その時、都市郊外の山々の中にある地下空間。
長年による侵食で生まれた鍾乳洞では、とある悪魔崇拝を行う教団が総本山として使用していた。
「…」
全員が頭ですっぽりと白いカピロテで覆われた集団が片手に松明を持っており、中央に用意された祭壇に一斉に火のついた松明を差し込む。
彼らの足元にはサイボーグの循環液と人工血液で塗られた魔法陣が祭壇を中心に描かれ、祭壇には枯れ木が組み上げられていた。
「ーーーー!」
その中で金の刺繍の入った濃紫色のローブを纏った一人が祝詞を捧げて燃え始める祭壇に祈りを捧げる。
祭壇の元の石のベッドの上には心臓をくり抜かれた子供の亡骸が置かれ、そばの聖杯の中に血塗られた心臓が置かれ、信者達の崇拝の対象となっていた。
「…」
信者の中には自動小銃や機関銃を持った信者の姿もあり、大柄な人の姿もあることからそれが重量級サイボーグであると伺える。
よく見れば他にもわずかに信者達の着る服から覗く手は古めかしい、安い擬似皮膚で覆われていない機械の手が見えた。
「…」
その中で一人、白い衣装に金の刺繍がされた一人の少女が呆然と装飾された椅子に座り込んでいた。彼女は逃亡し、今も捜索が続けられている先代巫女の代替で今回の儀式に参加していた。彼女はこの時間で、尚且つまだ子供であったので眠気が優っていた。
「…では、これより巫女による召喚の儀式を執り行う」
濃紫色のローブの男が高らかに宣言をすると、少女は手筈通りに祭壇の前に立って両手を合わせて呪文を唱えようとした時、
ッーーーー!!
「「「「「っ!?」」」」」
その瞬間、祭壇の空間に爆炎が広がり、数名の巡礼者が巻き込まれる。対人榴弾の爆発は容赦無く散らばって複数の信者達を殺傷した。
「ひっ!?」
するとその後に連続して爆発が起こり、それに白装束の信者達は一斉に動揺して逃げ惑う。
「何!?」
「爆発だ!」
「攻撃されてる!!」
そこで戸惑う信者達を見てそれを見ていた一人が呟く。
「よし。じゃあ始めようか」
「了解」
少女は短く頷くと、獣人用のヘッドホンに『F・E・A・R』をかける。そして音楽の拍子に合わせてスニーカーを軽くコンコンと靴底を叩くと、隠れていた影から飛び出す。
「んじゃ、私も…」
そこでスフェーンはつけていたヘッドセットから『Oh, Pretty Woman』をかける。
彼女の瞳は
「なぜその選曲ですか」
すると呆れたように横でルシエルが手元に手繰り寄せた同様の無反動砲のレバーを開いて尾栓を開けると、中から真鍮製の無数の穴の空いた薬莢が排出されて新しいクロムスキット式特有の105mm砲弾を装填する。
「いやぁ、ジュリア・ロバーツみたいに可愛い子ってこう言うところにいないかなって」
「なんですか、その『年下の若い子に興味津々のマダム』みたいな…」
「年齢的に言ったらババアすぎるんですが?」
スフェーンは笑って聞くと、そこで歌を提案する。
「じゃあ『Beat it』にでもする?」
「その分じゃあ、サダミさんを置いて逃げることになりそうですよ」
そう言いながら装填を終えた無反動砲を異能で飛ばして鍾乳洞に砲撃を叩き込む。
「砲が浮いてる?!」
「異能者だ!」
すぐに信者は攻撃をしたのが異能によるものだと把握すると、銃を持っていた信者が無反動砲の強烈なバックブラストで露呈したスフェーン達に向かって発砲をする。
「ひー、怖」
そこで余裕げに隠れて銃撃をやり過ごすと、直後に連続した軽い拳銃弾の音が洞窟に響き渡る。
「ぎゃぁあっ!!」
その直後、銃を持っていた両腕を切り落とされ、血をドバドバと垂れ流す銃を持った信者。その眼前には盾が突き立てられ、信者の純白の聖職服を赤く染め上げていく。
「ふふふ…おもろそ」
サダミの持つ盾で顔面を潰された信者を見てスフェーンは呟くと、
時は少し戻り、スフェーン達はアンナの記憶を頼りに悪魔崇拝をしていると言う宗教団体の施設が見える場所まで進出していた。
「あれか…」
そして市外近くの山間の建物、一般的な雑居ビルの様相の建物を見る。漆喰で塗り固められたその施設は、頑丈そうな見た目をしていた。
「ケッ、ゴシック様式じゃないのか」
「余所じゃあできない事しかしてい無いからじゃないのか?」
そこですでにルシエルとシエロが検索を行ったことで仕入れた情報を眺める。そしてその情報を見て改めてため息を吐いていた。
「どうせならルネッサンスくらい豪華に作って欲しいものだよ」
スフェーンはそう言いながら岩陰に隠れて銃を向ける。
「二人?」
「無理があろうとございます」
スフェーンは即答すると、そこで着ていたムートンジャケットを脱ぎ、タンプトップになったのを見てサダミは慌てて顔を背ける。
「…終わったら教えて」
「はいよ」
そこでタンクトップも脱ぐと、上裸になった彼女はそのまま地面に膝立ちをすると。
「よいしょ」
彼女の背中がありえないほど浮き上がり、顔の窪みが作られ、背中から次第に顔、肩、腕と次第に体が形作られ、それに合わせて灰色の長髪も急速に伸びてくる。
「よっと…」
そして背中から這い出てくるようにルシエルは体を作ると、足先まで素っ裸で完成した肉体が現れる。そして髪も灰色の長髪までしっかり毛先まで完璧に整えられた美しい裸体の少女が横たわっていた。
「終わった?」
「着替えるだけです」
ルシエルがそう言ったのでサダミはそこでスフェーン達を見ると、そこでは脱いだ服を着替え直す二人の姿があった。
普通ならヌーディストビーチに行ってこいとか冗談めいていう場合が多いが、こればかりは音もなく。某溶鉱炉に落ちた液体金属人間を彷彿とさせるような分離のため、過去にそれを何も聞かれずに見てしまったサダミはトラウマになっていた。
「だから一言言いなさいよ!」
ルシエルが着替え終わる間、思わずサダミはそう言って叫んでしまうと、スフェーンは笑って返す。
「どうだい?カウボーイハットでも被ろうか?」
「だったらアイツらにウェスタン・ラリアットでも食らわせてやれ!ったく…」
サダミは呆れてため息を吐いて眼鏡の望遠を使って施設の警備状況を監視する。
「ウィー!って?」
すると隣で着替え終えたスフェーンが見慣れないゴーグルを付けて隣に立つと、サダミはそのARゴーグルに見覚えがなかった。
「え?何それ」
「前々から欲しかった軍用ゴーグル。いい機会だと思ってさっき買った」
「あぁ…え?売ってたの?」
サダミが聞くと彼女は頷いた。
このゴーグルは軍用のもので、暗視装置はもちろん、レーザー測距、赤外線照射、望遠、撮影、通信、弾道計算etc …と言った日常生活から戦闘までマルチロールでこなせる軍用ゴーグルの最新版であった。
「そう、ベンガミーノ・アームズ社製最新モデルよ?最新電磁装甲と複合装甲の外板だから頑丈だし」
「また高そうな…ローン?」
「一括に決まってんじゃん」
「…はぁ」
サダミは呆れて言葉が出なかった。しばらく飯無し生活が確定した瞬間であった。
「さっさと始めましょうか」
すると着替え終わったルシエルが言ったので、三人は己の望遠機能を使って雑居ビルを見た。
「人数は?」
「人感センサーに反応なし」
「中にいるのかな。用心棒とかもいなさそう」
そこで建物の近くのインターネット通信の有無の確認をしてから移動をする。
「「「…」」」
建物自体は山間にあるThe雑居ビル感がすごく、人のいる気配は何もなかった。
「…え?誰もいないの?」
「ここまでくると逆に不気味ですけどね…」
そう言いつつも建物のドアに手を触れると、なんと鍵がかかっていなかった。
「従業員用を選んだけど…」
そして不気味なほどに静かなビルの扉の前で三人は座り込んで話す。
「え?本当にあってる?」
『調べ直します』
そこですぐにシエロがアンナの記憶情報を再整理し、悪魔崇拝をする宗教団体につながる経路のマッピングをすぐに行う。
「…建物は合っています。間違いないと思います」
スフェーンの隣でルシエルはこの建物の建設記録を調べる。幸いにもこの宗教団体は、この国の警察組織と積極する前はこの国の諜報機関に調べられている痕跡があり、その際の捜査資料が残されていた。ハッキング対策は、彼女達にとってみればあって無いようなものであった。
「施工資料によると、この施設の地下に洞窟につながる場所があるようです」
「で、今の時間は祝詞をあげている時間だから来た訳だけど…」
そこでスフェーンは改めて建物を見上げる。彼女達はとある個人的な理由でこの宗教組織に殴り込みをかけに来ており、その時点でまずまともな思考回路はどこかに捨てられていた。
「…行きますか」
「え?無鉄砲に?」
サダミがスフェーンの呟きに驚くと、彼女は言う。
「正面から行けば、向こうだって驚きそうじゃない?」
「…絶対、向こうは対策をしていると思われ」
「あまりお勧めはしません」
『ですが、資料によればここに専用の防御施設はなさそうです』
そこでシエロが計算を行い、多くの予測を作ってから結論を出した。
『最後まで隠密に行動できれば、スフェーンの提案は成功します』
「逆にそれでOKなのか…」
サダミはあまりにもお粗末な向こう側の警備体制に呆れる。まあだから今回の襲撃にも参加したのだが…。
「で、行く?」
銃を肩に傾けていた彼女は聞くと、サダミはため息をついて盾と
暗闇の廊下を二人の白装束、頭のカピロテを被らない信者達が巡回のために入り口となる雑居ビル風の事務所で休憩をしていると、
「うごっ!」
「がっ!?」
勢いよく後頭部を殴られ、そのまま施設の壁に殴りつけられた二人は脳髄が弾けて循環液と血液が勢い良く散らばる。
彼らの背中にはスフェーンとルシエルが立っており、彼女達は
「うわぁ…」
それを見たルシエルが思わず溢すほどにはスプラッタな殺人現場が出来上がっていた。
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