「え?」
吹き出して軽くコップに紅茶をリバースしてしまったルシエルは思わずマルガリーテスを見てしまう。
「あのロケットを、作ったのですか?」
突如カミングアウトされた事実にルシエルは驚いた表情を見せてしまう。
「ああ、正確にはコマンド系だがね」
マルガリーテスは自分がロケット発射に関わっていることを認め、同時にそれに驚くルシエルを見て笑っていた。
現在、ボストーク-1で打ち上げ予定のロケットはこの街の実業家が私財を投じて作られた。
ロケット発射場も整備し、その気合いの入れようと言うのは見てとれた。
「ロケット打ち上げを行うコマンドを設計したのは私だ」
「おぉ…凄い」
ルシエルが言うと、マルガリーテスはフフンと少し鼻を鳴らす。
「そうだとも。まあコマンド以外の部分は私の専門外ではあるがね」
彼女はそう言い、部屋に積み上がった資料を見る。
ロケットを打ち上げる上で必要なコンピューターによる姿勢制御。その圧倒的な資料とともに彼女はシステムを作り上げたのだ。
「今、傭兵達が守っているロケット発射場はこの街生まれの実業家が作り上げた代物だ」
そこで彼女は絶賛準備中のロケット発射場を見る。
あのロケットは核融合推進のエンジンを搭載し、同業者が依頼した人工衛星を貨物室に搭載していた。
「初めは宇宙往還機の製造を目論んでいたそうだが、あいにく予算が足りなかったらしい」
「まあ、宇宙技術は多くが失われて久しい時代ですからね」
そこでルシエルも同様にロケット発射場を見る。
今回の仕事で、かのロケット発射場を護衛する傭兵団を移送した。そしてその傭兵団はかつての部下(?)とも言える人物の率いる傭兵団だった。
『そもそも赤砂って立ち上げたつもりはないんだけどね…』
「(その場合、何と言うのでしょうか?非公式組織?)」
『同人サークルとか?』
「(えぇ…)」
合っているとも違うとも言えない微妙なスフェーンの返答にルシエルは少し表情を曇らせた。
そんなスフェーンとの会話をマルガリーテスは気付くことなく聞いてくる。
「ルシエルさん。宇宙に興味は?」
「まぁ、人並みには」
紅茶を飲み終え、ルシエルはマルガリーテスを見て答えると、彼女はそんなルシエルに興味が湧いたような様子で席を立つ。
「なるほど…では天体観測を行った経験は?」
「…子供の頃に」
そこでルシエルはスフェーンの記憶を借りて答えると、マルガリーテスはその返事を聞くとそのままルシエルの手をとる。
「なら素晴らしい場所に招待してあげよう」
「え?あ、ちょっと…!!」
腕を掴まれ、そのまま部屋の外に連れて行かれるルシエルは咄嗟に銃を持つとそのまま外に連れて行かれた。
ロケット発射場から半径十キロ圏内にあらゆる攻撃をとどかせないようにせよ。
コンスタンチン・ツィオルコフスキー宇宙基地にて施設防衛を行っている傭兵団はこの依頼の元、ありとあらゆる兵器を動員していた。
「撃ぇ!」
直後、軍警察の長物車に搭載されているコンテナ格納型203mm榴弾砲を発射する。
電磁加速された砲弾はそのまま地面に近づくと近接信管が反応し、空中で炸裂。
「「「「っーーーー!!」」」」
そして声にならない野盗達の悲鳴が上がる。
近接信管で破裂した203mmの榴弾は容赦なくソフトスキンである野盗達を引き裂いていった。
貨物列車に榴弾砲を装備し、砲撃を次々と行う軍警察。単線でも運用が可能なことでこの榴弾砲を軍警察は愛用していた。
条約の関係で唯一鉄道路線上での武器使用が認められている軍警察。彼らは都市防衛のために駐屯を行なっており、装甲列車に改造をした軍用列車は宇宙からの人工衛星による偵察写真から把握した野盗からの市街地への攻撃を退ける任務を請け負っていた。
「第一射、効力射ぁ!」
「次弾装填!」
この203mm榴弾砲を運用する上で必要な人員は五名、軍用列車は軍警察の運用するエーテル機関車が牽引を行っていた。
現在、この列車には十門の203mm榴弾砲、四〇連装122mmロケット砲が四門整備されていた。
尾栓が開き、中の重心に砲弾トレーから自動的に砲弾が装填される。今回は電磁加速のみの利用であるため、装薬は必要ない。
「装填完了!」
「第二射、撃ぇっ!」
駐屯している軍警察は都市郊外の貨物ターミナルの中に砲撃陣地を構築。現在行われているロケット発射による野盗襲撃に対応するために増員が行われたばかりであった。
電磁加速され、砲身を加速する砲弾はあっという間に音速を越えると空高く飛翔する。
音速を超えたことによる衝撃波が砲口のマズルブレーキを通過し、運用する砲兵にその衝撃波が訪れる。
「全く、そんなにロケットを打ち上げられたくねえのか?」
その近く、弾薬コンテナから発射する203mmの砲弾を降ろして運ぶ治安官がぼやいた。
「あんだけ派手に広告を打ったんだ。どっかがちょかいを掛けてるんだろう?」
そこで弾薬コンテナの砲弾の残弾を記録する治安官が軽く返す。
彼等は街に近づく野盗を迎撃するために展開しており、近々装甲列車が到着することも聞いていた。
「やれやれ、企業どもの考えることはわからんな」
「俺たちに理解できる事でもなかろう」
治安官は現在、打ち上げを心待ちにしている市民達の様子を思い出す。
「ったく、ロケット発射台には傭兵が展開しているんだろ?なんでアイツらに通報しねえんだよ」
街から遠く離れた場所に建造されたロケット発射場。そこには現在、ロケットを発射する実業家からの依頼で傭兵部隊が展開をしていた。
かの実業家は、この国の法律により自前のPMCを国軍に編入され、それ故に自分が打てる手札を奪われた形であった。
本当は軍警察にも依頼があったと言う話だが、真相は定かではない。
「軍事機密漏洩になるぞ。憲兵隊にしょっ引かれてぇか?」
「…勘弁被るぜ」
その理由を一言で理解した治安官はそこで、新しい砲弾を運んでいく。
「新しい砲弾取りに来ました」
「あぁ、そこにある。持って行け」
そして変わる変わるで新しい砲兵隊員が現れると、輜重科所属の治安官はコンテナの中の砲弾ケースに顎を突き出す。
砲弾を取りに来た治安官はそこで砲弾のまとめて詰まったケースを手に取って引っ張る。
この砲撃はあくまでも都市に接近してくる野盗などの犯罪者達を追い払うために行われており、市が定めた絶対防衛線に侵入した敵を徹底的に排除する目的で行われている。
その為、街の郊外に建造されたロケット発射場は軍警察の防衛範囲に入っておらず、防衛の対象外となっていた。
「まぁ、傭兵に私的な繋がりがあったら、うっかり口を滑らしちまうことはあるんだがな…」
使用期限の近い砲弾から砲撃を行っているのを見ながらその治安官は遠くに映るロケット発射場を見た。
そして治安官が話題にしたロケット発射場近くの戦場では、
「敵部隊確認」
「信号は?」
「軍警でも、味方の信号でもありません」
指揮通信車から戦域全体に設置した情報収集機からの通知を受け、それが敵であると認識をすると、チェンはすぐに指示を出す。
「攻撃だ」
「了解」
「すぐに戦車隊に攻撃命令を出します」
そこで自分の五獣傭兵団所属の戦車部隊が前進、主砲の120mmリボルバー滑空砲を発射する。
「敵前方!方位一〇、距離八〇〇!」
「キャニスター弾発射!」
戦車八両で構成されている戦車隊は戦闘中の歩兵部隊援護のために砲撃を敢行。
側面から回り込まれたことにより、襲撃を敢行しようと試みた敵部隊は放たれたキャニスター弾の小球の雨に降られて斃れていく。
「敵沈黙!」
「よし、捕虜を取れ。情報を集めろ!」
そこで戦車隊の隊長が叫ぶと、後ろで追従してきた他の傭兵達が制圧した敵部隊に接近。
「っ!うがっ!」
サイボーグであった傭兵を発見すると、有無を言わさずにコードを接続。敵部隊の情報を集めていく。
「…相手も傭兵だ」
「自己防衛コマンドはかなり厳重ですぜ」
その情報はすぐさまチェンのいる指揮通信車に送られたが、個人情報を保護するためのプログラミングが施されており、記憶を見るには時間がかかると容易に推定できた。
「…どのくらいかかりそうだ?」
「さぁ?一週間くらいかかるかもしれませんね」
部下からの報告を聞き、チェンは少し考えた後にあることを思いついた。
「…ここは、同業者に頼るべきかな?」
「え?あの変人部隊ですか?」
その提案には思わず聞いていた近くの傭兵達が声に出してしまう。
現在、五獣傭兵団は桜花武士団と合同でこの依頼を受けていた。
「オートマトンしか装備しない部隊ですよ?」
桜花武士団との付き合いというのは彼らもよく知るところであり、傭兵ギルドを創設する際に赤砂傭兵団から多くの傭兵が五獣と桜花に移籍していた。
「何回も仕事を共にしているんだ。今回もうまくやれるだろうよ」
それを聞き、一人の五獣の傭兵が言った。
元赤砂の傭兵の中でもオートマトンを操縦していた傭兵達を桜花は吸収しており、アイリーンによる十分な資金提供を受けて育成された傭兵達を桜花と五獣は傭兵ギルド創設時の混乱の乗じて吸収していった。
「どうだろうな…」
すると地面が微かに揺れ、チェンが外を見ると、そこでは戦域をオートマトンが歩いていた。桜花所属の部隊である。
「なんだ、来たのか?」
オートマトン部隊を見ながら一人が言った。
オートマトンや多脚戦車を含めた多脚装甲戦闘車両は多くの兵装が自由に搭載可能は万能兵器だが、逆のその万能に積載できる点が仇となって器用貧乏気味になっている節がある。
この桜花の傭兵は両肩に40mm自動擲弾銃を装備した支援砲撃仕様に改造を施された機体であった。
はるか昔から自動擲弾銃に高い仰角をつけての擬似的な自動迫撃砲運用は行われており、実際40mm擲弾は生身の人間であれは数メートル離れた距離まで殺傷が可能な代物であった。
『支援要請を受けてきた。支援はどこに必要だ?』
「あ?あぁ、悪い。もう戦闘は終わっちまった」
チェンは桜花の傭兵の支援に感謝をしつつも、すでに戦闘は終わっていたので彼女は応援に来た桜花に一言言うと、彼らは少々不完全燃焼気味に元の場所に戻っていった。
「チッ、あいつら新米かよ…」
それを見た部下の一人は軽く舌打ちをしてオートマトン部隊を見送った。
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スフェーンに持たせるなら?(参考にします)
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89式5.56mm小銃+06式小銃てき弾
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九九式短小銃+二式擲弾器
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Ak5C+M26 MASS
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AKMS+GP-25
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AKE-971+GP-34
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FN M1949+Energaグレネード
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FAMAS+APAV40