TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#340

ボロボロの体で狭い通路を匍匐前進をするエンツォ。

 

「痛た…」

 

護衛だった人の自爆攻撃で身体中を痛めており、その爆発で両親は遺体も残っていなかった。彼自身も爆発の衝撃で身体中に打撲を負っていた。

そしてその体で匍匐をしていたことで、体が傷んでしまって思わず呻き声を出してしまう。

だが強盗がいる事を思い出すと、ハッとなって口元を手で押さえてしまう。

 

「…」

 

思わず匍匐も止まってしまい、静かに聞き耳を立てる。

 

「…」

 

しかし音はせず、自分もまだあの通路も見つかっていないのだと理解すると、再び通路を進み始める。

片手には武器として包丁を握っており、自衛用の武器も持ち合わせていた。

 

「あっ、時計…」

 

エンツォはそこでふと思い出して自分のポケットに入った懐中時計を取り出す。

この懐中時計は十歳の誕生日に父親からプレゼントしてもらったもので、機械式のものだった。

外はシンプルだが、蓋の裏側に家の家紋と自分の名前が刻印され、金で作られていた。

 

カチッ

 

ボタンを押して蓋を開けると、懐中時計はガラスにヒビが入りながらも動いていた。

 

「良かった…動いている」

 

彼はカチカチと小さな音を立てて動いている懐中時計を見て安堵した。この時計は父が態々時計技師に注文して作ってくれた世界に一つしかない時計だった。常に肌身離さず持っているお気に入りの時計であった。

 

「…」

 

エンツォは時計をポケットに戻した後、再び通路を進んでいく。

 

「はぁ…」

 

そして地上に繋がる場所に移動すると、そこでハシゴを伝って上に登る。

 

「…」

 

少し開けて周りを見ると外はやけに明るかった。光の方を見てみると、そこでは屋敷が炎に晒されていた。

誰かが火を放ったのか、詳しくは分からない。

 

「…んしょ」

 

周りには誰もおらず、元々和風庭園の中でも灯籠の足元という見えにくい場所にある通路の出入り口を押し開けて外に出る。

 

「よし…」

 

エンツォは包丁を片手に庭を土足で歩いている二人の強盗の後ろを足音を殺して歩く。ここで敵を襲っても体格差と交戦距離から奇襲で倒してももう一人が自分を殺すだろう、脳内でシミュレーションがされた。

ただ静かに、冷徹な判断を下した彼の脳はそのまま和風庭園を慎重に歩く。強盗は自分達を殺しにかかってきており、その用意は周到であった。

だから自分がいれば確実に襲いにくるだろうと推測していた。

 

「…」

 

エンツォはそこで庭の中の庭師しか使わない庭園を整える為の道具をしまってある小屋に入る。小屋の中は見向きもされていないのだろう、荒らされた様子もなく道具が並んでいた。

 

「…」

 

エンツォはそこでデッキブラシと布テープを手に取ると、持っていた包丁をデッキブラシの先端にテープを巻き付ける。これで簡易的な槍を作っていた。幸いにも包丁は刃渡りが長い刺身包丁であったので人の胸を貫通するほど刃渡りは長かった。

 

頑丈に包丁を巻きつけると、ブラシ部分を引っこ抜いて簡易的な槍を完成させて燃え盛る屋敷を見ながら小屋を出る。狩猟をしていた経験かは知らないが、彼は恐ろしく落ち着いて槍を持って敵を殺す事を想定していた。

 

「(一人きりにならないなぁ)」

 

狩猟では息を殺して動物に狙いを付けて引き金を引く。今持っている武器は槍、リーチはあるので人を突き刺すか袈裟斬りをするか、どちらでも倒すことができた。

庭の木の影に隠れて彼は目の前に立つ武器を持った強盗を見る。強盗達は二人で行動しており、子供一人ではどうにもならない。

 

「(あっ…)」

 

その視線の先、屋敷では火が燃え盛っており、その中では銃声も聞こえていた。屋敷に作ってあった神社も鳥居が燃えており、誰かが火を放ったのだ。なぜ強盗をするのに火を放つのかとエンツォは謎に思った。

 

「…」

 

燃えている別邸や本邸では強盗達が家の家財や貴重品を盗み出していた。

 

「あっ」

 

そんな景色を見ていると、目の前の強盗が別れたのでエンツォはそのうちの一人に狙いを定めた。

 

「…」

 

息と足音を殺して庭の低木の影に隠れると、そのまま側面から槍を喉に突き刺した。

 

「かはっ!?」

 

喉元を突き刺されて貫通をし、そのまま刺身包丁を引きながら首筋を断つ。長い刃渡りは首の筋肉や軟骨を切っていくと、そのまま首を切って刎ねた。運良く動脈を突き刺したのだろう。影から飛び出してきた槍にまともな対応もできずに強盗は倒れた。

 

「っ!!」

 

そして首を刎ねた後、飛び出して持っていた槍を肺・心臓・腹と順々に突き刺して敵を斃した。

 

「っ、がっ…」

 

驚愕した顔で血の泡を吐いて斃れた強盗を見ると、そこで持っていた自動小銃を手に持つ。

 

「あっ、軽い…」

 

銃の使い方は事前に習っていたので問題なく使える。撃って当たるかどうかはさておき、弾倉交換や銃の装填方法は覚えていた。

そしていつも使っていた猟銃よりも強盗の持っていた自動小銃は軽く、エンツォは中身の弾倉をリリースボタンを押して死体にあった新しいものと交換してから両手に握る。刺した事で返り血が付いていたが、問題なく使えた。

 

「…」

 

エンツォは銃の扱い方は理解しており、最悪照準を合わせて引き金を引くだけで倒せる事は承知していた。

 

「…」

 

屋敷の構造はここで暮らしていたから全て頭の中に入っており、何処なら射線が通りやすいかも熟知している。

強盗によってこじ開けられたドアから中に入ると、そこでは家具を使ったバリケードが敷かれた跡があり、近くには死体となった従者達がいた。

 

「…」

 

血溜まりとなり、絨毯を踏むと溜まった血が溢れてくる。

全体的に鉄臭くなった屋敷は至る所が血で染まっており、凄惨そのものであった。その中を一人で銃を持って歩くエンツォは、廊下の影に隠れて遠くに映る人影を見る。

 

「急げよ!」

「軍警が来るぞ!」

 

強盗はそう言い、家の金庫をこじ開けようとしていた。彼らはハッキング装置やカッターを持ち合わせ、うちの三番目の金庫を開けようとしていた。

普通、強盗がこんな警備の厳重な家に盗みに入るか?と疑問に思ったが、兎に角彼らを許そうとは思わなかった。

 

ッ!ッ!

 

なので照準を合わせて一番後ろにいた人に向けて引き金を引く。

電磁加速された二発の小銃弾は確実に強盗の頭部に命中すると、頭が爆ぜた。

 

「っ!?」

「何だ?!」

「くそっ!敵だ!!」

 

強盗達はすぐに銃声の元を探ろうとして出てきた。

 

「っ!」

 

そして出て来たところをエンツォは連射でまとめて薙ぎ倒す。

これが電磁加速だけの銃であった事から破壊力があり、一発当たっただけで相手は腕や身体の命中部分が消えたように弾け飛ぶ。

 

「「「「ッーーー!!」」」」

 

そこで見事に釣り出されて側面を撃たれた強盗達は死体となって斃れる。暗くなった場所から撃ったので他の人にはまだ見つかっていなかった。

 

「…よしっ」

 

そして静かになった所をエンツォは弾倉を丸ごと撃ち切ってしまったので今倒した死体を漁って同じ弾倉を探す。そして両手が血に染まりながら新しい弾倉を手に取ると、銃に挿し込んでチャージングハンドルを引いて装填をする。

 

「…」

 

そして連射から単発に切り替えると、そこで頭のある死体に向けて撃つ。

使っている銃の威力のおかげで簡単に頭が弾ける。いつも猟銃を使って撃つ熊や鹿よりも人間の頭蓋は脆かった。

 

「うわっ」

 

その時、弾け飛んだ強盗の頭の返り血をうっかり浴びてしまい、顔に血が掛かった。

 

「…」

 

咄嗟に目を瞑り、血で汚れた顔を服の袖で拭う。

既に爆発でボロボロとなり、返り血で服は血まみれになっていた。

普通なら身体中が痛くて仕方がないはずなのに、なぜか今は体が動く。周り中が危険だらけで、動かなければ死ぬからだろうか。

銃を連続で撃った時の反動で肩が悶えるほど痛いはずなのに、それがない。

 

「…ふはっ」

 

恐怖か、はたまた興奮か、エンツォは見つけ次第に強盗を闇討していく。

 

「うごっ!?」

 

母の衣装室を漁っていた一人を背中から頭を。持っていた装飾品と共に服が血で濡れてしまって母に申し訳なく思った。

 

「「っ!?」」

 

廊下を無警戒で歩いていた数人を背中から連射。

足元は絨毯なおかげで足音は簡単に消すことができ、息も狩猟で息を殺していた事から簡単にできた。

 

「ははは…」

 

乾いた笑いをしながら屋敷を闊歩していた強盗を次々と斃し、死体を漁って武器を手に入れる。

強盗は持っている武器が違う事もあるので、そう言う時は武器を丸ごと変えて撃つ。

 

「…」

 

割れた窓から外にいた一人を狙撃する。数十メートルであれば、今までの狩猟で培った勘で頭を簡単に射貫けた。

 

「っ!狙撃だ!」

「撃て!あの窓だ!」

 

外にいた強盗は狙撃をした窓を指差して銃撃を行うが、戦車砲すら防いでしまう防護壁のおかげでエンツォは問題なかった。

 

「…」ッ!

 

そして落ち着いた表情で別の窓から狙撃をすると、すぐに四つん這いになって移動をする。するとさっき撃った窓に銃撃が加わり、窓ガラスが粉々に砕け散ってしまった。

 

「…あっ」

 

そしてまた新しい窓から銃を構えた時、屋敷の外に一台の車が止まっているのが見えた。黒い車で、ナンバーを見て見覚えがあった。

 

「叔父さんの車だ…」

 

数年前と同じ車を乗っており、ナンバーも同じなので多分叔父が乗っているのだろう。そう思っていると車のドアが開いて中から叔父が呆然と屋敷を見ていた。

 

「…」

 

その目には驚きもあったが、何処か分かっていたような薄暗い笑みをした表情もしていた。

 

『そうか、パッチランドめ…』

 

その時、エンツォの脳裏には生前の父の最後の言葉が過った。

 

「…」

 

それを思い出したエンツォは銃口を車から降りて来た叔父に向けると、引き金を引いた。

 

ッ!!

 

すると発射した銃弾は銃口を向けた叔父の右肺に当たった。銃撃を受け、叔父は驚愕した表情で地面に倒れると肺から血を滲ませており、秘書が驚愕した様子で出てきて慌てて叔父を車に乗せて逃げ出した。

 

「…」

 

そして逃げ出したのを確認すると、エンツォはそこで駆けつけた軍警察によって屋敷に突入してくる軍警察の治安官を見た。

 

「…逃げたほうがいいのかな」

 

そんな疑問と共に彼は銃を捨てると、足元の死体の前で疲労から倒れてしまった。




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  • 世界最大の武器工場
  • 神になりたい子
  • 動物愛護
  • 代理戦争
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