TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#31

その街で、少年は部屋に差し込んだ陽の光に当たって目が覚める。

 

「んっ!んん〜っ!」

 

そして軽く背を伸ばして布団を取って敷布団から抜けると、自分の部屋の襖を動かした。

 

「あら、おはよう」

「おはよう、お母さん」

 

そしてそこでは台所に立つ母が僕を見てそのままシンクに目線を戻す。

 

「朝ごはん、食べちゃってて」

「うん」

 

そして毎日のように机に置かれた朝食を食べる。お父さんは他の人たちを連れて今日も大きな街に行っているだろう。

何でも銀行からゆうしをして欲しいみたい。でも顔色が良くないのでゆうしは出来なかったみたいだけど。

 

「いただきます」

 

そしてさらに盛り付けられたベイクドビーンズと焼いたベーコン、スクランブルエッグのいつものセットをすぐに食べ終える。

 

「ご馳走様でした〜」

 

再び手を合わせてそのまま椅子を降りると、母が言ってくる。

 

「今日は寺子屋の日でしょう?」

「うん」

「気をつけてね」

「はーい」

 

そして鞄を持った僕は家を出ると、そこで街一番の大通りを軽く走る。

 

「おはよー!」

「あら、おはようユウキくん」

 

近所のお婆ちゃんに挨拶をしながら通りを走り抜けて街の寺院に行くと、そこでは虎の獣人と人の同級生二人が既に席に座っていた。

 

「あっ、ユウキ君」

「ナルク、カオリ。おはよー」

 

昔の寺院を改造して作られた学舎では同級生の二人の男女が挨拶をすると、僕は教室を見回した。

 

「あれ、キールは?」

「引っ越したってさ」

 

虎の獣人のナルクが答えると、僕はまたかと軽くため息を漏らした。

 

「これで今月四人目ね」

 

カオリは頬杖をして慣れた様子で前を見ると、思わず僕は呟いてしまった。

 

「じゃあもう僕たちしかいないんだ」

「そう言うことだな」

 

三人しかいない小さな教室で僕たちは先生が来るのを待っていると、そこに一人の牧師さんが入ってきた。

 

「さて、今日の授業を始めますよ」

「「「はーい」」」

 

こうして僕たちの一日が始まった。

 

 

 

 

「では、今日はここまでとします」

 

太陽が落ちる頃、今日の授業を終えた僕たちはそのまま荷物を持って家に帰る。

 

「一緒に帰ろうぜ」

「うん」「良いわよ」

 

いつも僕たち三人は家まで一緒に帰る仲だった。

 

「今日の授業、前にも似たような場所やらなかった?」

「別に読み書き計算ができりゃあ良いだろう」

 

カオリの疑問にナルクが返すと、僕もナルクに納得してた。

 

「そうだよ、この街に僕たちより年下の子供なんていないんだし」

「そりゃそうだけどさ……」

 

所々寂れた様子の街並み、昔はいろんな人が来て活気に満ち溢れていたらしいが、今ではその影もなかった。

 

「どうせ私たちが大人になる頃には、この街には誰も居ないさ」

「ちょっと!」

「実際そうでしょ。こんな状態じゃ」

 

事実を言うナルクにカオリが軽く言おうとした所を、僕も続けて言うと。カオリも思う部分があったのだろう、二の次が出なかった。

 

「僕は大きくなったら街に出るんだ」

「街に?」

「そう、その方が仕事もいっぱいありそうだし」

 

そんな事を話していると、街の駅の方から音が聞こえてきた。

 

「あっ、列車の音だ」

「お父さん達が帰ってきたのかな?」

「行ってみる?」

 

カオリの意見に二人は頷くと、そのまま駅の方まで小走りで向かってみた。

 

 

 

そして街の駅に着くと、そこでは数人に大人や老人達が集まって何やら話し合っており。僕たちは遠目でそれを見ていた。

 

「そうか…ダメだったか……」

「これで本当におしまいだ」

「これからどうする?」

 

絶望した顔を見せている大人達の中には僕のお父さんもいた。

 

「お父さ〜ん!」

「ん、おぉユウキか」

 

駅のホームで僕はお父さんに駆け寄ると、お父さんは僕を見て暗かった表情を苦笑いくらいには変えて接してくれた。

 

「寺子屋の帰りか?」

「うん、そう」

 

そう言うと、お父さんは軽く頭を撫でた後に僕に言った。

 

「お父さん達は、これから町長さん達と話すことがあるから。母さんには少し帰りが遅くなると言っておいてくれ」

「うん、分かった」

 

駅のホームには町長さんの持っている一両の気動車が停まっていて、大きな街に向かったお父さん達は今日も銀行と交渉に行ったらしい。

そして僕が頷いた時、駅舎から管理局に勤めているおじさんが出てきてお父さん達に言った。

 

「おい、そろそろ列車が来るってよ」

「そうか…」

 

列車とは、この街で生産された鉄鉱石を運ぶ為の列車だ。今では殆ど鉄鉱石が取れないので昔掘った物を運ぶだけなのだが、偶に運びに来るのだ。

すると駅に汽笛が鳴り、ホームに一本の列車が入って来る。赤と灰色の五両の列車はコンテナを挟み、後ろにホッパー車を連結していた。

そして僕たちのいるホームとは反対のホームに停車すると町長さんが迎えに行っていた。

 

そして出迎えた町長さんが驚いた表情で列車を見ており。何事かとお父さん達も不思議に思っていると、列車の奥から一人が出てきた。

 

 

 

そこには僕達よりも少し大きいくらいの身長の、背中に銃を背負った茶色いローブを被った子供が立っていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

今、スフェーンのいる大陸の他にもトラォムには大陸が存在している。

スフェーン達のいる大陸はウエルズ大陸と呼ばれ、ノーチラス海を挟んだ先でヴェルヌ大陸に繋がっている。

主にこの二つに大陸がこの星にある大陸だが、星を回れば他にも大小様々な大陸や島が存在している。

 

かつてこの星の開拓が行われていた時。多くの動植物が持ち込まれ、この星に根付いていた。

星を開拓する際に、エーテルの他にも勿論。多くの鉱物資源の採掘が行われており、今回の依頼もその一つ。

 

『今回の依頼は鉄鉱石の輸送です。スフェーン』

「はいはい、その為にホッパー車が貸し与えられたんでしょうが」

 

コンテナ輸送に合わせて車両に連結した借りた貨車、相変わらずの十二両編成の貸し出しなのでかなり不恰好な編成だが。貨客混載よりはマシだと思っていた。

 

「まさかラストタウンに向かう事になるとはね」

 

錆びた街(Rust town)、鉄鉱石を大量に算出した事から其の名のついた街は、嘗て鉄鉱石を算出した一大鉱山都市だった。だが年々鉄鉱石の産出量を減らし、一昨年ほどに鉱山の営業を一時ストップした街だ。

既に嘗ての都市の勢いは無く、今では多くの住人が掘り出された鉄鉱石の運搬を終えるのを待つだけとなっていた。

 

『今では嘗ての栄光が残っているだけの状態ですね』

「まぁ、そう言う街はこの星じゃあいくらでもあるだろうよ」

 

元々大災害で多くの人が消えたこの世界、徐々に復活しているように見えても。周辺の街の数は年々減っている。

一つの巨大な街を支えるための土台の中・小規模都市は利益効率が落ちると、即座に損切りの対象となり。融資がされないとその街は忽ちゴーストタウンとなる。

 

「嘗ては鉄の街として繁栄した街でも、この有様か…」

 

遠くに見え始めた街を見ながらスフェーンは速度を落とし始めると、嘗ての広大な駅舎の一角に列車を停めた。

反対にホームには一両の気動車が停車し、その前で住人が話し合っている様子。

 

そしてそのまま散弾銃を持って扉を開けると、そこでは一人のスーツを身に纏った初老の男が出迎えの為か高架橋を伝ってホームに降りてきた。

 

「どうもどうも、今日は…え?」

 

そして自分を見るや否や目を見開いて露骨に驚いた表情を浮かべる。あぁ、大きくならないかな身長。

 

「どうも、運輸ギルドの依頼を受けてきました」

「え、えっと…親御さんは?」

「居る訳無いでしょう」

 

そう言いながらスフェーンは運輸ギルドの会員カードを出す。

一々証明証を出すのも面倒と言う事で、この前金を払って運輸ギルドの写真付きカードを作って貰った。偽物だってケチ付けられる前に文句を言えない証明書を作って貰ったのだ。

 

「これで良いですか?」

「え、えぇ……」

 

困惑した様子のその男はそれでもきちんとした依頼のそれであると確認すると、彼女に鉄鉱石のある場所と積んでいるコンテナの回収を街の人間に言った。

 

「子供が運転をしているのか?初めて見た」

「そうですか」

 

リーチスタッカーで積んで来たコンテナをトラックに積み替えている中、この街の住人にそんな事を言われる。

 

「少なくとも、私が鉄鉱石を運ぶ間はよろしくお願いします」

「お、おう……よろしく」

 

歯切れ悪く返す住人にスフェーンは面倒な事にならなければと思いながら列車に戻ろうとした時。

 

「ん?」

 

ふと視界の端で感じた視線、そこでは入り口で自分を見る三人の子供がいた。

 

「こらっ!」

「「「っ!!」」」

 

そしてそんな子供達を見ていると、コンテナを動かしていた猫の獣人の女性が軽く叫ぶと蜘蛛の子を散らすように逃げ出していた。

 

「あの子らは?」

「ああ、街の子供です」

 

申し訳なさそうにするその住人は走り去っていった子供の方を見ながら話した。

 

「もう三人しか残っていないんですけどね」

「ふーん」

 

対して興味の無い話だったが、スフェーンは空になった列車を確認するとそのまま自分の列車に乗り込んだ。

 

「この先に積み込み場があるので、鉄鉱石は別の人に聞いてください」

「わかりました」

 

空のコンテナを集めるまでの間、スフェーンは列車を移動させるとそこではベルトコンベアの下で待機している職員の姿があった。

 

「行きまーす」

「おう、分かった」

 

ホッパー車を引きながらベルトコンベアの下に移動すると、そこで機械が動いて上から掘り出した鉄鉱石が降り注ぐ。

嘗て同地より掘り起こされた鉄鉱石は企業の列車が買取に来るほどの産出量だったが、今では運輸ギルドが回収に来る程度の量ほどであり。山積みになった鉄鉱石を貨物に載せていた。

 

「そろそろだ!」

「了解です」

 

ベルトコンベアの先で確認をしていた男が叫ぶと、動きが止まり。スフェーンはそれを見て貨車を前に一両分押す。そして次の積み込みが始まると、そこでスフェーンはマスコンを握り、窓から軽く顔を覗かせて外の様子を時折確認する。

 

「しかし、思ったよりも量はあるな」

『閉鎖された後も全盛期より採掘された鉄鉱石は多く残されていますが、鉄鉱石の質は高い様子ですね』

「へぇ…」

 

山積みの鉄鉱石を見ながらそんな事を話すスフェーンは、ギルドの依頼でこの鉄鉱石を鉄工所まで運ぶ依頼をこなしていた。




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依頼をピックアップ致しました。

  • 氷河の残る山岳
  • 海辺の観光地域
  • 大災害の跡地
  • 嘗ての戦場
  • 眠らない都市
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