TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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ドラムマガジン、パンマガジン。双方に共通しているのは見た目がばりかっこよくなるところだと思う。


#313

今回の目的地であるボストーク-1。

そこではとある実業家が、自らの事業の成功を祝いある研究を遂行させてきた。

 

それはロケット開発。

 

大災害以降、宇宙への興味が失われたこのトラオムの大地にて地上発射型のロケットを打ち上げようとしていた。

 

『おぉ…』

 

郊外の貨物駅に到着をしたスフェーンの列車。そこで臨時のスロープが付けられて下される軍用車両を見ながら思わず彼女は口に出てしまう。

 

「さながら軍事基地ですね」

 

ルシエルも思わず出てしまったスフェーンに頷いて目の前の景色を見る。

そこには多くの貨物列車が並び、そこから雇われたであろう多くの傭兵が集まっており、さながら軍事基地の後方拠点のようになっていた。

 

「ですが、確かにこの規模は凄いですね」

『よっぽど力入れてるのね〜』

 

ルシエルにスフェーンは頷きながら到着した貨物ターミナルを歩く。

列車からは五獣傭兵団の部隊も荷下ろしを行っており、装輪装甲車や多脚戦車、ピックアップトラック改造の自走迫撃砲が貨車から降ろされる。

幸いにも野盗の襲撃もなくここまで到着をした為、弾薬代が嵩まなくて済んでほっと一安心していた。

 

「取り敢えず点検ですかね…」

 

列車を運行し終え、ルシエルは早速ライトを片手に台車の確認をしていく。走った場所は防砂林もなかった一面の荒野。風で舞い上がった砂が散弾のように台車に取り付いており、静電気の力で台車は軽く砂で汚れていた。

 

「よっと…」

 

軽くその細かい砂を箒で叩き落としながら台車を一つずつ確認していくと、

 

「君」

「?」

 

そこで話しかけられてその方を見ると、そこにはチェンが立っていた。

 

『うげっ』

 

彼女を見てやや苦手意識のあったスフェーンは思わず声に出てしまうが、心の声がダダ漏れであるためにルシエルが軽く注意する。

 

「(本音漏れてますよ)」

『心の声ダダ漏れなんだからしゃーない』

 

スフェーンは開き直ってしまい、さらにルシエルはため息を吐くと、話しかけてきたチェンに返す。

 

「何か御用でしょうか?」

 

ルシエルが聞くと、彼女は言った。

 

「見事な運転だった。君、客車の運転経験もあるのかね?」

「まあ…数える程度には」

 

ルシエルは先の運転で構内に入った時に丁寧に運転したことをチェンから手放しに褒められた。

 

「そうか…」

 

チェンはそこで少し間を開けてルシエルを見た後に提案をしてきた。

 

「どうだろうか?この仕事が終わった後、我々の撤収作業を行うのは?」

「え?あぁ…」

 

その提案にルシエルは少し考えると、チェンは軽く指を出す。

 

「報酬はこれくらいでどうだろうか?」

 

そこで提示された額はそこそこ。まあ受けるなら妥当、と言った金額であった。

基本的に傭兵団が行きで使った運び屋を帰りの際のために先に予約をしておくのはよくある話だ。

運行表を制作して鉄道管理局に提出をすれば、使用料を支払っている列車の運行は可能である。ただ運輸ギルドを介さない個人的な依頼は、運輸ギルドからはあまり喜ばれない行為だった。

 

『え?受けるの?』

「(嫌ですか?お断りすることも可能ですが)」

 

少々嫌がる様子を見せたスフェーンにルシエルが聞くと、彼女は言う。

 

『まあルシエルの自由でいいよ。受けたら受けたで私が表に出なくなるだけだし』

「(その方が良いでしょうね…)」

 

ルシエルはスフェーンに頷く。少なくとも目の前の彼女はあまりにもレッドサンと近かった人間。

前のブルーナイトとは事情があまりにも違いすぎるため、スフェーンが表に出てくることは避けるべきであるとルシエルは判断していた。

 

『ってか変わりすぎ。この子ってこういうキャラできるの?』

「(…本当に変わってて正解でしたね)」

 

無意識では思った事を口にしてしまうスフェーンにルシエルは内心安堵していた。

少なくとも目の前の彼女は、ブルーナイト以上に面倒くさくなるというのは、今まで行ってきた試算でも検証されていた。

 

「分かりました。ですが、この量ですとこの列車では多分動かせないので…」

「運転手を雇う必要がある…か」

「そうなりますね」

 

いくら自分の列車のエーテル機関が大災害以前製の小型強力なものとは言え、限度はある。

今回の傭兵団の人数はおよそ五〇〇名、規模は一個大隊ほどの戦力をまとめて移送するためには補助機関車が絶対であった。

すでにこの場所に運んだ時点で行きに契約をしていた運転手とは依頼料の折半を終えて解散していた。

 

「了解した。運転手はまた別でこちらが用意しよう」

「分かりました」

 

チェンはそれを伝え終えるとルシエルの下から去って行った。

 

『あぁ〜、私が出なくてよかった』

「本当ですよ」

 

うっかり!なんて事になったら一体どうなっていたことか。二人はそれを想像することすら憚られた。

 

 

 

その後、台車点検を終了し、そこで仕事用のアカウントが入っているタブレットにチェンから運転士が見つかった連絡を受け、それが先ほどと同じ運転手であることも告げられた。

 

「ふむ、結局行き帰りともに同じというわけですか」

『そう言うことですな』

 

ガレージで防弾チョッキやマガジンポーチなどの装備品を身に付けている途中でルシエルの呟きにスフェーンは頷く。

長年使ってきた作業台もすっかり整えられており、バイクの整備から弾薬のリローディングまでこなせる作業部屋となっていた。

 

「今日はどれで行きましょうか…」

『ルシエルのお気に入りにすれば?』

「ふむ、ならばスフェーンのお気に入りにしましょう」

 

なんでや!とスフェーンが突っ込むも、ルシエルは対戦車ライフル((改造済)Wz.35)を手に取る。

この銃は、昔とある館から持ち出した、一見すると曰く付きの小銃である。

 

「私はスフェーンは一番と思ったものが一番ですから」

『…なんか身震いするなぁ』

「なんて事を言うんですか…」

 

ルシエルはスフェーンにジト目で返すと、彼女は全長の長い対戦車ライフルを背中に背負う。

ネジで固定された大きめの双眼鏡には弾道計算を行う簡易的な計算機が取り付けられ、AR型で弾道が見えるようになっている。

 

その長い銃身の根本には小さな傘が取り付けられていた。これは透視効果のある素材と構造をしている布を貼り付けており、開くと簡単な迷彩防楯として機能できるようになっていた。傘の大きさはバイポッドに合わせており、地面に伏せて射撃ができた。弾倉もオリジナルのドラム式に改造され、わざわざスフェーンは金板を叩いて作り上げていた。

 

「さて、行きましょうか」

『おっけ〜』

 

そして列車を降りると、そこでは多くの傭兵達が街に繰り出していた。

 

「いらっしゃい!」

「こっちに宿空いているよ!」

 

貨物ターミナルの近くでは街の住人が客引きを行っており、招集された傭兵達は街で短い休憩を行なっていた。

インカム付きヘッドホンを装着し、頭には略帽を被るルシエルはナッパ服の上から防弾チョッキとマガジンポーチ、背中にはダンプポーチも付けた武装状態であった。

ベルトは拳銃や弾薬盒、銃剣も装備しており、一瞬傭兵の一人かと勘違いされそうな装備をしていた。

 

「流石に喧嘩に巻き込まれるのは勘弁ですからね」

『いっそ、傭兵と思われた方が安全よね』

 

特に現在、ボストーク-1は大勢の傭兵達が集まっており、依頼であるロケット発射場の防衛以来のために戦闘を行う予定であった。

 

『てか、まじで金かけててやや引くレベルね』

「かなりの資金を投入していますよ。これ」

 

見てわかる雇われた傭兵の数の多さに、それほど募集をかけたのかと内心唖然となるルシエル達。正直、ここまで派手にやるのも珍しい。

軍警察の要請をする野盗討伐の際でもこれ程は集まらない。

 

『雇われたのは五獣の他には…げっ、桜花もいる』

「桜花武士団ですか?」

 

スフェーンは見覚えがある傭兵団を相手に少々苦手意識が生まれる。

 

『そう、近接武器しか使わない変態集団』

「あなたがそれを言います?」

 

ルシエルはスフェーンに思わず言ってしまう。

少なくとも傭兵時代の彼女は、至近距離で騎兵銃(カービン)を叩き込み、足で多脚戦車を踏み、歩兵戦闘車やテクニカルを蹴飛ばす。歴とした白兵戦を展開する戦い方をしていたはずだ。

 

『それはそれ、これはこれよ』

「…言い訳も甚だしいですね」

 

他所は他所、ウチはウチ理論を展開したスフェーンにため息を吐きながらルシエルは街を歩く。

スフェーンの記憶から、桜花武士団の面々と戦い方は把握していた。インターネット上に上がっている断片的な情報を収集してスフェーンは思う。

 

『今回の主軸は五獣と桜花ってとこかな?』

「部隊人数も多いですからね」

 

今回集結した傭兵は総勢でおおよそ二個旅団ほど。主に個人や小規模の傭兵団を中心に集められ、部隊編成が行われている。

 

「なるほど…」

『企業がバックにいる大規模傭兵団は居ないのね』

 

そこで雇った人員を見て雇い主が何を考えているのかが容易に想像できた。

今回のロケット打ち上げ計画において、おそらく他の企業がその妨害のために部隊を動かす可能性を考えている。そこで余計な部隊配置などを通報されないようにするためにあえて企業のバックがない傭兵団や個人を中心に募集をかけたのだろう。

 

「戦闘範囲はロケット発射上から半径十キロの外。既に多くの対空火器が配置されていますね」

 

そこで街の一角に配備されている対空ミサイルを見る。

 

『なるほど、向こうは本気で来ると思っているわけですか…』

「これほどの人員を募集できると言うことは、それだけ資金力もあると言うわけです」

 

ルシエルはそこで出店のフランクフルトを手に持って齧る。

肉厚で、齧って瞬間から溢れる肉汁で口の中を軽く火傷してしまう。

 

「あっ、ちっ!」

 

そんな焼きたてフランクフルトに思わず叫んでしまう。

でも培養肉にしては良い味で、質の高いものを使っているのかと想像する。

 

『ん?』

 

そこでスフェーンはある通知を確認する。

 

『ルシエル、新しい依頼だって』

「ん?」

 

そこでルシエルはスフェーンから新しい仕事を聞くと、それはこの街の貨物ターミナルから近くの河川港に荷物を届ける簡単な仕事であったので受けることにした。




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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)

  • 89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
  • 九九式短小銃+二式擲弾器
  • Ak5C+M26 MASS
  • AKMS+GP-25
  • AKE-971+GP-34
  • FN M1949+Energaグレネード
  • FAMAS+APAV40
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