TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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四百話以内で終われるといいなー


#300

「はぁ…」

 

深夜、スフェーンは大きなため息をつきながら山道近くのパーキングエリアで休憩をしていた。

無論、乗ってきたショーファーカーから降りて煙草を吸っており、その顔にまだ不満げな様子は消せていなかった。

 

「一体何があったの?」

 

その様子を前にスフェーンの車の運転手を勤めていた女性が、助手席に座っていた別の使用人に聞いた。

 

「なんでもお嬢様の策略に腹を立てて暴食を行ったとか…」

 

噂によると、阿鼻叫喚の地獄とかした厨房とモリモリと健啖さを見せつけるスフェーンの戦いが始まって、会場は一時騒然となったというのを、垂水邸に派遣していた別の諜報員から聞いていた。

 

「飛んだ逆ギレですね…」

「お嬢様もこれには驚いて顔を青くしたって…」

「えぇ…(困惑)」

 

あのサラが顔を青くした案件。それだけで大惨事だったというのが理解できた。

きっと完全に予想外の事故だったのだと、二人は容易に理解した。

そして先のパーティーで騒動を引き起こした張本人は、駐車場についた途端に喫煙所に走って煙草に火をつけていた。

まだサラは垂水邸におり、彼女とここで会合する予定であった。

 

「フゥゥ…」

 

そして深呼吸をし、待ちに待った一服の言わんばかりにラッキーストライクに火を付けていた。

 

「はぁぁ…」

 

愛吸している煙草の嗅ぎ慣れた香りを前にようやく気持ちがおさまって来る。

 

「あぁ、スッキリしたぁ〜」

『スフェーン…』

 

そこでルシエルは先ほどの暴走について、一言申した。

 

『減量しましょう。明らかに食い過ぎです』

「え?」

 

予想外の進言にスフェーンは軽く驚く。え?だってこの体、いくら食っても太らないはずでは?

 

『体内に溜め込んだエネルギーが明らかに多すぎます。このままでは肥満体型になりますよ』

「(え?この体に肥満の概念あるの?)」

 

スフェーンはその事実に驚いていると、ルシエルは言う。

 

『そうなる可能性が高いと言う事です。なんなんですか、あの食事量。全部のバロメーターぶっ壊れますよ?!』

 

ルシエルはそこで先ほどの爆食でぶっ壊れたグラフを見せる。

 

『現在、体内に溜め込まれた栄養価とそのエネルギー値です。これの異常性がわかりますか?』

「(…はい)」

 

スフェーンはそこで、ウェイターの阿鼻叫喚と共にあれから二周ほどしてから会場を後にしたことを思い出す。

あれって、例えるならいきなり暴発を始めた機関砲が焼夷弾で平和な戦場を真っ赤か炎で燃やした後に放置して帰ってきたようなものだろうか。

 

「飛んだ放火魔じゃん…」

『やってることはさほどそれと変わっていませんよ。おかげで食事中、周りの人ドン引きでしたよ?』

 

ルシエルの的確かつ致命打を負わせてくる口撃はスフェーンの精神をゴリゴリと削っていく。

あの後、ひとしきり食べ終えた後に帰る時、速水と軽く挨拶を交わしたのだが、

 

「すみません。少々気分がすぐれないので、ここで失礼致します…」

「お、あ、あぁ…気をつけて…」

 

速水も先ほどの爆食の衝撃からか、生返事で終わってしまいスフェーンは屋敷から引き上げてきていた。

 

『とにかく、スフェーンは今後数日。運動をすることをお勧めします』

「はい…」

 

ルシエルに言われ、スフェーンはそこでさらに減量用の運動日程が送られると、そこで駐車場に護衛の車と共にリムジンが入ってくる。サラの車だ。

スフェーンは先に煙草を吹かして休憩をしていたが、そこで降りてきたサラはそのままスフェーンの前に立つと、そのまま綺麗な土下座をかました。

 

「は?」

 

スフェーンは綺麗なDOGEZAをかましたサラに困惑をした。

 

「何を四天王?」

 

スフェーンはサラに聞くと、彼女はいう。

 

「許して。もうこんな事しないからぁ…」

 

サラはそこで先ほどまでサラが巻き起こしたケータリング料理の一件でスフェーン以上のダメージを負っていた。

先ほど垂水邸で行われた立食パーティーにおいて、スフェーンの起こした暴走により、割と洒落にならない損害を与えたかもしれないと思っているサラは、冷や汗が止まらなかった。

 

スフェーンの食事量が凄まじすぎて色々と有耶無耶になってしまったが、サラはスフェーンに変なスイッチを入れてはならないと心に誓い、メアリもまたスフェーンの食事量にドン引きしていた。

 

「あぁ、うん…分かった」

 

スフェーンも何が何だかよく分かっておらず。とりあえず謝った方が良さげな雰囲気を醸し出していたので、とりあえず謝罪をした。

自分としては不満と怒りをそのまま食欲として発散しただけなのだが、周りからはドン引きと畏敬の目で見られていたのだろう。

スフェーンはサラに言うと、彼女は少々疲れた様子でリムジンにスフェーンを案内する。本当はこの後、家に帰って二次会をしようと思っていたのだが、スフェーンの暴走でそんなことは言ってられないくらい疲労でぐったりしてしまっていた。

 

「あぁ、その…大丈夫?」

 

そのぐったり具合にスフェーンも思わず話しかけてしまう。するとサラは一言。

 

「もうダメかもしれない」

「おおぅ…」

 

こりゃあだいぶ重症だぜ、とスフェーンはサラを見て少々悪いことをしたかなと思ってしまった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、垂水氏はアンデルセン・グループの動きを察知したが、既に遅かった。数々の証拠を並べられ、その情報量を前に言い逃れができないと判断し、垂水はアンデルセン・グループの言い値で土地を手放した。

なお、土地買収には直前のパーティーで起こった騒乱への謝罪の意も含めているという噂もあるが、所詮は噂程度の話に過ぎなかった。

 

「はぁ…」

 

サラの屋敷で煙草を咥えてスフェーンはプールサイドで空を見上げる。

 

「疲れた〜」

 

パーティーが終わった翌日、スフェーンは軽く背を伸ばして太陽の光を浴びる。

昨晩、帰って早々にサラがダウンしてそのまま寝入った為に、スフェーンも寝巻きに着替えてからベッドにバタンキューしていた。

そして日が登った時、煙草を片手に外に出ていた。

 

「昨日は楽しめたかしら?」

 

すると後ろから葉巻を片手にサラが話しかけてきた。

 

「ええ、楽しめましたとも?」

 

スフェーンは満足げな笑みを見せると、サラはその笑みに少しだけ顔を引き攣らせながらスフェーンの隣に立つ。

 

「火、貰っても?」

「葉巻用じゃ無いよ?」

「そんな気にしないわよ」

 

サラは昨日の疲れを感じさせない顔色をしており、スフェーンはライターの火をつけるとサラは葉巻を炙った後に吸い始める。

 

「「はぁ〜…」」

 

二人の喫煙者はそこで共に煙を吐くと、そこでサラは聞く。

 

「もう仕事行くの?」

 

その問いにスフェーンは頷いた。

 

「ええ、なにせ指名依頼が来てしまったのでね」

 

運び屋を生業にする彼女は、腕利の運び屋として運輸ギルドでは重宝される存在になっていた。

そして、今回の指名依頼はある知り合いからのもので、断ったらサラと同様、面倒な人である為に断る選択肢は初めからないようなものだった。

 

「そう…」

 

サラもスフェーンに個人的な依頼をすることがあったので、彼女に気をつけてと言って見送る事となる。

いつも通りの見送りなので、サラもスフェーンに特段特別なことはしない。

 

「まあ、またどっか行きましょうや。今度は幽霊屋敷でも廃遊園地でも、パーティーでもない場所で頼みますよ」

 

彼女の言葉にサラは軽く笑う。

 

「ふふふっ、その時はもう結婚をしているかもしれないのよね」

「じゃあ子供が出来たら、葉書でも送って下さいよ?何か贈りますから」

「あら、それは楽しみね」

 

サラは自分以上に色々な場所を巡って旅をしているスフェーンに少し羨ましくも思った。

 

「あぁ〜、私も隠居したら旅をして見たいわ〜」

「ふはっ、果たして何年後の話になるんすかね?」

 

なんとなく、生涯現役人生を貫きそうな気がしてならないサラに、スフェーンは苦笑した。

 

「ここ笑う状況?」

「いや、サラなら仕事してる方が輝いて見える気がしてね」

「あら、それは如何言う意味かしら?」

 

サラはスフェーンに聞くと、彼女は少し肩をすくめる。

 

「さあ?どちらの意味でもあるんじゃない?」

 

そこでフィルターギリギリまで吸い終えると、そこでちょうどメアリが話しかけてくる。

 

「スフェーン様、お荷物のお纏めが完了いたしました」

「ああ、すみません」

 

ドレスやそれに伴う装飾品の諸々が荷物として増えたことで、帰りのバイクに載せる荷物が増えてしまっていた。

そして荷物をまとめたと言うことで、サラは言う。

 

「じゃあ、また何処かで会いましょう?」

 

その言葉にスフェーンは薄く笑みを見せる。

 

「ええ、その時は純粋なお遊びにして下さいね?」

 

釘を刺すように彼女は言うと、そのままゆっくりと歩き出してスフェーンは屋敷を後にした。

 

 

 

そしてスフェーンが屋敷を出た後、メアリがサラに話す。

 

「サラお嬢様、スフェーン様より伝言です」

「あら、何かしら?」

 

サラはどんな伝言かと少し期待した。

 

「『着物はこちらで買うので必要ないです』との事です」

「…チィッ!」

 

サラはその意味を誤解することなく、何処ぞの三倍スピードが出そうな人でしか聞いたことがない舌打ちをしていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その日の深夜、指名依頼を受けて荷物を運んでいる最中、スフェーンはベッドで横になって睡眠をとっていた。

 

「…」

 

寝静まり、スフェーンも寝ている頃、パチッと眼が開く。左目が虹色のため、ルシエルが動かしている。

徐に彼女はベッドからでると、そのまま部屋のクローゼットを開ける。

中にはスフェーンが着るナッパ服から私服、吊るしのスーツ、メイド服など、今まで着てきた服が丁寧にハンガーに掛けられていた。

半袖半ズボン姿だった彼女は、そこで二着あるドレスの片方、緑を基調としたアフタヌーンドレスを着る。

 

「…」

 

そこでアフタヌーンドレスを纏ったルシエルはそこで鏡を使ってクルクルと体を回して見たりと色々と見て満足していると、

 

『…何してんだ?お前さん』

「っ!?!?!?」

 

ルシエルはその瞬間、耳がピンと立ち、ルシエルは固まった。

いつの間目を覚ましていたのか、今目覚めていたのか、軽く錯乱しながらルシエルは言う。

 

「えっ?!あ、こ、これは…!!」

 

何を弁明するのかも思いつかないくらい、普段からは想像ができないくらい錯乱と混乱しているルシエルに、スフェーンはため息を吐く。

 

『はぁ…全くさぁ』

 

スフェーンは夜中に自分に内緒でドレスを纏ったルシエルに、笑いそうになる。

 

『ほら、体変わってあげるから』

「あ、す、すみません…//」

 

ルシエルは顔を赤くすると、そこで体を入れ替える。

 

「ほら、どうだい?」

『凄く…良いです』

 

スフェーンが軽くドレスを披露をすると、ルシエルは感極まった声でスフェーンに言うと、部屋で観客一人の小さなファッションショーが行われた。




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