「凄い光景ですね」
ルシエルはその無数のアンテナの群れを見てマルガリーテスに言う。
純白の塗装は所々剥げてはいるが、施設全体としてはまだ稼働しているかのように見えた。
「ああ、素晴らしかろう?」
マルガリーテスも惚れ惚れとした様子で眼下の天体観測所を見る。
天体観測を行う上で必要な巨大なパラボナアンテナが等間隔で地上に設置され、天を見上げて止まっていた。
「これほどの施設がよく見つかっていませんね」
「ここら辺は人もモノもないし、この先に街があるわけでもない。軍警の人工衛星は知っているだろうが、動いていないから対応をしていないだけだろう」
そこで彼女は下に降りる道を歩いていく。
先ほどまで地雷原を歩いていたのでルシエルはマルガリーテスの後ろを歩いて行く。
「ここら辺に地雷は埋めた記憶は無いぞ?」
「…なんか間違って地雷がありそうな言い方やめてくださいよ」
何処と無く信用を失いそうなマルガリーテスの発言にルシエルは信用していない証として彼女の後ろから離れない。
「安心したまえ!地雷はここら辺には…」
彼女は自信を持って地雷がないと言いかけた時、彼女の足元の砂利が坂道を転がってある場所にコツンと音を立ててぶつかると、そこに埋まっていた対人地雷が爆発した。
「「…」」
そして対人地雷が爆発したと同時に二人の表情は忽ち驚愕→唖然となり、ルシエルは疑念の目線をマルガリーテスに向けた。
「…私の後についてきてくれ。一週間前に歩いた時は何もなかった」
「ええ、ぜひ安全に渡れる場所で頼みますよ」
ルシエルは山を降りながらマルガリーテスに言った。
「はぁ〜…」
そしてその後無事に山を降りると、そこでルシエルは目の前のアンテナを見上げて思わず再度唖然となってため息を吐く。
アンテナ自体の大きさは軽く百メートルは行く大型のもので、ジャッキがアンテナの根元にあり、これがこの場所には数千基設置されていた。
ここは大災害以前に建造された施設だとマルガリーテスは言っていた。
『呆れるほどでかいわね』
「(全くです)」
巨大なアンテナを前に軽く唖然となって見ているルシエルにマルガリーテスが話しかける。
「こっちだ。来てくれ」
「はーい」
呼ばれて彼女は近くにあったある施設に彼女を招き入れると、そこでルシエルは施設の閉じられたシャッターを見つめる。
一見するとコンクリートで建てられた施設に見えるが、施設の出入り口に記された文字を見て大災害以前に使われていた文字であることからここが大災害以前の施設なのだと把握する。
「ここが?」
「ああ、天体観測を行う上では十分な施設だろう?」
「そりゃあ確かに」
軽く肩をすくめて施設に入るルシエル達。普通に扉の鍵は開いており、かつてマルガリーテスがこじ開けたのだろう。
施設内の壁は恐ろしいほど滑らかで、劣化した様子は見られない。大災害以前の建物の特徴だ、何百年経とうと劣化の気配すらしない建材が使用されている。
時折思うが、こうした大災害以前の施設の多くが鍵がかかっていない場合が多いのはなぜだろうか。こうした科学技術の発達した世界の産物というのは、大抵外敵からの侵入に厳重な警備をしているのではないだろうか?
「この施設は、ある知り合いが教えてくれた施設でね」
「あぁ、じゃあかなり昔から?」
「そうだ」
マルガリーテスは頷くと施設のある部屋に入る。
「ここは?」
「便宜上、天体観測用の部屋として使わせてもらっている」
その部屋は一つの機械が置いてあるだけで他にはキャスター付きのワゴンが置かれていた。
「すまない、機器を起動する間にココアを入れてくれるか?」
「…わかりましたよ」
軽くため息をつきながらルシエルはワゴンに裏返して置かれているコップを手に取る。
IH調理器を下に敷いてコップを上に置き、置いてある常温でも問題のないロングライフ牛乳を注いでから温める。
しばらく置いて湯気が立ち始めるのを確認すると、そこでココアの粉を投入。マドラーでかき混ぜながらココアを作る。
「ほい、できましたよ〜」
「悪い。こっちもすぐに終わる」
すると両手を使って無理やり接続されたキーボードを叩いてマルガリーテスが答える。
この施設は一部の電源が復旧しているようで、マルガリーテスは準備を完了させると彼女は聞いてくる。
「コードを刺すか?」
「え?えぇ、ちょっと…怖くないですか?」
いきなりコードを渡され、ルシエルはその接続先が大災害以前のOSという事もあって少し気後れする。
「安心しろ。今まで何度も接続した安全な回線だ」
マルガリーテスは安全性の問題はないと言っており、さらにスフェーンも
『そもそも、うちら一回大災害以前のOSと接続経験あるけど?』
「(…あぁ、アレですか)」
以前、今使っている列車を持ち出す際にあの工事現場の門を開くために工場に残されていたコンピューターに接続をしていた。
「(まぁ、行けますか)」
過去に接続経験のある大災害以前のOS。ルシエルもそれを前に心を一旦落ち着かせると、コードを手に取る。
「よし、すぐに付けるぞ」
マルガリーテスは自分の手首にコードを刺して接続をしていた。
『一応、二人のプロテクトは監視しておくから』
「(頼みますよ?迎撃プログラムなんて作動したら面倒ですからね)」
スフェーンに絶対的な信用をするルシエルは言うと、マルガリーテスは装置を起動した。
「じゃあ、始めるぞ」
そこでキーを押すと、すぐにルシエルの視界に空が見えた。
周りは全天に渡って景色が広がっており、視界の隅に微かに周りの地上の山々が見えた。まるでプラネタリウムを見ている気分であった。
「おぉ…」
「今の所、まだこの観測所のアンテナの等倍だ。これからもっと動くぞ」
マルガリーテスが隣で言うと、キーボードを操作して施設中のアンテナが一斉に動いてトラオムのエーテルの空を拡大して突き抜けるように倍率が上がっていく。
「おぉ〜」
そして一瞬で空のニアー・ルナが眼前に巨大に映り込む。
星の表面まで鮮明に確認でき、ちょうど出港をしたであろう軍警察の宇宙艦隊のノズルの光が見えた。
『スゲェ』
「凄い」
ここまで詳細に見れるのかとルシエル達は驚愕しながら宇宙要塞を見る。
「トラオム近辺の惑星など、ここの施設の設備であれば簡単に詳細が確認できる」
「これほどの設備なら、動いているのがバレたら軍警が接収しにくるでしょうね」
ルシエルが言うと、マルガリーテスも苦笑する。
「そしたらその時だ。軍警に持って行かれるなら、私とて抵抗はしない」
倍率を上げていき、同時にここにある無数のアンテナもコンピューターの指示の通りに前後左右にジャッキが動いていく。
「今、ロケット発射でここら辺も軍警の監視が強いけど、動いているのがバレるのでは?」
「最悪、バレてもいいさ」
マルガリーテスはそう言うとそこでルシエルに言う。
「地元の実業家に占有されるくらいならな」
そこでキーボードを操作して天体観測を続行し、観測している星の大きさが拡大していくのを見て、まるで超高速で宇宙を飛んでいるような感覚になる。
「仲が悪いんでしたっけ?」
「ああ、金に取り憑かれた妖怪を見ている気分だったよ」
マルガリーテスはそう言うと、彼女は話し始めた。
キィィーーー!!
戦場に数本の赤い光線が通過すると、遥か遠くに離れた歩兵戦闘車やオートマトンが照射されて小爆発を起こす。
赤い高出力レーザー砲で焼かれた二両の装甲戦闘車両はそのまま沈黙をする。
「命中!」
「続いて撃て!」
直後、オートマトン用に装備されたレーザー砲も同様に攻撃を開始する。
コンテナに搭載された大口径のレーザー砲による攻撃が戦場を飛び、爆弾を搭載したFPVドローンを撃墜していく。
「全部撃ち落とせよ!」
「漏らしたら依頼失敗だと思え!」
現在、ロケット発射時刻まで刻一刻と迫っている中で傭兵達は次々と分散して攻撃を仕掛けてくる野盗を相手に疲労の色が見え始めた。
「くそっ、これで何回目だ?!」
「休む暇もねぇぞ…」
四六時中敵からの攻撃を受けており、小規模ではあるが断続的に攻撃が行われるので彼らは苦労していた。
『司令部よりフォッケ06。異常無いか?』
「こちら、フォッケ06。現在異常なし」
ロケット発射場より北西の荒野。遥か遠くまで見える平野部に配置された新人にオートマトン部隊はそこで返答を行う。
『はぁ、こっちは気楽なもんだな』
同部隊に所属する同じオートマトン乗りの新入り傭兵が言う。
『なんだ、やり合いテェのか?』
『傭兵だぞ?なんのためにこの仕事についたんだよ』
「黙って仕事をしろ。若造共」
無線で言い合う彼らに部隊長は一言言ってからため息を吐く。
「(傭兵も変わっちまったと思ったが…)」
ジェローム・サックスを中心とした傭兵ギルド創設による傭兵業の変化というのは、一つの産業を明確に形作った。
今までの犯罪者崩れとも分からなかった傭兵業を一つの産業とし、多くの国・企業といった組織からの依頼を公平に受ける組織を作り上げた。
これにより、傭兵というのは『いつでも武装している便利な戦闘集団』という扱いに変わった。
「(新米が最初に戦闘ばかりだと勘違いするのは変わらんな)」
内心、自分の昔を思い出した彼は嫌な若気の至りも同時に思い出したので即座に記憶からの消去をすると、
「…ん?」
風で舞う土煙の奥から一瞬、いつもより黒い影が見えた。
「っ!隠れろ!」
違和感に気づき、そう叫んだ直後、無数の閃光が起こって無数の光球が打ち上がる。
打ち上がった光球は暫く宙を舞うと、そのまま巨大化して展開していたオートマトン部隊に一斉に降り注ぐ。
「うおっ!?」
「ぎゃあっ!!」
部隊の四割が新米傭兵で構成されているこの部隊は、最初の砲撃で多くが被弾した。
「ヒィッ!!」
「っ!?」
驚愕する新人達に部隊長はいつも以上に冷静になる。
「畜生!初弾でこの精度かよ!?」
敵部隊の練度の高さに冷や汗が噴き出ていると、煙が風に吹かれて奥から出てきたモノに全員の表情が歪んだ。
「…マジか」
そこには数百機のオートマトンとターレットの部隊が行軍をしている様があった。
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