TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#357

仕事を受けて国連軍の物資輸送を行うスフェーン達。

チョコレートのような色合いの機関車からは小型高出力のエーテル機関が鼻笛のように高らかに唸り声を上げて走る。

 

「今度は破損兵器の移動とはね…」

 

スフェーン達は列車を自動運転に切り替えて合造車の中でベットに座る。

遥か昔、まだカーゴスプリンターの頃と変わらない内装だが、若干部屋広くなって乗り心地も良くなっていた。

 

「国連軍は現在軍事介入を行なっています。近隣で起こっていますから、それだけ損傷兵器は運ばれてくるでしょうね」

「変な火種が飛んでこなきゃいいけど…」

『そのための王国軍だろうに』

 

すると話を聞いていたサダミが話に入ってきた。

今ではすっかり稗田野サダミの名前が染み付いてしまったが、まだ彼女がモードに慣れていない頃は自分も昔の名前で言ってしまうことがあった。

 

「あら、聞いていたの?」

『こっちも暇だから』

 

彼女のもう一つの名前であるコーディエライト・シャノワールの名前は相談をされてつけた名前なのだが、そのまま通ってしまったことに逆に驚いた物だ。

 

「ゲームでもやる?」

『全然アリ』

 

スフェーンとサダミは早速FPSのゲーム画面を開くとログインをする。

傭兵時代もそうであったが、待っている間というのはとてつもなく暇なのである。基本的に最前線の塹壕に隠れて敵の攻勢があるまで前線の監視を行うのだが、前線ではドローンによる偵察が行われており、偵察兵が完全にその役目を担っていた。

なので前線でFPSの一試合をした後に本物の殺し合いをするなんていうこともあった。

 

「そっち、後ろに回り込んでるのがいる」

『裏どり?やれやれ』

 

ゲームはリアリティを追求したと豪語したゲームで、国連軍の使う武器や多数の銃火器を有して細かいカスタマイズができた。

 

「うお、危な」

 

敵の戦車の砲撃でダメージを負った所を軽く注意喚起をして持っていた6.5mm自動小銃で射撃を加える。昔の頃とは違って何かと使い勝手が変わった銃を手に取って敵プレイヤーを倒して行く。

 

『うははっ!死体が変なとこまで飛んでったw!』

「バグってら」

 

ゲームの挙動でゲラゲラと笑う二人は直後に隠れていた建物に重迫撃砲の砲撃が飛んできてまとめて吹き飛ばされた。

 

「げっ」

『支援砲撃来てたんかい』

 

そこで再出撃をしてバギーに乗り込む二人。

 

「野郎…」

『ほいC4』

 

そこでバギーにC4爆弾を取り付けて乗り込んで最高速度で敵車両を探して戦場を走る。

 

「居た!右奥!」

 

そして戦車の発砲炎を確認すると、そこまでバギーを乗り捨ててから体当たりをしたバギーに点火。特攻で爆発をさせて破壊する。

 

「『イェーイ』」

 

気持ちよく砲塔が吹っ飛んだ車両を前にゲームでハイタッチをすると、次に銃を持ってマップを走る。

 

『建物に居る!』

「了解」

 

そこでスフェーンは持っていた狙撃銃のスコープを覗いて射撃をする。

 

「ヒット」

 

そしてヘッドショットで撃ち抜くと、そのまま突撃兵の高速移動で建物に入って拳銃を撃つ。

 

「うい、制圧」

 

そしてサッとクリアリングをしてから部屋の窓から狙撃する。

マップは市街地であるので、ビルの上から狙撃をして敵を待ち伏せていた。

 

『マップの上やばい。拠点押されてる』

「うわ、今まで気づかなかった」

 

そこで味方が溶けてしまっていた拠点の方に慌てて移動をすると、そこで溜まっていた敵の排除をして行く。

 

「うらうら〜」

『はいワン、ツー、スリー』

 

二人でチームを組んでいるので次々と敵を倒してから拠点を踏みに行く。

 

「よし、チケット減ってる」

 

そして画面上のゲージが減って行くのを確認すると、

 

「『うぃ〜』」

 

試合が終了し、勝利した事で二人はいつものように声を上げる。するとそんな二人を見ていたルシエルとシエロが一言。

 

『『遊んでないで手伝え』』

『「はい…」』

 

軽く言われ、二人はその後列車の警戒の為に武器を片手に持った。

 

「全く、貨車が長いせいで夜通しか」

 

列車最後尾の緩急車でサダミは夜の荒野を眺める。

相変わらず空は大災害以降の伝統でエーテルが浮かび上がっている。あれから長い年月が経っているにも関わらず、エーテルは昼夜を問わずに降り注いでいる。

 

『最近ではその空間エーテルを魔力と呼ぶ場所もあるとのことです』

「魔力?魔女狩りをしていたころじゃ無いだろう」

 

一部ではまだスピリチュアル的感覚で扱われることの多い異能、しかしそのメカニズムはすでに解明されている。

空間エーテル同士の共鳴が空気中の電荷と反応を起こし、それが視神経にまで侵入をしたエーテルが照準を合わせて異能による攻撃を行う。

異能の種類は主に雷撃であるが、一部ジョンのように炎を繰り出すことが可能である。

 

『まあ、一昔前の人からすれば異能も魔法のように映るのでしょうね』

「でしょうね…」

 

かつて、空を飛ぶことが夢物語であった時代があったように、今のこのトラオムの世界も過去の常識から考えれば想像もつかないようなことになっているのかもしれない。

 

「はぁ…連れ出されたは良いものの、これをあと数回か…」

 

内心で面倒なだと思いながらキューポラから外の景色を見続ける彼女は夜の荒野を見ていた。

 

「しかし、破損兵器の量も凄まじいわね」

 

その頃、先頭の機関車でもスフェーンは牽引中の列車を見て呟く。

今現在運んでいる無数の破損・故障兵器達は最前線での修理が不可能と判断されて後送されてきた兵器である。

その内容は実にさまざまであり、ジャイロダインや戦車、攻撃機、オートマトンや多脚戦車といったありとあらゆる国連軍所有の兵器が集っていた。

 

『先の作戦では大量にドローンが使用されたという話もあります。町中にIEDが仕掛けられていたと言う話ですよ?』

「ドローンで戦車を無力化するには大体四〇機がいるけど…」

 

そくそんな人員を確保できたなと内心で思っていた。まあ所詮はよその国のお話なのだが、破壊された兵器群を見て少し考えてしまう。

基本的に自爆ドローンにも有線型と無線型が存在しており、どちらも電磁パルス攻撃には脆弱である。特に最近は迫撃砲による電磁パルス攻撃をおこなってから戦闘に入るのが一般的であり、その影響で電子機器類は軒並み破壊的一撃を受けることとなる。

 

「ですがオートマトンは一〇発で破壊可能です」

 

オートマトンは走・攻・守、全てにおいて万能な戦闘機械である一方、器用貧乏の側面がある。立ち位置で言えば歩兵戦闘車と戦車の間に存在し、機械化師団に追従できる速度も有していた。肩に砲を装備した砲撃支援機体では臨時の自走榴弾砲として機能していた。

 

「だからオートマトンの割合が多いわけね」

 

そこで運んでいる荷物のオートマトンを合造車から眺める。

オートマトンは部品が多く、その分関節部などが弱点であり、そこを狙って攻撃を受ける場合が多かった。

第五世代機以降、人工筋肉を使用したオートマトンは先に発表された第八世代コンセプト機になって全身に人工筋肉を取り付けるようになった。

第四世代機までのショックアブソーバーや油圧システムなどの旧来のシステムを使用しない新しい技術は、もはや魂のない巨人と言われていた。

 

「まあそれよりも国連軍の軍事介入が一切終わらないことに首を傾げたくなりますよ」

「ほれ、世界中どこでも戦争をやっているじゃろう?」

 

現在は世暦の世界となって久しい時代、このトラオムの世界には多くの国家が勃興して久しかった。

暗暦の時代から生きてきた長老達はそんな世界を見て思う。

 

「人間の半分は競争でできている。ですか?」

「左様。その競争心の行き着く最終手段が戦争だ」

 

スフェーンは頷くと客車の喫煙室に移動して煙草に火をつける。

合造車には狭い喫煙室があり、喫煙者達(スフェーン・サダミ)はここで狭い思いをしながら煙草を吸っていた。嫌煙家達(ルシエル・シエロ)からは『どうしてそこまでして吸うのか?』と疑問視されてしまっていた。

 

吸っているのはチェ・レッド。真っ赤な赤い箱にかつての革命家にして最も有名なフリー素材、エルネスト・ゲバラが印刷されている。

『20世紀で最も完璧な人間』とも評され、チェ・ゲバラの愛称で親しまれていた彼はボリビアにて処刑をされる直前に『落ち着け、そしてよく狙え。お前はこれから一人の人間を殺すのだ。お前の目の前にいるのは英雄でも何でもないただの男だ。撃て!臆病者め!!』と言う有名な言葉を残している。

今では、彼の名前も歴史に埋もれてしまった偉人の一人だが、彼の戦争以外の行動はスフェーンの憧れの一つであった。

 

そして軽く一本吸い終えた後に部屋に戻ると、そこでルシエルは呆れた目線を向けた。

 

「相変わらずよく吸いますね」

「味が好きでね」

「…昔はラキストを吸っていたはずでは?」

「もちろん、そっちも吸っているともさ」

 

スフェーンは初心忘るるべからずと言ったような空気感で視界の端にある煙草の備蓄を見る。

部屋にはサダミの銘柄も備蓄され、彼女も別の煙草(ゴールデンバット)を吸っていた。

 

「やれやれ、お二人の喫煙率には呆れますよ」

「味を楽しんでいるからニコチン中毒じゃないわよ」

「…ブリンクマン指数を計算して差し上げましょうか?」

 

ルシエルは無駄だと分かっていても思わず言わずにはいられなかったのでスフェーンに提案する。

 

「そもそもブリンクマン指数なんて遥か昔に日本人が作った造語じゃないの。そもそもそんな時代のたばこと今の時代のタバコなんてタール値とニコチンなんて桁違いに違うっちゅうねん」

 

スフェーンはそんなルシエル二何番煎じだよと思いながらも同じことで返す。

今の時代、タール値が5.0でとても重いと言われているような時代である。平気で軽い煙草のタール値が10.0とかいう狂気の時代に作られた指数など、今の時代に合っていないものである。個人的にはブリンクマン指数の桁数を一つずらして後ろに0を増やすべきだと思っている。なんなら二個くらい増やしても良いだろう。

 

「全く…」

 

ルシエルはこの喫煙者という少し蔑んだ目線を送った後、サダミの作って余っていたシチューを温め直していた。




ちなみに作中のドローンの数はポーランド軍の発表したシミュレーション結果を参考にしました。


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