TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#292

「ふぅ…」

 

煙草に火を付け、貨物ターミナルの留置線で仕事終わりの一服を堪能する。

 

運び屋を始めてからついに十二年目に突入しまった。

あの日から長い月日が経ったものだと、つくづく感じる。

十二年という月日で、多くのことが変わったものだとスフェーンは感じていた。

十二年前では当たり前だったことも、今ではすっかり歴史の一欠片の出来事である。

 

「…」

 

煙草を一本、スフェーンは吸いながらふと思う。

 

『一句読んだらどうです?』

「あーうぐいすやで終わるよ?多分」

 

少なくとも自分にそんなセンスを求めないで欲しいものだ。

スフェーンはルシエルにそう言うと、一本をフィルターギリギリまで吸ってから吸い殻を携帯灰皿に入れる。こう言う場所でタバコのポイ捨ては火事の原因にもなるので厳禁なのだ。可燃物も多いし。

 

「さて、行きますかね…」

 

コンテナを回収してもらい、仕事を終えた彼女はそのまま運輸ギルドを抜けて旅客ターミナル行きの列車に乗り込む。

今日は久しぶりにお嬢様からのご指名を受けて、待ち合わせ場所である旅客ターミナルまで移動する必要があったのだ。

現在、その人に会うために彼女は大人の姿を取っていた。

 

「なんで押川大陸に移動したのにご指名が入るのよ…」

『サラさんも世界中を飛び回っていますからね、まあ待ち合わせには事欠かないのでは?』

「また変な事件に巻き込まれたくはないよ?」

『それは…大丈夫なのでは?』

 

前回こってりしぼられたのだからと絞られたのだからとルシエルは言い、途端にスフェーンは何故かその時にできた古傷が傷んだ気がした。

少なくともヴェルヌ大陸から移動したと言うのに簡単に待ち合わせ場所が押川大陸に変わっている時点でどうなの?と疑問符を浮かべたくなる。

まあお嬢様のフットワークの軽さは、我々凡人からすれば理解できないのだろう。そう言うことなのだろう。

通勤電車(国鉄205系)に乗りながらスフェーンはそう自己完結をすると、列車は到着した都市の旅客ターミナル駅に到着をする。

 

巨大なターミナル駅には高床・低床を含めた各種鉄道が入り混じっており、旅客を専門とした列車が多く行き交っていた。

鉄道網が大変発展したトラオムの世界において、この景色ですら中規模と言える大きさであった。

 

「えっと…」

 

そこで駅を見回すと、視線の先で見覚えのあるレディースーツを見つける。

 

「居た居た…おーい!」

 

スフェーンはそこで彼女の元に近づきながら声をかけると、スフェーンの声を聞いて振り向いた彼女はスフェーンを見ながらいう。

 

「来たわね…確保!」

 

サラが言った直後、複数の黒服の人々。中には彼女の執事であるメアリの姿もあった。

 

「え?え?え?何何何?!」

 

両腕をガッツリと掴まれ、困惑するスフェーン。すると彼女はそのまま連行される。

 

「何でだよぉぉぉおおおおっ!!!」

 

駅に虚しくスフェーンの声が響き渡り、彼女はそのまま駅のロータリーに停められていた黒塗り(メルセデス・ベンツ)リムジン(W100)に放り込まれた。

 

「いでっ!?」

 

彼女の護衛達によって車に放り込まれ、何が何だかと困惑している間にサラを乗せると車は護衛の車(BMW X5)と共に走り出していく。

 

「ぐあぁ…頭ぁ…!!」

 

両腕をガッチリホールドされ、そのまま投げ込まれるように車内に放り込まれたスフェーンは頭を派手にぶつけて頭を痛めていた。

 

「元気そうで何より」

 

そこで後部座席に座るサラにスフェーンはガッと恨み目線を向けて睨みつける。

 

「おんどれ〜!痛いでしょうが!誘拐だよこんなの!」

 

前にも似たような経験を積んでいた彼女はそこで乗せられたしリムジンを見て一言。

 

「何で独裁者の乗ってた車に乗せられるのよ!」

「確かにブレジネフとか毛沢東とか乗ってたけど言い方ぁ!」

 

このリムジンは一番でかいプルマンの六枚ドア、おまけに最新の複合セラミック装甲や諸々の防弾・防爆・防護装置満載の超高級仕様の車である。多分、最低でもザ・ビースト(大統領専用車)以上に頑丈な車である。

 

「おい帰してくれよ〜!こんなん嫌な予感しかしないって!!」

 

到着早々に誘拐じみた行為をされ、その上サラの優雅なこの笑みである。これを聞いて嫌な予感がしない奴は一発ぶっ飛ばしてやる。

 

「大体黒塗りベンツなんてヤクザが乗ってるやつじゃん!」

「追突してオイゴルァですって?ネタが古いわ!」

「え?お嬢がこのネタ知ってんの…?(困惑)」

 

スフェーンはまさかの事実に少しその気があるのかと思ってしまったが、直後にサラに脳天を喰らった。

 

「ぎゃあぁ…」

 

脳天を受け、悶絶するスフェーン。

 

「ふんっ、散々部下がネタにして遊んでたら誰だって意味を調べるわよ」

「あぁ、ああね…」

 

そこでスフェーンは脳天を受けた後に車の席に座り込む。哀れ彼女の部下、○夢厨バレてるぞ。

この時期、スフェーンの頭の角は生え替わりの時期だったのが幸いしてリムジンで頭ゴッツンコをしなかった。

 

「はぁ…どうしてこうなった…?!」

 

そして状況を把握しようとしたが、そこでもスフェーンは自分がされた出来事が理解できなかった。

 

「意味が分からない…」

 

そして再度思考、しかし理解不能。

 

「どういう事だってばよ…?!」

「一旦落ち着きなさい」

 

サラと対峙するように座席に座るスフェーンに彼女は片手にシャンパン入りのグラスを持っていた。

 

「こんな状況で落ち着けるかぁ!!」

 

サラに突っ込むと、その後少し息を荒げてスフェーンは彼女を見る。

リムジンの周りでは護衛の車両が走っており、リムジンは市内の高架道路を走って行く。

 

「あの、サラお嬢様。…これから私はどこに連れて行かれるんです?」

 

スフェーンは恐る恐る聞くと、彼女は言う。

 

「ちょっとしたもてなし」

「…全然ちょっとじゃないでしょう」

 

スフェーンの今の格好は私服。反対に座るサラは仕事用にレディースーツ。しかも高級テイラーで仕立てたものなので、スフェーンの吊るしのスーツとはまるで違った。

 

「まぁ私の別荘に行くわ」

「ほぉ」

「そこであなたには着替えてもらうわ」

「…ん?うん」

 

一瞬スフェーンは首を傾げながらサラから話を聞く。

 

「着替えたら、色々とお仕事をしてもらうつもりなの」

「…え、仕事ですか?」

「報酬ははずむわよ?」

「…え?どこかに出かけるとかもなく?」

「YES」

 

サラは頷くとグラスを傾ける。

彼女の実家であるカジノグループは、コンツェルンと呼ばれる独占形態を有してる一大総合企業である。もはや財閥と呼べるほどまで肥大化した組織は、目の前のサラ・アンデルセンの交渉術と異母兄のジャック・アンデルセンの経営手腕が噛み合わさったことで誕生していた。

 

「私も家から働きすぎって言われてね」

「ドクターストップでもかかった?」

「いや、お兄様が経営網の整理をする必要があるからって言う理由で」

「あー、なるほど。はい…」

 

スフェーンはその一言で何があったが理解した。

ジェリド・アンデルセンが立ち上げた小さなカジノリゾートは、自分の才能を受け継いだ二人の子供達の手によって凄まじい膨張を遂げていた。

 

「わかってくれたようで何より」

「やり過ぎでしょ、何やったんです?」

 

スフェーンは聞くと、サラは意味深な笑みを見せる。

 

「逆に何やったか聞きたい?」

「…聞かないことにします」

「その方がいいわね」

 

色々とやっているんだなぁ…、と軽い現実逃避を重ねながらスフェーンは高架道路を降りて下道を走る車を見る。

護衛の車は四台。大変重武装な上に、恐らく護衛の車にはガトリング銃や機関砲が載せられているのだろうと思いながらサラと軽く話す。

 

「まあ、幽霊屋敷とか廃墟巡りじゃないだけマシ…なのかなぁ」

「もう流石に懲りたわよ」

「…本当に?」

 

スフェーンは怪訝な眼差しでサラを見ると、運転をしていたメアリが小声で言う。

 

「ご心配なく。スフェーン様」

「…なら良いんだけどさ」

 

執事からのお墨付きということでスフェーンはようやく信じるに値すると納得すると、車は高級住宅街に入り、その中の一つの家の前で一旦停車すると、重厚な門が音もなく静かに開いて中に護衛含めた車列を入れると、そこで中のロータリーにリムジンが止まった。

 

「さて、着いたわよ」

「まぁなんてブルジョアな香りがすること」

 

スフェーンはサラの後に続いて車を降りる。少なくとも豪邸であり、まず間違いなく今スフェーンの着ている服には似合わない家であること間違いなしだ。

 

「ここが今の家?」

「そう、ウチが持っている別荘の一つよ」

 

サラはそこで家に入ると、スフェーンはその後をついていく。

正直、こういくブルジョアンな人達と仕事以外での付き合いがほぼなかったスフェーンは内心ガッチガチの緊張をしていた。

 

「はぁ…胃に穴あきそう…」

「それが言えるなら暫くは大丈夫そうね」

 

こいつ…!!とスフェーンはサラに思っていると、吹き抜けのリビングに通されて彼女はソファーに案内される。

サラの趣味には似合わない程の人数の使用人が屋敷には配置されており、護衛も相応にこの場所にはいた。

 

「随分と儲かっているようで…」

「ええ、お陰様でね」

 

サラはそこで瓶と硝子の猪口を持ってくる。

 

「昼から飲むの?」

「あら、下戸だったかしら?」

「勝負すっか?」

 

自信満々に返したスフェーンにサラは確実に負けると悟った。

 

「やめておくわ。この後ぶっ倒れられたら困るもの」

「なるほど」

 

そこでサラはスフェーンを別荘に招いて座らせると、スフェーンはソファに座ったまま聞く。

 

「で、どこに出かけるんですか?」

 

彼女は一ヶ月ほど開けて欲しいと事前に言われており、そのように予定を組んでいた。

無論、目的地に向かう道中であるのであまり大幅な遅れはできないことも伝えてあった。

 

「そうね…」

 

サラはそこで軽く注いだ日本酒を飲みながら少し間を空けると、スフェーンの顔を見る。

 

「確かスフェーン、一通りのマナーは学んでいるのよね?」

「…言われるとちょっと自信ないです」

 

スフェーンはサラに言われると、少し不安があると正直に言うとサラは正直でよろしいと一旦間を取った後にスフェーンに呼んだ理由を伝える。

 

「貴女にちょっとパーティーに出て欲しいのよね」

「…pardon?」

 

スフェーンは首を傾げた。




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