「さて、残りは…」
対戦車ライフルを両手にスフェーンは周囲を探る。すでに教団幹部クラスはスフェーン達の無反動砲の攻撃とその後のサダミの地雷攻撃のおかげでその骸を曝け出していた。
彼女は祭壇の石碑の上から逃げ出そうとする信者を背中から撃っており、死体を積み上げていた。
「うぉっと!」
観察をして見ていると、反応を感じて咄嗟の判断で赤い光線を避けると、そのままスフェーンは見下ろしていた祭壇から地面に飛び降りた。
「…」
そこには手のひらがカメラレンズのような球面上のガラス体を有する濃紫色のローブを纏った一人が立っていた。
「何だ、生きていたの」
スフェーンは見当たらないので初手の無反動砲の攻撃で死亡したかと思っていた。
「悪いね。ちょっとお邪魔させてもらったよ」
「…」
そこでスフェーンは一歩踏み出すと、ヌチッと少し粘性のある液体特有の音を足から奏でる。
もともとそう言う構造なのだろう。すっかり祭壇の周りは血と循環液で水たまりのようになっており、もともとあった魔法陣なんてどこかに消えてしまった。
「貴様、不老者か?」
「そうよ」
すると途端にそのサイボーグは目の色を変える。
「…なら生きて帰さん!」
「丁度良い。使えん役人に変わってネグレクトの懲罰に来たんだ」
不敵にスフェーンは笑うと、持っていた対戦車ライフルを祭壇に置かれていた少年の遺体の側に立てかける。くり抜かれた心臓がもの悲しそうに聖杯の中に置かれ、その手に散弾銃が握られる。
「っ!」
そしてその動作の直後にスフェーンは引き金を引くと、放たれた散弾はそのサイボーグの直前で何かに弾かれるように消えた。
「電磁装甲か…」
直ぐにその理由がサイボーグの周りに張られた電磁装甲であると分かると、その直後にそのサイボーグは目の前から消えて直後に体内からロケット弾を発射する。
「よっ、とっ」
直ぐにスフェーンも動いて目を赤色に変えると、右手からエーテル・カノンを発射する。
「おい!危ないでしょうが!!」
すると灼け溶けた鍾乳石を見て残敵処理担当のサダミが叫んだ。
「ゴメーン!気をつけて!あと出口頼んだ!」
「おい!」
広い鍾乳洞の空間でスフェーンの注文に彼女はもう一人を捕食しながら叫んだ。
「ほーい!」
そして散弾銃を乱雑に撃っていると、
「ぎゃあ!」「っ!」
放った散弾の一部が、死体に紛れていた信者に命中をして体の一部分が弾け飛んだりしていた。
「オラオラァ!どこに行ったあ!」
スフェーンは叫ぶと、背中に気配を感じて振り向き様に手を動かす。
「っ!!」
咄嗟に異能の電撃を目の前に放出して威力を殺した後に、持っていた散弾銃で押さえ込んだ後に安全ピンを抜いたお手製手榴弾の安全レバーを外して投げつけると、そのサイボーグは直ぐに後ろに天井からワイヤーで吊られているような動きをして避ける。すると直後に投げつけられていた二つ目の手榴弾に人外の速度で反応をして回避をしようとした。
<回避不能。防御姿勢を取ります>
しかし機械の自己防護システムが働き、電磁装甲の展開と共に顔面を腕で守る仕草を取ると、直後にダイナマイトが起爆。空き缶が裂けて簡易的な破片手榴弾となって襲いかかる。
「…」
スフェーンはすかさず余っていた手榴弾も安全ピンと安全レバーを外して次々と投げつけて追い討ちをかける。
そして最後の一つを残して投げ終えると、そこには濃紫色のローブが燃え尽きた状態で立つサイボーグの姿があった。顔立ちは中性的で、おそらく人間の時から顔を作り替えている。
「(ルシエル、解析頼んだ)」
『おまかせを』
ルシエルは頷くと、そのサイボーグはスフェーンの服装を見てそれが昼間の下手人であると把握する。
「貴様…娘を連れ去った連中か!」
すると擬似皮膚が手榴弾の破片で切り裂かれたそのサイボーグは叫ぶようにスフェーンの顔を見て聞いた。
「連れ去りだぁ?」
その時、スフェーンの表情が歪んだ。
「部下に殺せと指示しておいて親のつもりかぁ!」
その瞬間、スフェーンは足を上げてサイボーグの首をハイキック一発で仕留めようとする。
「そもそも金の概念を教えない親がまともだと思うか!?えぇ?」
そう言い一撃で頭部破壊ができるように金属を仕込んだスニーカーを当てようとしたが、
「うおっ!?」
金属を仕込んだスニーカーが金属を吹き飛ばして粉砕しながら弾かれた。
「うっそ」
その時、スフェーンは驚愕をした。
「顔面にまで電磁装甲かよ!」
「…ふんっ!」
通常では電気容量と、内部への影響の大きさから頭部に電磁装甲を仕込んだサイボーグなんて聞いたことがない。その途端、昔に拳銃弾で貫通しなかった重量級サイボーグの事が脳裏をよぎった。
その直後、そのサイボーグは右腕に仕込んでいたレーザー兵器を展開し、同時に左腕からは電磁加速銃を展開する。
「うぃいいっ!?」
「死ねぇえ!」
サイボーグはスフェーンを照準に定めると、その直後。
ッーーー!!
一発の砲声が轟いて二人の間に黒い影が放り込まれ、咄嗟に二人は逃げ出した。投げたのは石だが、手榴弾と勘違いしての動きだった。
「あっぶねぇ、助かった〜」
そして視線の先では鍾乳洞の影に隠れていたルシエルが見ていた。
自分と違って、能力を使えない彼女はこの場においては身の安全も考えてその姿を隠していた。
「おっと」
すると何もない空間からガラスでできたナイフが飛んできて、それにスフェーンは直前に反応して対戦車ライフルを杖代わりにその光学迷彩付きの攻撃を股を開けて大きく避けると、そのまま空色の瞳となって祭壇の上まで飛ぶ。
そして祭壇の石碑にナイフを突き刺したサイボーグは、光学迷彩を解除してから上に逃げたスフェーンに聞いた。
「おい!誘拐犯!」
「何だ毒親!」
スフェーンは罵倒に罵倒で返すと、サイボーグ改め毒親は叫ぶ。
「私の娘をどこにやった!」
「言うか阿呆!子供泣かす奴に大人の資格なんかあるか、ボケェ!」
スフェーンはその直後に持っていた散弾銃で発砲する。しかし完全サイボーグとして超人的な筋力と反応速度を有する毒親は散弾のシャワーを軽々と避けてしまう。
「はっや」
そこで彼女は弾倉を使い切った対戦車ライフルを置いて下に飛び降りるとと、再び持っていた散弾銃を持って発砲する。
「ならば貴様らを切り刻んでやる!」
「おー怖」
「やってみろってんだ」
スフェーンとサダミはそれぞれ反応をすると、サダミは足元の死体を掴んで出入り口に積み上げていく。
放り投げられた死体の山からは次々と圧搾されるように血が流れていく。
「…」
それを隠れて見ていたルシエルは、そこでスフェーンに攻撃を仕掛けているサイボーグのデータ収集を行っていた。
『頭まで電磁装甲を積んだ完全サイボーグ?』
「(少なくとも重量級ではありません。重量級サイボーグは自重三〇〇キロを超えてからですから…)」
鍾乳石の影に隠れ、周りには空薬莢しか残されていない状況。そんな中で彼女は目の前のサイボーグを調べていた。
『だけどスキャニングでインプラントチップは調べられたよ』
「そうですね」
そこで入手したインプラントチップの情報を参考に検索を行う。
既存のネットワークとは全く別の回線を持っているルシエル達は大きく迂回した状態でネットに接続を行った。
『姉貴、繋がった』
「…なるほど」
そしてそこでルシエルは攻撃を行っているサイボーグの個人情報を仕入れると、すぐにそれを共有する。
スフェーンはその情報を受け取り、その直後に持っていた銃剣でサイボーグのガラス製のナイフを折る。
「流石に子供が逃げたからって殺すことはないでしょうに」
「何を言うか?」
その時、毒親はスフェーンのことを困惑気味に見た。そして当たり前のように返す。
「子は親の言うことを聞いていれば良いのだ。それを奴は無視した。ならば躾ける。それは当たり前の親子関係だ!」
「…はぁ」
その時、スフェーンは毒親を見た。
「そうか」
そして何かが切れたように、逆に清々しい表情を見せた。
「…では少し、場を面白くしようか」
彼女は毒親を視界から離さずに言うと、彼女は着ていたムートンジャケットを脱いだ。黒いタンクトップが姿を現すと、色気のある姿がまろ見えた。
「おい、毒親」
そして徐に毒親に聞く。
「アンタ、ジョン・ルートヴィヒ・オッペンハイマーに負けた研究者だろう?」
「っ…!?」
その名を聞いた時、毒親は明らかに驚愕した表情を見せた。
「ペンドール・ハンデ。かつて、エーテル学会に所属した研究員…人の不老不死化の研究をしていた。違うかい?」
「…」
スフェーンが問うと、途端にサイボーグは目をキッとさせて毒親は見てきた。
「その様子じゃあアタリ見たいね」
「っ!」
直後、背中に付けたであろうロケットエンジンのノズルが展開されて速球で高周波ブレードを備えた両手を突き出して突っ込んできた。
「…ワンパターン」
その攻撃を軽々と避けると、毒親はギロリと見て一言。
「…殺す」
無論完全サイボーグなのであり得ないのだが、その目は血走っているようにも見え、明確な殺意を持って背中のロケットエンジンに火を付ける。
「あーあ、壊れちゃうよ」
スフェーンは宥めるつもりで言ったが、逆に毒親の神経を逆撫でした。毒親は両手を地面につけて足を振り上げると同時に脹脛が割れて強力なライトが照射される。
「っ…」
その瞬間、目眩しで目をつぶした後に攻撃をすると瞬時に理解し、新たな目を手の先に作ってすぐに体をのけ反らせた。
そして予想通り、反対の脹脛から多数の散弾が発射された。
「…何?このビックリ人間」
そして背中のロケットエンジンを展開したり、両腕・両足の仕込み武器を見たサダミが思わず苦笑して見てしまう。
「さぁね。自分で改造手術しすぎて元の人格失ったサイボーグじゃない?」
「うらぁあっ!」
仰け反ってそのままバク転したスフェーンは、曲芸師を見ているような気分になりながら飛んできた散弾を足元に転がっていたサダミの盾を蹴り上げて相手の手刀を防護する。
「ふん!」
「ぐほっ!」
そしてそのまま蹴り上げた盾を足で蹴飛ばしてムキになった毒親を鍾乳洞の壁に叩きつける。
「あーらら。せっかくの鍾乳洞が台無しね」
「元々血まみれにして何を言うかね」
そして酸化して小豆色に近くなった鍾乳洞を見て二酸化炭素濃度の上昇を感じる。
「さて…」
その後、足元の血溜まりを確認した後に鍾乳洞に投げ飛ばされた毒親サイボーグを見た。
すると彼だったモノは音を立てて立ち上がった。
「もう一戦と行きますか?」
ニヤッと彼女は好戦的な笑みを見せた。
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