「くそっ!」
銃を手に持った一人の野盗が毒吐く。
トンネルの出口に向かって突撃を行った徒党連合部隊だが、トンネルの中で押さえ込まれていた。
「伏せろ!」
誰かが叫んだ直後、トンネル開口部に向かって無数の連続した銃声が響く。
「くそっ!」
「ガトリングかよ!」
しかも音的に30mm級、本来であればオートマトンや自走対空砲が装備するような大きさの兵器だ。
「迂闊に出るな!」
30mmガトリング銃はオートマトンの装甲ですら貫く威力を有している。迂闊に出て悲惨な目に遭うのは自明であった。
二連装式の短銃身30mmガトリング銃から放たれる圧倒的な弾幕は、彼らが頭を出す隙を一切与えない。
「間違っても対戦車ミサイルは撃つなよ?」
「無論ですよ」
海底駅のホーム、そこでネクィラムを別の治安官に任せたスフェーンはサングラス越しに映るARの画面を見る。
列車の先頭車に搭載されている複合型CIWSを発射して迎撃を行なっており、オートマトンが出てくるまで時間稼ぎを行なっていた。
この狭いトンネルでは、二門のガトリング銃でさえ敵部隊を押さえ込む事が可能だった。
「研究者にしては落ち着きすぎだろ…」
そこで野盗の襲撃にもかかわらず平然と会話をしているスフェーンに、その治安官が思わず溢す。
「これでも昔は傭兵だったんです」
「…なるほど」
スフェーンの返答に治安官は頷く。彼女は外部研究員とかなんかとか言っていたただの一般人だと思っていたが、傭兵をやっていたと知って理解する。この状況で軽口をいえると言うことは、新米ではないと言うのは彼らの経験上理解した。
「お前さん、治安官向いてそうだな」
「…勘弁してください…」
そこでスフェーンは軽くため息をついた。
長年軍警察という組織が培ってきたビッグデータは、採用した治安官候補生の中から訓練中の成績によってどの分野が合うかなどの判定が容易に可能であった。
一部では、昇進や採用の判断は寿命の概念のないかつてのアンドロイドやAIが行なっているという噂があるほど、軍警察という組織は徹底した公平性を敷いた武装組織であった。
その為、この刑務所に配属される治安官は思想面でも職務に忠実な人物が登用される傾向にあった。
逆に正義感あふれる人間はこの場にはほぼいなかった。
「おい!そっちの状況はどうなっている!」
そこで治安官は刑務所に繋がる出入り口の方に叫ぶと、そこで出入り口から武装をまとめたアンドロイドや重量級サイボーグが現れる。
「いつでも行けるぞ!」
彼らは一様にガトリング銃や散弾銃を装備し、刑務所内での暴動鎮圧目的の武装をそのまま持ち出してきていた。
現在、刑務所内は襲撃に合わせて一斉に全隔壁が閉鎖され、囚人達の中には襲撃に乗じての脱走を企てた者もいたが、完全武装をした自走ターレットとアンドロイド部隊の存在を確認して早々に諦めていた。
「よし、このまま前進する!」
「殲滅か?」
流石に爆発物の使用は落盤の可能性を考慮して禁止され、治安官達は全員が短機関銃、ガトリング銃、散弾銃で武装をしていた。
「馬鹿、できるだけ拘束するんだよ」
好戦的な意見に軽く注意をしてから障害物を展開した海底駅で治安官部隊は行動を開始する。
「援護しますよ」
「頼んだ」
弾薬車を横付けしてオートマトン用の30mmケースレス弾薬を装填しているスフェーンの列車。少なくとも牽制のみで永遠と無駄撃ちをしていないスフェーンの射撃に『こいつ、出来る!』と判断した治安官達も手慣れた使える戦闘員の扱いでスフェーンに答えた。
「研究員、焼夷弾に切り替えられないか?」
「…酸欠で死にたかねえんですけど」
今まで徹甲弾ばかりを放っていたスフェーンは答える。弾薬を焼夷弾に選択して発射可能だが、焼夷弾ということで燃える。
こんな充分な換気ができるか怪しい海底駅で焼夷弾を撃つことは酸欠の危険性があった。
「何、数秒撃つだけだ。酸欠には程遠い」
「…分かりました」
隣の列車の陰で隠れていたスフェーンは、そこでARのガンカメラを操作して弾薬庫から片方のガトリング銃を焼夷弾に変更する。
「準備できました」
「了解だ」
列車の側でガトリング銃を操作していたスフェーンに小さく治安官が頷くと、そこで彼は他の近辺の治安官達に無線で伝える。
「良いか!よく聞け!」
そこで軽く注意を入れながら今でも散発的な攻撃をしてくる敵部隊の話をする。
「敵はでかい武器を持っていない!これから焼夷弾を撒いてから一斉に突撃する!」
敵部隊の所有している武器は小口径弾薬ばかり。おそらく海底トンネル入り口の障害物で車両を入れることができなかったのだろう。
すでに海底トンネルの隔壁は閉鎖され、開いた形跡もない。副司令所のある海底駅近くの設備でもそれは確認されている。
「地上との連絡は?」
「未だ出来ていません」
海底トンネルの先の駐屯地との通信は未だ回復しておらず、向こう側の混乱が想定された。
「…仕方ない。我々のみで敵を追いやるぞ!」
そこで彼は隣にいたスフェーンに目線を向けた。
「戦況は盛り返しています」
戦闘指揮所で副官が所長に伝えた。
「所内の状況はどうなっている?」
所長はそこで襲撃をかけてきた敵部隊に抗堪した駐屯地部隊を称賛しつつ、刑務所内の状況を聞く。
「現在、すべての隔壁を閉鎖。各区画にアンドロイド部隊を配備。今の所、暴動の機運無し」
アンドロイドの強みはどれだけ長い期間、閉鎖空間にいても電力がある限り作動し続ける。
また区画に注水作業を行った場合でも、すでに防水作業を施してあるため特殊な装備を使用せずとも生存が可能であった。
「よし、各区画は現状を維持。暴動の気配があり次第、威嚇射撃も許可すると伝えろ」
「了解しました」
所長の命令に所内の刑務官が頷く。
すると戦闘指揮所に微かに爆音と振動が訪れる。
「今のは?」
「はっ、航空隊による対潜攻撃かと」
現在、潜水艇に対し攻撃を行っているヘリコプター部隊は、アクティブソナーにて探知した潜水艇に対し対潜攻撃を続行。すでに三艇を撃沈していた。
「現在、第二波魚雷を迎撃。第五五ミサイル艇戦隊による艦砲射撃は以前続行中」
「近辺の部隊に増援を要請。複数の部隊より応援受諾の通信が届いています」
次々と報告があがり、駐屯地に攻撃をしてきた連合部隊も司令部を守り切った部隊を筆頭に徐々に押し返されつつある。
「全く、こんな大部隊。どこから持ってきたんだ…」
所長は、少数とはいえ海底トンネルに侵入されてしまい、そのことにため息を吐く。
「ともかく、絶対に一人も脱走者を出すな」
「了解しました」
刑務所の所長として、刑罰を受けた囚人に与えられた刑罰を行わせる。
脱走を行い、自ら課せられた罰から逃げ出すことは絶対に許さなかった。
また刑務官による囚人への暴行も、刑務官の業務を超えた仕事であり、彼女は刑務所所長就任の際、上層部に正義感よりもただ業務に忠実な人間を要望していた。
おかげでこの刑務所は彼女の就任以降、囚人への暴行件数はわずか数件であった。
「しかし、かなりの大規模部隊です。これほどミサイルやロケット弾を撃ち込んでくるとは…」
「犯罪組織というのはそういうものだ」
はるか昔より、犯罪組織の資金力というのは時に政府軍よりも重厚な武器を取り揃えている。
故に犯罪組織から押収した武器をそのまま政府軍がひっそり自軍に組み入れるなんて所業も行われた歴史があった。
そもそも一刑務所にヘリコプター部隊とミサイル艇戦隊が警戒している時点で重武装もいいところであり、特一等刑務所が過去にどれだけ襲撃を受けてきたのかが理解できる。
「もしかすると、裏で企業の攻撃もあったかもしれんがな」
「それは情報部の仕事です。我々のすることでは…」
副官に所長は頷く。
「無論だとも」
そして戦闘指揮所の椅子に深く座り直す。
「我々の職務はあくまでも囚人の監視と刑罰の執行だ。それ以外に仕事を増やしたくないさ」
「ええ、是非とも仕事は少なくしてもらいたいものです」
「…誠心誠意努力しておこう」
所長はこれから必要となってくる地獄のような書類仕事を想像し、少し表情が強張る。
「はぁ…トチ狂った連中は何をしでかすかわからん。海底トンネルの方も注意するように通達しろ」
「はっ!」
そこで副官は頷くと、すぐに海底駅に展開している部隊に注意喚起を行った。
その注意喚起は海底駅に展開し、今から突撃を敢行しようとした矢先に行われた。
『司令部より十五警備部隊、敵の自爆攻撃に注意せよ』
「…了解。敵の自爆攻撃に警戒する」
焼夷弾の発射直前に司令部からの注意に、彼らは分かっていると軽く頷いてから改めて部隊に伝える。
「聞いた通りだ。敵の自爆攻撃に注意しろ!」
最も、敵がそれほどの攻撃をしてくるとは到底思えなかった。
何せ襲撃を行った上で、こんな密閉された海底駅で自爆をしようものなら、忽ち衝撃波が反射して施設全体に衝撃が渡る。
そうするとシャフトのようにエレベーターと非常階段でしか繋がっていないこの刑務所では、下手をするとエレベーターから水漏れが起こる可能性があった。
何より、トンネル付近で自爆をすれば確実に天井が落下し、逃げ道がなくなる。
水上に逃げるにしても長い階段かエレベーターを登る必要があり、すでにすべての隔壁が閉鎖されており、それをこじ開けるだけで時間がかかる。
「君…えっと、」
「スフェノスです」
「スフェノスさん、射撃を。五秒、あのトンネルの開口部に向けて撃ってくれ」
「了解」
その直後、スフェーンはAR画面から照準をトンネル開口部に向けると発砲。
「総員、着剣!」
その間、治安官は全員が銃口に銃剣を装着する。
毎分数千発の間隔で発射された焼夷弾は命中すると、そのまま弾頭から火炎を吐き出す。
「下がれ!」
即座に野盗達はトンネルの奥に逃げていく。
「「「うぉぉおおおおっ!!」」」
すると燃え盛るトンネルの入り口から銃剣を突きつけ、雄叫びを上げて突っ込んでくる治安官。野盗達はその気迫に恐れ慄いて後ろに逃げ始めた瞬間。
ッー!ッー!
警報音と共に地上側の隔壁が開いていく。
トンネル内の野盗達は地上の司令所を制圧できたかと思った。
「っ!!」
しかし野盗の部隊は忽ち表情を青くする。
「動くな!」
「両手をあげて、武器を床に置け!」
そこでは海底トンネルの地上側出口から軍警察のオートマトンが現れ、その周りを重量級サイボーグや一般治安官がフラッシュライトを照射していた。
彼らの圧倒的な武装を前に、野盗達は治安官達の指示に従った。
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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)
-
89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
-
九九式短小銃+二式擲弾器
-
Ak5C+M26 MASS
-
AKMS+GP-25
-
AKE-971+GP-34
-
FN M1949+Energaグレネード
-
FAMAS+APAV40