TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

308 / 439
#308

ッー!ッー!

 

刑務所にけたたましい轟音が鳴り響き、一斉に治安官たちは走り回る。

 

「状況は!?」

 

刑務所の戦闘指揮所(CIC)に刑務所所長が飛び込んでくると、部下の報告を聞く。

 

「襲撃です」

「現在、レイアーモンド駐屯地近辺にて無誘導ロケット弾による攻撃を確認しました」

 

そこで所長は軽く舌打ちをする。

 

「チッ…研究者たちを入れているから襲撃をしかけてきたか」

 

彼女は現在、海底駅に拠点を設置したエーテル解析研究所の面々に眉を顰める。

エーテル解析研究所からの研究協力要請に対し、初め所長は首を横に振って拒否をした。理由は簡単で、非戦闘員扱いの研究者を中に入れればどこの警備体制に影響があるか分かったものではない。

 

創設以降、一度も脱獄者を出していない誇りと威信があったアルカトレア島刑務所は、その厳格な警備体制を完璧であると自負しており、そこに異物。あるいは不確定要素となる人材を、実験するためとはいえ、施設に入れることはなるべく避けたい事実であった。

 

「迎撃の状況はどうなっている?」

 

所長は守備隊の司令官に聞くと、彼は答える。

 

「現在、移動砲台による砲撃が行われました。敵は四つの部隊に別れており、最初に無誘導ロケット弾による広範囲攻撃を実施。約六割が駐屯地内に着弾しました」

 

階級では所長の方が上である為、守備隊の司令官は敬語で報告を行う。

 

「かなり命中率が高いな…」

「放ったロケット弾の中に誘導弾も混ぜてあった可能性があります」

 

現在、大陸側の駐屯地で行われている襲撃に対し、軍警察はすぐさま迎撃作戦を展開。海底トンネルに繋がる路線からはコンテナ格納式の203mm榴弾砲が展開して発射される。

 

「発射!」

「撃ぇっ!」

 

直後に電磁加速をされた砲弾が発射。射程延長弾(ベースブリード弾)が点火、煙を引きながら荒野に飛んでいく。

その時、貨車にブレーキをかけるのを忘れており、発射した反動で自走砲が他の貨車にぶつかる事故も起こってしまった。

 

「敵を近づけるな!!」

 

駐屯地内は警報が鳴り響き、襲撃を仕掛けてきた部隊に自走砲(移動砲台六型)からエーテル・カノンの光線が発射される。

先代から改良を施され、三連装砲から単装砲になった代わりに発射速度の向上・一発の威力向上・移動速度向上が図られた新型E兵器は容赦無く襲撃を仕掛けてきた部隊に光線を浴びせる。

なお、この新型移動砲台は見た目から『ディッケ・ベルタ』や『カール自走砲』、『ビッグ・バーサ』などのあだ名で呼ばれていた。

 

かつて、一発で一個師団を破滅させられる最終兵器と言われたE兵器だが、空から永遠とエーテルが降り注ぐ現在では全力で砲撃を行うと、周りのエーテルと反応を起こして連鎖的な爆発による大災害再発の危険から、モンキーモデル並みに性能を落とされた威力でしか発射ができなくなっていた。

 

「うおっ!?」

 

荒野に光線が放たれると、その反撃と言わんばかりに襲撃してきたオートマトンや重量級サイボーグ、自走ロケット砲からの攻撃が飛んでくる。

 

「トンネルは!?」

 

砲撃を行う指揮官が聞くと、信号場を見た一人の治安官が叫んだ。

 

「閉めています!」

「よしっ、このまま奴らをトンネルに近づけさせるな!!」

 

警告音が鳴り、赤色灯が点滅をしながら海底トンネルに繋がる陸上トンネルに分厚い複合装甲を何層にも重ねた防護壁が閉鎖していく。

 

「急げ!」

「門が閉まるぞ!!」

 

襲撃を行う野盗やギャング、ヤクザ達の徒党の連合部隊は閉鎖する海底トンネルに向かって一斉に突撃を敢行。

 

「突撃してくるぞ!」

「押し返せ!」

 

治安官達もそれに気づき、応戦を行うが、なりふり構わず突っ込んでくる連合部隊を相手に押されていく。

 

「行けっ!」

 

そして損害度外視で突撃を敢行した連合部隊は、閉まる海底トンネルに向かって前進。障害物に車が激突して破壊されるも、一部が中に入る事ができた。

 

「しまった!」

 

防衛をしていた治安官が叫んだ直後、海底トンネルは閉鎖された。

 

「くそっ!」

 

予定よりも海底トンネルに侵入できた部隊の数が少ないことに毒吐く野盗であったが、彼らはそのまま前進を始める。

 

「司令所を制圧しろ!」

 

外に残った部隊も、トンネルの開閉を行うための信号場の近くにある司令室に攻勢をかける。

 

「行け!」

「うおぉぉぉおおっ!!」

 

一斉に攻勢を行い、制圧をしようとした時。

 

ッ!ッ!

 

地面に複数の砲弾の着弾する様子が確認される。

一瞬、自走砲の砲撃かと思ったが、それにしては威力が小さかった。

 

「っ!海か!!」

 

咄嗟に洋上を見ると、そこではミサイル艇からの発砲炎と砲声を耳にした。

 

「砲撃開始!」

「撃てぇ!!」

 

洋上を警戒していたミサイル艇の艇長兼司令官は号令を発する。

四艇で一個戦隊を組むミサイル艇は、艦首にある76.2mm速射砲による砲撃を開始。

 

「ミサイル発射!」

「撃ぇっ!」

 

そして砲撃と共にミサイル艇戦隊より、甲板後部のコンテナ格納型ミサイル発射器から多数の艦隊地ミサイルが発射される。

 

「ドローン射出!」

 

空を見た野盗団も持っていた自爆ドローンを展開。洋上の戦隊に向かって攻撃を行う。

 

「ドローン射出を確認」

「迎撃しろ!」

 

指示をすると、338口径のガトリング銃が対空防御を実施する。

有効射程が一五〇〇メートル以上ある優秀な狙撃用小銃弾は、対空火器の弾薬としても十分な威力を有し、接近してくるドローンを迎撃する。

 

「撃ち漏らすなよ!」

「分かってますよ!」

 

治安官はレーダーに映った順番に迎撃を行うと、突如レーダーが止まる。

 

「電波妨害!」

「手動操作に切り替えます!」

 

ミサイル艇の戦闘指揮所(CIC)で砲術員が叫ぶと、各ガトリング銃が手元の操縦桿で操作されて発射される。

連合とは言え、しっかりとした連携をとっていないからなのか、電波妨害によって野盗側の自爆ドローンが味方の電波妨害で海上に墜落していく。

 

「面舵!」

「各艦自由回避!」

 

之字航行による自爆ドローンの回避を行う。

 

「っ!!」

 

その時、海中に意識を傾けていた治安官が叫ぶ。

 

「魚雷音探知!」

「何処だ!?」

「方位二二〇、水深十八!速度二五節!」

「刑務所か!」

 

その時、刑務所に向けて潜水艇から魚雷が発射された。

 

「魚雷音探知!」

「迎撃!」

 

所長が指示を出すと、刑務所の最外殻の防御施設から魚雷迎撃魚雷が発射され、接近中の魚雷に向かって短魚雷が発射される。

魚雷本体の推進音や金属反応を頼りに迎撃魚雷は至近で爆発をすると、発射された第一陣魚雷を全て迎撃する。

 

「迎撃成功!」

 

パネルに映し出された魚雷のマーキングが消えると、所長は聞く。

 

「上空から発見できたか?」

「まだ報告はありません!」

 

その時、緊急発進(スクランブル)をしたジャイロダイン(AH-172)と対潜哨戒ヘリコプターが海域の捜索を行う。

 

「磁気探知は?」

「反応ありません」

「くそっ、FRP船体か…」

 

報告にパイロットは思わず毒吐いた。

繊維強化プラスチックで作られた潜水艇は低深度しか潜行できないかわりに機関部以外で金属をほぼ使用しないため、磁気探知機(MAD)や金属探知機に反応しにくい。

 

「熱源反応は?」

「ありません」

「くそっ、電気推進かよ」

 

そして大抵そう言った潜水艇は、アンテナを海面から伸ばしてマイクロ波給電による蓄電池式を採用している。

通常の潜水艦でも同様にマイクロ波による給電装置が装備されているが、通常ではそこにエーテル機関による発熱があり、周囲の海音で冷却を行うため、熱源探知で捜索することが可能である。

 

「マイクロ波給電の給電を探知しろ。それからアクティブソナー発射」

「了解」

 

そこで観測員がヘリコプター内の機器を操作して潜水艇の居場所を探す。

すると編隊を組んでいた別のパイロットが無線で報告してくる。

 

『敵視認!居たぞ!』

 

そこですぐさま座標を伝える。

 

「直ちに攻撃!沈めてもかまわん!」

 

ヘリコプターの飛行長が叫ぶと、すぐにジャイロダインが対潜ロケット弾を発射。海面に着水をすると直ぐに深度数メートルを航行していた潜水艇に命中。爆発をすると沈降を始める。

 

「アクティブソナー発射準備完了」

「直ちに発射!」

 

潜水艇や潜水艦の最大の強みはその隠密性である。その強みを活かした奇襲攻撃が唯一の強みである彼女らは、見つかれば鯨とぶつかっただけで沈んでしまう可能性のある脆弱な船となってしまう。

 

「…」

 

ヘリコプターの下から下ろされる吊り下げ式ソナーからアクティブソナーが海域に照射された。

 

「…っ!」

 

そして音を聞いた聴音手が言う。

 

「敵潜発見!」

「数は?!」

 

そこでヘリコプターから飛行長は潜水艇の情報を聞いて攻撃命令を発した。

 

 

 

 

 

「急げ!」

「敵は海底トンネルを超えたぞ!」

 

海底駅では多数の治安官が戦闘準備を行っていた。

閉鎖を終えた海底トンネルだが、一部徒党の連合部隊が突破したと言う情報はすでに届いていた。

 

「博士!」

 

海底駅でエレベーターを降りてきたネクィラムに武装をした治安官が言った。

 

「危険です。すぐに避難を!」

「分かっている」

 

すでに同地にいた研究者達は非戦闘要員として避難をしており、ネクィラム達数名が最後であった。

 

「?」

 

しかしスフェーンはその場に残ったまま動かない。

 

「どうした?」

 

ネクィラムが聞くと、スフェーンは側にいた治安官に聞いた。

 

「すみません、ここで列車がぶっ壊れたら弁償できます?」

「…さぁ?俺に聞くな」

 

その返答を聞いた治安官にスフェーンは質問する。

 

「なるべく壊さないでくださいよ?」

「善処はする」

 

絶対善処できないやつだとスフェーンは軽くため息を吐くと、

 

チュンッ!

 

頭上を銃弾が掠め、スフェーンは咄嗟にネクィラムを庇った。

 

「敵襲!!」

 

そこで一人の治安官が叫ぶと、トンネルを抜けてきた部隊が銃撃を行う。

 

「…」

 

スフェーンはそこで一旦目を閉じて自分の列車のCIWSのガンカメラと接続する。

先頭車両はコンテナが降ろされており、トンネル開口部に射撃が可能だった。

 

「っ!?」

 

突如迫り出した武器に一瞬治安官は驚いたが、すぐさまその銃口がトンネル開口部に向いたのですぐに味方と判定をする。

 

「いいのか?」

 

その様子を確認し、サングラスに僅かに映るそのガンカメラの映像を見た治安官が聞くと、スフェーンは言う。

 

「後で撃った分補充してくれますか?」

「…分かった。おそらく所長も許可を出すだろう」

 

直後、列車からガトリングの銃撃が海底駅に響き渡った。




お気に入り登録、高評価をよろしくお願いします。

スフェーンに持たせるなら?(参考にします)

  • 89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
  • 九九式短小銃+二式擲弾器
  • Ak5C+M26 MASS
  • AKMS+GP-25
  • AKE-971+GP-34
  • FN M1949+Energaグレネード
  • FAMAS+APAV40
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。