TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#373

路地裏を抜け出して顔を見せに来た少女にスフェーン達は途端に表情をしかめた。

 

「丁度良かったですわ!」

 

先ほど広場にてスフェーンを足場にした少女はスフェーンを見かけると、その身なりからして余所者と判断した。

この地域の人間は、大半が直射日光を浴び続けることで肌は黒く焼けて顔のホリも深くなって行く。長い年月をかけて生み出された人類の自然に沿った人類の環境に沿った変化である。

しかし目の前の二人の女性はまず肌が白く、鼻が高い。そして雰囲気がここら辺の人々とは全く違った。

 

「助けてくださいまし!」「「お断りします!」」

 

少女の願いは即座に否決された。

 

「なぜですの?!」

 

愕然とする少女にスフェーン達は冷めた視線で答える。

 

「いや、顔面踏まれてサングラス割られたんで…」

「その身なりで保護って、絶対面倒な事になるんで…」

 

そして二人はほぼ同時にいう。

 

「「勘弁してください」」

「そ、そんなぁ…」

 

無慈悲な返事を聞き、途端にorzをする少女。見た目が明らかにどこぞのカルトで巫女やってます感が強すぎる。

 

「(どうする?これで指名手配だったら?)」

「(バカじゃないの?そんなの逃げる一択でしょうが)」

 

二人は視線を合わせて話すと、項垂れる少女は頭を抱える。

 

「わ、私だってあんな連中と…っ!」

 

その時、路地裏の奥から聞こえてくる。

 

「五人、走ってきている」

「よし、逃げるぞ」

「あっ!」

 

そこで少女を置いて逃げ出そうとした二人に少女はスフェーンの手首を掴んだ。

 

「お待ちなさい!か弱い少女を置いて行くのですか!?」

「誰が好き好んで問題を引き込まなきゃならないんだよ!!」

 

すると裏路地を飛び出した白装束の集団が少女を見つける。

 

「居たぞ!」

「撃て!司祭様からの許可は出ている!」

 

すると直後、白装束の集団は持っていた拳銃や小銃を持ち出すと少女に向かって発砲した。

 

「きゃっ!」

 

そして銃弾が少女の側に着弾して地面が穿たれる。

 

「は?」

「…嘘〜」

 

するとそれを見たスフェーン達は軽く唖然となった後に少女の肩を持った。

 

「ちょいちょい」

「?」

 

肩を掴まれた少女はスフェーンを見て首を傾げる。

 

「失礼」

「ぐえっ?!」

 

その直後に少女は首元に腕を回されて締め技を喰らいながらぐわっと体を持ち上げられると、そのまま歩道を走り出す。

 

「うぉおおっ!」

「逃げろ逃げろ〜」

 

そしてすぐさま時速六〇キロまで速度を上げて逃げ始めると、それに驚愕をしつつもすぐに対応をする白装束達。持っていた銃を路上で発砲するのは流石に控えたのだろうが、いきなり路地裏から出てきた白装束の集団を見て他の民衆は何事かと首を傾げた。そして銃を持っている事実に警戒感を表し、外で遊んでいた子供は母親によって家の中に押し込まれていた。

 

「貴女、サイボーグでしたの?」

「そんなもん…よっ!」

 

すると目の前のゴミ箱を踏み台に建物の上に飛び上がる。ここら辺の建物は大抵が三・四階建ての建物ばかり。なので簡単にスフェーン達も屋根の上に登った。

そして一旦屋根で首締めを解いて俵担ぎに変えるスフェーン。

 

「すごい事になってまぁ」

「なにわろてんねん。クソ猫」

 

そして同じ屋根に登ったサダミにスフェーンは突っ込む。その時の彼女の顔というのは面白いものを見つけて興味津々の猫そのもの。

スフェーンのかつての経験上、こう言う藪蛇案件をしてきたのはサダミだと認識している。

 

「いやぁ?」

 

ニヤニヤと笑うサダミにスフェーンは少々の苛立ちを覚えたが、空気中のパチッと言う音と共にその感情は霧散する。

 

「来る」

「はいはい」

 

直後、静電気ほどの爆発音がする。

 

「ひっ?!」

 

その音に少女は一瞬怯えて耳を塞ぐ。

 

「安心しな。この濃度じゃあ死なない!」

 

そこでスフェーンは建物の間を飛び越える。下には人が通過する道路があり、一部の人以外に飛び越えた事実は気づかれない。

そして基本的に街や都市というのは空間エーテル濃度が低い場所に作られることが多い。

この街の空間エーテル濃度というのは都市のような十分な換気装置がないので高めではあるが、異能を使う上では弱い。

 

「え?じゃあ異能の事は…」

「昔っから知ってるさ。娘っ子」

 

スフェーンはそう言うとそこでサダミに言う。

 

「足止めできる?」

「もちろん」

 

そこで頼まれたサダミは意気揚々と拳銃を取り出すと追いかけてきた白装束に向けて発砲をする。

 

「っ!?」

 

すると正確に発射された拳銃弾を白装束の集団は体を動かして避ける。

 

「すっげ、どんな人工筋肉積んでるの?」

 

その回避行動を見てサダミは苦笑する。確実に関節が逆に曲がっている上に、筋肉が膨らんだのを見ていたのでサイボーグである事は理解したが、見たことのない足回りをしていた。

 

「…」

「返答は無し…か。連れないねぇ君たち。酒の席絶対つまらないでしょ?」

 

サダミはそう言い相対する五名の白装束を見る。片手には拳銃を握っており、ズボンのポケットの予備弾倉を確認する。

 

「…貴様、何故邪魔をする?」

 

その時、一人からそんな質問をされた。その問いにサダミは笑って答える。

 

「簡単。子供を殺そうとしたから。私たちは子供にどうしても甘くなってしまう性格でね」

 

やれやれ困った性格だよ、とわざとらしく苦笑して言う。すると先程聞いた一人から言われる。

 

「奴は呪われた子だ。余所者は知らないだろうがな」

「ふむ…呪われたねぇ?例えばどんな?」

 

そこでサダミは銃をホルスターにしまう。それで敵意がないことを示すと、白装束の集団は銃を持って言う。

 

「余所者に関係無い」

「教えてくれたら、あの子供を渡すかもよ〜?」

 

サダミはそう言うと、白装束の集団は銃口を向けて引き金を引いた。

 

「なっ…!?」

 

有無を言わさずに発砲したが、その弾頭は空中で衝撃波と共に停止してしまう。

 

「あちっ」

 

そして空中で止まった弾頭に触れて軽く火傷をするサダミ。

 

「お前…不老者か?!」

「あら、バレた?」

 

そこでニヤリと笑うと、彼女は片手にバチバチと先ほどとは格別に威力のある電気の奔流を感じる。

 

「じゃあ死んでくれ」

 

その直後、サダミは戦闘的な笑みを見せると建物を破壊する勢いで電撃を落とした。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「君ってさ、やっぱり好戦的過ぎるだと思うんだ」

「心外な」

 

スフェーンに指摘をされてすぐに反論するサダミ、二人がいる場所はジェヴェル・ムーサ郊外のバー。先ほどの白装束の連中から逃げ出して市内の人目につかない場所に逃げ込んでいた。

 

「しかし、流石に子供相手容赦が無かった…」

「不老者の可能性は?」

「無いの分かって聞いてる?」

「…そうだが、もしもの場合がある」

 

サダミは言うと、スフェーンは少し笑って言う。

 

「君はもう慣れている。少なくともその体にはね」

「…」

 

彼女はそう言うと、そこで隣を見る。

 

「んん〜、美味しいですわね。これなんと言う料理ですの?」

 

そこには白いベールを被った明らかにそう言う重要ポジにいそうな少女がレバーサンドイッチを食べて満足げに平らげていた。

 

「で、どうするよこれ?」

「着替えは私のを使わせるしかあるまい…この町でこれは目立ち過ぎる」

「え?連れて行くの?」

「じゃなきゃ殺されるぞ。これ」

 

スフェーンとサダミはそう話していると、挟まれた少女は聞いていたのか首を傾げて見ている。

 

「先ほどはご苦労をおかけしましたわ」

「あー…」「うん…」

 

そこで明らかに世間知らずが滲み出ている様子のこの少女。

 

「君、名前は?」

「むっ、私の名前を知りたいと言うのですか?なんと無礼な!」

「「…」」

 

その時、二人は同時に思った。『うわぁ、面倒臭』と。

 

「…お二方、顔に出ていますよ」

「ん?」「はて?」

 

二人は惚けると、少女はそんな二人に少々不満に思いながらも食べ終えた包み紙を置いて言う。

 

「こほん。まあ、私を連れてきた褒美として真名をお教えいたしましょう。ありがたく思うことです」

 

少女は前置きで言うと、自己紹介をする。

 

「私の名はアンナ・パトリシア。偉大なる教祖が見出した異能の申し子である!」

「「…」」

 

自己紹介を聞き、スフェーンとサダミはお互いに顔を見合わせ、そして再びアンナを見る。

 

「な、なんですのその眼差し…」

 

その視線はただただ哀れみのような優しい眼差しをしており、アンナはそれが逆に不気味だった。

 

「いや…」

「その…色々と苦労したんだろうなぁって」

「っ!ぶ、無礼者め!」

 

何故か優しい眼差しを向けたと言うのに無礼者と言われ、スフェーン達は失笑をする。

 

「無礼って…」

「と言うかアンナちゃん。お金はあるのかい?」

「お金…?」

 

そこで聞かれ、アンナは首を傾げる。

普通、世間一般では外で食物を食べたら金を払うと言うのは子供でも知っている常識である。しかし目の前のこのアンナは、それを純粋に知らない…あるいは金そのものを知らないといった純粋な疑問符を浮かべていた。

 

『もしかして…』

『本当に知らない。と言うことですか?』

「(こりゃ…やばいな)」

「(だいぶ重傷…)」

 

四人は苦笑して表情がやや引き攣りながらアンナを見る。

 

「?」

 

そんないきなり苦笑し出した二人に疑問に思う彼女は、どうしたのだろうかと思っていた。

するとスフェーンが財布を取り出して説明を始める。

 

「良いかい?アンナちゃん」

 

そこで彼女は硬貨を机の上に一枚ずつ置いていく。

 

「これはお金というものだ」

「おかね?どういう時ですの?」

 

彼女は聞いてきたのでサダミが字を教えると頷いて理解をした様子を見せる。どうやら字の教育は受けてきたらしい。

 

「これはウィール通貨と言って、世界的に使われているお金だ」

 

そう言い、そこで順々に通貨を置いていく。

 

「これは一輪通貨、これは五輪通貨、一〇輪、五〇輪、一〇〇輪、五〇〇輪通貨だ」

「ほうほう。これがおかねですか…」

 

そこで彼女は並べられた輪硬貨を見る。

 

「これ、触ってもよろしいかしら?」

「どうぞ」

 

そして許諾を得てから彼女は一〇〇輪硬貨を手に取る。

 

「…このコインはどう使うのです?」

「それを使って色々なモノを買うの」

「なるほど…買う、と言うのは?」

 

アンナは次々と質問をしてくるので、その対応にスフェーンとサダミ淡々と答えていく。

 

「こう言うお金を使ってモノを交換。この場合では『取引』と呼ばれる行為を指す」

「取引…?」

「一般的には『お会計』と呼んでいる」

「…面倒くさいですわね」

 

説明を受け、アンナは一言溢すとスフェーン達は同じことを思った。

 

「「(面倒なのこっちよ!)」」




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