テーブルに並べた輪硬貨を見てスフェーンとサダミはアンナに教えていた。
「なるほど。これを使えば、色々と買うことができるのですね!」
説明を聞き、アンナは硬貨を見つめて目を輝かせていた。そしてそれを見てスフェーンとサダミは思う。
「「(いや、飲み込み早くない?)」」
そこで二人は教えて十分でお金や支払ということに理解を示した彼女に驚きを隠せなかった。
『アンナ脅威の飲み込み』
『ジ○ン脅威の技術。みたいな言い方ですね』
ルシエルにシエロが突っ込むと、二人はアンナ・パトリシアの顔を見て検索をかける。
『スフェーン、サダミ。彼女はインプラントチップが確認できません』
「(無記載児か…)」
「(典型的な毒親体質で育てられてきてんじゃん)」
基本的にこのトラオムに於いて、基本的人権の認識がある場合はどのような生まれであろうとインプラントチップを入れるのが当たり前である。義務とかというのではなく、習慣法の一つとして法律に記載されていなくともインプラントチップの埋め込みは行われる。それが自然分娩であれ、帝王切開であれ、人口子宮生まれであれ、クローンであれ。必ず産まれてきた生命に装着しなければならないモノである。
しかし、世の中にはそうしたインプラントチップを埋め込まない子供というのは一定数いる。そう言った子供達は一般的に無記載児と呼ばれている。
例えば、産みたくなくて生まれてしまった子供。
例えば、産まれた後のことはどうだって良いと思われている子供。
例えば、その存在を隠しておきたい子供。
こうした碌でもない理由で一定数インプラントチップを埋め込まれない子供というのはいる。実にくだらないが、産まれてきた子供というのはとても非力な存在である。少なくとも国連軍が提示するネグレクトの規定の中にインプラントチップの未装着が記されている。
今の時代、技術が進んだことで大人になってもインプラントチップを手術なしで埋め込む技術が誕生している。実に素晴らしい技術であるし、スフェーンも一株主として出資したことがある。
「これで大きな建物も買えるのですね」
「はははっ、この額じゃあ無理ね」
そこでスフェーンはアンナに笑うと、財布からポリマー紙幣を取り出す。
「そういう建物を買うのなら、こっちのウィール紙幣が幾万枚も必要になる」
「うぃーるしへい?」
「これよ」
そこで硬貨の上に一枚ずつ紙幣を並べていく。
「さっきと同じでこれが一ウィール紙幣、五ウィール、一〇ウィール…」
「五〇うぃーるに、一〇〇うぃーるですの?」
「そう」
そこでポリマー紙幣を見てアンナは数回頷いて理解する。
「じゃあこのコインとは何が違うんですの?」
「簡単よ?この一ウィールが一〇〇〇輪と同じ価値があるの」
「っ!なるほど!」
彼女はそこですぐに五ウィール紙幣を見て聞く。
「では、この五ウィールは五〇〇〇輪。一〇ウィールは一万輪。五〇ウィールは五万、一〇〇ウィールは一〇万輪ということですわね?」
「そゆこと。理解が早いね〜」
スフェーンはアンナを見て手を伸ばすと一瞬驚いたが、頭を撫でられたので少し緊張しながらスフェーンを見た。
「ではどうしてこの硬貨のように五〇〇ウィールはないのでしょうか?」
彼女はそう言い、硬貨と並べて置いてある紙幣を見て首を傾げた。その疑問にはサダミが答える。
「五〇〇ウィール紙幣は一般的には流通していないからだ」
「りゅうつう…していない?何故ですの?」
彼女はそこで一瞬金の流通に関しての理解がわからなかったが、話を続けたいので少し曖昧に聞き返す。
「流通というのはそのお金がどれだけ私たちが使うかという意味だ。まあ簡単に言うと五〇〇ウィールと言うのは輪に直しただけでも五〇万輪になる。一般的に私たちがそれだけのお金を持ち歩かない」
値段を聞き、アンナは首を傾げる。
「五〇万輪は…一体どのくらいのお金なのでしょう?」
「君が今つけているネックレスぐらいの値段かな」
『ハンバーガーが、四個分くらいかな?』の言い方でスフェーンはアンナが身につけているネックレスを見る。そのネックレスを画像検索にかけると六五ウィール。この前値上がりをしたのだが、値上がり前の値段でも五八ウィール。大層なものつけているよ、さすが自称異能の申し子。
「なるほど!」
わかりやすい指標を聞いてアンナは理解した表情を浮かべる。
「五〇ウィール紙幣は大きな金額。だから基本的に国家予算などでしか大規模に使われない。政府や企業などの大きな組織でしか出回っていない紙幣だ。偶に使っている人は見るが、まあ大体はお金持ちのいる店でしか見ないな」
サダミは五〇ウィール紙幣の解説を終えると、それを聞いていたアンナは何度も頷いて理解していた。
「なるほど。では五〇ウィール紙幣は市井では滅多に使われることのないお金ということですね?」
「そう」
その内心で飲み込みが早いなと思った。サダミはこの体をもらってからというもの、以前の孤児院ほどではないが数名の孤児を拾って育ててきた。
そんな子供達の中でも彼女は別格に頭の周りとに見込みが早いと思った。
ただの世間知らずで、毒親育ちの無記載児かと思ったが、彼女は一定以上の教育を受けているのかもしれない。そしてスフェーンが紙幣と硬貨を片付ける中、サダミは首を傾げる。
「(じゃあ何故呪いの子などと?)」
「(複雑な事情があるんでしょう?多分)」
スフェーンがサダミの疑問に答えると、アンナはスフェーン達を見て言う。
基本的に無記載児というのはさっきの三つの理由でインプラントチップを埋め込まない場合が多数だ。しかし彼女は十分な教育を受けて育っており、望まれて育った可能性があった。とすると、彼女は隠す理由があってインプラントチップを埋めなかったのかもしれない。
「お金があれば何でもできるのですね?」
「まあ、極端な資本主義ならね」
「?」
「詳しい話は、今の君にはわからないから。大きくなったら教えてもらえ」
スフェーンはアンナにそう言うと、彼女はそんなスフェーン達に聞く。
「お二方は異能者なのですか?」
彼女はそこでサダミが建物を破壊するほど高威力な落雷を落としたのを見ており、それでサダミが異能者であることを聞いてきた。
「うーん、そんなところかな」
「似たような生き物。と評するべきだな」
「??」
少し曖昧に答えた二人に、アンナはさらに疑問ができた。
そしてスフェーンは一瞬道路を見る。
「さて…」
「お客が来たようだ」
すると唐突に二人はそれぞれ拳銃を取り出す。いきなりの事だったのでアンナは二人が取り出した拳銃に驚愕をすると、間髪入れずにカフェの日除けを貫通して銃弾が飛んできた。
「空気銃?」
「あるいは電磁加速」
そして一才の銃声がしなかった事とこの威力から火薬を使わない銃を使ってきたと判断し、銃弾の入射角度からすぐに発射位置を計算する。
「合流は?」
「二個先」
サダミとアイコンタクトをとると、すぐにサダミは走り出す。
「走るぞ!」
「うえっ」
そしてスフェーンはアンナを担いで一歩遅れて飛び出すと片手で乱射をする。
ッ!ッ!ッ!ッ!
そして乱射をされ、銃声を聞いた他の住民達が驚愕する。即座に銃を仕舞うと、今度は裏路地の方から連続で銃声が鳴り響く。一本裏路地に入ったサダミが建物の壁に向かって乱射したのだ。
「チッ…」
銃撃を受け、建物の上で光学迷彩を展開していた狙撃手は舌打ちをして逃げ惑う市民達を見る。
『どうした!?』
「気付かれた!奴ら手練れだ!」
狙撃手はそこで一斉に逃げ惑う市民の群衆に隠れて走るスフェーン達を双眼鏡で見る。
『馬鹿野郎!撃て!』
「しかし…」
『不老者が何だ!奴らは不死身じゃない!』
無線で怒鳴られ、狙撃手は持っていた電磁加速銃に銃弾を装填してからスコープで覗き込む。
「…くそっ」
そしてスコープで固定して銃を見るが、群衆の波は簡単にスフェーン達の行方をくらませた。
「へへっ、やっぱり撃ってこないか」
「市民を巻き添えにできないようだ」
合流したスフェーンとサダミはそう話して傍に抱えた少女を見る。
「一体、何なんですの?!」
「追手だよ。君を殺しに来た」
「っ…!!」
冷淡にスフェーンから言われ、途端にアンナは目を見開いた。
「連中、私たちが表通りに逃げ出してから一発も撃たなかった。実際、今のも音の出ない銃を持ち込んでの狙撃だ」
「奴ら、市民には傷つけられないのさ。だから銃声で民衆を戸惑わせて逃げる」
「はっ、甘いね。普通のカルトなら表でも撃ってる」
スフェーンは笑っていうと、アンナは淡々と解析をしていた二人に驚愕をして見上げる。
現在、表通りから一本裏の家々が並ぶ路地裏を走る二人はそこでアンナの服を見る。
「ふぅ、しかしどうする?」
「着替え?…仕方ない」
そこでサダミは路地裏に干されていた洗濯物を拝借してアンナに服を脱がせる。
「わ、私にこんな服を着せるの気ですの?!」
アンナはその服が何度も着古された服であると理解し、差し出されたのを拒んだ。
そもそも窃盗をしている時点で突っ込むべきなのだが、先ほどの会話から会計すら知らない時点で多分そういう倫理観に関する云々を知らないんだろうと長年の経験で推察していた。
「嫌ですわ!」
「ほれ、バンザイしないと」
「どうして私がこのような服を着なければならないのですか!?」
アンナは文句をブー垂れるとそこで待ちきれないサダミが一言。
「着替えなきゃ、君は死ぬぞ」
「っ…」
元傭兵と言うべきか、命の取捨選択が隣で寝ていた空間に身を置いていた人間の冷酷な言葉が容赦無く子供に突き立てられた。
「ほら、分かったら着替える」
「…」
サダミの一括でアンナは顔を青くしてから修道服を脱いでいく。
「ぜ、全部脱ぐのですの?」
「ええ」
「…」
すぐに頷かれ、アンナは被っていたベールを名残惜しそうにしていた。すると見ていたスフェーンが言った。
「装飾品とベールはポケットの中に突っ込んでおきなさい」
「っ!…はい」
アンナは言われ、少し嬉しげに頷くとベールを折りたたんで拝借した服のズボンのポケットに放り込んだ。
そして簡単に着替えて少女を見てスフェーンは化粧が乗っているから違和感があると思いながらも、彼女を再び俵持ちして表通りに出る。
「よっしゃ。このまま一旦家まで退避じゃ」
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