TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#310

「はぁ…」

 

大きくため息を吐きながらスフェーンは至る所に弾痕が出来上がった海底駅を眺める。

 

「オーラーイ、オーラーイ」

 

海底駅のクレーンはコンテナを運んでおり、スフェーンの列車に積載していく。

刑務所への襲撃事件から二日、路線の復旧と海底トンネルの修復作業が行われている最中だが、自分の列車を臨時の研究室としていたエーテル解析研究所のコンテナが纏めて載せられている。

 

あの事件後、アルカトレア島刑務所所長より安全上と警備体制の問題から死刑囚を使った臨床実験の実施要項に関する変更が検討。そのまま実行に移され、被検体となる死刑囚は一時的に所外に出る方針が取られることとなった。

初めこそ死刑囚の脱走の可能性があると危険視をされたが、近くの駐屯地で行うと言うことで上層部も承諾することとなった。

 

「全く、面倒なことになったものだ」

「そもそもここの所長が乗り気じゃないんだから…こんなことがあっちゃあね」

 

隣で立つネクィラムにスフェーンはやや表情を引き攣らせる。

徒党連合部隊と呼称されている此度襲撃をした部隊、目的は刑務所内に収容された彼らのボスの脱獄の援助であった。

取り調べにより発覚した事実であったが、エーテル解析研究所の人員を人質にとるつもりであったと言う。

 

「襲撃を受けた駐屯地に我々は移動することとなった」

「あぁ、じゃあ…」

 

そこでネクィラムは頷く。

 

「まあ、君の仕事はここで終わりということだな」

「了解〜」

 

仕事の終了を依頼主から告げられ、スフェーンは今までで一番の仕事の達成感と開放感を感じた。

 

「んあ〜、流石に疲れた」

「それほど働いたかね?」

「いや気疲れ」

 

スフェーンはネクィラムに答えると、そこで話を聞いていたユウナが聞いてきた。

 

「え?もう行くんですか?」

「YES」

「まだ仕事…」

「依頼主からなんで」

 

スフェーンはそこでコンテナを積載する自分の列車を見る。

海底トンネルの修復と軌道復旧が終わればすぐに軍警所属の電気機関車(IORE形)がやって来る。それまでにコンテナを全て積載して撤収をする必要があった。

 

「と言うか、撤収の手伝い大丈夫そ?」

「…それを言うなら手伝ってくださいよ」

 

不満顔なユウナ。スフェーンはそこで言う。

 

「部外者の人間が迂闊に最先端の研究資料に手が出せるわけないでしょ」

「…」( ‘ᾥ’ )

 

表情で精一杯の悔し顔を見せるユウナはその後に呼ばれて消えていく。残念、こっちは盲目者の介護で忙しいの。

 

「行ってやれば良かろうに」

「じゃあ誰が貴方の介護するんですか?」

「…そうだな」

 

ネクィラムも、今はエーテルがほぼない環境にいるので視界がほぼゼロである。おとなしくスフェーンの誘導に身を任せるしかなかった。

 

「前の襲撃で上も下も大混乱だ」

「潜水艇まで持ち出すのは確かにちょっと予想外だったけど…」

 

そこでスフェーンもやや表情を引き攣らせて敵が持ち出してきた潜水艇を思い出す。

基本的に魚雷という武器は一発の値段が高い。そう連発もできないので、そんな虎の子とも言うべき武装を、この頑丈な刑務所に送り出したということだ。

 

「だが、アルカトレア島刑務所は損害軽微。脱獄者は一人も出ていない」

 

再び追加された監獄の要塞伝説に内心ため息を吐き、彼はスフェーンに言う。

 

「治安官に感謝された。君の武器のおかげで敵は簡単に抑え込めたとな」

「たまたま先頭のコンテナが空いていたのが幸いね」

 

全車で二段積みをしていた車両だったが、運良くトンネルに最も近い車両はコンテナを下ろしていたのが幸いしていた。

 

「しかし、期限切れに近い弾薬ばかりをもらっていたと言う話だが?」

 

ネクィラムはそこで車両の弾薬庫にたらふく弾薬を詰めてもらったスフェーンに首を傾げる。

先の戦闘時に弾薬をもらう約束をしていたのだが、彼女は期限切れに近い弾薬ばかりを貰っており、軍警察の方も期限切れの弾薬を貰ってくれるということで首を傾げながらも処分費用が浮くと言って喜んで期限切れに近い近接信管付き焼夷榴弾や装弾筒付翼安定徹甲弾を列車の弾薬庫にあるだけ詰め込んでもらった。

 

「ああ、この後ちょっと危ない路線を行くつもりなので、どうせ使う羽目になるんで」

「…なるほど。もう次の仕事か」

「移動ついでにですけど」

 

この世界で鉄道輸送に関する仕事は引く手数多である。

 

「スフェ…ノス君」

 

ネクィラムはスフェーンと言いかけたところを、咄嗟に職員証に書かれている名前に言い換えてから質問をする。

 

「君は、いつまでこの旅を続けるのかね?」

「…」

 

その質問にスフェーンは少し考える。

 

「…分からないわね」

「ほう?」

 

少々、予想外な答えに思わずネクィラムはスフェーンを見てしまう。

 

「では、君の旅に終わりはないと?」

「満足はきっとすることはないでしょうね」

 

少なくとも、ネクィラムが生きている間には終わることはないだろう。

多分、運び屋を辞めるより先にこの爺さんがくたばっている。

 

「まあでも、いつかは飽きて辞めるかもしれませんが」

「そうか…なら、その時はうちのところにでも来るかね?」

「全力でお断りさせていただきます」

 

断固拒否、拒否柴並みの抵抗を見せるスフェーンにネクィラムは面白くなさげな表情を見せた。

 

「釣れんなぁ…」

「むしろ喜んで突っ込む方が頭がイカれておるとしか…」

 

少々軽蔑も含めた眼差しでスフェーンはネクィラムに言うと、そこで最後のコンテナが列車に積載される。

 

「よし、この後電気機関車が来る」

「では、今回はここでお別れか」

「そう言うことになりますね」

 

スフェーンは淡白的に答えると、彼は小さくため息を吐く。

 

「やれやれ、相変わらず直ぐに飛ぶように行ってしまうな」

「そらそうよ」

 

ええぃ冗談ではない!と内心思いながらスフェーンはこんな命がいくつあっても危なそうな場所からスタコラさっさと逃げる準備を進めていると、そこで一仕事を終えたであろうジョンとユウナがこっちに来た。

 

「やれやれ、まさか駐屯地の方に移動するだけなのにこれほど苦労するとはな」

「それだけとっ散らかしたわけじゃないの?」

 

ジョンに軽く答えると、積載されたコンテナを見て一言。

 

「少なくとも十二両全部に大型コンテナが満載になる量を積んでたら撤収も苦労するでしょうよ」

 

そこで白衣を脱いでナッパ服姿のスフェーンは積載する荷物の重量を計算して軽く絶句していた。

 

「荷物重すぎるなぁ…」

「何か問題でも?」

 

タブレットで軽く頭を掻くと、ユウナが聞いてきた。

 

「最悪、機関車が重連になる」

 

その疑問に答えると、復旧を終えて、地上側から機関車が安全確認も兼ねて現れる。赤信号が点灯し、トンネルの奥から重連で坂道を電気機関車が降りてきた。

 

「あっ、やっぱり」

 

スフェーンはそこで二両固定の電気機関車が重連をしていると言う中々に強烈で、その辺の人が見ると興奮しそうな光景があった。

ここに来る時よりも重量が増えており、これでは安全な牽引ができないと判断され、単線では最強格に牽引力を有する電気機関車が投入された。

 

「オーラーイ…」

 

赤旗を降り、自動連結器の準備を整えてから機関車がスフェーンの列車と連結を行う。

研究員達を乗せてきた客車もスフェーンの貨物列車が出る前に進発する為、連結作業中にトンネルから新たに電気機関車が降りてきた。

研究者達を乗せる客車に多くの乗客と荷物を乗せると、そこでスフェーンはネクィラムをユウナ達に任せる。

 

「んじゃ、この人頼んだ」

「分かりました」

 

軽く頷き、ユウナとジョンはネクィラムを列車まで案内する。

スフェーンは自分の貨物列車に乗っておく必要があるので、ここで一旦別れることとなる。

撤収作業を行なっている中、忘れ物の確認と安全確認を行うと、彼女は貫通扉を開けて連結器の確認を行う。

 

「よろしくお願いします」

「はい、こちらこそ」

 

そこで貫通扉から連結器の確認をするために治安官が乗り込むと、複数の治安官も連結器に集まる。

 

「ピィッ!」

 

乗り込んだ治安官が笛を吹いて旗を振ると、機関車側も汽笛を鳴らしてから接近をすると、自動連結器が接続され、ガシャンと重い金属音と共に接続をされると、機関車は数回前後。しっかりと連結されたかどうかの確認を行う。

 

「連結よーし」

「よーし、ジャンパ線繋げ〜」

 

そこで列車のジャンパ線のが繋げられると、スフェーンの席の運転席の画面に新たに機関車四両が映像に映る。

 

「接続良し」

「了解」

 

すると隣で待機していた列車が出発をし、ゆっくりと研究者を乗せた客車列車が走り出していった。

トンネルの信号が赤青の点灯を繰り返しており、信号場も忙しいなあと内心で思いながら運転席で出発準備を待っていると、

 

『次の列車で出発する』

「了解しました」

 

先頭の運転席から連絡が入り、スフェーンは頷く。

トンネルはまだ赤信号のままで、閉塞内に列車がいる。

 

「あぁ〜…」

 

そこで待ち時間の間、スフェーンは運転室の天井を見上げてから一言。

 

「煙草吸いてぇ…」

 

運転席には読み途中で積み上げられた漫画が置かれているが、彼女はそれよりも煙草を欲しがった。

 

『やめてくれ。俺も我慢しているんだ』

「おっと、失礼」

 

通信が切れていなかったかとスフェーンは失念しており、無線を切ろうとしたが、

 

『上に出たら一本行くか?』

「その前に荷物下ろしたら直ぐに出ますよ」

『そうか…』

 

その運転手はスフェーンが一介の運び屋であると思い出すと、直後に言う。

 

『気を付けろよ』

「ええ、そちらもお気をつけて」

 

そこで通信を切ると、そこで改めてスフェーンはため息をついた。

 

『スフェーン、この際禁煙期間を設けるのはどうですか?』

「(ふむ、私には無理難題な話ね)」

『しかし、月いくら煙草に消えてると思っていますか?』

「(貧乏人の大事な娯楽なの)」

 

到底禁煙の気がないスフェーンにルシエルはため息を吐いた。

 

「さて、ここを出たら直ぐに仕事を探そう」

『了解しました。運輸ギルドから依頼の検索をしますね』

 

そこでスフェーンは新しい仕事をルシエルに検索をしてもらうと、トンネルの信号が変わるまでぼんやりとしながら待っていた。




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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)

  • 89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
  • 九九式短小銃+二式擲弾器
  • Ak5C+M26 MASS
  • AKMS+GP-25
  • AKE-971+GP-34
  • FN M1949+Energaグレネード
  • FAMAS+APAV40
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