TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#361

軍需物資とは、軍隊を動かす上で必要な物資全般の事を指す。

武器弾薬の他に軍隊に必要な食糧、生活用品、サイボーグ用のパーツ、循環液、その他諸々といったありとあらゆる物が軍の中で消費される物であれば全て軍需物資である。

 

「完全に産業廃棄物とそうじゃない奴の違いやん」

「いやまぁ…実際そうだが…」

 

スフェーンのぼやきに隣でサダミが苦笑してやや顔を引き攣らせた。

今回の依頼は国連軍への武器弾薬の納入。その道中では何度も野盗による列車強盗が行われ、何度も迎撃に駆り出されていた。

 

「馬鹿じゃないのかしら本当に」

「うーん…」

 

列車にアクティブ防護システムと発煙弾、CIWSの30mm弾薬などの列車防護に必要な物資の補充を行なっていた。

 

「料金はこちらとなります」

「わかりました」

 

対戦車ミサイルの補充も行ったことで(ウィール)が少し嵩んでしまったのが少々問題であったが、自分の身を守る手段に金を注ぎ込まない奴は大抵やられて死んでしまうのがこの業界である。

 

「セット割引をしておきますね」

「はーい」

 

内心『やったぜ』と思いながら割引をされた金額で支払いを終えると、そこで弾薬の補充を終えたサダミが合造車のガレージの方のドアを開けて話しかけてくる。

 

「こっちの補充ももうすぐだ」

「了解」

 

アクティブ防護システムの補充を完了し、その他諸々の列車防護装備も補給した列車は発車準備を進める。

場所はブルーバック造兵廠の操車場。ここは世界最大の弾薬生産工場である他に、製造された弾薬を販売する企業としての役割もある。その為、ここでは国連軍の使用する弾薬が直営店方式で販売されていた。

 

「30mmは?」

「予備弾で出来立てのが二〇〇〇。古いのは全部装填するぞ」

「オッケ」

 

そこでプラスチックケースに入っていた30mm焼尽薬莢の焼夷弾薬をリンクレス・コンベアに放り込んでいく。

二つある炭水車のCIWSがある方は大量の武器弾薬が詰まった武装貨車である。数発の対戦車ミサイルを垂直に装填し、複合型CIWSには二門の30mmガトリングとコンベアで接続された大容量の弾倉が両脇にある。

 

「全く、今回は派手に使ったな」

「ちょっと近づきすぎていたしね」

 

そこでガレージから持ってきた弾薬を装填口に転がしていく二人。

 

「で、出発は?」

「五時間後。鉄道管理局から運行許可が出た」

 

機関車は遠隔操作でルシエルが動かしており、運ぶ貨物列車の戦闘に移動している。

 

「了解…意外と遅いな」

 

サダミは了解すると、弾薬を全て装填し終えて立ち上がる。

 

「不発は?」

「ここに」

 

そこでスフェーンは足元に転がっている数発の30mm弾を指さす。ガトリング銃の特性上、不発弾がすぐに排出されるので弾詰まりをしない。

 

「どうする?」

「捨てるほうが早いでしょ」

 

スフェーンはそう言い先の一戦で出てきた不発弾を持ったまま列車を降りる。

30mm弾は国連軍や世界的に見ても広く使われている銃弾であり、薬莢長も同一の物が使用されている。

今いる国の軍も国連軍と弾薬を共有しており、スフェーンも見慣れた銃弾であった。

そして不発弾だが、こう言う時に発射時の弾薬のガス圧で機関部が動かないガトリング銃やチェーンガンは強かった。

 

「足回りはどう?」

 

そして列車を降りて足回りの点検を行っているルシエルに話しかける。

 

「まあいつも通りですよ」

 

重く頑丈なシャーシに、台車と主連棒で繋がれた巨大な三つの動輪。

ホワイト式で表すなら4-6-0の車軸配置、俗に『テンホイラー』と呼ばれ、主にイギリスの機関車で多用されてきた車軸配置である。

この機関車の元ネタは試作のガスタービンエンジンを積んだ機関車だと言うのを、色々と調べたルシエルが教えてくれた。まあこんなマイナーな機関車をモデルにしたジョンのセンスもどうかと思うが、実用性は問題なかった。

 

「異常ありませんね」

「オッケ。じゃあ出られる?」

「いつでも」

 

そこで軽く確認をし合うと、スフェーンは後ろからサダミに話しかけられる。

 

「ごめーん、これもついでに持ってって!」

「ん?あぁ…」

 

そこでスフェーンは空になった弾薬箱を受け取る。

 

「リサイクル?」

「ああ、あるだろうどうせ」

 

そこで二人はそれぞれ空になった弾薬箱を肩に担いで運ぶ。

ここブルーバック造兵廠は運輸ギルドの事務所も併設されており、そこには弾薬箱や不発弾を回収するボックスが用意されている。

 

「ウイショ〜」

 

そして運輸ギルドの小さな事務所の側のコンテナの中に空になった弾薬箱を放り込んでいく。このコンテナは全て洗浄をされた後に新しい弾薬を入れて30mm弾薬箱として使われる。

 

「なんてサステナブル」

「リサイクル…ではないか」

 

そんな話をしながら鹿と黒猫の獣人は空の弾薬箱を入れた後に不発弾をそれ専用の箱に入れる。

基本的に不発弾は信管を交換して終えば使うこともできる上に即席爆弾(IED)にもなる。だがそれは専門の知識がないと自爆をする羽目になるので気をつける必要があった。

 

「しかし、意味上ではこれも地産地消扱いになるのか…」

「ふはは、オモロそれ」

 

スフェーンはサダミに軽く笑うと、そこで事務所で周辺の路線状況の確認を行ってから列車に戻っていく。

 

「で、これで終わり?」

「そうね」

 

そこで二人は処理を終えるとルシエルに聞く。

 

「ルシエル〜」

『どうしましたか?』

 

ルシエルはスフェーンと距離が離れてしまったことで体が保たなくなってスフェーンの体に戻っていた。

 

「こっちのやることは終わったわよ」

『わかりました…と言ってもやることは終わりましたけどね』

「なるほど…」

 

広大な操車場を歩くスフェーンとサダミ。すでに貨物は連結され、出発時間を待つのみであったが…。

 

「何時間ある?」

「ざっと四時間ってとこだな」

「長いな〜」

 

そこでできてしまった待ち時間にスフェーンはどうしたものかと考える。

ここは国連軍の施設。工場であるが、国連軍の軍事基地のような娯楽施設は用意されていない。

 

『どうやら工場見学があるようですよ?』

「ほ?」

「そうなのか…」

 

するとシエロが察してくれた様子で近くの娯楽や時間潰しとなりそうなものを調べてきてくれた。

それはこのブルーバック造兵廠の工場見学をできる物があると提案してきた。そして同時にスフェーンとサダミの視界にその内容を見せてきた。

国連軍管轄の生産工場である

 

「へぇ〜」

「そんなのがあるのか」

 

二人はそこでこのブルーバック造兵廠の工場見学を前にお互いに顔をあわせる。

 

「「…」」

 

そして同時に口を開く。

 

「「行くか」」

 

時間的にも見学は一周できそうであったので二人はそのまま工場見学に参加申請を行った。

 

 

 

 

 

「このブルーバック造兵廠は平均日産一〇〇〇万発の銃弾・砲弾を生産しており…」

 

その後、工場見学を行なったスフェーン達はそこで用意されたタブレットの自動放送の案内に従いながらガラスの向こう側でコンベアで流れていく203mm砲弾を眺める。

ここは基本的に弾薬の生産工場であり、破損兵器の修理はあくまでも副業に近かった。

 

「国連軍の砲弾か…」

「実際よく使うでしょう?」

「それはそうだ」

 

国連軍、かつての軍警察はこのトラオムの世界に多数のこういった施設を有していた。

 

基本的に国連軍で消費される軍需物資は全て自分たちで作っている。企業の採用などをすればたちまちコンペは企業による腐敗の温床となるとし、軍警察は必要なものはほとんど全て、自社工場による生産となって居た。そのため国連軍はそれら軍需物資を販売しており、多くの傭兵がこれらのキットを購入して居た。また非常食としても優秀であるため、スフェーン達も備蓄して居た。

これらは全て国連軍の通販サイトで購入が可能であり、それがこの世界の基準となって居た。

 

「こちらは155mm砲弾の製造ラインとなります」

 

そして工場は次に戦車に搭載する砲弾を製造するラインに移動する。

完全自動化された製造ラインでは無数の砲弾がトレーを伝って生産される。ここではダーツ(APFSDS)榴弾(HEAT)が製造されており、それぞれは完成品が流れて来るのを見て居た。それ以外の工程は国連軍の機密違反に抵触するため、公開はされなかった。

 

「箱詰めの様子を見るだけかい」

「軍事兵器の製造工程と材料を見せる馬鹿がどこにいるんだよ」

 

サダミからも至極真っ当な意見を受け取り、スフェーンは工場の見学者用通路を歩く。

 

「まあこんな場所、社会見学以外で来る様な場所でも無いでしょ」

「実際そうだろう、こんな場所。…まあ国連軍の工場で働きたい奴がいるのかと問われると疑問だが…」

 

サダミはそう言いながら工場の通路を歩く。

申請はしたものの、まさか無人の通路を歩くだけとは思って居なかった両名。

 

「静か〜」

「誰も居ないからな」

 

無人の工場を歩くと言う何処ぞのホラーゲームでありそうなシチュエーションを前に少し表情は強張っていた。

 

「ちょっと怖く無いか?」

「分かる。進路とか間違ってても誰もいないからね」

 

大いに賛同しなら二人は新しい製造ラインを上から観察する。

 

「ここは?」

「6.5mm小銃弾」

 

その隣は5.7mm拳銃弾の製造ラインがあり、真新しいケースレス弾が列をなして梱包されていく。

 

「文字通り武器庫だな」

「流石日産で一〇〇〇万発行くわね」

 

全世界に向かって出荷されていくので大量の銃弾・砲弾が常に吐き出されていく。

 

「ここは356mm砲弾か…」

「すげぇや。ここって軍艦用の砲弾まで生産していたのか」

 

そして次に陸上艦や巡洋艦に整備されている砲弾が製造され、冷却をされていた。

基本的に軍警察の砲弾はどの信管も同一規格で製造されており、自走榴弾砲の203mm砲弾と軍艦の356mm砲や100mm砲、全ての砲弾で同じ近接信管が利用可能だった。

 

「次の荷物目録に入っていなかったか?」

 

サダミはそこで少し首を傾げながら工場を歩くと、そこで工場見学は終わってしまい、最後の工場の販売所が置かれていた。

 

「お土産どうする?」

「これで良いんじゃない?」

 

サダミとスフェーンは人気のないお陰で気軽に見学できた工場で、土産物を見繕ってから工場見学を後にした。




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