TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#345

それからと言うもの、自分はとある傭兵団の会計係として雇ってくれることになった。

 

「こちら、計算が合いませんので領収書をお忘れではありませんか?」

「ん?あぁ、すまねえ」

 

傭兵団が拠点にしている施設の中で、少年は一人の傭兵に話しかけると、彼はポケットを弄って領収書を探した。

伝手でこの傭兵団に世話になった事で姿を完全に消したいと思っていた。あの叔父と会社の規模からしてここまで手が伸びてくるのは考えづらいので、彼は少し心に余裕を持って生活をすることができた。

 

「これで良いか?」

「はい。ありがとうございます」

 

初めこそフルフェイスヘルメットを被って顔を隠す子供を相手に怪訝な表情をされ、またその子供が自分たちの財布の大元を管理するとなれば、不安視する声もあった。

だがここに来て数ヶ月が経ち、そう言った声は安定した給金とボーナスから次第に消えていった。

 

「…」

 

そして領収書を受け取り、タブレットに数値を打ち込んで収支の計算を終えると、プラマイゼロとなった。

 

「こちらが今回の給金となります」

「おう、悪いな」

 

明細表と共に共通電子通貨を入れたカードを渡して今回の仕事の分の給料を渡す。

 

「レッド。今回の俺の報酬少なくねぇか?」

「酒保で買いすぎだからですよ。明細表にも書いてありますよ」

「…畜生」

 

今回の依頼は軍警察からのものであったので、彼らが用意した酒保があり、目の前の傭兵はそこで散財をした記録が残っていた。

少年から言われ、その傭兵は肩を落として去っていく。自業自得である事は理解できる脳をしていたので、反論もできなかった。

 

「相変わらず容赦ないぜ、坊主」

 

それを見ていた髭面の傭兵は苦笑して自分を見た。

 

「そうでしょうか?」

 

因みにレッドと呼ばれているのは、自分が雇われた時に本名を使いたくなく、便宜的に狩猟の教師が使っていたレッドサンと言う名前を借りたのだ。無論、本人にも許可を貰っているので合法的にこの名前を使っていた。ここの傭兵団の人達は彼の本名を知らないので、皆一様にレッドと呼んでいた。

 

「少なくとも報酬で大喧嘩になるよりかは良いかと」

「まあそうだがな」

 

そう言い、髭面の傭兵は少し笑う。彼が会計係をする以前は彼が報酬の分割を行なっており、その度に報酬の額で喧嘩が絶えなかった。

だかレッドサンの細かい計算と安定で平等な配分を前に次第に喧嘩も減っていった。

 

「全く、お前さんのおかげで気が軽くなったよ」

「だから使えると言ったでしょう?」

「…まあ、そうだがよ」

 

彼の本名は知らないが、見ての通り計算は優秀である。

なおこれは余談なのだが、タブレットで簿記を記入していたところ『見ずらいから紙で書いてくれ』と言ったのだが、彼から手書きで渡されたものを見た後に暫く黙り込んだ後に『やっぱりタブレットで頼む』と言って悪字に眉を挟ませた逸話がある。

 

「坊主、この後時間はあるか?」

「?ええ…」

 

どうしたのかと疑問に思いながらも頷くと、髭面の傭兵は少年を外に連れ出した。

 

 

 

 

 

「坊主、武器は使えるか?」

「…猟銃しか経験がありませんよ?」

 

外に出て、そこで少年は質問をされて答えると、少々ため息を吐かれた。

 

「猟銃が使えるなら問題ない。コイツを単発で撃ってみろ」

「分かりました」

 

軍用銃よりも威力の高い銃弾を使う猟銃の使用経験があると聞き、髭面の傭兵は苦笑する。

そして服を購入して戦闘服姿の少年は、渡された軍警察の放出品の6.5mm自動小銃を手に握ると、安全装置の有無や弾倉の残弾、薬室の確認などを終えて照準を距離の離れた空き缶に合わせる。

 

「…」

 

そして引き金を引くと、単発で発射した銃弾は空き缶を貫通した。

 

「次は連続だ」

「了解」

 

そしてそこで連射にセレクターを切り替えると、引き金を引いて連続で発射をする。

 

「っ…」

 

しかし連続で撃った際の反動で銃口が上がり、上手く命中せずに外れてしまう。

 

「ん、分かった」

 

二五発分の弾倉を撃ち切った後、見ていた髭面の傭兵は小さく頷いてから少年に言う。

 

「持ち方が慣れていない。そのままじゃあ戦闘中に肩を壊す。もっと銃身と脇をしっかりと固めろ」

「はい」

 

新しい弾倉を渡されながら銃を撃つ際の姿勢の矯正を指摘される。

元々猟銃を扱っていたと言う事で、銃の取り扱いに関しては文句のつけようがなかった。

 

「(あいつに教育をしてもらっていたか…)」

 

そこで自動小銃の扱い方を見てその癖で誰が教えたのかが容易に想像できた。目の前で立射をする少年は並べられた空き缶を簡単に穴だらけにすると、彼に近づく。

 

「よし、良いぞ。次は拳銃だ」

 

そして次にまた軍警察の放出品の5.7mm拳銃の扱い方の教育を行う。こちらは小銃と扱い方がまるで違うので、撃った拳銃弾は命中しなかった。

 

「っ!」

 

照準を合わせているにも関わらず命中をしなかったので少年はやや驚愕をして銃口を下ろした。

 

「もう少し前傾に倒れても良い。腕の力をもう少し抜かねえと疲れやすくなる」

 

そしてまた詳しい姿勢を教えてもらうと、少年は乾いた砂の様に情報を吸収してイメージを行って射撃を行う。弾倉の三つ目を使う頃には姿勢が安定していたので、髭面の傭兵は舌を巻いていた。

 

「団長〜」

 

そして銃の撃ち方のレクチャーをしていると、一人が話しかけてきた。

 

「あれ?レッドに教育ですかい?」

「ああ、お前よりよっぽど教えやすいぞ」

「ははは、俺はレッドほど頭が良くないんですよ?比べないでくださいよ」

 

相手が子供だから、と言う感情は彼の書いた複式簿記と株の予測値計算で消え失せていた。そして話しかけてもすぐに敬意を持って対応をしてくれる上に愛嬌もあり、傭兵達も今では少年を可愛がる様になった。

 

「んで、何だ?」

「ああ、オートマトンの整備が終わったことを伝えに来ました」

「おう、分かった」

 

髭面の傭兵は頷くと、そこでふと目の前で銃を持って射撃訓練を積んでいる少年を見て隣のオートマトン兵に提案する。

 

「おい、後で坊主乗せてやれ」

「え?レッドにオートマトンですかい?」

「なに、乗せるだけだ。出来るだろう?」

「まあそうですが…」

 

そこで拳銃を発射し終えた所で声をかける。

 

「坊主、次の訓練だ」

「?分かりました」

 

少年は頷くと、次に傭兵団の保有する倉庫に移動をする。中は移動用のピックアップトラックやオートマトンが置かれていた。

 

「オートマトン?」

「ああ、今から動かす。乗ってみろ」

 

そう言うので、少年は軍用オートマトンを前に少し呆然と見上げた。

 

「レッド、オートマトンに乗ったことは?」

「…初めてです」

 

そしてその中の一つの第三世代オートマトンを前に聞かれたので答える。

オートマトンは屋敷の庭の整備などで見た事はあったが、乗り込んだ事はなかった。

 

「おぉ、レッドにも初めてはあるのか」

「そりゃあそうですよ。まだ子供なんですから」

 

そう言うも、傭兵団の面々からはその仕草や話し方、簿記の書き方や株価の計算で本当に年相応の子供なのか?と疑問を投げかけられることがテンプレとなっているレッドサン。傭兵達の間では完全サイボーグ説が未だに出ていた。

 

「俺の機体だ。本来複座で使うから、レッドはガンナー席に座ってくれ」

「分かりました」

 

そして複座式のオートマトンのコックピットに脇を抱えられて乗せられた後、操縦席にパイロットの傭兵が乗り込む。

 

「うしっ、ハッチ閉めるぞ〜」

「はい」

 

車内はすぐに脱出ができる様にシートベルトがなく、少年は既にヘルメットを被っていたので座るだけで出る準備ができた。

 

「おい、レッドがはじめてのオートマトンだってよ」

「どうする?俺らより上手くなるかもしれねぇぞ?」

 

倉庫を出ていくオートマトンを見ながら他の傭兵達は口々に言う。

 

「賭けるか。何日で実戦に出られるか?」

「三日」

「一週間だろ」

 

そして何でもできると噂の少年を前に賭けを始めながら出ていくオートマトンを見送った。

 

 

 

 

 

複座式のオートマトンは前方が射手、後方が操縦手の席であり、攻撃ヘリコプターと似た座席配置となっている。このおかげでオートマトンから攻撃ヘリのパイロットへの転向は簡単であると言う。

 

「どうだいお客さん。乗り心地は?」

「揺れますよ。もう少し尻に優しくして欲しいです」

「ふはははっ!軍用車に乗り心地なんて求めたら負けでさぁ!」

 

後ろで豪快に笑われると、少年は射手の席で外の景色を見る。

オートマトン特有の人型機械の特徴である歩行時のショックアブソーバーなどが動く機械音が耳に聞こえる気がする。

無論密閉されたコックピットなのであり得ないのだが、少年にはそこはかとない興奮を感じていた。

 

「凄い…」

 

言い知れない興奮を感じ、少年はオートマトンと言うものに乗った瞬間に魅了された。

 

「凄いだろう?この前入った新型だからな」

 

傭兵はそんな少年の興奮した様な声色を聞き、内心で本当に子供なんだなあ、と彼の見た目相応の反応に少し微笑ましく思いながら射撃場に到着をする。

 

「よぉし、目的地に到着だ」

「え?ここは射撃場ですよ?」

 

本来であれば少し歩いて倉庫に戻るはずだったが、オートマトンの操縦手はそんな反応をした少年にニヤッと笑って首を傾げた。

 

「何だ、撃ってみたくないのか?」

「…」

 

少年は言われると、少しダンマリとしてしまう。本来であれば帰らないと髭面の傭兵から叱責を受ける事となるが、一人の男児として興味はあった。

 

「なに、レッドのお陰で懐は弾倉一個分くらいは余っているんだ」

「…」

 

明らかに誘ってくる口調で言ってくるので少年は悩んでしまう。

 

「撃った時の反動と閃光、腹に来る衝撃。たまらねぇぜ?この迫力」

「…」

「ガンナー席のその赤いボタンを指で弾いて撃ったら射撃だぜ」

「…」

 

そう言い、彼は少年の足元にある簡易的な二本の操縦桿の上の赤いカバーを見て使い方を教える。悪魔の囁きにも聞こえる話し方、さすがは何人もの女性を口説いてホテルに連れ込んだ腕前はあると思いながら彼は勢いに任せてカバーを指で弾いて中のボタンを押し込んだ。

 

ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!ッ!

 

片手に持っていた25mm自動小銃の銃声が射撃場に轟く。

発射された銃弾は銃身を伝って射撃場の土嚢を積んだ的に命中をすると、土煙を上げた。

 

「ほほぉ、上手いじゃねえか!」

「…」

 

そしてヘルメットと直接コードを繋げているので、標的射撃は簡単にできた。そして弾倉を撃ち切ると、少年は満足をした様子で椅子に深く座った。




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  • 世界最大の武器工場
  • 神になりたい子
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