TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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ボストーク-1は街の郊外に広大な河川が流れており、河川舟艇も航行できるほど川幅がある。当然、それほどの川の規模となると河川港と呼ばれる港町があり、ボストーク-1の中心街からは少し離れた場所にあった。

 

「お疲れ様です」

 

そこで荷物の受け取りに来た人にルシエルは指名依頼を受けて貨物ターミナルでレンタル貨車をここまで来た運転手に頼むと、そこで軽く荷物を受け取って河川港まで橋を渡って荷物を届けた。

 

「いえ、軽い仕事でしたので」

 

ルシエルはそこで河川港の小さな貨物駅で荷下ろしをされていく。

 

「しかし、」

 

そこでルシエルは街の様子を見て対応をした職員に聞く。

 

「随分とこちらでも賑わっているのですね」

 

そこではロケット打ち上げを記念して街中で盛り上がっている住民がいた。

 

「ええ、何せここら辺の御領主とも言える人が行いますからね」

「なるほど…」

 

その一言で企業と住民の関係性が窺えると思うと、職員は言う。

 

「本当は河川舟艇を使いたかったのですが、生憎ロケットが発射されるまでは川を船で渡れなくなってしまって」

「あぁ、なるほど…」

 

そこで自分に急遽指名依頼をされた理由を理解する。

ここの川は川幅が広く、また水深も比較的深いため河川舟運が盛んに行われていた。だが、安全上の問題からロケット発射時刻まで川は封鎖していた。

 

「やぁ、受けてもらえて良かったです」

「それはそれは…」

 

ルシエルも小遣い稼ぎ適度で受けた仕事にこれほど言ってもらえると、満足感を感じた。

 

「何せ今回のロケット打ち上げ、よくない噂もありましてね」

「…ほぅ?詳しく聞けたりします?」

 

そこでルシエルは職員に聞くと、まず噂ですがと前提を置いてから話し始める。

 

「どうやら、ロケット打ち上げが面白くない人たちが襲ってくるって言う噂があって…」

「なるほど…」

 

こんな市井にまで噂が回っているとは、あり得るのかな?などと思いながらルシエルは推測をする。

 

「ほら、河向こうだと多くの傭兵もいて、こっちにも少しそう言う人がいますからね。主戦場は郊外の発射場とは言え…ね」

「まあ巻き込まれたくはないですね」

 

ルシエルは職員の懸念に頷きながらこの街にもいる軍警察の部隊を前に言う。

 

「大丈夫じゃ無いですか?軍警も駐屯していますし」

「だといいのですがね…」

 

職員はそう言うと貨物駅を去っていき、残ったルシエルはそこで諸々の装備品を身につけたまま港を見る。

コンテナを積載可能であり、河を航行する船ということで喫水の浅い船がずらりと並んでおり、船には鳥が止まっていた。

軍警察の河川哨戒艇(はやぶさ級)も出港を控えるように要請が行われいるほど徹底したものであった。

 

「なるほど…」

『これじゃあ、船旅は期待できそうにないわね』

 

スフェーンが言うと、ルシエルも頷いて列車に戻ろうと思ったが、そこでふと排水タンクを思い出して汚水汲み取りを依頼。

ここは人が少ないので汲み取り依頼もすぐに終わるだろうと思っていたのだが、

 

『げっ、結構予約入ってるのか』

「思えば、今は多くの貨物列車が来ていますからね…」

 

現在、ボストーク-1には多くの傭兵が集結し、傭兵達によって街は盛り上がりを見せている。

そのため、本来であればありえないほどの量の列車が止まっており、鉄道に関連している業者も大慌てでその対応に追われていた。

この景気も一時的なものであるので人員の増強も行われておらず、おかげでこうした事業は予約でいっぱいだった。

 

「仕方ありません。業者が到着するまでしばらくここら辺を散策でもしましょうか」

『そうね』

 

スフェーンも賛同をすると、身の安全のために武器を持って列車を降りてから貨物駅を後にする。

列車は無論鍵をかけ、防犯も問題ない。背中には散弾銃も降ろし、装備重量は重くなるが、背嚢を持たないので比較的身軽に行動可能だった。

基本的に歩兵の持つ物資の中で最も重いのが背嚢で、中には生存に必要な食料や野営をするためのテントなどの物資を積んでおり、重いと六十キロにも達する。

そうした生存に必要な物資は今は必要ないので、ルシエルは武器を比較的多く持つことができた。

 

「ふむ…」

 

市街地を軽く散策をするが、ここで中心街の活気の余波を受けていた。

街には多くの出店が並び、乗合バスも人で満員であった。

傭兵も仕事前にこの街の祭りに参加して金を落としており、武器を持っていても特に違和感を持たれることもなかった。

 

「このバスは見送るしかなさそうですね」

『だとしたら次来るの一時間後ぞ?』

 

スフェーンは時刻表を見ながらルシエルに言うと、彼女は街を歩く選択をする。

 

「しかし、こうした静かな街並みが一瞬の景気に湧くのは見ていて面白いです」

『商売根性逞しいわよね』

 

ルシエルの意見にスフェーンも頷くと、彼女はそこで出店のうちの一つが目に留まる。

 

「おや、あれは…」

 

その出店は割り箸を機械でぐるぐると巻いて大きくしていく。

 

『綿飴ね』

「昔、食べたこともありますよね」

『そうね…』

 

そこでスフェーンはそれを食べた時のことを思い出す。

終わりこそ散々だったが、自分の中では煌びやかな思い出の一つであった。

 

「あれ、美味しいんですよね…」

 

そこでふらふらと磁石に寄せられるようにルシエルは綿飴を売る屋台に近づく。

 

「一つ、特大を」

「あいよっ!」

 

陽気なオッちゃんは注文が入るとすぐにスプーンでザラメを掬ってから機械の中心に入れると、直後に熱で溶けたザラメが回転する機械の遠心力で遠くに飛ばされ、機械から飛び出た瞬間に冷却による再結晶が行われると、きめ細かく飛び出た溶けたザラメはワタ状に広がると、そこに割り箸を入れて屋台の店主はグルグルと掻き回すように綿菓子を満遍なく取っていく。

そして色付きのザラメを使用したことで綿飴は大きくなるにつれて色も順次追加されていく。

 

出来上がった綿飴は簡単に顔の大きさを数倍も上回るサイズで、特大の名に相応しい大きさを誇っていた。

所々に濃い色を加えることでグラデーションを作り、円形にそれは作られる。

 

「ほい、お待ちどう」

 

硬貨を受け取り、変わるように綿飴が渡されると、ルシエルは満足げにそれを一口。そして顔を引いて円形にたっぷりと巻き付いた綿菓子を噛みちぎる。少しシャリっとした食感の直後にすぐに綿飴は舌の上で溶けてしまい、口の中で消えていく。

そして溶けたザラメの甘い味に頬が緩む。

 

「〜♪」

 

その表情を見てスフェーンは彼女が綿飴が好きなのかと首を傾げた。

 

『綿飴好きだったの?』

「いいですよ?こんなふうにふわふわしていて、柔らかくて、尚且つブドウ糖もたっぷりなので頭に栄養が行く。ある種のスーパーフードだと思っています」

 

ルシエルの発言にスフェーンはやや驚きながら彼女の好みを初めて知った。

しかし綿飴をスーパーフードというのは恐れ入ったものだ。

 

『そう…』

 

スフェーンも綿飴について熱論を展開するルシエルに生返事しかできなかった。

 

 

 

その後、街の屋台で色々と飲み食いをしながら食べ歩きをするルシエル。

彼女は綿飴の他にも屋台で売られていたアメリカンドックやお好み焼き、焼き鳥といった屋台料理を注文してはその胃袋に消えて行った。

 

「ん…?」

 

片手にぶどう飴を持って齧ろうとした直前、ルシエルはふと裏路地に気配を感じた。

 

「…」

 

覗き込むと、そこでは地面に殺人事件のような倒れ方をしている一人の女性がいた。

 

「…え?」

 

目の前の光景にルシエルは困惑をした。

一瞬死体かと思い、軍警察に通報をしようと思ったが、

 

「うっ…」

 

彼女から微かに呻き声がしたので、生きていると判断。軽く声をかける。

 

「あの…大丈夫ですか?」

 

軽く方を叩いて反応を確認する。そこで首筋に指を入れて脈と体温を計測、血糖値の計測も行う。

 

「み、水…欲しい」

「水ですね?少しお待ちを」

 

そこでルシエルは女性が倒れていた理由を脱水によるものと推定。低血糖による痙攣が確認された。

 

「どうぞ」

 

ルシエルは持っていた新品の経口補水液の蓋を開けて飲ませる。

 

「んっんっ…!」

 

女性はそこで渡してもらったペットボトルを一瞬で飲み切ってしまうと、そこでルシエルを見る。

 

「ぷは〜っ!助かったぁ〜」

 

そして文字通り生き返ったように上半身を起こすと、彼女はルシエルを見る。

彼女は一瞬思考を巡らせ、彼女が飲み物をくれたと理解をすると、すぐに反応をする。

 

「すまない。迷惑をかけた」

「あぁ、それはどうも…」

 

予想外の回復スピードに、ルシエルは目の前の女性の異常性に思わず二度目の脈を計りたくなった。少なくともまだ経口補水液が体をめぐっていないはず。あるいはこれほどの量の経口補水液でも目まぐるしい変化が訪れるほど体内でこれら成分が不足していたのか…。

いずれにせよ、彼女は死線を彷徨っていたのだろうかと首を傾げた。

 

身なりは普通に見え、余程の貧乏人にも見えない。

どう言う類の人間なのか、見ただけでは想像がつかなかった。

 

「立てますか?」

「うむ、やってみよう」

 

女性はそこで両手を支えにして立ちあがろうとしたが、

 

「あ、あれ?」

 

不思議と体が上がらなかったので女性は首を傾げ、ルシエルはその原因を言い当てる。

 

「脱水と低血糖で筋肉がまた痙攣しているんですね…よくここまで体が持ちますよ」

 

軽く呆れながら彼女は女性に肩を貸して持ち上げると、そこで少しだけ女性は足が動かせるようになる。

 

「歩けますか?」

「…すまない。家まで送ってくれるかい?」

「…わかりましたよ」

 

軽くため息をついてルシエルは救助した女性を見る。彼女は白・茶・黒のまばらなメッシュの髪色が特徴な三毛猫の獣人で、牛乳瓶の底のような丸眼鏡をかけていた。彼女は頭頂部の耳猫をピクピクさせ、尻尾をゆらゆらとさせている。

なぜあんな場所で倒れていたのか、この人を目的地まで送り届けた後に色々と問いただして見たいものである。

 

『何、うちら人助けをしろって神様からお告げもらっている?』

「(何ですか、その善行を押し売りしてくる神様)」

 

今までと似たようなデジャブにも見える光景にスフェーンとルシエルはため息を吐いた。




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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)

  • 89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
  • 九九式短小銃+二式擲弾器
  • Ak5C+M26 MASS
  • AKMS+GP-25
  • AKE-971+GP-34
  • FN M1949+Energaグレネード
  • FAMAS+APAV40
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