TS若返り傭兵は旅をする   作:Aa_おにぎり

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#380

「ウィ〜」

 

血で染まった結晶体を引き抜いて返り血を顔に浴びたスフェーンは満足げに笑みを浮かべる。

 

「こんなテキサスの暴れん坊は嫌なんですけど」

 

その隣でサダミがややジト目を向けてスフェーンに言う。彼女はプロレスが好きなので少々表情を顰めていた。

 

「で、無事に黒い袋(遺体袋)行きとなった訳ですが…」

 

ルシエルはそこで血濡れた二人から物品を漁ると、中から鍵を見つける。

 

「これは?」

「古いピンシリンダーキーですね」

「うん、ちょっとお待ち」

 

そこですぐにスフェーンが今さっき潰した二人の頭、正確には脳幹に手を触れる。

 

「…」

 

サイボーグであった彼らの記憶を読み取ると、ぬちゃっと生肉の音を立てる。彼女にとってサイボーグの記憶の読み取りは簡単に可能である。

 

「武器庫の鍵だな」

「え?マジ?」

 

記憶を頼りにスフェーンは鍵の正体を口にすると、サダミは驚いてスフェーンを見る。

 

「らしいよ。場所も調べた」

 

彼女は全ての情報を読み取ると、血濡れた遺体から手を引き抜く。

 

「行ってみる?」

「もちろん」

「ええ」

 

そして鍵を持って三人は洞窟に向かう。

 

「この先?」

「ええ…ここね」

 

そこで洞窟の入り口のまだコンクリートで塗り固められた場所にあった一つの扉の前で三人は拝借した鍵を使って中に入る。

 

「しかし…気味が悪いくらいエーテル濃度が低いな」

「確かに…」

 

そこでサダミが言うと、ルシエルが頷く。

 

「まるで大都市の中心部にいる様なほど、この空間はエーテル濃度がほぼゼロですね」

「異能者対策でしょ」

 

スフェーンは本来であればエーテルが貯まっているようなこの空間でエーテル濃度が低い理由を適当に返すと、鍵を使ってドアを開ける。

その時、すでに彼女の手元に血液は一切見当たらない。

 

「おぉ〜」

 

ドアに検知装置がないことも把握しており、遠慮なく武器が積んである部屋に入る。念の為、ドアを閉めてから部屋の薄暗い非常用電灯がついている武器庫を見る。

 

「スンゲェ」

 

そして中に積まれてあった武装を見て思わず溢す。

 

「重火器ばっかりだ」

 

そこには大量の武器が用意されており、管理する人間すらいない有様だった。

 

「管理が杜撰すぎる…流石に傭兵団でもここまでひどくはないぞ」

 

それを見て思わずサダミが言ってしまう。普段から武器の取り扱いを頻繁に行う、管理の少々粗雑な傭兵団でも武器庫の前には必ず一人監視人をつけているのが当たり前であった。

 

「あんまり表沙汰にできないんじゃない?大半が軍の横流し品だから」

 

スフェーンはまた適当な理由を推察して武器庫を一通り見る。

だが一つ言うと、彼女達が最初に始末した二人。彼らがこの武器庫の管理者であった。

確かに教団側も軍の横流し品で武装をしている事実を拡散させないために、必要な人員を最小限に抑えていたが、その最小限に抑えていた管理人をまとめて始末させられた運の無さもあった。

 

「なるほど…」

 

そんな教団側の運の無さを知る由もなくスフェーン達は武器庫に積まれていた武器を見る。

 

「これは使える」

 

そこでサダミがある武器を取り出して言う。

 

「?」

「ほら」

 

そして何を見つけたかと疑問に思うと、サダミがそれを渡してきたのでスフェーンは面食らった。

 

「うわぁっ!?」

 

慌ててその極太長身の砲身を持って倒れかけるところを足にブーストをかけて耐える。

 

「おっも!」

「ん?ナニコレ?」

 

スフェーンは投げられたそれに悲鳴をあげ、ルシエルは単純に疑問に思った。すると投げつけたサダミがその正体を言う。

 

「M40無反動砲だ」

「は?」「え?」

 

そこで二人は同時に驚愕して彼女を見る。なんとこの女、スフェーンに片手で無反動砲を投げてきやがったのだ。

 

「これがあと五本ある」

「…まさか」

 

その時、サダミの邪悪な笑みに包まれたイイ顔を前に二人の脳裏に嫌な予感が走る。

 

「コレなら敵は一網打尽だ」

「馬鹿じゃないの?」

 

そしてこのクソ猫、襲撃に無反動砲を使おうと提案してきた。まともな人間ならアホかと答えるだろう。

 

「まともに扱えると思う?」

「私達だ。いけるだろう」

「えぇ…(ドン引き)」

 

流石にこの提案にはルシエルも引いてしまった。コイツの立てる作戦というのはたまにこういうぶっ飛んだ事を提案してきやがる。

見た目が大人しい文系草食系女子を演じているが故に初見では想像がつかないかもしれないが、いつもの面々の中で一番血生臭い好戦的な性格をしている。

 

「アホじゃないのか?こいつは三脚込みで二〇〇キロ以上あるんだぞ?肩に背負えってか!?」

「能力」

「人間は90mm以上の口径の武器を肩に担げないの。大体これの全長、約三.四メートル」

 

そこで扉を見る。ドアは小さく、明らかにこの長い砲身が簡単に運び出せるとは思えなかった。

 

「アザゼル」

「このほぼゼロの濃度で?」

「スプレー」

 

異能が全くと言って良いほど使えないこの環境でそもそもコレだけの重量物を運べない。

確かに、以前にオートマトン用の30mm自動小銃を能力(アザゼル)でファ○ネルの如く運用した実績はあったが、あれは空間エーテルの濃度の高い場所だからできた芸当であった。

 

「弾薬も必要です」

「頼んだ」

 

ルシエルもスフェーンの肩を持つ。無反動砲はその特性上、一発発射すれば発射位置が露呈して攻撃を受ける。その為、基本的な運用はスポッティングライフルにて照準をあらかじめ定めておき、複数の発射地点から一斉に同一目標に向かって撃つのが基本であった。

 

「大体、コレってオートマトンに乗せる前提じゃん…」

「改造されている。多分、重量級サイボーグに使わせる想定だろう」

 

指摘をされ、スフェーン達は無反動砲を見ると、そこには57mm無反動砲(M18)のようなグリップ式の引き金が装着されていた。

 

「二〇〇キロ以上の重量物を担ぐ?」

「できますが、ほぼ動けない砲台ですね」

 

直ぐにスフェーンとルシエルはコレほどの重量物であれば、たとえ重量級サイボーグであっても満足な移動が不可能になり、直ぐに発射地点の移動を必要とする無反動砲の欠点が悪化すると理解できた。

 

「さ、行くぞ。早くしないと祭事が終わる」

 

そうと決まればの勢いで手短の弾薬箱を手に持って武器庫を出るサダミ。

 

「待て待て待て」

 

そこでスフェーンが真顔でサダミを止めに入る。

 

「え?マジで行く?」

「じゃなきゃ、この人数は相手取れない」

「…」

 

サダミはそこでスフェーンに言うと、彼女は今までの経験上からそれが事実であると分かっていた。

アンナの記憶で見たこの教団の人数というのは、とても三人で対応するには手が余ることは予想していた。

 

「…首だけは?」

「できるとでも?」

 

スフェーンは教団幹部と教祖の殺害を提案するが、予想される敵戦力からして的確に抹殺することはできないとすでに分かっていた。

 

「はぁ…スフェーン。腹を括りましょう」

「…仕方ないか」

 

ルシエルももはや余地はないとして、スフェーンも諦める。彼女は腰から一本のスプレー缶を取り出すと、軽く振ってからアクチュエーターを押し込んで中身のエーテルを霧状にして吐き出す。コレによって異能を使うことのできる濃度までエーテルを散布できる。

 

「この空間で足りると思う?」

「最悪、スフェーンが放出してくれ」

「やれやれ…」

 

サダミは躊躇なく言ったので、思わず言ってしまう。

 

「コレならさっき喰っておけばよかった…」

「この先で死ぬほど充填できるぞ」

 

彼女はそう言うと部屋を出る。そして先に出て行ったサダミを追う様にスフェーンは小さくため息を吐く。

 

「…行きますか」

「ですね。行きましょう」

 

そこでルシエルも弾薬箱を持つと、スフェーンが言う。

 

「ちょっとお待ち」

 

そこで彼女は無反動砲に触れ、その後にゆっくりと横に倒すと、少々不安定ながらも無反動砲がまるで無重力空間のように浮かんでおり、直ぐにスフェーンは尾栓を開けて中に砲弾を詰める。

 

「そんな撃てないから。詰めていきましょ」

「わかりました」

 

ルシエルも頷くと、弾薬箱を開けて中の砲弾に信管を装備してから薬室に砲弾を一本ずつ装填していく。

 

「コレがあと五本?」

「全部で六門です。直ぐに終わりますよ」

 

そして残り五門の無反動砲に105mmの砲弾を装填し終えると、その後に部屋を後にした。

 

「準備は?」

「終わった。いつでも?」

 

部屋の外ではサダミが待っており、彼女は両脇に三門ずつ無反動砲を備えており、それだけで彼女がいかに異常かが伺えた。

 

「…オントス?」

「自走無反動砲かっちゅーの」

 

スフェーンはもはや諦めた表情で堂々としており、そのまま鍾乳洞を歩く。

 

「因みにですが、皆殺しですか?」

「子供以外はね」

 

移動する途中、スフェーンはルシエルの問いに当たり前の様に答えた。

 

「生憎、子供は殺さない主義なの」

 

そこで手に入れた無反動砲を宙に浮かべて装填済みの無反動砲に取り付けられたスポッティングライフルの排莢を行う。

 

「ちなみに聞くが、対象年齢は?」

「小学六年生まで」

 

サダミの質問に彼女はそう答えると、両手に対戦車ライフルを持つ。今回は不必要なバイポッドや防楯を取り払ってきているのでさっぱりした外見となっていた。

 

「さて、行こうか」

 

スフェーンはそう言うと、二人は頷いて前を見た。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「で、見事にうまく行っちゃったよ…」

 

スフェーンは苦笑気味に燃え盛る祭壇の石碑の上に立って苦笑する。

 

「うわぁあ!」

「ぎゃぁぁああああ!!」

 

眼下では阿鼻叫喚が広がり、至る所に血痕が付着。鍾乳洞のこの空間が全体的に鉄と循環液特有の灯油を腐らせたような独特な香りが漂う。

 

「うわぁぁああ!!」

 

一人の信者が持っていた機関銃を乱射するが、それを簡単に黒い影は避けると機関銃を持っていたサイボーグに持っていた短機関銃で発砲。

 

「うおっ!!」

 

すると連続して白い布を貫通して拳銃弾が叩き込まれるが、機能を止めるまでは行かない。

 

「ふんっ!」

 

しかし複数発命中したことでその間に距離を詰めたサダミがそのまま銃剣付きの短機関銃をその信者に突き刺した後に頭をがっしり掴む。

彼女の使っていた盾は、最初に信者に向けて指向性対人地雷(クレイモア)の爆発で幹部らしき赤い聖職服の面々を一網打尽にした後にどこかに捨てていた。

 

「ヒュッ…」

 

その直後、頭をエーテルの結晶体に鷲掴みにされたサダミはニィッと笑みを浮かべた後にその信者の頭を貫通する勢いでエーテルの結晶体を突き出すと、掴んだ手が急速に信者の体を包んだ後に潰された。

 

ガシュ

 

潰された水風船のようにその信者は隙間から血を漏らすと、そのまま食われるように信者を包んだサダミの腕はピストン運動のように動く。

 

「た、助けてぇ!!」

 

そこでその様子を見ていた女性信者は恐慌に満ちた声をあげて出口に向かって一目散に走る。しかし、

 

「ギョッ…!!」

 

祭壇を陣取ったスフェーンによって頭を撃ち抜かれ、頭が弾け飛んで壁に新しいシミを作って出口近くの死体を増やした。




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