TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#355

ブルーバック造兵廠は国連軍が管理・運営している世界最大の武器工場でもある。

弾薬の製造の他、破損・故障兵器の修理も行っており、国連軍の使用する兵器を主に納入していた。

 

「着いた〜」

 

巨大な操車場に列車は停車し、そこで連結作業を行う。

 

「で、今回運ぶのは?」

「6.5mm小銃弾を五万発、203mm砲弾六〇〇〇発、対地ミサイル一二四発、九式オートマトン四四台…」

「分かった。化け物みたいな量という事だな」

 

機関車と客車を連結しただけのスフェーン達は、そこで依頼主の国連軍が保有し、尚且つ既にコンテナの積載を完了していた列車を見上げる。

 

三段積み(トリプルスタック)か」

「一部ね。まあここら辺は平坦な区画だし、制限速度を超えなきゃ暴れることもないわよ」

 

スフェーンはそう言い、連結を終えてジャンパ線を接続する。

 

「いつ出発?」

「十分後」

 

出発時刻を聞いてサダミは苦笑する。

 

「早すぎんだろ。間に合うか?」

「最悪走ってるの飛び乗って」

「飛んだ現場猫だな」

 

彼女はそう言うと一目散に列車最後尾まで走り出す。

そしてサダミを見送った後、軽くスフェーンは貨車の状態を確認する。

 

「うん、問題は無さそうね」

 

流石は国連軍所有の貨車と言うべきだろう、すべての貨車が安全上の問題から整備が行き届いている。企業が独自に持っている貨車のように走れたら良い程度の雑な整備では無いことがこう言う組織だとありがたい。軽く確認を行い、運転室ではジャンパ線の接続で列車全体の情報が入ってきたとルシエルから聞き、早速出発準備を始めていた。

 

「全く、あの二人はどうしてこんなにも急な予定を立てるのかね?」

 

そう愚痴を吐きながらサダミは列車の横を走る。

一応、運輸ギルドのギルド証を持っているので彼女は鉄道管理局の保有する路線で鉄道の運行が可能であった。

 

『お二人はいつも行き当たりばったりで生活をしているからなのでは?』

「実際そうなんだけどね…ああ、文句の一つでもつけたいよ」

 

シエロとそんな事を言いながら少しだけズルをしてブーストを使って走る速度を時速六〇キロまで上げる。

彼女は自衛用の武器として拳銃(二式拳銃)騎兵銃(三八式騎銃)の他に短機関銃(試製二型機関短銃)を持っていた。防弾チョッキにマガジンポーチをつけ、スフェーン達と同じ服装で走っていた。頭上の猫耳にはノイズキャンセルと無線通信を兼ねたインカム付きヘッドホンを付けていた。

 

「やれやれ、十分で出発?それまでにたどり着けたら良いが」

 

そう言いながら走ると、遠くから汽笛の音が聞こえた。出発を意味する長い汽笛だ。

 

「くそっ!」

 

まだ場所は列車の七割ほど、そこで汽笛が鳴り響いた。

 

「馬鹿タレが!乗ってからせめて出せよ!!」

 

サダミは大声で毒吐いてから視界に見えた緩急車を見る。

黒塗りをされているので昼の場合は遠くから見てもわかりやすい。そしてすべての車両のブレーキを解除し、ゆっくりと走り始める列車を横目に緩急車のステップを握る。

 

「よっと」

 

構内での制限速度である時速二五キロまで加速を始める列車に乗り込み、緩急車のデッキに乗り込む。

 

「ふぅ、危ない危ない」

 

そして走り出した列車に飛び乗ったサダミはそのまま緩急車のドアを開ける。

 

「…」

 

サダミは長い間、スフェーンと運び屋をしていたので国連軍の緩急車の使い方は承知していた。

そもそもな話、これほど長い間運び屋をしていることで運輸ギルドの中でもスフェーンは歴戦の運び屋扱いである。現在、世暦に入って長い期間が経過したことで鉄道管理局やその他諸々の組織も多くの組織改編が行われてきていた。

 

現在、国家連合体の傘下に国連軍や鉄道管理局は入っており、鉄道管理局傘下である運輸ギルドも同様となっている。かつてサダミが創設した傭兵ギルドは国家連合体の外郭協力の国際組織として今も現存している。

 

「はぁ…」

 

そして緩急車車内にある簡易ベッドに横になって天井を見上げる。梯子を登ると車体中央から飛び出たキューポラがあり、そこから列車全体を見回せるようになっている。

 

『なおコンテナが一段積みの時限定ですが…』

「何も見えん…」

 

キューポラの窓から二段積みのコンテナを見上げて言う。少なくともこれでは圧倒的に射角が足りない。一応最低限の武装はあるが、四連装の13.2mm機関銃の対空砲架である。

 

「いつも思うのだが、せめて対戦車ミサイルでも欲しいと思うのは強欲だろうか?」

『ミサイルは基本的に高いのでどうぞRPGですね』

 

治安の全体的な向上があったとしても野盗の使う武装は強い。少なくとも自前で戦車の整備ができるほどには重武装である。

 

「正直、対戦車ミサイル付きRWSに換装して欲しい」

『その場合、機銃は半分ですね』

「40mm機関砲の方が絶対いいと思う」

 

安い構造の対空機銃を装備し、無いよりはマシ程度の武装に不満を吐いていると、先頭に居るスフェーンから連絡が入る。

 

『サダミ、お客さんが来たよ』

「了解」

 

そこですぐに視線が少し険しくなると、そこでシエロが言う。

 

『機銃の方はお任せを』

「頼んだ」

 

そこでシエロは今までサダミやルシエルから教わったり経験からすぐに砲塔を動かす。

 

「全く、野盗達は鼻がいいことだ!」

「笑ってる場合ですか」

 

運転室(キャブ)でスフェーンが言うと、運転台で操縦をするルシエルが突っ込む。

 

「盗まれたら終わりよ」

「無論、迎撃するっての」

 

そこでタブレットを操作する。すると二つある炭水車の片方に積まれた複合型CIWSが旋回する。

 

「ドローン飛ばします」

 

運転席で自動運転に切り替えたルシエルは横の窓を開けて小型の偵察ドローンを空に上げる。

 

「測距完了。発射」

 

最初にCIWSから対戦車ミサイルを発射し、荒野に飛んでいく対戦車ミサイル。着弾をすると野盗の持ち出してきたターレットに命中する。

 

「…距離をとっているわね」

「ええ、今の囮でしょうか?」

 

最近のお気に入りで、常に付けている目元を隠すゴーグル型端末で命中したターレットと空に上げたドローンからの偵察情報を見ていると、

 

「あっ、堕とされた」

 

偵察をしていたドローンの映像が突如として切れた。

これをスフェーンは敵の電磁パルス攻撃だと直ぐに感じたが、ルシエルが首を傾げる。

 

「おかしいですね?今回飛ばしたのは光ファイバー接続ですよ」

「…ん?因みに電磁パルス攻撃は?」

「ありませんよ」

 

ルシエルは言うと、スフェーンはそこで疑問に思う。

 

「じゃあこのタイミングで来たってことは…」

 

その途端、嫌な予感がしてルシエルに新しいドローンの展開を頼んだ後に後ろに飛んでいくように走る。

 

「…」

 

そして合造車のデッキから強盗の襲撃した方向とは反対のドアを開けて走行中の列車をゴーグルの望遠機能を使って見る。

 

「…っ!やっぱり」

 

そしてそこで列車の横に並行してフックを引っ掛けて止まるピックアップトラックを見る。

 

「あいつら馬鹿じゃ無いのか!?」

 

スフェーンは時速二〇〇キロで運行中の列車に飛び乗った野盗に驚愕をする。少なくともまともな野盗なら機関車を狙って列車を止めた後に積荷を奪っていく。なぜなら列車の巡航速度が速すぎて飛び乗るのに失敗したら命が無いからだ。

 

『すぐ迎撃してください。後で面倒なので』

「分かってるわよ!」

 

そこでスフェーンはサダミに言う。

 

「サダミ!列車に取り憑いた馬鹿がいる」

『冗談だろ…!?』

 

話を聞いた彼女は驚き半分呆れ半分で聞いていたが、過去にそう言う手は食らったことがあった。

 

「どうせ闇バイトよ。まったく、これだから最近の世間知らずの若者は!!」

 

スフェーンは毒吐きながらバトルライフル(FN M1949)ライフルグレネード(Energa)を手に取る。

 

「素人の方がよっぽど怖いったらありゃしないんだから!」

 

そこで客車の扉を開けて走行中のコンテナ貨車に登る。

 

「うおっと」

 

そこで後ろから時速二〇〇キロで走っているので強い風に煽られて肘をつく。

 

「っ、あっぶね」

 

スフェーンは一旦そこで体勢を整え、空色の瞳を灯しながら列車の上を走る。

 

「全く、恐れ知らずほど面倒な奴はいない」

 

同時にサダミも三段積みのコンテナの上に登ると、空色の瞳を灯らせて足元を周囲の空間エーテルを使って固定させると、両手で短機関銃を持って車両の上を走る。

 

『シエロ、コンテナの開放履歴は?』

『二二両目の一番下です』

 

スフェーンやサダミ達だけが使える回線で話すと、一斉に二人は動く。

 

「二二両目?」

『ほぼ真ん中じゃ無いのよ』

 

二人はそこで積載しているコンテナのロックのハッキング記録を手の空いているシエロが即座に確認する。コンテナの確認は事前に目録に記されており、コンテナの識別番号はすでにすべて把握されていた。

 

「因みに解除キーは?」

『改変はしましたが、ちょっと間に合わなかったですね』

 

シエロは言うと、二人が列車の屋根を走っているのを見てオートマトンの37mm砲弾が頭上を掠めた。どうやら近接信管は備わっていないらしい。

野盗も積んでいる物に傷を与えたく無いようで慎重に動いていた。

 

「うおっ!?」

『向こうが気付いて動いたわよ!』

 

そこでスフェーンはそこで伏せて瞳を赤くさせると、そこで空砲を装填してから銃口にライフルグレネードを装填すると、二段積みコンテナに飛び降りてそのままほぼ飛び出し撃ちのような形で列車に横付けされたトラックに向けて放つ。

 

ポンッ!

 

射程約一〇〇メートルのライフルグレネードは、列車に並走できるように改造されたピックアップトラックのエンジンに斜めに命中をすると、中の対戦車榴弾(HEAT)が点火し、メタルジェットがエンジン区画を貫いた。

 

「ラッキー」

 

スフェーンは運良く一発で当たったことに運を感じながら、突然エンジンが壊れて荒野に取り残されて消えて行って困惑する列車に乗り込んだ方の野盗を見る。

 

「やれる?」

『勿論…っ!!』

 

そしてサダミはスフェーンに頷くと、持っていた短機関銃を肩に当ててしっかりと照準をした上で引き金を引く。

 

「っ!」

「うぎゃあっ!」

 

連射した一発が命中をして悲鳴が上がったのを確認すると、野盗の一人が大容量の弾倉に交換した拳銃を乱射してきた。

 

「うおっ、危ないだろうが!」

 

サダミはそこで射線を切るために反対側に移動してから飛び降りる。

 

「この…ふがっ!?」

 

野盗は反応しようとしたが、先にサダミのコンバットブーツが顔面に押し付けられてコンテナのドアに叩きつけられた。




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