TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#33

ラストタウンで仕事をするスフェーンは、今日も今日とて鉄鉱石を製鉄所に運ぶ。

 

「ちーっす」

「おう、また嬢ちゃんかい」

 

製鉄所の入り口でいつものオジちゃんと挨拶するスフェーンは列車の窓を開けて聞いた。

 

「今日はどこが空いてる?」

「んーっとねぇ、八番がこの前使われてたよ」

「分かった」

 

製鉄所には鉄鉱石の集積場までベルトコンベアで運ぶ施設があり、ホッパーをそこまで引っ張る。

ラストタウンから運んだ鉄鉱石をここで荷下ろしし、貨車をここで切り離す。

 

ホッパー車はこの製鉄所で借りた車両であり、再び空になった別の編成を繋げて街に戻るのだ。

 

「ご苦労さん」

「どうも」

 

そして製鉄所所属の機関車と貨車を繋ぎかえると、そのまま鉄鉱石満載の車両は更に奥に運ばれていく。

ここの職員曰く、あの街の鉄鉱石はお気に入りだと言う。理由としては、

 

「あの街の鉄鉱石は品質が安定しているから好きなんだ」

 

故に稼働停止したのは痛まれると言っていた。なんでも高品質で、良い鉄鉱石だからだと言う。

 

「あの街に金融企業が貸し渋りを始めたのが痛まれるね」

「そりゃ酷い」

「全くだよ」

 

ここ数回ですっかり顔見知りとなった製鉄所の職員とそんな話をしながらスフェーンは旗を振って列車の連結を確認する。

 

「よし、電源繋げれば問題無し」

「了解、手伝うよ」

「どうも」

 

そして貨車に伸びるコードをスフェーンの列車に繋げる。基本的に貨車同士は十二両セットでコードも繋がっている上に、車両情報も其のコードを繋げれば大体繋がる。実に便利だ。

 

「ってか、うちの貨車も増やすか……」

「貨車は利益効率が上がりますからな。特にカーゴスプリンターみたいな列車は使えるので、考えるのも一考では?」

 

貨車の増結をし辛いカーゴスプリンターであるが。動力分散式と言う強みがあり、加速力や襲撃を受けた時の耐久性などが高い。ただ列車自体がコンテナ輸送に特化しているのでこう言うバラ積みの貨物輸送の時は貨車をリース会社から借りる必要があった。

今回は雇い主の製鉄所がホッパー車を貸し出しをしているのでレンタル料はタダで、こうして繋ぎ変えるだけですぐに次の鉄鉱石を積みに行けた。

 

「貨客混載は勘弁だからな」

「はははっ、お客を運ぶのは俺も勘弁だ」

 

基本的に旅客事業は乗っているお客からの苦情が走るたびに一件は入る。故に運び屋でも貨客混載の荷物は敬遠される傾向にある。

 

「じゃあ、また夜」

「ああ、今日は二回運ぶのか?働きもんだねぇ」

 

軽く笑いながらその男は運転室に乗り込んだスフェーンを見送ると、彼女の運んできたホッパー車を製鉄所の奥に運んでいた。

 

 

 

製鉄所から再び空のホッパー車を運ぶスフェーンは、都市の貨物ターミナルで今度はラストタウンに運ぶ用のコンテナを積み込む。

 

『コンテナを載せるよ』

「了解」

 

後ろにコンテナを八つ載せ、街に向かうスフェーンの列車。コンテナの中には飲料水や医薬品、食料品などが積まれていた。配達先はラストタウンの診療所と雑貨屋だ。

これだけで住民の腹を三日は満たせるのだから、街の衰退を感じさせる。

 

『積み込み完了。ロック良し』

「了解、出発進行」

 

そして軽く汽笛を鳴らし、スフェーンは列車を走らせる。

下りと違って登りは荷物が軽いので速度の上がり方も上々だった。

 

 

 

 

 

ラストタウンに向かう途中、スフェーンは列車の上のハッチを開けると、手に持っていた小型のドローンを起動する。

今回の依頼に合わせて街で購入したのだ、給電はマイクロ波を介した遠隔給電方式で操作はスフェーンが自由に出来る。小型で安いので破壊されても変えが効く代物だった。

 

「よっと」

 

そしてドローンが起動すると、そのまま空高くドローンは舞い上がり。周辺の地形マップの収集と偵察を始めた。

 

「おっ、来た来た」

 

そしてドローンの映像を繋いでそれで軽く空の旅を楽しむスフェーン。田舎街に行って帰って来るだけで一日使い、再び戻るのは深夜となる。

行きは街の物資を、帰りは鉄鉱石を運ぶスフェーンは十二両のホッパー車を繋いでラストタウンに向かう。

 

「うーん、一面の荒野」

 

そしてドローンの映像を見ているスフェーンは思わずそう溢すと、ルシエルが言った。

 

『これでもまだ復興していると思われますが?』

「まぁ、私は其の時代を生きた人間でも無いんでね」

 

大災害とはあくまでも知識上の話でしかなく、スフェーンとしては遠い過去の記憶だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

その後、ラストタウンに到着するスフェーンはそこで既に駅に止められている別のホッパー車を見る。

中には鉄鉱石がすでに積み込まれており、すぐに運び出せる状態だった。

 

「おぉ、流石だねぇ」

 

空の貨車をそのままホームに置いておけば街の住人が鉄鉱石を積載して置いておいてくれるので、すぐにスフェーンは貨車を繋ぎかえるだけで移動が可能だった。

 

「……あれ?」

 

そして列車を止めたは良いものの、いつも連結係の居るはずのホームには誰も立っておらず。人がいる気配もなかった。

 

「どうしたんだ?」

『街を見に行った方がいいかもしれませんね』

「ん、分かった」

 

ルシエルの助言に押されるように列車を降りるスフェーンは散弾銃を持ったまま駅舎に向かって、そこの駅員に聞いた。

 

「おっちゃーん」

 

すると軽く上の空だった駅員はスフェーンの声で意識が戻ったようにスフェーンを見た。

 

「ん?あぁ、君か」

 

鉄道管理局の職員の証の濃紫色の制服が気のせいか、色褪せているようにも見えてしまう其の様子にスフェーンは少し心配をしながら聞いた。

 

「ねぇ、ホームに人が居ないんだけど。どうしたの?」

「あぁ、街の方で何かあったみたいだよ」

「そうですか…」

 

話を聞き、軽く顎に手を当てて考えるスフェーン。背中には散弾銃を背負い、茶色いローブの奥の灰色の瞳はまるで生気を感じさせぬ不気味さも持ち合わせていた。

 

「用事があるなら、街の公民館に行くと良い」

「分かりました」

 

駅員に教えられ、そのまま駅を出て街に入るスフェーンは公民館に向けて足を運び始める。

 

 

 

基本的にこの街は全体的に薄汚れており、荒野から吹き付ける砂が街の隅などに堆積していた。

この街の住人も多くが仕事を求めて去っており、残っているのはごく僅か。かつて採石した鉄鉱石の輸送を終えればここの住人は街を棄てることになる。基本的に捨てられた街は廃墟となり、建物が自然崩壊をするか野盗の拠点となる。

 

野盗の拠点となった場合は即座に企業や軍警からの討伐作戦が行われ、街は破壊される。

旨みのない都市はより大きな都市に吸い取られ、消えていく。

 

一度崩壊の危機に陥ったこの星で人々を効率的に生かし、エーテルに取り憑かれた亡者の如き生活。

 

「企業の食い物で消えていく街……か」

 

この世界は企業の言いなりで下っ端が振り回される。金が全てを言う世界。愛と金は人を狂わすと早く行った物だと、かつての人の聡明さには感服する。

既に統一政体は露として消え、企業が都市仕切る。

星を守る軍警は統一政体に関心はなく、国を夢見るレジスタンス。

会社が潰れ、再就職を果たせなかった者や戦争から逃げ出した兵士達が行き着く野盗。

 

「難儀なものだ、人の世は……」

 

そんな物思いに耽っていると、目の前の街角から都市迷彩の施された六両の履帯式戦車が現れる。

 

「ほら、退いた退いた!」

 

そして目の前を駆け抜けていく《MB-33 タモン》と呼ばれる古い旧時代の戦車が街を走ると、これには思わずスフェーンも唖然となってしまった。

 

「な、なんだぁ…?!」

 

目の前を走っていく戦車に思わず驚いていると、

 

「おい」

 

後ろから声をかけられると同時にローブを思い切り引っ張られた。

 

「ん?ぬおっ!?」

 

そしてそのまま後ろの建物の中に入れられると、自分を引っ張ったのがこの街の子供の一人。虎の獣人のナルクだと理解した。

 

「どったの?」

「お前、知らないのか?」

「?」

 

首を傾げるスフェーンにナルクは軽くため息をした後に言った。

 

「野盗だよ。野盗の奴らが街を脅すかもって。それで、自警団のおっちゃん達が戦車を出して迎え撃とうって……その訓練」

「……」

 

話を聞いたスフェーンは軽く驚いた。

野盗が街を脅すだと?中々お目にかかれない光景だ。

 

基本的に野盗は列車強盗をするのが主な仕事だ。街を脅すことはよっぽど大きな集団で居て、尚且つ相手の街の力が軍警がいなくなるくらい無いと行わない……と言うかできない。

 

「まーじかぁ……」

 

これには思わず天を仰いでしまう。

建物の中にはナルク以外にもカオリやユウキと言った街の子供トリオや彼らの保護者と思われる大人がいた。相変わらずユウキは自分をよく思っていないようで、スフェーンを見て顔を顰めていたが、興味なかった。

ここは元々バーのようで、酒瓶を置く棚には空のウイスキーのボトルが転がっていた。中身詰まってればなぁ……。

 

「他の人は?」

「話し合いしてるよ。野盗を迎え撃つためのな」

「何処でやってる?」

「公民館だよ」

 

彼から会議を行なっている場所を聞くと、スフェーンは建物の扉を開ける。

 

「お、おい」

「うちの列車が駅にあるんだ。避難するならそっちの方がいい」

 

適当に理由をつけて建物を後にすると、スフェーンは走って公民館まで駆け抜けた。

 

 

 

公民館に入ると、そこでは数人の男どもが卓を囲んでおり、スフェーンはその中の一人に話しかけた。

 

「どうしたの?」

「ん?あぁ、運び屋さんか」

 

スフェーンの愛称となった呼び方でその男が反応すると、スフェーンは聞いた。

 

「話じゃあ自警団は使わないんじゃ無いのか?」

「街を守ることくらいは出来る。それだけだ」

 

少し信用仕切れていない様子の自警団のおっちゃん、まぁ仕方がないがな。

 

「訓練の一環だ。街を襲う馬鹿どもに灸を添えるまでよ」

「やりすぎで火傷しない事を祈りますよ」

 

と言うより、街の戦力に六両の戦車があることに軽く苦笑せざるを得ない。一体何処から戦車持ち出したんだよ。

 

「よーし、街の郊外で訓練だ。野盗どもに襲われないようにな!」

 

意気揚々と公民館を後にする自警団の皆さん方、お疲れ様です事。




兵器解説
LMBT-33 タモン
旧時代の主力戦車、かつての軽戦車と呼ばれた小さな戦車を参考に開発された小型戦車で、その信頼性の高さや機動性からいまだに根強い人気のある履帯式戦車だ。ここラストタウンではかつて市長が購入した車両がモスボールされた状態で保管されており、街の治安維持と野盗撃退のために自警団が持ち出していた。

基本武装
90mmリボルバーカノン 一門
14.5mm機関銃 二門
81mm発煙弾発射機 十二基

モデルはMB-3 タモヨ



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