『おのれぇっ!!』
ルシエルが速水に対応する中、スフェーンは憤慨していた。
目の前の速水が態々接触してきて、探るように話してくるのはなぜか。
その理由を彼女は考えていた。
そこでまず今から過去に遡る形で自分の行動と、ここまでくる経緯を振り返っていた。
スフェーンはそこでサラから言われていたことを思い出す。
『はぁ…で、顔が割れていなくて、尚且つマナーある程度知っていて、完全ガヤの人間だから嘘をつかない私に中に入って調べてこいと?』
『そう言う事〜』
その言葉を思い出した時、スフェーンに電流走るーー!
そして全てが繋がった。と同時にスフェーンに怒りのボルテージが上昇する。
ーーアイツ、自分をリトマス試験紙にしやがった!!
なぜ彼女が自分をパーティーに誘ったのか。
彼女は如何して、ドレスや装飾品などを奢ると言う大盤振る舞いをしたのか。
なぜ付き添いではなく、別々で行動をしたのか。
このパーティーに至るまでの全ての行動が繋がった。
無論、スフェーンは憤慨する。
しかしそれは自分が釣り餌にされたことではなかった。
この二律背反した作業に苦労する姿を、きっと愉悦し、高笑いして見ているであろうサラに激しい怒りを覚えた。
これならまだ廃墟巡りをしていた方が何倍も楽しいとさえ思えてしまった。
『ルシエル』
「(はい、何でしょう?)」
スフェーンの気配にルシエルはすぐに反応すると、彼女は言う。
『あの腹黒お転婆が帰ってきたら、ちょっと一瞬体変わって?』
「(え?あ、はい…分かりました)」
一瞬困惑をしたが、スフェーンの意図をすぐに察したルシエルは頷いた。
するとちょうど良く、サラがパーティー会場に戻ってきたので、ルシエルは一瞬スフェーンに体を渡すと、彼女はサラの方角を見ると睨んで鋭い殺気を向けた。
その殺気をしっかりと感じ取った彼女はスフェーンの方を見ると、実に良い笑みを浮かべていた。
「チッ…」
スフェーンはサラの対応に軽く舌打ちをすると、それに速水は急に如何したかと感情を表に出したスフェーンに困惑していた。
「ど、どうかされましたか?」
速水は咄嗟にスフェーンの向いた方を見ると、そこにはサラがおり、速水はスフェーンがサラと関係があったのかと思うと同時に、思わず舌打ちをしてしまうほどの関係なのかと困惑の色を隠せなかった。
色々と見えたが、同時に色々とわからなくなってしまい、同時にそれを見ていた垂水達も同様であった。
「如何言うことだ!?」
「スフェーン・シュエットとサラ・アンデルセンは不仲なのか?」
そしてその混乱が、彼らに余計隙を与えることとなった。
「(うひゃー、すんごい殺気。漏れてる漏れてる〜)」
会場に入った途端、自分に向けられる殺意と殺気。その方を見ると、バルコニーというほぼ反対の場所からでもそれはしっかりと感じ取れた。
「(でも、スフェーンも気付いたってことね)」
流石は私の親友。そう思い彼女に満面の笑みを笑みを見せて答えると、彼女は軽く舌打ちをした様子でその近くで彼女に話しかけていたであろう垂水側の人間を当惑させていた。
これで向こう側は自分とスフェーンの関係に進展があったと同時、自分との関係により疑念が生じて混乱が広がることだろう。
すぐに情報を仕入れられるからと、会場を自宅の屋敷の一角にしたことも禍いし、スフェーンの情報が着くまで彼らは動けなくなってしまった。
自分をより調べていたからこその誤算。それはスフェーン・シュエットと言う土地買収、ひいてはアンデルセン・グループからも完全なガヤの人間の介入。
全てが整って進んでいる環境下において、完全外の人間という異物を投じる事で、環境に混乱をもたらす。場を散々荒らし回るだけの存在というのも、時には重要な手札となる。見事にスフェーンはその掻き乱しの作業をこなしてくれた。
スフェーンに誰かが接触した段階で、向こう側に売る意思がないという判断を下し、その段階で入り込ませたウェイターに指示を出していたので、今頃は本社の方の会議の議題に上がっている頃合いだろう。
買う側の人間であるサラは、ここでの仕事は終えた。あとは優雅にパーティーを楽しむだけで終わる。
サラはそこでスフェーンからの殺気を感じつつも、優雅に食事を堪能するサラ。
すでに垂水側の行動は把握しており、アンデルセン・グループによる土地買収は今後行われるのかは不透明であった。それはあくまでも本部に住む義兄の仕事であり、自分のやることではなかった。
サラを見やった後、再び体をルシエルに戻したスフェーンはそこで速水に言う。
「失礼、少し気を悪してしまいまして」
「そ、そうですか…何か、気に触るようなことでも?」
「ああいえ、それほどのことではございませんので」
ルシエルはそこで速水に先ほどの舌打ちの関して軽くいなすと、速水はそこでサラに舌打ちをしたスフェーンに困惑していたが、そこで彼の視界に仲間であるうウェイターが一時撤退を示すサインを送っており、それを見た彼はどうしたのだと疑問に思いながらもスフェーンに一言言ってから会場を後にする。
「失礼、少し席を外します」
「ええ、わかりました」
ルシエルは頷き、速水が消えると、そこで小さくため息を吐く。
「ふぅ…(終わりましたよ)」
『ありがとう』
そこでルシエルはスフェーンと体を入れ替えると、そこで彼女は開口一番。
「もう帰っても良いかな?」
少々キレ気味に彼女はルシエルに聞く。
『さ、さぁ…?私にはなんとも…』
少なくともスフェーンの想像通りであれば、向こうが接触をしてきた時点で自分がするべき仕事は終わっている。
であるならば、この時点で帰っても問題はないはずだ。
「全制覇したら帰るわよ」
『あっ、今すぐでは無いのですね』
「当たり前よ」
無性に腹が立っている状態だが、スフェーンの料理に対する熱はそれ以上であった。
少なくとも自分の苦労する姿を肴にワインを楽しむ性悪お嬢様に一発かましたいとこれほどまでに思った事はない。
そしてこれほどまでにタチの悪い人間を自分は彼女以外に知らない。
「こうなったら目一杯喰らい尽くしてくれるわ」
『え?それはやめた方が…』
慌ててルシエルがスフェーンを制止したが、すでに手遅れであった。
「他人の目がなんだ。向こうの都合なんか知ったことか!」
スフェーンは苛立ちを食欲で押さえ込むためにケータリング料理を皿に乗せて一瞬で消化し、また皿に乗せて行く。
その時の彼女の不満げな雰囲気が溢れており、周囲の招待客たちもそんな彼女の不満げな様子に少し距離をとっていた。
皿に取る・口に運ぶ・皿が空になる。
このスリーテンポのサイクルのスピードが尋常じゃなくなり、スフェーンの爆食いが始まる。勿論、少量を取ってからの食べ方をしていたのだが、サイクルの早さから他の招待客も違和感に気がついた。
そしてスフェーンのブラックホール並みの胃袋に吸引されていくケータリング料理。
「おい!いきなり注文が増えていないか!?」
いきなりガクッと減った料理と、それに合わせたウェイターの注文量に、厨房では数の確認が行われる始末。
「一人バカみたいに食ってる人がいるって話だぞ?」
「畜生、胃袋ブラックホール系か!」
「嘘だろう!?今まで何もなかったのに…!!」
料理長は天敵が現れたと察すると、すぐさまケータリング料理の製造を始める。
「畜生、招待客に足りないとは言わせないぞ!!」
「誰だ、いきなり食べ出した招待客は!?」
噂によると一人の女性招待客がいきなりモリモリ食べ始めた様子で、料理長は他にも食べる量の多い獣人の招待客もいるからと多めに作っていたそれらが暴風が吹き荒れた勢いで消えた事に軽く戦慄を覚えていた。
「え、えぇ…」
そして怒りに任せて暴食を始めたスフェーンを見てサラは困惑した。
「あっ、やばいかも知んない…」
サラは直後に下手な起爆剤に火をつけたかもと焦ったがすでに後の祭り。スフェーンはモリモリと健啖な舌と膨れていく腹。
とても一介のお嬢様がして良い食べ方をしていなかった。
「…」(・×・)
サラは途端に顔を青くして冷や汗が出る。
元々スフェーンが大食いできる人間であることは知っていたが、そんな彼女が本気で行っている様に畏怖の目線を向けてしまう。
変なスイッチが入り、別の意味でブチギレさせてしまった事にサラを含め彼女を見ていた面々も恐れ慄いた。
食べ方はとても清楚で綺麗なのに、食う量が全然おとなしくない。
慌ててウェイターも厨房から運んでくるが、スフェーンは止まらない。否、止められない。
とてもじゃないが、あんな『ザ・不満』を纏っている彼女に声をかける勇気はなかった。
「ど、どうしよう…」
今起こった爆食の原因を作ってしまったサラは、なんだか別の意味で地主を困らせてしまいそうで頭を抱える。
想定外の事態が発生してしまい、先ほどの策略から何もかもが一斉に吹き飛んでしまいそうな事故が目の前で起こっていた。
しかもその事故は派手に引き起こされており、絶賛それを見た者は絶句していた。
「な、何が起こっているんだ…?」
報告を聞いて会場に戻ってきた速水も、目の前で起こっている現象に困惑していた。
今まで接触対象であったスフェーンがいきなりケータリング料理を大量に摂り始めたのだ。確かにお淑やかで静かな食べ方をしているが、明らかに最初の頃よりペースが何十倍もアップしていた。
「おい、あれ止められないか?」
隣でウェイターが苦労している様子で話しかけてきたが、速水は即答する。
「無理に決まってんだろ…」
あの話しかけたら殺されるような空気に突っ込めと?自殺行為だそんなものは。
「勘弁してくれ…」
話してきたウェイターもいきなり暴走を始めたスフェーンにため息をつく。どうやら彼女は、飯を大量に摂れる獣人だったのかと失念していた。
「どんな胃袋をしているんだ。あのお嬢さんはよ…」
今頃、厨房は阿鼻叫喚の地獄と化しているに違いない。速水はそう確信しながら、呆然とただ消えていくケータリング料理を眺めるしかなかった。
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