っ!し、知らな…」ッ!「ヒッ!」

 

すぐ真横を銃弾が貫通し、悲鳴が上がる。そしてその後に耳の方からズキズキと痛みが走る。生暖かい感触が耳を伝っており、血が流れていると言うのが理解できた。

 

「お、俺の部下だ!俺がやったわけじゃない!!」

 

男は弁明を行い、後頭部に銃口を当ててきた少女に言う。すると少女は気味が悪いほど怒気を見せる事なく頷く。

 

「そうかそうか、これはお前さんの部下がやった事と…」

「そ、そうだ…だ、だからっ!!」

 

少女に詰問されながら銃口を押し当てられる男。彼らの中ではすでに不良集団の名折れであったが、少女から感じるそこはかとない気迫からその問題はどこかに吹き飛んでいた。

慌てて釈明をする男に少女は言う。

 

「見逃してくれと?」

「…そ、そうです」

 

男は背後から感じる恐怖に、口調を変えざるを得なかった。今の状況、主役は彼女であり、また生殺与奪の権利も握られていた。

 

「はぁ…」

 

すると心底呆れた溜息を吐く少女は銃口で軽く小突いた。

 

「阿呆か、組織っちゅうもんは部下の手綱を握ってなんぼだろう?」

「…」

 

そこから説教をするように少女は男の背中に脚をつける。

 

「お前達、ここら辺のチンピラ何だろう?」

「ヴッ!?」

 

そして少し強めに背中にブーツが踏み込まれ、声を上げてしまう。

 

「お前さんの部下のせいで、こっちは仕事に支障をきたしてんだわ。落とし前、付けてもらわんとなぁ!」

「ウボァ!」

 

少女は再度背中を踏み込み、硬いブーツの靴底は簡単に男の骨に負荷をかける。

 

「リーダー!!」

 

すると一人の隠れていた仲間が飛び出してきた。

 

「バッ…!」

 

男は仲間の所業に言おうとする前、

 

ッ!!

 

先に少女が発砲。片手で散弾銃を放つと、飛び出してきた男にワイヤー弾が巻きつき、同時に身体に取付いたワイヤーに電流が迸った。

 

「っーー!!」

 

そして電流攻撃と共に飛び出してきた奴は白目を剥いて気絶をした。

 

「さぁ、どうする?こっちは組織相手に何回かやりあんってんだ。やるか?」

「っ!い、いえ…」

 

少女の脅し文句に男は震える。すでに銃口を頭に突きつけられて詰んでいる今の状況。男は脳内で謝罪程度で許される行為では無いと既にわかっていた。

 

「た、助けてください!!指の十本や二〇本でも!!だから命だけは…!!」

 

恐怖で脳が支配された男は命乞いを始めると、それを見ていた少女は再び溜息。

 

「馬鹿だねぇ、お前さん達」

 

すると少女はそのまま男の頭を軽くブーツで蹴っ飛ばす。

 

「うがっ!」

 

頭を蹴っ飛ばされ、男はそのままアスファルトの地面と派手にキスをかまして再び血が流れる。

 

「私がその程度で満足できると思うかい?」

「っ!!」

 

少女はそこでそっと男に近づく。

 

「あまり舐めた口聞くなよ?若僧」

「っ…」

 

重々しく耳元で囁かれたその声に男は失禁すらしてしまう。そして言い終えた直後、

 

ッ!!

 

「あうっ…」

 

耳元で銃声が聞こえ、直後に視界に真っ赤な血が流れてきたので、男はそのまま気絶をした。

 

 

 

足元で気絶した男を前に大きく溜息を吐いてスフェーンは後ろに佇むオートマトンを見る。

男には大量の血が降りかかり、近くには割れた風船があった。

派手に血糊がかかった事で撃たれたと勘違いしたその男は勝手に気絶をしていた。

 

「…さーて、帰ろっかー」

 

スフェーンは満足げに乗ってきたオートマトンを見ると、

 

『スフェーン…イタズラが決まったクソガキみたいな笑顔を浮かべていますよ』

「ん?そうかしら〜?」

 

とても良い笑みを見せるスフェーンに、ルシエルは軽く溜息を吐いて動かしていたオートマトンのコックピットを開ける。

中は無人で、先ほど襲撃した時も中身は空だった。

 

『スッキリしましたか?』

「じゅーぶんにね」

 

そこでズタボロになった倉庫を見る。中には複数のゴロツキ達が転がっており、何処かしらから呻き声が上がっていた。

 

『スフェーン、軍警のパトカーが来ています』

 

するとルシエルが通報を受けて駆けつけてくる軍警察の多脚戦車を確認した。

 

「うん、じゃあ撤収〜」

 

コックピットに乗り込んだスフェーンは巡航モードを起動すると、オートマトンの足裏から接地したゴムタイヤが回転をして、ローラースケートの要領で走り出した。

 

 

 

「あーあー」

 

駆けつけた多脚戦車から降りた治安官は呆れた様子でボロボロの倉庫を見る。

港近くの港湾施設から通報を受けて渋滞の上を通過して駆けつけたが、場所が場所だけに不良集団の間の抗争だと思っていた。

 

「今回はまた派手に行きましたね」

「死者も出ているかもしれん。応援、呼んだか?」

「ええ、今こっちに多脚戦車が来ていますよ」

 

すると赤色灯を灯してサイレンを鳴らす白黒ツートンカラーの四脚の多脚戦車が脚を伸ばしたまま到着する。

渋滞を回避する為の上昇装置付きのパトカーだった。

 

「うわっ、こりゃスゲェや」

「天井穴だらけじゃ無いですか」

 

そして脚を畳んでから治安官二人が降りてきて、最初に思わず溢れてしまう。

 

「救急車だ。嗚呼あと、コイツらから事情聴取するぞ」

「ちっ、またかよ…」

「ダリィよ。ここの連中、昨日も問題起こしやがったんだぞ?」

「その分たっぷり絞ってやればいいさ」

 

呆れと疲れた怒りと、様々な感情を抱きながら治安官達は襲撃された不良達の確保に向かった。

 

 

 

この港での騒動は付近の不良達による抗争と断定され、そのように処理が行われた。

 

襲撃を受けた不良集団は口を揃えたようにオートマトン一台と少女一人にやられたと言っていたが、現場の状況から見るに、明らかにその戦力ではあり得ない数の弾痕と被害である為、集団による反抗と推定。彼らを襲ったのはクローンや一卵性双生児を含むグループであるとした。

 

軍警察は港湾地区における新たな不良集団の結成の確認を急ぐと共に、同地区における不良集団の掃討作戦を立案する。




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