TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#304

このトラオムの世界において、死刑というのはあくまでも無期懲役刑の先にある刑罰である。その先に確約された死が待っているだけの囚人であり、その実態は半ば無期懲役刑の囚人と変わらない。

 

被告人が死刑となった場合、被害者は仇討権を有することとなる。

仇討権とは、被害者が被疑者に対し、司法局を通じて行われる合法的に許可される私刑である。治安官の監督下の元で執行され、被害者は刑を執行する権利である。少し前の時代、例えば南北戦争以前の暗歴ならば簡単に死刑判決が下されていた為に多数の仇討権が行使されていた。

 

大災害以降の混沌とした治安を抑え込む上で、司法局は強力な裁判制度による治安向上を狙い、その対価として死刑が比較的簡単に判決として下されていた。

キッ○ニアほどでは無いがかなりの確率で死刑判決が下され、死刑の内容によって罪の重さが判断されるほどであった。

 

 

 

 

 

「異能ね…」

 

地球儀のような構造をしている刑務所の工場区画を上から見ながらスフェーンは呟く。この工場で製造される石鹸や家具などの日用品は、軍警察直轄の基地や一部は市場に販売されており、その利益の八割が囚人達に割り当てられる。

この利益をナイナイにすると途端に軍警の憲兵がやってきてパクった側が司法局で裁かれる規則がある為、治安官達も真面目に業務についている。

施設内は水中にあると言うことでエーテル空間濃度はゼロに等しい値となっている。

 

「ここが工場ですか…」

 

その隣では、自分と同じく工場区画の見学を行うユウナが居た。同じ通路には他にも数名の研究者が工場区画の視察を行なっていた。

本来、刑務所内は安全上と情報管理のために一切のこういった見学行為は禁止されていた。

 

「こちらの工場では、主に基地内で使用されるヘスコ防壁の製造を行なっており…」

 

そこで横にいた治安官から説明を受ける。

二人はこの施設で二週間ほど世話になる上に、研究員の気分転換も兼ねて提案された視察であった。

 

「ヘスコ防壁か…」

「あの、前線基地を囲っていたりするアレよね?」

 

その防護設備の名前に聞き覚えのあるユウナが言うと、スフェーンは頷く。

 

「ええ、ロケット弾すら防ぐ頑丈な防壁ですよ。分厚い土がロケット弾の爆発を吸収するんです」

 

そのクセ、土を入れる前であるなら数分でキロ単位の展開が可能な便利な道具である。

少なくとも傭兵時代、この防壁で命を救われたことは何度もあった。

 

「すごいわね…」

「土嚢って、少し積んだだけで五〇口径も抑えますからね。まあ頑丈ですよ」

 

戦場で培ってきた経験が生きていると少し感じていると、二人はそのまま次の場所に移動する。

 

 

 

現在このアルカトリア島刑務所にて、異能に関する研究を行っているエーテル解析研究所。

以前、軌道エレベーターでの調査でエーテルの性質に関する論文を書き、学会に衝撃をもたらしたこの組織。有機物の一切を食らい尽くす性質のあるエーテルに対し、学会では異能とエーテルの関連性を求める上でエーテルがなぜ有機物を吸収するのか。なぜ飲み込んだだけではエーテル病にならないのかなどの本格的な研究が行われている。

 

「でも私にすることってあるの?」

 

刑務所の食堂でスフェーンは首を傾げる。

その質問にユウナは少し顔を苦笑させる。

 

「さぁ?ですがスフェノスさんも異能者ですので、研究には協力するんですよ?」

「…い、嫌な予感しかしないでござる」

 

ユウナやジョンは自分のことをまだスフェノス・ククヴァヤとして認識しており、渡された職員証にもその名前が記されている。

またスフェーン・シュエットもスフェノス・ククヴァヤも飯豊クサビも全部本名と思っているのでそこらへんに関する諸問題は解決していると思っている。

 

『問題なのは、うっかり名前間違えないかどうかですけどね』

「(正直、ここまで大事になるとは思ってなかった)」

 

スフェーンもその点に関しては軽く反省をしていた。てっきり一時の関係だと思っていたので、スフェーンは偽名のままここまで来ていることに如何したものかと思っていた。

 

『ですが、おかげで軍警察の資料にはスフェノス・ククヴァヤと記載されています。研究所を辞めた後の足取りはすぐに消すことが可能です』

「(あの時感じた予感って、これのことだったのかなぁ…?)」

 

スフェーンはそんなことを考えながら、食堂の食事であるパスタ定食を食べる。

パスタはトマトソースに揚げ卵を乗せた簡単な料理であり、揚げ卵のニンニクとラードで素揚げされたカラッとした白身は中身はまだ半熟であった。

 

「しかし、さすが軍警の施設。食事は十分よね」

「士気は仕事にも影響してきます。食事はそう言った士気を高める上で重要な要素ですよ」

 

ユウナもそれに頷いてから卵を割って黄身とパスタを混ぜ合わせる。

はるか昔から、戦争や仕事において最も効率よく行動をするのに必要なものは士気、興奮、やる気である。

むしろ絶海の孤島に取り残されてまで何ヶ月も抵抗を続ける方が珍しい。捨てがまり?普通じゃあそんなことしない、あれは特殊すぎる例だ。

 

「少なくとも食堂は、時間は限られますが質の高い料理ばかりです」

「軍警飯って内外問わず人気だからね…」

 

多くの国家が建国された現在、国として成り立つ国民・領域・主権。この三つのうち領域を守る手段として国軍が発足していた。だが彼等は元々が企業のPMCであり、各部隊ごとに使う装備すらバラバラであり、郷土防衛隊の側面が強かった。そんな状態で、国軍の飯が美味いかと問うのなら飛んだお笑いである。

まだ整備の行き届いていない国軍の設備というのはそう言ったPMC時代の装備をそのまま流用しており、尚且つそういう部隊はPMC兵ということもあって企業との癒着が当たり前。企業側も自分たちの戦力であったPMC兵を持って行かれた上に自分たちの戦力増強は法律によって禁止をされてしまったことで、不満が多発。国の発注に応じなかったり、数倍の値段でぼったくったりと散々な結末を辿っており、一部では軍によるクーデターも起こっていた。そして国から分離独立を行なって自ら都市国家を名乗る始末。

ぼったくられた場合は税金の無駄遣いと指摘され、国会で野党議員などから詰られる。はっきり言うと、まともな軍事行動が取れる軍隊がほぼ無いと言う悲惨な有様だった。

 

「と言うより、まともに軍隊がまとめ上がっているのってパシリコなどのウエルズ大陸だけなのでは…?」

「それはそう」

 

南北戦争以前より、世界を二分した勢力が整った軍制、規則を統一していた事で彼の国には自然と『国』となる種が芽生えていたのだろう。

都市を跨いだ巨大な企業がそれほど生まれていなかったことも、この状況に拍車をかけていたかもしれない。

 

現在のオロシャ連邦の前身であるサブラニエ人民共和国連邦。そのさらに前身は企業連合という名の、アイリーン社による一社独占であった。

社会主義自由経済を掲げ、企業による生産体制の維持。福祉国家として建国が宣言をされていた。

だが戦争に敗け、国は四つに分割。だが戦後の政策においてオロシャ連邦は最も早く国土復興を成し遂げ、国力の増強に努めている。

確実にアイリーン社の蒔いた種は、皮肉な事に戦後にその真価を発揮していた。

 

「国が国として成り立っているのって、正直あの大陸以外よく知らない…」

「他はほぼ都市間連合と言うべきか…」

 

少なくともいまだに軍警察の駐屯地が数多く存在している現状、国軍の整備が完了するのはしばらく先かもしれない。

 

「ふむ…まあ我々は異能の研究を進める以外できることはないのですが…」

「私なんてただ研究所になる場所を貸してるだけなんだけど…」

 

外部協力研究員という特殊な立場のスフェーン。彼女の他にも異能を持つ元感染者達がそういう立ち位置になっているそうで、ネクィラムが言うには『おまえさんと会う事はない』ときっぱりと言われた。

 

「正直、今の研究所は人員も予算ももりもりに盛られています。まあおかげでこっちは色々と助かっているんですけど…」

「聞いたわよ?エーテル学会と結構揉めてるって」

「ははは、耳が早いですね」

 

スフェーンにユウナは少し苦笑して今起こっている面倒ごとを口にする。

 

「まあ元々は所長が追い出された側の人間ですからね。敵対しないわけがありませんが…」

 

かつて、ネクィラムを気色が悪いと言って研究所を追い出した人間が長を務めていたエーテル学会。

今やその権威はネクィラムを筆頭とした軍警察の創設したエーテル解析研究所、南北戦争の影響でそちらの方が幅を利かせており、失墜している。今までエーテル学会で異端とされてきた人材を中心にエーテル解析研究所があると言っても過言ではなかった。

 

「おかげでエーテル学会と冷戦状態です」

「ふははっ、そりゃあ見ものね」

「はぁ…完全ガヤの人間が羨ましいですよ…」

 

そこでユウナは少し目線が鋭くなる。正直、スフェーン相手でなければこんな嫌味も愚痴も吐けなかった。

 

「南北戦争の影響で、エーテルと感染者。特に異能に関する研究は予算がわざわざ取られる研究対象です。今のところ、軍警察では非人道的な実験は確認されていないですけど…」

「どっかの馬鹿がやるかもしれないわよ?」

「問題はそこなんですよね…」

 

異能は寿命を削る代わりに、使用者に絶大な力を与える。

その能力は確認されているだけでも炎や水、雷を宙に生み出したりしており、その種類もすでにちょっとした資料集になる程確認されていた。

 

「現在、軍警察ではこれら異能者を野盗逮捕、および捜査方法への転用を模索しています」

「へぇ、随分と先進的なことをするものね」

 

普通こういう場合、新しいものや未知なるものに人は恐怖を抱いて抑圧の方向に走るのでは?と首を傾げるスフェーンにユウナは軽くため息をつく。

 

「そうしたい上層部もいたようですが、野盗が異能を使った都市脅迫や市長誘拐などを行えば、そうも言ってられないのでしょうね」

「あぁ…」

 

スフェーンはそこでネクィラムからも言われたことを思い出す。あぁ、本当に異能で面倒なことになっているのだな、と…。

 

「…さて、いきましょうか。そろそろ、時間ですので」

「了解」

 

ユウナが腕時計を見て言うと、スフェーンも頷いてトレーを持って席を立った。




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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)

  • 89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
  • 九九式短小銃+二式擲弾器
  • Ak5C+M26 MASS
  • AKMS+GP-25
  • AKE-971+GP-34
  • FN M1949+Energaグレネード
  • FAMAS+APAV40
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