TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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新章?始めます。
余っている分やります。投票もやりましたしね。


付属編成 一両目
#354


男の子って、こう言うの好きなんでしょう?

 

少し前にネットで流行ったスラングである。昔から何度もネット上で使われてきた言葉であり、それと共にゴテゴテとした機械や武器、書いたエロ絵なんかを乗せる一種の文化である。

 

ただ一つ言わせてもらうと、寿命や性別が曖昧となったこの時代においては、性別を問わずにそう言うのが好きな奴は多いぞと。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「間も無く目的地です」

「うい〜」

 

運転室の中、ルシエルが運転席から言うと反対の助手席に座っていたスフェーンが答える。

昔と違い、機関車形式の動力集中方式の機関車形式で運行中の我が列車。

まだサダミが体の使い方を完全にこなしていない頃、ギャングの荷物をうっかり運んでしまったことで戦闘となったのだが、その時にモードを暴発させたサダミがエンジンを破壊したのだ、オーバーブローで。

お陰で四つあったエンジンの一つが完全に吹っ飛んでお釈迦となった。それと同時に、同じ区画に搭載していた戦術E兵器もぶっ壊れた。

破壊した残骸は泣く泣く処分し、この機関車には個人防護武装として前の列車から剥ぎ取った複合型CIWSを一基装備していた。

 

『サダミ〜、着くよ〜』

 

そこで後ろにいるはずの同乗者に言うと返事があった。

 

『了解』

 

かつての相棒にして、自分が核分離の叩き台に使ったことで転生(?)した稗田野サダミ、又の名をコーディエライト・シャノワールという。

自分と同じで複数の名前を持ち、長い間同じ運び屋として運輸ギルドのギルド証を持っていた。

 

「ちょっと任した」

「了解です」

 

助手席に座っていたスフェーンは席を外れると、そこで後ろの炭水車を歩く。中はコリドーテンダーと呼ばれる構造なので後ろに連結した客車まで中の廊下を通ってたどり着ける。

また炭水車は二両繋いでおり、燃料と武器を搭載していた。

 

「おーい」

「何だ?」

 

合造車の車内では、サダミが台所で鍋に火をかけていた。

因みに彼女、本来であればカフェの仕事があるがスフェーンが連れ出してきていた。なので不機嫌である。正直すまんかったとも思っている。

 

「あ、飯?」

「そうだよ。全く、どうして二人は部屋に食事がないんだ…」

 

ぶつぶつと文句を言いながら鍋を見てみると、IHコンロで鍋を回す。

車内は以前と同様、大幅に改造を施されていた。元々の荷物室はガレージに改造をされ、客室は部屋に改造である。ジョンの指導の元でカーゴスプリンターを機関車に魔改造をした際に全ての貨車を売り払って、そこで得た資金で客車の購入と改造をすることとなった。お陰で再びローン漬けであったが、何とか払い終えることができた。

 

「いやぁ、いつも私たち『帰ってサダミの美味い飯か、出先の店に入る方が良くね?』ってなってるのよ」

 

スフェーンはそう言って悪びれる様子も無く言う。

 

「全く…」

 

それを聞き、サダミはため息混じりに出来上がったシチューの火を止める。自分が頼りにされていると考えれば、悪いものでもなかったが。

 

「はい、出来たぞ」

「うぇい、待ってました」

 

そして出来上がったシチューを深皿に盛り付けられ、客車の中で彼女の作ったシチューの香りが漂う。

 

「おぉ、良い香り」

 

そこでデミグラスソースに大きく切られたじゃがいも、にんじん、ブロック切りの牛肉。

 

「まあこれも教えてもらったメニューなんだがな…」

 

サダミはそこでやや苦笑気味に盛り付けたシチューをスフェーンの前に置く。基本的に彼女がカフェで提供をしている料理、軽食全般はスフェーンが考えて味見もしている。サダミがやっているのはコーヒー全般で、そのコーヒー豆も仕入れはスフェーンに頼んでいた。

 

「いやぁ、正直ここまで腕を上げたのは流石だと思うわよ?」

「そうか?」

 

彼女はユラユラと二本の尻尾を揺らしており、それだけで普通の獣人ではないことは一発で分かるので、普段は一本隠していた。彼女は常にAR端末である黒縁丸眼鏡を掛けており、これは防弾も備えていた。

 

そして今の彼女はスフェーン達と違って私服姿であり、少なくとも運び屋として仕事をする上では少々危ない場所であった。

 

「で?私を連れ出した理由は?」

「カフェばっかり引きこもっているから」

「真面目に答えんかい」

 

サダミは突っ込むと、スフェーンはシチューを前に手を合わせる。

 

「いただきます…まあちょっとヘルプ入って欲しいかもって思ったから」

「ほう?」

 

そこでスフェーンはサダミにタブレットを渡して今回受けた仕事を見せる。

 

「ほう、国連軍に?」

「依頼主はね。ただ重量がちょっと…」

「…総量六〇〇〇トンか」

 

そこで運ぶ予定の荷物の目録とその総重量を見て少し表情が険しくなる。

 

「それはあくまでも最終的な量だから何往復かする予定」

「制御貨車が必要になる量だな」

「そう。で、繋がるのはどうせ四八両が限界だし、走る区間も坂道がないから」

 

現在の鉄道管理局の安全規則上、車両数は最大で一五〇両までの連結とされており、閉塞の問題もあってこれ以上伸ばすこともない。しかしスフェーンの機関車の出力と牽引力の問題からまともに走れるのは五〇両が限界であった。

 

「それで緩急車に乗ってくれと言うわけか」

「そゆこと」

 

今回運ぶのは砲弾や弾薬、どれだけ時間が経とうとも未だに野盗が出るこのトラオムの世界においてこう言った軍需物資は狙われやすい。

 

「どうして自前のネフィリム(複々線専用貨物列車)を使わない」

「それが出来たらとっくにやってるでしょ?」

 

スフェーンはやや呆れた表情を見せると、サダミはハッとなった。

 

「…そもそもこの大陸に国連軍のネフィリム(複々線専用貨物列車)はなかったか」

「そうだよ。何で君忘れてんのよ」

 

スフェーンは軽く呆れてサダミに言うと、そこでシチューを食す。

 

「貨車は?」

「国連軍のものを使う予定」

「…貨車まで向こうが用意か」

 

サダミは何でも用意してくれる今回の仕事に苦笑する。

 

「まあね。依頼主は国連軍だし」

「…そこから指名依頼かよ」

 

現在、不老者も一般化して昔と違って自然主義者による差別もほぼ無くなった今の時代。スフェーンとサダミも世間では不老者の一人であった。

 

「しかし、ブルーバック造兵廠とは」

 

サダミは今回の仕事先を知って少しため息を吐く。

 

「世界最大の弾薬工場。国連軍に納入する弾薬は日産一〇〇〇万発、月産三億発。現在トラオムに存在している中では最大の、国連管轄の工場だ」

 

トラオム最大の武装組織である国連軍、嘗て軍警察と呼ばれたその組織は世界中に自分の武器工場を持っており、安定した物資の供給を行なっていた。

現在は国家連合体、通称国連の指揮下の元で活動を行っている。

 

「凄まじい規模だな」

「ええ、この筒井大陸を統括する唯一の大陸国家。パトリシア立憲王国に存在する世界最大の武器供給場よ」

 

スフェーンはこれから向かう場所にサダミは少し首を傾げた。

 

「行ったことがあるのか?」

「勿論。この数百年、何もぼーっとして生きてきたわけないんだから」

 

スフェーンはそう言い、サダミこれまで生きてきた長い人生を思い出させる。

 

「やめてくれ。色々と思い出してしまう」

 

彼女もまた、この体となった半分近くを運び屋としてスフェーン達と生きてきていた。その間、彼女達はトラオムの世界を回ってきた。

その間、無限に近い出会いや別れを繰り返してきた。それら全ての記憶を保管していた。

 

そもそも彼女達には人間の本能の一つである『忘却』と言う行為を失っている。

また生殖に関する能力も一切なく、二人は子を成すことはない。

 

「はぁ、色々と面倒な体だよ」

「でも便利でしょう?」

「それはそうだが…」

 

少なくとも不老者全体で言えるが、圧倒的に長けた異能のポテンシャルがある。

スフェーンからの教育で、彼女がモードと名付けた能力を使える。

 

「ごちそうさま」

 

そしてシチューを食べ終えると、食べお終えた後にルシエルを呼びに向かう。

交代で食事のために運転を代わりに向かい、これからルシエルがシチューを食べにくる事となる。

現在、パトリシア立憲王国と呼ばれる国でカフェを長年経営していた。その際、スフェーンが子供を連れてきて二人で育てることもあった。

 

パトリシア王国は排他的である自然主義者を抑圧し、不老者や異能者の保護を推進してきた国家であった。

 

『まあ、そのようにされたのはお二方なのですが…』

「…はて、そうだったかね?」

 

そんな事をシエロと言っていると、入れ替わるようにルシエルが現れた。

 

「おぉ、今日はシチューですか」

「まだ出来立てよ」

「いただきます」

 

スフェーンと違い、身長は幼女と言える身長。彼女達曰くこれがデフォの姿だと言っており、実際自分も今の身長が最も効率が良い体であった。

 

「んん〜、人に作ってもらう飯が一番美味いですね」

「言い方!」

 

ルシエルにサダミがツッコミを入れる。何というか、同じ生まれで尚且つスフェーンと育ってきた彼女は何となく雰囲気は真面目そうでも、扱い方はスフェーンと同じでいいような気がしている。

 

「それ、自分にも言えてますよ?」

「っ!しまった!」

 

ロックをしていなかったことで心の声がルシエルにダダ漏れであったことを言われて思わず変な声が出てしまう。

 

『と言うより、生まれが同じなんですから性格も似るのでは?』

「そうそう性格が変わってたまりますかい」

 

シエロに言われサダミは反論する。少なくともスフェーンとルシエル、サダミとシエロの関係は色々と思う部分がある。

少なくともルシエルとシエロは元が人でなない。原材料に人を使っておらず、尚且つシエロの場合はスフェーンが叩き起こしたような状態であった。

 

「ごちそうさまでした」

 

そしてささっと食事を終えると、ルシエルは立って部屋を出る。

残ったサダミもシチューを食べ終えたので余った分は鍋に残っていた。

 

「今日は食べなかったな…」

『時間がなかったのでは?』

 

一般的に私たちは性欲、睡眠欲の存在がほぼ皆無な代わりに食欲が増やされている。そのため、私たちはめっちゃ食うのだ。

 

「珍しい事で」

 

サダミはそう言うと余った鍋を台所に置いて皿を食洗機に突っ込んだ。




この章が終わったら外伝(多分)やります。
正直、別作品扱いにするか悩んでいます。どちらが良いでしょうか?

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カフェに置く車

  • ダイハツ ミゼット
  • ホンダ T500
  • ピアッジオ アぺ
  • 九八式五屯牽引車コヒ
  • 九八式六屯牽引車
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