TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#362

基本的に国連軍というのは馬鹿でかい武装組織である。

現在所属している国連軍兵士の人数は後方要員を含め約三〇〇〇万。どこぞの小国の人口ほどの人数を抱える国連軍は、当然それらの人材を食わせ、活動するために大量の物資を必要とする。

 

「やれやれ…」

 

運行中の車内でスフェーンは後方の今回の列車を見る。

 

「まさかコイツ(列車砲)を運ぶことになるとは…」

 

そこには軍艦と同じ長砲身の356mm砲を搭載した列車砲が牽引され、列車砲の運用に必要な弾薬車や電源車、列車防護用の武装貨車も装備していた。

今回の仕事で最後に運ぶのがこの列車砲の編成であるということに関しては担当した人に一言言いたくなってしまった。

 

「搭載している砲は76.2mm速射砲です。依頼主の方から『列車防衛に際にご自由にお使いください』との事です」

 

するとガレージで自分の武器(PSRL-1)の整備をするルシエルが答えた。

この合造車は客室と荷物室があり、昔のキャビンと同様の設備が整っていた。

 

「随分と太っ腹だよ」

「まあ列車砲ですからね」

 

現在牽引中の列車砲は三編成分。三門の列車砲を運送し、必要な弾薬も運送しており、前後には速射砲とCIWSを乗せた武装貨車が連結された編成であった。

 

「飛んだ特殊列車よ」

「列車砲部隊の運搬とは…また珍しいクジを引いたもんだ」

 

そこでサダミが同様に小銃の整備を行う。使う6.5mm小銃弾は低殺傷ではあるが、対人・対サイボーグでは十分な威力があり、行動不能にさせるには十分な威力がある。

 

「火薬は?」

「買ったよ。リロードマシンの横にあるだろ?」

「あぁ…」

 

そこでスフェーンはガレージに用意されているリロードマシンと、その側に6.5mmと書かれた硬芯徹甲弾(APCR)の弾頭の箱。サダミの使う小銃は真鍮製の古い薬莢方式の銃であり、同口径と言うことで国連軍の使用する弾頭が格安でブルーバック造兵廠で売られていた。

7.92mmと書かれた硬芯徹甲弾(APCR)の弾頭の箱も置かれており、これはスフェーンの使う武器の弾頭であった。

 

「あぶねえな」

「こんな合造車にリロードマシンを置いていて何を言うか」

 

スフェーンにサダミはツッコミを入れると、洗浄を終えた空薬莢に購入した火薬と弾頭をそれぞれ挿入していく。

彼女達は鉄路を走りながら次の襲撃に備えており、ガレージにはそれぞれの使う武器の弾薬が用意されていた。

 

「あーあー、散らかしてまあ」

「しょうがないだろう?」

「やる事多いんですから」

 

そしてガレージで三人は集まって武器の手入れをしていた。

 

「ちょっと。危ないんだからロケット弾の安全装置外さないでよ?」

 

そこで立てかけられたタンデム弾頭を見て言うと、サダミが少々ルシエルに警戒するように言う。

 

「間違っても室内で撃つじゃねえぞ?」

「昔に痛い目を見たんで大丈夫です」

「マジで痛いからやめろ?」

 

以前、ルシエルが襲撃を受けた際にこのガレージを密閉した状態で引き金を発射したことでガレージ全体を吹っ飛ばしたのだ。

ちょうどサダミがエンジンと戦術E兵器をぶっ壊したあの襲撃である。少々押されて混乱していたとはいえ、安全確認が現場猫を起こして一番この類の武器ではやってはいけない密閉空間での発射をしやがったのだ。おかげで使っていたバイクが吹っ飛んで壊れた。そしてスフェーンもバックブラストで腹に風穴が開いてしまう重傷を負った。

 

「はい…」

 

そんな珍しいルシエルのやらかしにスフェーンが言ったので、彼女も反省している様子で頷いた。

 

「さて、今日の信管は信用できるかな?」

 

そこでレシピ通りに試作したハンドロード弾を一発装填すると、銃口をドアを開けた列車の側面に向ける。

ハンドロードで使用するのは空薬莢と信管、弾頭、火薬が必要となってくる。また構造上、信管が作動しなければ火薬に火が付かない。

そのため、信管の質というのはとても重要であった。

 

ッ!

 

そして合造車のドアから荒野に向けて引き金を引くと銃弾が発射される。

 

「…」

 

そして試射をして信用できる信頼だと判断してガレージに戻る。

 

「どう?」

「問題なさそうだ」

 

この信管は信用できると熱々の空薬莢を手に取る。今どき珍しい薬莢式だが、信頼性の面では確実性が高い。

リボルバー拳銃と自動式拳銃のような圧倒的な信頼性に関しての壁があるが、薬莢式の利点である湿度に強い点があった。

プラスチック薬莢とも違い、劣化の不安が少ないのも金属薬莢の利点であった。

 

「今度使っていい?」

「余ったらいいぞ」

 

ガレージの外で煙草(チェ・レッド)に火をつけていたスフェーンを見てサダミは自分も欲求が生まれると、銃をガンラックに片付けて戻ってくる。

 

「やれやれ、これで終わりか…」

 

そこでサダミは軽くため息を吐いて煙草(ゴールデンバット)に火を付ける。

 

「ええ、悪かったわねヘルプを出して」

「ねぎらいをヨウキュウする」

 

サダミはそこで今回の仕事の報酬の半分を要求すると、スフェーンは少々顔を顰めた。

 

「ちょっとぼりすぎじゃないか?」

「当然だろう。こっちはいきなり連れ出されたんだぞ?」

「…四割、これで勘弁して」

「いいだろう」

 

スフェーンとサダミはそこで了承をすると、そこでサダミは一旦目を閉じて開くと、そこには虹色の双眸が映し出された。

その虹色の双眸は、自らの形を持っていなかったものの持つ何色にでもなれる証の瞳であった。

 

「おぉ、変わったの?」

「はい。少々お疲れだとのことで」

 

そこでシエロが答えると、彼女は片手に持っていたゴールデンバットを咥えて一言。

 

「全く。よくこんな重たいものを吸いますね」

「それはサダミの趣味よ。私のせいじゃ無いわよ」

 

スフェーンはそう返して一服をする。国連軍では今でも煙草盆と称して煙草休憩をする文化が根強く残っている。

 

「貧乏人のお供。簡単に快感を得られる嗜好品よ」

「言っても貧乏人でしょうか?せいぜい一般人並みなのでは…?」

 

そこでシエロはスフェーンとサダミの貯蓄と経済状況を今までの領収書から疑問に思った。

 

「出費多いからね〜」

「運び屋には必要な手続きやらが必要ですからね」

 

そこで自分の武器の整備を終えたルシエルが現れて話す。彼女は座り込むスフェーン達を見下ろしており、喫煙室以外で吸っていることに眉を顰める。

 

「…ここの床は難燃性にしておいて正解でしたね」

「だって移動するの面倒だし」

「怠惰の極みですね」

 

呆れた様子で彼女は言うと、そこで脱線しかけた話を戻す。

 

「おまけにスフェーンの場合、傭兵ギルド証も持っていますから。運輸ギルドにも更新が必要になった影響で四年に一回の更新費用が必要ですよ」

「まあね。なかったら武装警備員(トレインマーシャル)の仕事できないし」

「面倒ですよね…」

『どうせ利権がらみだろうさ』

 

最後にサダミが言うと、聞いていたシエロが突っ込んだ。

 

「その組織を作った人間が何を言うのですか…」

『だって私、その後の顛末なんぞ知ったことないし』

 

責任転嫁をして逃げたサダミにスフェーンは苦笑しつつも頷く。

 

「そうさ、人が仕切っている以上どこかで腐るんだよ。水だって腐るんだし」

「なんですか…それ」

「ちょっとずれているのでは?」

 

シエロとルシエルに突っ込まれ、そこでスフェーンは意外と味方が少ないことに首を傾げた。

少なくともこの空間には四人がおり、なかなかに人口密度がバングラデシュしていた。

 

「まあサダミの場合、作った後やめていますしね」

「まあまだいいんじゃない?下手に不正とかやって組織が潰れているわけでもないし」

『それはそう』

 

サダミがかつて創設をした傭兵ギルドは今も存続しており、何度か解散の危機に遭いつつもこの時代まで生きながらえていた。

 

『まあ今じゃあ赤砂の名を聞いても首を傾げられるような時代になった。…いい時代になったものだよ』

「「「…」」」

 

サダミのなんとも答えづらい呟きに全員がどう反応をしたものかと思ってしまう。自虐ネタなのかどうなのか、いまいち判断に困る代物であった。

 

「まあ、少なくとも傭兵ギルドの創設エピがそれほど言われなくなったわよね」

「それはそうですが…」

 

するとスフェーンのゴーグルに警告画面が浮かぶ。

 

「あら?」

「敵が来たみたいですね」

 

それは列車と並行して飛ばしていたドローンが撃墜された。

このトラオムの都市部以外の地域に住む人間は基本的に都市にいると危ないことをしているような人である。

 

「え?これを襲うんですか?」

 

すぐにそれがどう言う意味なのかをわかっていたので、列車砲編成を運搬中の本編成にシエロが首を傾げた。

 

「どうせ砲弾でしょ?」

「あぁ…」

 

スフェーンの予想にシエロは納得した。

この列車砲編成には弾薬込みの弾薬車が連結されており、中には356mm砲弾と装薬が補充されていた。

野盗はこの砲弾を奪って、信管を付け替えて即席爆弾(IED)を作ろうと画策しているのだろう。単純にこの砲弾の重量は七〇〇キロ近い重量があり、炸薬もビル一つを崩壊されることが可能な威力を有している。

 

「地雷としては十分な威力だからな」

「でしょうね…」

 

ルシエルはそこでガレージに用意された弾頭を見る。

 

「私が出ても?」

「あ、行く?」

「まあ上から撃つだけですので」

「オッケ〜」

 

そこでルシエルは対戦車擲弾発射機(PSRL-1)と弾頭を持って合造車のドアを蹴り開けて屋根に登る。

合造車の屋根に登って、その視線の先で荒野の坂を土煙を上げる集団を見る。

 

「…やれやれ」

 

どこか自分たちも試されているのかと疑問に思いながら、持っていたタンデム弾頭を装填すると隣で武装貨車の76.2mm速射砲の砲撃が始まる。

発射された砲弾は近接信管が作動し、襲撃をしてきた野盗の装甲戦闘車を爆圧によって停止させると、CIWSによる射撃も加わる。

 

「…」

 

そしてサーマルスコープから敵の野盗を確認すると引き金を引いた。

直後に閃光と激しいバックブラストが車上に炸裂をすると煙を引いて常闇の戦場を進むと、弾頭を見た野盗はそれを回避した。

 

「慣れていますね」

 

即座にルシエルは敵が手練れのそれであると把握するとすぐに新しいタンデム弾頭を装填して発射する。




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